モモンガの件はおまかせを (文春文庫 に 19-4)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167908461

感想・レビュー・書評

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  • ワニ日和、ダチョウ、迷いアルパカに続く4冊目
    娯楽ミステリ本としてもものすごく面白かった。が、これは啓発タイプミステリだと言える。全ての生体を展示型ペットショップで衝動買いしようとしている人に、まず読んで欲しい。
     まず事件が3つ、柴犬の新奇恐怖症(ネオフォビア)で発覚した誘拐事件、近親交配で量産され、骨瘤を形成させているスコティッシュホールド、フクロモモンガ。これで悪ペットショップが浮き上がり、最後のアナコンダ事件で決着する。悪質なペットショップと、そこに動物を卸していた悪質なブリーダー(パピーミル)、それと『引き取り業者』のグループを告発し壊滅させるという勧善懲悪。
    引用
    ”「悪いペットショップを利用するのは恥」という感覚が定着しますように、と思う。”

    ”「このグループのビジネスモデルはこうよ。まずブリーダーが、この間の事件であったように、動物の健康を無視したルール違反の繁殖を繰り返して、『流行りの犬種』や『流行りのネコ』を大量生産する。このブリーダーに関してはすでにRSSエージェンシーが調査報告書を出しているけど、狭い檻に閉じ込めてろくに世話もせず、死んだらそのあたりに捨てて、近親相姦でも構わずにとにかく繁殖させるという、いわゆる『子犬工場』だった。そこから『アニマルランド滝』が安値で仕入れて『特売』をし、、利益をあげる。現にあの店は、流行りのネコも流行りの犬種も、毛の色やオスメス、さらには月齢まで各種、常に店頭に揃っている状態だった。・・・・ということはその後、動物たちはどうなると思う?」
     言うまでもないことだった。日本の顧客は「可愛いから」「懐きやすいから」という理由でとにかく小さいイヌやネコを欲しがる。それは動物たちにとってみれば、離乳前に親から引き離されて売りに出されるため、母乳から必要な栄養素を摂取できず、イヌ、ネコとしての社会性を身につけられないということになる。それと同時に、より小さい子犬や子猫が店頭に入ってきたら、それより大きい子犬や子猫は「特売品」にされるということでもあり、それでも売れなかった場合は「不良在庫」になってしまうと言う事である。”

    ”「『流行りの犬種』だの『流行りのネコ』だのというのも、いいかげんやめてほしいけどね」”

    存外知られていないのがこの『引取り業者』の存在。色々と知らねばならんことは世の中にある。こうして事を描いてくれる作品というのは読書の面白さだけでなく、それ以上に大切なものだと思う。
    それと、どうでもいいが、
    2014年に新潟市内でナースシューズを200足盗んだ村上市の男性の話が服部くんによって変態事件の例として語られるが、そんな事があったんか!と思わず調べてしまった(笑)。

    蛇足だが、
    フクロモモンガ、オーストラリアなどの欧米先進文化圏ではペットとして売買されることに反対されているが(WIRES Wildlife Rescue :NSW Wildlife Information Rescue and Education Service) 残念ながら野生動物に対する文化後進国や貧困国では密猟対象として外貨を稼ぎ出している。私個人的には特に有袋類は金銭取引されるべきではないと思う。あっという間に絶滅する危険性がある。

    動物愛護管理法
    愛玩動物を飼う場合には必ず少なくとも一度は目を通すようにするべき。
    もちろん野生動物を扱う人間もスタディする。
    こちらにも明確に文言があるが、

    第四十四条 
    3 愛護動物を遺棄した者は、百万円以下の罰金に処する。

    捨てペットが後を絶たんが、
    ペットを捨てることは犯罪。
    そこらへん、全ての人がよく知るべき。
    罰則があろうがなかろうが、
    ペットはそのペットが死ぬまで責任を持つべし。
    そして、ペットより先に死んではならんのだ。

  • 短編集でいつもより読みやすかった。服部くんの変態が爆発してた。

  • 動物の習性とミステリーがうまく組み合わさっていて、動物好きでミステリー好きならばより楽しめる一冊だと思います。

  • 動物園シリーズでいっっちばん好き。服部くん大好き。

  • 動物園シリーズ第四弾

    シリーズ初の短編集!(連作短編集)
    一見関係のないお話に思えても根底の部分では繋がっていて、それが一気に解決された時は一種の長編作品を読んでるみたいだった。



    シリーズを通して色々と謎が深かった鴇先生と服部君。
    この2人の正体が分かったと言うのも胸熱(。'-')

  • めっちゃ面白かった。

  • 相変わらず、安定の面白さ&奥深さ(^ ^

    もうすっかり「お馴染みの」飼育員4人組が、
    動物絡みの様々な事件に巻き込まれ、
    基本的には「スーパーレディ」鴇先生の活躍で解決する、
    という連作短編集(^ ^

    今回は、ちょっと鴇先生の秘密も垣間見えて...(^ ^

    最初の「イヌ」の話は、何だかずいぶん小粒だなぁ、という印象。
    フクロモモンガの回は、私もモモンガを飼っているので、
    そうそう、その通り! と思いながら読み進む(^ ^

    一冊を通してのテーマは、愛玩動物の運命と飼い主の「責任」。
    そこに「悪質ブリーダー」「悪質ペットショップ「悪質引き受けや」の
    悪のトライアングルが暗躍するので...かなりシリアス。

    イキナリ本作から読み始めると、メインキャラ4人の
    「特性」が理解できず、ややついて行きにくいか(^ ^;
    特に「変態」服部氏については、単なる危ない人...か、やっぱり(^ ^;

  • 動物園の飼育員のコージーミステリ。今回はかなり犯罪とか動物園ではないところでの話が多かった。このシリーズ、日本人が書くコージーでは一番好きです。なんかいろいろとツボ。変態がほんとに変態……ここまで変態だったっけ(笑)。

  • 動物園ミステリ第四弾。この人で一番好きなシリーズです。

  • 楓ヶ谷動物園シリーズ第4弾。キャラクターが相変わらずキレッキレかつ積極的になってきていて微笑ましい一方、なかなか重たい話題で辛くなる。安易な流行は、良くない。

著者プロフィール

1981年千葉県生まれ。2006年『理由あって冬に出る』で第16回鮎川哲也賞に佳作入選しデビュー。「市立高校」シリーズ、「戦力外捜査官」シリーズ、「楓ヶ丘動物園」シリーズなどの人気シリーズの他に『難事件カフェ』『迫りくる自分』『きみのために青く光る』『シャーロック・ホームズの不均衡』『レジまでの推理~本屋さんの名探偵~』『101教室』『彼女の色に届くまで』『100億人のヨリコさん』『名探偵誕生』『叙述トリック短編集』『そこにいるのに』『目を見て話せない』『生まれつきの花 警視庁花人犯罪対策班』などがある。

「2023年 『育休刑事 (諸事情により育休延長中)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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