シャドウ・ストーカー 上 (文春文庫 テ 11-31)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167907402

感想・レビュー・書評

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  •  リンカーン・ライム・シリーズはニューヨーク。一方、このキャサリン・ダンス・シリーズはカリフォルニア。遠く離れた2つのシリーズなのに、それぞれのシリーズにそれぞれのシリーズ主人公がゲスト出演してくれる。このサービス精神がディーヴァーという作家の真骨頂だろう。本作でも、おそらく作家持ち前のサービス精神は、様々な意味で発揮されている。

     今回は、若き女性カントリー・シンガーとそのファンのEメールのやり取りで幕を開ける。ファンと言っても度を超えればストーカーとなる。そのラインはおそらく場合により様々だが、無論ディーヴァー作品では、その場合は半端ではないデシベルだと思って頂いて構わない。

     コンサートクルーの一人に最初の被害者が出る事件を機に捜査陣形が組まれ、そこに我らがキャサリン・ダンスが登場する。ダンスは人間嘘発見器。人間の行動や動きや表情や声音のパターンから真実を見抜くキネシクスという特殊技術を持つ捜査官。

     コンサートを前にした人気シンガーと、ストーカーの対決構図は次々と起こる新事態により歪められ混乱し、善悪関係も不明確極まりない状況となってゆくのだが、それかディーヴァーらしいと言えばらしいのだ。

     ライムとアメリアか応援に訪れ力を貸す一幕、二転三転の展開や入れ子構造による事件の重層化構造などなど、いつもながらのサービス精神にも溢れた作品であるが、何よりも本書の特徴は、ゲスト・ヒロインたるケイリーのカントリー音楽であろう。

     彼女の作る歌は事件のキーワードにもなるが、それ以外にも多くの曲が、小説とは別に音楽の作詞活動にも熱心だというディーヴァーによって創作巻され、巻末には何とそれらの歌詞集が掲載されている。また、それらの曲は、実際にカントリー・ミュージシャンにより作曲・演奏・録音され、アルバムとして販売されるばかりか、ネットで視聴することもできる。

     早速、YouTubeで検索視聴したが、なかなか良い曲ばかりで好感が持てる音楽集であることに驚かされる。ぼく自身、カントリー・ミュージックに詳しいとは言えないまでも、現役でアマチュア・バンド活動をしているので、作中の音楽や楽器に関わるシーンが多くディーヴァーの趣向が熱く込められている本作は、ミステリー外の作家の素顔という部分で格別だ。

     ★リンク先はこちら→
       https://youtu.be/Qv5IpYeEl20

     創作上の歌手ケイリーを想ってまた曲集を聴くつもりだが、読後までこんなに楽しめるなんて何と予想外の作品なのだろう!

  • 2019/8/1購入
    2019/8/12読了

  • キャサリン・ダンスシリーズ#3。

    ダンス捜査官の友人であるカントリー・シンガーにつきまとうストーカーの影。犯人は、彼女の歌の歌詞に沿って、次々に彼女の周りの人間を殺していく。ストーカーの素性はわかっているが、相手はなかなか尻尾を出さない。ダンスのキネシクス(相手を読むスキル)と利口な犯人との渡り合いの行く末は・・・という話。

    途中からリンカーン・ライム物になっててワロタ。

    読みどころはやはり、そのスキルを使った自白誘導の醍醐味。

  • キャサリン・ダンスシリーズの第三作。

    前作の最後で交錯していたキャサリンの恋愛模様が気になっていたので、
    冒頭で二人のうち片方とつきあいはじめているのがわかって、一安心。
    と思いきや、不穏な方向へ。
    でも、いわゆるコージーミステリーではないので、
    あまり恋愛関係を絡ませてほしくない。

    事件の方は、休暇で会いに行ったカントリーシンガーへのストーカーからはじまる。
    他人のシマでの捜査は、キネシクスのエキスパートをもってしても、
    なかなか思うように進まない。

    (下巻へ)

  • いつものヤーツー
    だけどライムよりダンスの人生が
    どうなっていくのかの方が気になります。

  • ◆作者の深い知見が邪魔をすることもある?

    売れっ子女性カントリーシンガーに、影のようにつきまとうストーカー。そして彼女のヒットソングの詩に沿って殺人事件が起きる・・・・

    面白い。上下合計600ページを超える分厚さなのだが、一気にすいすい読めてしまう。

    が、この作品は弱点があるだろうな、と思う。作者であるディーバが「評論家」とも呼べるレベルの音楽好きということだ。自分がなまじ音楽が好きで、知識・知見が広く深いがゆえに「語って」しまうのだ。話の筋とはちょっと違うところに、深い音楽への造詣が語られてしまい、どうしても緊迫感が削がれるきらいがある。

    ディーバは音楽が好きで好きでたまらない。自分の(音楽への)思いを語りたくて仕方が無い。それが、時として顔を出し、冗長化してしまうんだな。

    そして、今回の探偵役はキャサリンダンス。

    ディーバのミステリーの主役・探偵役は、

    ・リンカーンライム+アメリアサックス
    ・キャサリンダンス

    この二種類に分かれる。

    前者は髪の毛一本、砂粒一粒から犯人へアプローチしようという「証拠アプローチ」。
    後者は人間の態度やしぐさから、本当の心の奥底の気持ちを表に出す「心理アプローチ」。

    本作は、ライム・サックスもわき役として登場はするけれども、主役はキャサリンダンス。ということで、「心理」がベースとなり、人と人とのコミュニケーションのあやが、結構重要な要素になる。客観的な証拠ではなく、人の気持ちや心がベースになるということ。そこでの、音楽への熱い造詣は私の気持ちを脇道に誘ってしまう感があるのだ。

    ドキドキ・ハラハラしながら、「次は・・?次は・・・?」と、ページを繰るテンポが鈍る・・・という感覚かな。


    話自体は、流石のディーバ。

    今回も二転三転するジェットコースターストーリーに、脳みそが快く揺さぶられた。やっぱりディーバは面白い!

  • 感想は下巻にて。

  • カントリー歌手のケイリーは熱烈なファンのストーカー行為に悩まされていた。
    やがて、彼女の元交際相手で現ボディーガードが殺される。彼の家を調べると何かが盗まれた痕跡があった。更に義理の母も危うく命を落としかける。全てがストーカーのエドウィン・シャープの仕業かと思われたが、ボディーガードの家から物を盗んだのは別の人物で、ケイリーの秘密(ボディーガードとの間に生まれた子供のこと)が表立たないためにとった行動だった。
    またケイリーが襲われた時、助けに入ったのもエドウィンだった。
    事件は収束したかに思われたが、実はケイリーを襲ったのはエドウィンで全て自作自演、ケイリーの目を自分に向ける為だった。

    主人公のキャサリンダンスがあんまり捜査に役立って無さそうなのと、終わりのお父さんに反抗して出て行ったのに直ぐ戻って来てハッピーエンドなところが、えっ?ってなった。

  •  キャサリン・ダンスシリーズ。
     人気歌手に付きまとうストーカー。そして殺人事件がおこる。
     
     歌手ケイリーの友人としてそこにいて、捜査に加わることになったダンス。
     なんか、警察社会って閉塞しているよね、って思うのはまぁ、お決まりのパターンなんでしょうね。

     話は、二転三転していき…。
     ただでさえ、転がっていっているのに登場人物の過去とか思惑とかが、交錯するので完全に五里霧中。
     ま、これがディーヴァーの醍醐味なんだけど。

     ケイリーの歌というか歌詞が重要なアイテムになるのだけど、ディーヴァーが書いてるそうな。
     すごいな。
     
     ついでに、ライムも出てきて…。
     まるでオールスターゲームのようでした。
     
     面白かった。

  • ジェフリー・ディーヴァー『シャドウ・ストーカー(上)』文春文庫。キャサリン・ダンス・シリーズの第3弾。

    なかなか手の内を見せてくれないスリリングな展開。リンカーン・ライム・シリーズとも味わいの異なるディーヴァーらしいミステリー。

    キャサリン・ダンスの友人の歌手・ケイリー・タウンの側近が何者かに殺害される。そして、第二の殺人が…犯人はケイリーに付きまとうストーカーのエドウィン・シャープなのか。

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著者プロフィール

1950年、シカゴ生まれ。ミズーリ大学でジャーナリズムを専攻。雑誌記者、弁護士を経て40歳でフルタイムの小説家となる。科学捜査の天才リンカーン・ライムのシリーズ(『ボーン・コレクター』他)や“人間嘘発見器”キャサリン・ダンスのシリーズ(『スリーピング・ドール』他)は全世界でベストセラーになっている。ノンシリーズ長編小説、短編小説など人気作品も多数刊行
『ブラック・スクリーム 下 文春文庫』より

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