- Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167907082
感想・レビュー・書評
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第94回アカデミー賞 国際長編映画賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」を観に行くため、再読する。
映画そのものはアカデミー賞を受賞したとは言え、400字詰めで80枚分の短編小説を、なんと179分という長い尺に引き伸ばしたものだから、そんなに期待はしていなかった。
でも、いい映画でした。
感想を一言で言うと、「小説とはぜんぜん違うものになってるけど、なかなかいける」という偉そうな感じになる笑
映画と小説との違いで気になったのは、主に以下の3点。
①主人公・家福がたばこを吸うこと
小説内では吸っていないと思う。村上さんが昔吸っていて禁煙した人だし、ヘビースモーカーだった僕が禁煙したのも村上さんの影響を少し受けているので、とても気になった。
家福が吸うのなら、サーブの中を禁煙にする意味がわからないし。
②妻の死因
小説では子宮がん。映画はくも膜下出血。
子宮がんはHPVの感染が原因で発症することが多い。だから、ある意味、不倫の代償的な意味合いが感じられる(最近読んだ吉川トリコさんの「余命一年、男をかう」で主人公が子宮頸がんになった原因は上司との不倫だ、みたいなくだりがあったので、なおさら)。
③映画では車の中でロックを聴かないこと。
だって、タイトルが「ドライブ・マイ・カー」ですよ…と、思っていたのだが、小説の中でも家福はビートルズのこの曲を聴いているシーンが出てこない。聴いているのは、ビーチ・ボーイズやラスカルズやクリーデンス、テンプテーションズといったアメリカン・ロックだった。
「ドライブ・マイ・カー」は人の多面性を受容することがテーマ。理屈ではなく、ただあるものとして受け止めること。それは自分自身を深くまっすぐ見つめることでもある。だから、とても難しい。
なお、映画では短編集のうちの「シェエラザード」と「木野」のエピソードも散りばめられている。だから、予習としては短編集全体を読んだ方がいい。 -
映画、ドライブマイカーが話題になっていた為、かなり久しぶりに村上春樹先生の書籍を購入した。
村上春樹先生なのだから、キッパリとした起承転結があるのではなく、自分でかなり考えなければいけない結末なのだろうなぁと勝手に想像していた。
期待は裏切られなかった(笑)
久しぶりに読んでも、村上春樹は村上春樹!
何というか、文章が濃厚なんだな(笑)
解釈は、人によってかなり変わるような気がするのは私だけかな??
この映画も気になった。
私は村上春樹先生が得意なわけではないけれど、やっぱり文章力というのは圧倒的で、読み始めたら取り憑かれたように読み終えてしまった。
何だろうな?私は感想を書くのは本当に不得意なのだけど、この本には、大きな愛を感じた。
本当に人を愛したことのある人は、この本に没頭してしまうのではないかな。。。と。
村上春樹作品で、こんな陳腐な感想しか書けない私なんかが読む本ではないかもしれないが、やっぱり村上春樹先生って、凄い作家だわ。と思うような一冊だった。 -
自分にとって、一番身近な存在だった女の人に裏切られていたことを知る男の人の物語。
すべての女性には嘘をつくための特別な独立器官のようなものが生まれつき具わっている。…一番大事なところで嘘をつくことをためらわない。そして、そのときほとんどの女性は顔色ひとつ声音ひとつ変えない。なぜならそれは彼女ではなく、彼女に具わった独立器官が勝手におこなっていることだからだ。(『独立器官』)
「女の人にはそういうところがあるんです。」
「頭で考えても仕方ありません。こちらでやりくりして、吞み込んで、ただやっていくしかないんです。」
(『ドライブ・マイカー』)
女の人の裏切りに、この物語の男の人たちは、感情を表に出すことがない。怒ったり、泣いたりすることはない。居場所や仕事を変えて淡々とした日々を送るように見える。(渡会医師の最期はかなり悲しいものになってしまったが)
感情を表に出すことのない人との間にある、埋められない何かが、嘘や裏切り行為へと向かわせてしまったのかと思った。決してすべてを理解し合うことのできない人間関係の中の、どうしようもない孤独感のようなものを感じた。頭で考えようとしないで、人にはいろいろな感情があることを受け入れていくしかない、ということかなと思った。 -
村上春樹さんの短編集はやっぱり面白い。
特に本作はまえがきにも書かれているように、「女のいない男たち」という同じモチーフで、別々の話でありながら連作として捉えても面白いし、早くページをめくりたくてあっという間に読めてしまう。かと言ってサラッと読めてしまうのかというとそれはまた違って、村上春樹さんの作品を読むときのあのなんとも言えない感情、感覚をしっかり味わえる。読むこと自体、読む過程も楽しいし、読んだあともずっとじわじわと心に残る。
この本をあんな風に映画にした濱口監督は凄い。 -
もちろん、アカデミー賞を受賞したドライブ・マイ・カーを読むために本書を手に取った。他の短編全部読むのに1カ月ぐらいかかった。
結局、男にとっての女って意味分からないよな、っていう結論なのか?? -
面白かった。
とくに「木野」は一流の現代版怪談だと思う。
それぞれ結末は読者が想像するのだが、そんな結果もいらないと思うほど満足を得られた。さすが大先輩の村上春樹だ。
ふと気がついたのだが、初期の春樹作品には解説があったと思うが、世界的作家になってからの作品には解説がないように思う。ノーベル賞候補作家には解説などおこがましくて誰も書けないのかなぁ。 -
喪失感と哀愁。春樹氏らしい文体と着地する場所は読者が探す、たぶん(笑)
6話短篇集。テーマは表題の「女のいない男たち」…春樹氏のまえがきから。
映画で各賞を獲った「ドライブ・マイ・カー」、他に「イエスタデイ」「ジェエラザード」が特に良かった。
具体的と抽象的な描写の両義性、本質の行方。
近年のベストセラー作家先生の伏線を全て回収する作品も好きだが、空間たっぷりの文学もやっぱり良いなぁ。私は好き! -
村上春樹作品はなんとなく長編の方がおもしろい印象があったけど、他の方の感想を見て積読にしていた次第。
一度2年前くらいに読み始めたのだけど、ちょうど娘が歩けるようになってきた頃で、心に余裕が無くなってきて村上春樹作品を読む心の状態ではなくなってしまったので、一旦寝かせてました。
気付いたら映画化されてて出遅れた感(笑)
2014年に発表され、100万部突破のベストセラーということは読み終わってから知ったけど納得。
例えがいちいち秀逸で、情景を使って感情を表す(つまり、感じ取る)のが本当に上手だと思う。例えば、桜を見て儚いと感じたり、暗闇を見て孤独を感じたり的なね。こんなに感受性が豊かだと逆に生きづらくなることもありそう。
それに、いつも思うけどこの作品はより一層村上春樹ってどんな恋愛してきたんだろうと思うね(笑)「THE村上春樹の書く男と女」ってのが楽しめてよかった。
村上春樹作品って特有の世界観があって本当に大好きなんだけど、それを読み切るにはパワーがいるから、なかなか手を出せず。7年ぶりの村上春樹作品だったのだけど、やっぱり好きだなぁってのと、「木野」の後半から「あ、こういう不思議世界も書く人だった!」って思い出した。それくらい、半分くらいまではなんていうか、村上春樹作品にしては一般常識の範囲の中でのストーリー展開で、だからこそ万人受けして、短編集だけどベストセラーになったのかなぁなんてのも思った。
最後の表題作がなんとも村上春樹らしくて、これだから心に余裕がないと読めないんだよぉ!とも思ったww
村上作品読んだのほぼ大学生の頃だからまた再読したいな。
◆内容(BOOK データベースより)
「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」から1年、村上春樹、9年ぶりの短編小説集。表題作は書下ろし作品。
フォローしていただき、ありがとうございます!
本棚拝見しました。
色々なジャンルの本を読まれていますね。
「...
フォローしていただき、ありがとうございます!
本棚拝見しました。
色々なジャンルの本を読まれていますね。
「ドライブ・マイ・カー」映画観ました。
かなり長編なので、寝てしまうかと心配しましたが、とても引き込まれる作品で良かったです。
原作はまだ未読なのですが、たけさんのレビューを読んで、是非読むべき作品と思いました。
どうぞ宜しくお願いします♪
あまり統一感のない本棚ですが、フォローありがとうございます!
映画長かったですよね笑
この短編集を読むと、また...
あまり統一感のない本棚ですが、フォローありがとうございます!
映画長かったですよね笑
この短編集を読むと、また違う味わいを感じるかと思います。ぜひ読んでみてください!
今後、本棚ちょくちょくのぞかせていただきますね!
こちらこそ、よろしくお願いします!