コンピュータが死んだ日 (徳間文庫 216-3)

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  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (311ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784195775080

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  • 1972年の作品。この頃は東京オリンピックで汎用コンピューターによる初の大規模オンライン・システムが稼働してから8年後。大企業にもコンピューターが徐々に普及し始めた高度成長時代でモーレツ社員の時代でもありました。この作品はSFではありますが、コンピューターが知能を持ち始めて反乱を起こすなどといったうわついたお話ではなく、80年代の社会がコンピューターの登場によって社会がどのように変わってしまうか、問題が発生するかを予測した作品です。東京湾海洋工場の大事故の原因を突き止めようとするコンサルタントが主人公のサスペンス・タッチのお話しですが、その原因追求方法が今で言うAIによる統計解析手法そのものなのです。しかも大事故の原因が驚き。この時代にこの描き方をするとはさすが博士。情報社会の中でがんじがらめになっていくサラリーマンの息苦しさなんかまさに現代です。
    一方で作品のテーマとは別に現代からすると特に女性の描き方や男性中心の思考が、もうこれアウトといった表現が多いのが時代を感じさせます。確かに70年代のエンタメ系映画やTV番組なんかは丸ごとアウトな感じでしたからナイーブで保守的な著者からすると素直に描きすぎたのかもしれません。科学技術の進展や問題に関してはかなりいい線いっているのに、それに伴う人間の行動や感性の変容を描くのは難しいのだと思います。(同時代の小松左京氏にはこんな感じはなかったから、なおさら小松氏の凄さがきわだちますが)逆に強烈な時代錯誤感を覚えるほど、自分が変わったり矯正されたことがよくわかります。自分の親の世代はこのような時代を生きてきたのだなと、これはこれですごくリアリティーがあり、良い悪いは別にしてもう一つのあり得た世界としての迫力があります。
    良い部分もも悪い部分もさまざまに考えさせられるこの作品に日本SF初期の熱量を感じるとともに、これからAIとうまく付き合わなければならない自分もこのくらいのバイタリティーを持たないといけないのだと思います。

  • 久しぶりにSFが読みたくなって再読。198x年が未来だった頃に書かれた作品。
    PC関連に疎いせいか、ズバリ言い当てられている面はもちろん、実際の「現在」とのズレも含め、楽しめました。

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