あじフライを有楽町で (文春文庫 ひ 20-7)

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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167908737

感想・レビュー・書評

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  • 年末年始を東京で、過ごすことにした。それで食べ物系の文庫本を物色した。グルメガイド本には、食指は伸びなかった。グルメ旅に行くわけじゃない。でもせっかく行くからには、幾つかの店には「物語」が欲しかった。最初、手にとっていたのは池波正太郎の本。しかし、彼の人の行きつけは70年代、80年代の店である。今もその味で残ってあるかは疑問だと思い直した。

    次に手に取ったのが本書。最近小川洋子さんとの対談本を読んで、平松さんが同年代でしかも我が家から自転車で行く事が可能な距離に住んでいたと分かり、一挙に親近感が高まったと言うのもあるけど、グルメ本や料理本や料理薀蓄本ではなさそうだ、では何なのだろう、という興味が1番の選んだ理由である。

    もちろん、東京散歩の参考にもさせてもらう。行きたいのは、題名になっている有楽町東京交通会館「大正軒」のミックスA定食(メンチ・あじ・エビ)950円、新有楽町ビル一階「はまの屋」の玉子サンド、JR中野駅前の中野商店街入口右手「田舎そば うどん かさい」田舎そばかき揚げ370円、昭和通り沿い東銀座「ナイルレストラン」のムルギーランチ、志ん生行きつけだった湯島の天ぷら屋「天庄」。

    その他、作ってみたい料理も、幾つか。塩豆腐、イチジクの赤ワイン煮、ごぼう茶、柚子ポン酢、柚子ジャム、湯豆腐、白菜と豚肉の重ね煮、肉豆腐、白和え。全て、「自由な」生活の中に溶け込んでいるから、真似したくなるのである。
    2017年12月27日読了

  • 平松さんの食のエッセイは、何冊か読ませていただいている。
    しかし、かぶっている、とか、デジャヴ、みたいなことが一つもない。
    毎回新しい発見なのだ。
    毎日、ごはんとお味噌汁の食事でも、その時のちょっとした加減や、自分の心持で、一度として同じ食事は無い…みたいなものだろうか。

    この本で、アッと言わされたというか、長年生きていれば自分でも気付いていたはずなのに、初めて気付かされたと思ったのは、“鴨南蛮”
    そうね~、その辺のお蕎麦屋さんで、鴨なんて入ってないけど、誰も偽装だ嘘だ、と怒ったりしませんよね。
    落語の演目にちなんだ鰻料理、自分では食べられないので、お話を聞く(読む)だけでも素敵な味わい。
    “海苔弁”に関する、アンケートのみの潔さ。
    あらゆる“知人”から、あらゆる到来物が平松さんの元に届けられ、それらを誠心誠意をもって料理する様子。
    映画に登場する料理、料理屋を描いた絵画…
    話題の多様性が、驚くばかりに無限だ。

    気がついたら、前作『ステーキを下町で』、手元に買ってあったのに、まで読んでいなかった…不覚!!

  • 食のエッセイ。
    文章から、食べる喜び、幸せが溢れてくる。鯨めし、そんなに美味しいの??鯨雑炊、どんだけ美味しいの???あじフライにはタルタルソースとレモンだなぁ~とか、お腹が減ってたまりません。いつも何気なく食べてる食材たちに改めて感謝したくなる、良本です。

  • 解説にもあるよう、平松さんのエッセイには物語がある。食事とそれらをめぐる記憶と物語がとても心地よく、いつまでも読んでいたいと思う。

  • あぁ美味しそう!

    ブックオフ江南赤童子店にて購入

  • シリーズ4冊目もとてもお腹が空きました。
    前作から引き続き、文章の中で小さなレシピが書かれているものもあるので、書き出して作ってみよう…となるのも楽しいです。にんじんサラダは作りました。美味しい。そして今も食べています。
    帯の「あの味を知ってしまったのは、幸福だったのか。」にドキッとしますが、きっと幸福ですね。
    安西水丸さんのゆるい挿絵も好きでした。
    ずっと続くと嬉しいシリーズです。そうしたら、次の挿絵はどなたになるんだろう…?

  • 相変わらず平松さんの文章は美味しい。


    有楽町「はまの屋パーラー」

  • 食に関するエッセイを読むのは、僕にとっては精神安定剤の服薬にも似た行為である。その中で、特に著者の本は常に手元に置いておきたいほど愛好している。

    前作の「ひさしぶりの海苔弁」と同じく、安西水丸のユーモラスな挿絵も楽しめる本書では、あじフライ、羊羹、立ち食いそば、湯豆腐、どじょう鍋などの食材を通じて、食べることが生きることであり、よく食べることはよく生きることである、そうしたテーゼを実感できる。

    東京交通会館のあじフライを早く食べにいきたい。

  • 食べ物についてのエッセイ集。個人的に言えば、若干味の指向性が異なるところがあるようで、ほんの少しだけど「この料理なら、僕はそれほど美味しいとは思わないなあ」と感じるものがあった(実は香味野菜的なものがやや苦手である)。それでも、読んでいるうちに「だまされたと思って食べてみようかな」と思うくらい、それぞれの食べ物たちが魅力的に見えてきて、今まであまり口にしようと思わなかったことが、人生の大きな誤りのように感じてしまうあたりがすごい。だって、いちいち美味しそうなんだ。

    味付けとか、素材とか、ことさらグルメぶるというよりも、旬のものを愛情いっぱいに受け止めて、最小限の手間をかけて、楽しくいただく、というのが基本的な姿勢のように感じる。それがいい。食べに行ったり、人からもらった素材で何品も作ったり、作者はひたすら楽しそうだ。その幸せ感が、読んでいるこちらも幸せにしてくれる。読み始めてから読み終わるまで、ずっと暖かい気持ちでいられて、読み終わってもそれが余韻としてほんわりと残る。

    美味しい食べ物に作者の人柄が調味料なのか、作者の人柄が美味しいためものを媒体に引き出されてくるのか。いずれにせよ、この本のそのものが美味しい。

  • 週刊文春連載の食を巡るエッセイ集。毎回食欲を刺激される。食べることに対しておろそかにしない心持ちが食への探求を結びつける。安西水丸の画も良い。‬

著者プロフィール

平松洋子=1958年、倉敷生まれ。東京女子大学卒業。エッセイスト。食文化、暮らし、本のことをテーマに執筆をしている。『買えない味』でBunkamura ドゥマゴ文学賞受賞。著書に『夜中にジャムを煮る』『平松洋子の台所』『食べる私』『忘れない味』『下着の捨どき』など。

「2021年 『東海林さだおアンソロジー 人間は哀れである』 で使われていた紹介文から引用しています。」

平松洋子の作品

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