指導者とは (文春学藝ライブラリー 雑英 3)

  • 文藝春秋
3.81
  • (9)
  • (15)
  • (11)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 253
感想 : 19
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784168130090

作品紹介・あらすじ

20世紀最高の「リーダー論」、ついに復刊!栄光と挫折を体現した米大統領だから洞察しえたリーダーの本質。チャーチル、マッカーサーに吉田茂…20世紀の巨星達の実像に迫る。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • [率いた者たち]第37代アメリカ合衆国大統領にして、国際通として鳴らしたリチャード・ニクソンが、世界の名だたる指導者たちの中から、「これは」という人物を選んで評した作品。第二次世界大戦において自由世界を率いたチャーチルや、絶妙なダンスを踊ったマッカーサーと吉田茂、そして物腰の柔らかさと冷徹さがニクソンにも強い印象をもたらした周恩来などが名を挙げられています。訳者は、毎日新聞社やサンデー毎日などで勤務した経験を持つ徳岡孝夫。原題は、『Leaders: Profiles and Reminiscences of Men Who Have Shaped the Modern World』。


    ただ著名人を紹介するにとどまらず、著者自身が会談した際の回想などが盛り込まれているため、実体感の伴った記述が魅力的です。それぞれの人物に共通する偉大さを的確に突いており、ニクソン自身も人間に対する観察眼が鋭かったのだろうと感じました。ちなみに、個人的にはチャーチルと周恩来の箇所に特に読み応えを覚えました。

    〜指導力とは倫理的には中性のものであり、善にも悪にも使えることがわかる。〜

    切れ味の鋭い訳もこれまた素晴らしい☆5つ

  • チャーチル、ド・ゴール、フルシチョフ、毛沢東など今や世界史的な人物たちと渡り合ってきたニクソンの宰相伝。国際政治が生々しく描かれるとともに、総合的な人間力のぶつかり合いで相互理解が生まれることがわかる。フルシチョフへの評価が厳しく、周恩来への評価が高い。すでに今日の中国の台頭を予見していましたね。ニクソンもそれほどの人物であるということです。日本の宰相も、これくらいのものを残して欲しいですね。

  • アメリカ合衆国大統領として自らも指導者の地位に立ったリチャード・ニクソンが、彼が直接交流し、外交の場面で渡り合った各国の指導者の姿を描き、偉大な指導者とは何かということを考察した本。

    取り上げられているのは、ウィンストン・チャーチル、シャルル・ドゴール、ダグラス・マッカーサー、吉田茂、コンラート・アデナウアー、ニキタ・フルシチョフ、周恩来である。フルシチョフの章にはレオニード・ブレジネフが、周恩来の章には毛沢東と蒋介石も、対比するように描かれている。1913年生まれのニクソンから見ると10歳から一世代上の指導者たちである。

    いずれも歴史に名を残す指導者たちであるが、その政治的な業績に対する分析というよりは、指導者としてどのように振る舞い、どのように考え、どのように決断したのかを中心に考察している。

    本書が何よりも貴重なのは、ニクソンがこれらの指導者と直接会い、彼らの人となりを直接感じた上で書かれているということである。ニクソンは1950年代にアイゼンハワー政権で副大統領を務め、本書で描かれた指導者たちとその時に初めて対面している。

    ウィンストン・チャーチルの章は、訪米するチャーチルを副大統領としてニクソンが空港に出迎えるシーンから始まっている。ニクソンは前日に一時間かけて歓迎スピーチを書き上げ、緊張しながら空港でチャーチルの到着を待つ。チャーチルは空港に到着すると自らの足でタラップを降り、さっさと到着第一声のスピーチを始め、ニクソンの歓迎のスピーチは吹き飛んでしまう。

    アメリカ合衆国副大統領であるニクソンにとっても、チャーチルは伝説の人であった。偉大な指導者の持つ存在感と御しがたい行動力を、この冒頭のエピソードが生き生きと伝えてくれる。

    指導者はそれぞれに人を惹き付ける力を持っているが、それはその指導者によって個々に異なっている。チャーチルにはある種の親しみやすさがあったが、ドゴールは隔絶した神秘性のようなものを持っていた。己を知り、それを最適な形で演出することも指導者にとって重要な能力であろう。

    本書を読んでもう一つ印象に残ったのが、ニクソンがそれぞれの国の国民性や文化を深く理解していたということである。指導者は正しい場所において正しい時代に生まれなければ、いかに優れた人物であっても指導者としての地位に就くことはできない。そういった意味では、指導者はその国の特徴を背景として生まれてくるものでもある。この本がすばらしいのは、ニクソンがその国の国民性や時代背景を重ね合わせながらその指導者の姿を描いているところである。

    第二次世界大戦後のドイツは、非常に貧しく国の産業基盤も破壊されつくした状態に陥ったが、1947年に訪独したニクソンはその貧しい状態に驚いた一方で、子どもでさえ物乞いせず、大人もわずかな食べ物を家族で分け合うドイツ国民の姿を見て、ドイツの精神が衰退していないことを感じ取る。

    頑なにソ連を中心とする共産勢力との対決と独仏融和を推し進め、偏屈な政治家のイメージを持たれているアデナウアーについても、ニクソンはドイツの中にあるヨーロッパ的な要素とドイツ的な要素、ドイツとフランスの間にある抜きがたい不信感などの複雑な文化・政治的背景に触れ、その中で冷戦という時代背景や第二次世界大戦の敗戦国であるというドイツの置かれた立場を冷静に見極めて粘り強く独仏融和に取り組んだアデナウアーの姿勢を、高く評価している。

    また、ニクソンがこの時代の政治家の中ではアジアの社会や文化を非常に深く理解していたと人物であるということにも驚かされた。マッカーサーが日本の天皇制を完全には破壊せず、その精神的な支柱としての役割を自身の権力へと巧みに移しながら日本に民主主義を植え付けていったことを、的確に解き明かしている。

    一方の中国については、周恩来が革命家としての冷徹な側面と儒者としての礼譲を兼ね備えていると語るなど、儒教と共産主義が重層的に重なる近代以降の中国の姿と周という人物自体が持つ特性が連動していることを指摘している。また、ソ連とは異なり中国人はその歴史を通じて大国としての威信を持っており、中国が今後アメリカに対しても負けない力を持つ国になるという自信を持っていることを、この本が書かれた1982年の時点で見通している。

    歴史家の分析でもなく、伝記作家が書く物語でもなく、彼らと同じ政治家であり指導者であったニクソンが書いた指導者論であるということが、重層的な視野を持ち、血肉が通った本となった大きな要因ではないかと思う。そして、同じ指導者としての経験を踏んだからこそ、偉大な指導者を過剰に偶像化することもなく、客観性と共感のバランスの取れた筆致で描き出すことができたのではないか。非常に読み応えのある指導者論であった。

  • チャーチル、ドゴール、周恩来etc

    第37代米国大統領リチャード・ニクソンによる世界の指導者を通じた彼流の指導者論。

    その人物像や評価に共感するかどうかは別として、政治信念の違いなどを超えて各国指導者を観察しながら導かれる指導者像は大変興味深かった。

    一読の価値あり。

    そして翻訳が良い。

  • 20世紀版『君主論』と言う感じの本。章ごとに偏りはありましたがかなり面白かったです☆

    とっても心に響く言葉もたくさんあったし、すぐ何かに役に立つ感じでは無いですが、歴史書として非常に価値のある本だと思います♪おススメ!!

  • ・強い意志と、他者の意志を動かすすべを知っている

  • ニクソン元大統領による、同時代の世界の指導者の素顔を描いた私小説+リーダーシップ論。チャーチル、マッカーサー、ブレジネフ、吉田茂、ネールなど、各国の首脳たちとの交流から学ぶリーダーシップの本質も面白いが、個人的な交流も含めたひ歴史上の人物たちの人となりが見えてとても興味深い。

  • 読了しました。

  • 中国に対する考察は注目に値する。

  • P353~
    ニキタ・フルシチョフの章
    「してはならないこと」
    は、現在の対北朝鮮情勢、その背後にある対中国情勢を考える上で、極めて参考になる経験論である。
    核開発、軍備拡張を進める北朝鮮、中国を相手に、「抑止力」を基本に、いかに戦争をもたらさずに交渉によって両者の利害関係を調整するか。
    そのなかで、まさに「してはならない」誤解が、当事者の視点から明確に記されている。

全19件中 1 - 10件を表示

リチャード・ニクソンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×