決定版 鬼平犯科帳 (2) (文春文庫) (文春文庫 い 4-102)

著者 :
  • 文藝春秋
3.92
  • (11)
  • (26)
  • (15)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 243
感想 : 23
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167907648

作品紹介・あらすじ

鬼平誕生50年を記念して、池波正太郎のベスト&ロングセラー「鬼平犯科帳シリーズ」全24巻を、【決定版】で順次刊行中。さらに読みやすい大きな文字になり、カバーデザインも一新、広重の「名所江戸百景」の世界が広がり、全巻揃える楽しみも倍増。第二巻収録作品は、「蛇の眼」「谷中・いろは茶屋」「女掏摸お富」「妖盗葵小僧」「密偵」「お雪の乳房」「埋蔵金千両」。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 鬼平シリーズ第二作。
    (各話の結末にも触れているので読みたくない方は飛ばしてください)

    木村忠吾登場。ドラマとは少し違って惚れっぽいというか、すぐにのめり込むのだが飽きやすい。う~ん、これじゃいつまでも結婚は出来ないな。
    知らずに盗賊の娘と恋仲になってしまった「お雪の乳房」など、ドラマと違って『お雪さんそのものが好きだったんじゃなくて、そっち?』とガッカリしたし。これでは女性層には受けないだろうとドラマでは結末を変えたのだろう。

    しかし「谷中・いろは茶屋」ではそののめり込み癖が思わぬ活躍に繋がる。本来デスクワーク専門で捕物、ましてや剣術などからっきしの忠吾だが、こうして見るとやはり火盗改メ同心なんだなと納得する。
    そしてそんな忠吾を厳しくも甘やかす鬼平。彼もまた若き頃は数々のヤンチャをしていたらしいから彼の気持ちも分かるのだろう。


    鬼平といえば数々の密偵(いぬ)が登場するのだが、その密偵たちの活躍だけでなく、それぞれのドラマや人生模様が描かれるのもシリーズの魅力。
    「密偵」に登場する弥市。彼もまたかつては大泥棒の元で数々の悪行を繰り返してきたものの、同心・佐嶋に見いだされ密偵としてかつての同業者たちを捕縛するための情報を伝える役目をしている。
    だがそのお役目は妻のおふくにすら言ってはいけない危険なこと。ましてやかつての仲間の生き残りが自分を狙っていると聞いて緊張感も最高潮。密偵としての役目と自分の命を狙うかつての仲間との間で揺れ動く弥市の結末は、過去の業を切れない密偵の厳しさを感じた。

    だがそれでも『悪を知らぬものが悪を取り締まれるか』という鬼平の意志はブレない。
    悪を知り悪に染まること悪に毒されることの恐ろしさを知っている者、そこから這い出そうとする者だからこそ出来ることがある。
    純粋培養の者、正義感の塊だけの者では出来ない解決法がある。

    「妖盗葵小僧」などはその最たるものだろう。本来なら事細かにその悪行を書類に残した上で裁くのだろうが、現代で言うセカンドレイプを危惧した鬼平は何も残さずその場で犯人の首を刎ねてしまう。
    それが何よりも被害者の心の傷を最小限に抑える術であり、犯人の歪んだ悦びを叩き潰す何よりの罰だと判断したからだ。
    現代ならこんな乱暴な裁判はないのだが、それが良いかどうかは別としてこれが鬼平流ということだろう。

    また「女掏摸お富」では、過去と決別するために再び掏摸を繰り返すお富を見逃してやろうとする鬼平だったが、お富がそのうちに再び掏摸の快感に絡め取られようとしているのを見るや厳しい態度に出る(これもドラマでは少し結末が違う)。
    いたたまれず悪行を繰り返しているのなら止められるが、悪行の快感に掴まってしまえば人はどこまでも堕ちてしまう。その瞬間を見逃さず、今なら厚生出来るという絶妙なタイミングで声を掛ける鬼平、さすが。

  • 名作、鬼平犯科帳。
    密偵の小房の粂八や兎忠こと木村忠吾の活躍など目が離せない。
    妖盗葵小僧では、葵小僧の捕縛により、妖盗の毒牙にかかった女達、家族を思い、すぐさま妖盗の首をはねる。平蔵の粋で痛快な生き様が心にささる。

  • 「一の悪のために十の善がほろびることは見逃せぬ」
    「悪を知らぬものが悪を取りしまれるか」

    ……と、大江戸の悪党をガンガン始末しまくる鬼の平蔵さんとその仲間たち。

    この巻に出てきた『妖盗葵小僧』は、今の時代だったら、こんな解決はできないと思えるお話でした。

    顔も性格も悪くて女性にモテない大馬鹿野郎が、美女のいる良家ばかりを狙って、その女性たちをキズモノにしていく。
    しかも、旦那さんや親の目の前で。

    それを正統なルートで裁くとなると、被害者である彼女たちがまた世間という魔物によって更なる被害を受けてしまう。
    それを苦に自殺を図る夫婦も出ちゃった。

    性根の腐ったコンプレックスの塊オトコは、捕まった途端、今まで自分が犯してきた女性たちの名前をぺらぺらと話し、事件を裁く過程で被害を隠してきた彼女たちを公儀が調査することで、わざと再び彼女たちを傷つけようとした。

    それに気づいた鬼平さんは、さくっとダメくず男をその日のうちに殺しちゃったんだよね。
    で、上には余罪を一切報告しなかった。

    これ、今の司法制度じゃできないよね。
    なんか、まさに「一の悪のために十の善がほろびることは見逃せぬ」だよね。

    犯罪はキレイごとじゃないからね。
    頭でっかちすぎてもダメだよね。

  • 「鬼平犯科帳2」池波正太郎、文春文庫。連載は1967-1989くらいのシリーズで、第二巻なので恐らく初出は1968あたりでは。
     舞台は1780年代~1790年代(史実的に長谷川平蔵が火付盗賊改をしていた時代)。実在した長谷川平蔵を主人公にして、ほぼほぼ一話完結で貫かれた連作時代小説。長寿人気シリーズになったのは、各話各話で魅力的なゲスト(多くの場合、そのエピソードの"主演格"。多くの場合が犯罪者)が彩る人間模様ですね。全作通して長谷川平蔵という人間の内面を描く訳では全くありません。
     池波正太郎ここにあり、という節回しで、人情味あり、人のどうしようもない悪い面や怠惰な面を描く"業"の味わいに満ち溢れ、お色気と江戸グルメに貫かれています。

    こういうのはすっかり忘れてたりするので、長い人生二度読み三度読みが楽しめる訳ですが…。以下のあたりは印象に残っています。
    ▼過去の悪行から脅されて掏摸を働く「女掏摸お富」
    ▼平蔵の部下・忠吾のすっとこどっこいな数奇を描く「お雪の乳房」
    ▼志ん朝の朗読でも知っている「埋蔵金千両」。余命ないと思い込んだ元盗賊が遺産を愛人に渡す気になったが病状が持ち直してしまい…。

    第二巻は収録内容は以下。
    蛇の眼
    谷中・いろは茶屋
    女掏摸お富
    妖盗葵小僧
    密偵
    お雪の乳房
    埋蔵金千両

  •  「妖盗葵小僧」初めて読んだのは30年前。次がテレビ。島木譲二が演じていた。何れも妖艶さにドキドキした。キャスティングの妙には恐れ入る。今回改めて読んで妖艶の度合が増していた。かつてのギラギラしたものではなく、美しささえも感じた。こちらも齢を重ねたということか。

  • 独自の境地を拓き、瞠目のシリーズ第二巻は、平蔵ならずとも同心・木村忠吾から目が離せない。「蛇の眼」「谷中・いろは茶屋」「女掏摸お富」「妖盗葵小僧」「密偵」「お雪の乳房」「埋蔵金千両」の七篇を収録。
    鬼平犯科帳の面白さのひとつに、登場人物のバラエティさがある。密偵たちや火盗改方の与力・同心たちとこれまた個性の強い盗賊たち。そして彼ら全てを包み込む平蔵の人間力の壮大さが素晴らしい。

  • 面白い

  • 1 - 3 - 5 - 7

  • 繋がっているけど1話ずつ進むので読みやすいです。
    さすがの鬼平ですね~
    世界に引き込まれます。

  • 図書館にあるシリーズを適当に読み進めていた。
    シリーズを順で追っていくと、事件や登場人物につながりがあることがわかった。当たり前か。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    うまいと評判の蕎麦屋“さなだや”で、貝柱のかき揚げをやりはじめた平蔵だが、店を出た先客がどうも「気に入らぬ」と…。独自の境地を拓き、瞠目のシリーズ第二巻は、平蔵ならずとも同心・木村忠吾から目が離せない。「蛇の眼」「谷中・いろは茶屋」「女掏摸お富」「妖盗葵小僧」「密偵」「お雪の乳房」「埋蔵金千両」の七篇を収録。

  • 7話それぞれ楽しめるが、谷中・いろは坂、女掏摸お富、妖盗葵小僧が特にいいですね。

  • 面白かった!

  • 池波正太郎 著「鬼平犯科帳 2」、2017.1発行。7話。第4話妖盗葵小僧、第6話お雪の乳房、第7話埋蔵金千両が面白かったです。特に、埋蔵金千両が秀逸でした!

  • 一巻からの連続性があるのは世界観が造られていく上では興味深い。また往時の江戸の街並みが丁寧に描かれている点が物語の世界観の構築に寄与している。
    人間模様としては、一巻の方が面白かった。

  • 池波正太郎の世界にのめり込んでいる

  • 鬼平誕生50年を記念して刊行された”決定版”。なかでも同心・木村忠吾(兎忠)から目が離せない「谷中・いろは茶屋」は特筆。

  • 鬼平の世界では、男は欲深で女好き、女も妖艶で色好みだ。人間の欲望を肯定し、その中で人生の機微を味わう。「谷中・いろは茶屋」「女掏摸お富」「妖盗葵小僧」「お雪の乳房」などを収録。

  • 20170216 久しぶりで少しテンポがあわなかったが、読むうちにだんだん会ってきた。良いストーリーは飽きさせない。

  • 【「鬼平」アニメ化で話題沸騰、文庫シリーズ決定版・三巻同時刊行!】シリーズ誕生五十年になる『鬼平犯科帳』が、より読みやすい文庫決定版で順次刊行開始。さあ、読んでから観るか、観てから読むか。

全23件中 1 - 23件を表示

著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

池波正太郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×