プロローグ (文春文庫 え 12-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167910198

感想・レビュー・書評

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  • じつに円城塔さんらしい作品。めちゃくちゃ回りくどいし読みづらいのに、何故か読み進めたくなる文章。吸い寄せられる構成。本当に不思議な本です。

    たぶんストーリーとしては、円城塔さん自身が小説を書くという行為をどこまでシステム化できるのか、あるいは逸脱できるのかを実験しており、それを円城塔さんの内面を分割したかのような登場人物たちが小説のていで物語展開している、というようなもの。

    「小説のソフトウェア化」が究極の理想系というが、果たしてそれは本当なのか?実現できるのか?悩み試行錯誤する様子を、場所も時間も空間も入り乱れたストーリーで見せられるのは、脳が焼き切れるかと思いましたが楽しく読めたと思います。理解できたかは別として。

    総じて、手放しで面白いとは言えない気がするんですが、のめり込んで一気に読み切ったので、多分面白かったんだと思います。脳が追いついていなくて自信ないですが笑

  • 『プロローグ』(文春文庫)と『エピローグ』(ハヤカワ文庫JA)の同時刊行という異業(笑)に、つい、手を伸ばしてしまった……。

    あらすじとしては、こうある。

    「小説の書き手である「わたし」は物語を始めるにあたり、日本語の表記の範囲を定め、登場人物となる13氏族を制定し、世界を作り出す。」

    そうして始まるや否や、『千字文』が渦巻く21ページ目にして、笑いが生まれる。
    これは、凄まじい。
    けれど、同時に日本語とは一体どこまでを見通せる可能性を持った言語なのか、と考える。
    私はその、何パーセントを語彙として所持していて、残りは存在さえ知らないのか。

    ストーリーとしては正直、分かりやすくない。
    なのにハードカバー版のレビューを読んでいたら、皆ちゃんと「読んで」いて、感心する。
    私みたいなふざけたレビューもまあ、役に立つこともあるかもしれないから、いいか。

    筒井康隆の『残像に口紅を』を彷彿とさせる。
    文字が減ってゆく世界(セカイの規定はどうあれ)に対して、文字が取得されてゆく世界。
    語りが物語として創造されてゆく工程。
    「私小説」として、自らが構築したこの世界を、またパーツに分けては分析する。
    語彙の構成、使い方、長さ、数……。
    データ化された、それらを紐解くことで、自分を知ることになるという試み。面白い。

    『古事記』のテキストくらい、データとしてすぐに手の届くところに置いておいてくれ、とか。
    PDFは書式を潰すからデータ保持には良くないとか。
    あ。私も、ATOK良いよって言われて使ってみたら、変換しにくくて非常に難儀したことあるの、思い出したよ。
    電子機器を使って読み書きするという形態はメジャーになりつつあるけど、真摯に向き合わんとする人を見るのは初めてだった。

    日本はなんだかんだ言って、まだまだ紙を神聖視しているとは思う。
    ああ。『エピローグ』に迷い込んでしまいそう。

  • 文字が生成されて単語となり文章となり、生命が産み出されていくような。
    新たな次元を垣間見たような、やっぱりよくわからないような。
    頭のいい友達と、酔っ払っいながら延々与太話をしてるかのような。
    円城塔の小説は、いつか理解したいと思いながら、背中を追いかけているよう。

  • 私に円城作品を一読で消化する機能が付いていないため、解釈が誤っていることを前提に述べるなら、自動生成に必要なプログラム群が手足を生やして人格を持ち、コツコツと時給自足で奮闘しています。気になった漢字や用語をメモして調べてWordにまとめたところ、何を読んだのかさっぱり不明な備忘録ができました。円城塔の私小説を読んだはずです(たぶん……)。最後に一言、星川さんカムバック。一番のお気に入りでした。

  • 自分って何だろう?誰だろー?って思った
    自分の中にある色んな性格だったり考え方が人間として現れる
    私の中には誰がいるんだろう、なんて名前つけよーかなー?って考えると楽しくなってくる
    でもその中に共通性っていうのが自分の主張できる個性なのかもしれないなって

  • すごい本。あっさり読める。

  • 私小説…?小説=データ。小説データの奥行きにある世界。『エピローグ』を同時並行で読んでいるが、仮に本書の世界があると仮定し、その中からこちらの現実世界を見ると、やっぱりデータ量が大きすぎて耐えられないのだろうか?相変わらずよく分からないが、文を追っていくのが心地良いという感じだった。

  • 見るからに前衛的だけど、ある意味で分かりやすく宇宙を飛行しそうなロケットを指差して
    「これは花火です」
    という。
    こちらは「そうかこれは花火か」と思いつつ、宇宙空間を飛んでいくこの不思議な物体を想像する。
    発射直後くらいから飛行物体はその結合を失っていく。見方によっては更なる加速のための意図的な分離にも映るし、見方によっては設計者の意図しない分解にも思える。
    時に蛇行し、時に回転し、時には一瞬姿を消してみせ、すぐその先に現れる。そんな花火ともロケットともつかない不可思議な動きをみせる。何人かはこの辺りで背を向け帰っていくが、なぜか目を離せない。
    だんだんと分離は加速していき、分離したパーツは華やかに爆発する。その爆発によって残った本体は宇宙に向けて加速しているようにも見える。それともその華やかな爆発そのものに意図があるのだろうか。
    ひとつ、またひとつと分離と爆発を繰り返し、宇宙空間と地上のその狭間、最後の空間でもっとも大きなパーツがこれまでにないほど派手に炸裂し、天上は明るく彩られる。
    そして最後に作者は「これは花火です」という。
    そんな話だった。見方によってはSFと文学の可能性に挑んだ意欲作だし、ロケットのようにその限界を超えることを期待してしまうけど、結局のところ地球空間で破裂して地上の人間を満足させることを本懐とした私小説。
    騙されたと言えるような気もするし、気概が足りないような気もするし、でも最初からこんなもんだと言ってるし。そんな苦い笑いをも作者は指差して笑ってるような気もする。

  • 紙面上に創造される仮想の土地と架空の13氏族。全ては文字列で出来てる。
    日本語で。
    数式で。
    古典の引用文で。
    プログラミング言語で。
    教養と造詣を深めてなければ読み解けない執筆余談。
    ときどき旅行記。写真付き。
    語り手が断りも入れずに分裂増殖。
    それがだんだん陰謀論じみてきたり。

    様々なアプローチで文学を解体している...のか??それとも、とんち??
    流れるように連なる文章のほとんどが脳みその表面をつるつる滑っていく読書だった。素養ナシ。
    そして急に村某龍の悪口が飛び出してきたところで声を上げて笑う。

  • 文学も爆発しちゃうのか…(;´・ω・)
    その日の気分次第で楽しく読めたのかな?
    セットで買ってしまった『エピローグ』は積読山に埋めるw

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著者プロフィール

1972年北海道生まれ。東京大学大学院博士課程修了。2007年「オブ・ザ・ベー
スボール」で文學界新人賞受賞。『道化師の蝶』で芥川賞、『屍者の帝国』(伊
藤計劃との共著)で日本SF大賞特別賞

「2023年 『ねこがたいやきたべちゃった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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