ラビリンス: 迷宮 (徳間文庫 222-1)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784195784174

作品紹介・あらすじ

村で6年に一度の大祭の夜-。神へのいけにえとして選ばれた娘たち。軍神ラーラの申し子で勇敢なサーラと英知の神デュロプスの申し子で賢いトゥード。神はいけにえを生きたまま喰うという。しかし神を殺すか、うまく逃げることができれば…。二人の美少女、サーラとトゥードは、神と闘うべく、神の館へ…。

感想・レビュー・書評

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  • 村で六年に一度の大祭の夜――。神へのいけにえとして選ばれた二人の美少女が放り込まれた迷宮には秘密が……。

    異世界転移ものだった『扉を開けて』と世界観を共通する作品。こちらは誰も転移して来ず、このファンタジー世界に住む村少女たちの物語。表題どおり主に迷宮で話が進むが、今日多くの人が想像するRPG的なダンジョン探索とは趣が異なる。なんといっても1982年の作品だし、作者がそっちの方向にどこまで通じていたか、わからない。それでも『扉を開けて』ではファンタジー世界が魅力的に描けていて面白かったが。今作はどちらかというと作者の本分であろう、サイエンスの要素に大きく振り切られており、ファンタジーについて現代的に説明するという、このあたりの世界設定はよくできていると思った。

    しかし、後半の、悩みと思索が錯綜するくだりは物語が動かず、食物連鎖に対する哲学のようなものが展開していく。ここの思索のレールに読者がはまれると良いのだが、読む人によってはレールから外れて白けてしまうかもしれない。このあたりは、ご本人がおっしゃるように、若書きの気恥ずかしさをどことなく感じる文章かもしれない。

    しかし一方で、終盤、根源的なテーマに物語の中で結論を導き出す手腕は見事で、さすがというところ。人生という迷宮に踏み出す少女たちの旅立ちにエールを送るようなラストの清々しさ。これはぜひ、今でも中高生あたりの少年少女たちに読んでもらいたい良作だ。

  • この世界観好き。
    あとがきで東の国の話や一千年前の話の構想もある。って書いてあるんだけど、どうなってますか~読みたいですよ。
    サーラとトゥードのその後も知りたいわ。

  • 帰省中に再読。舞台になっている世界自体は『扉を開けて』と同じ、東の国での出来事らしい。ただこちらはコバルトではなく徳間からの出版のせいもあるのか、現代日本人女子目線で比較的お気楽な「扉を~」と違い、シリアスかつ、なかなかヘビィな部分もある。

    15才にして男性をしのぐ狩人であるサーラ、神官の娘で聡明なトゥードは、彼女らの国で「神」と呼ばれている存在への生贄として、神の住む迷宮へ放たれる。神は人々に知識を授けてくれるが、生きたまま人を喰う怪物でもある。二人の少女は迷宮で神と戦い、神の正体を知り、そして・・・。

    自分が人間を食べずにはいられないことに苦悩する神、しかし人間もまた別の動物の生命を奪い食べることで生きている。そこに罪悪感をおぼえる必要はあるのか? 他者の生命を奪って生きていくことの意味とは? 中2的かもしれないけれど普遍的な問題を、とても前向きに解決していて素晴らしい。そこで悩んでヴィーガンやベジタリアンになっちゃう人もけして少なくはないのだろうし。

    確か同じ世界の続編「ディアナ・ディア・ディアス」も読んだのだけど、こちらはもう残していなかった。

  • 村で6年に一度の大祭の夜―。神へのいけにえとして選ばれた娘たち。軍神ラーラの申し子で勇敢なサーラと英知の神デュロプスの申し子で賢いトゥード。神はいけにえを生きたまま喰うという。しかし神を殺すか、うまく逃げることができれば…。二人の美少女、サーラとトゥードは、神と闘うべく、神の館〈迷宮〉へ…。

  • (2000.01.01読了)(1999.10.10購入)
    (「BOOK」データベースより)
    村で6年に一度の大祭の夜―。神へのいけにえとして選ばれた娘たち。軍神ラーラの申し子で勇敢なサーラと英知の神デュロプスの申し子で賢いトゥード。神はいけにえを生きたまま喰うという。しかし神を殺すか、うまく逃げることができれば…。二人の美少女、サーラとトゥードは、神と闘うべく、神の館〈迷宮〉へ…。

    ☆新井素子さんの本(既読)
    「チグリスとユーフラテス」新井素子著、集英社、1999.02.10

  • ジュブナイルものなのですが、
    なかなか面白いのです。
    二人の少女が成長していくのも
    また見ものですが、特有の世界観もまた魅力。

    ファンタジーというとすごく引くでしょう?
    魔法やらが出てきたりするとか…
    これは異色の存在がファンタジーなぐらいで
    話の核心部はSFですし、魔法も出てきません。
    たくましい少女は出てはきますが…

    思うのは人はやっぱり愚かな面もあるけれども
    この二人のように捨てたものではまだないな、ということ。
    でも道を間違えたら「神」の言うとおりになるでしょう。

    まさに成長の記録。

  • まさか遺伝子が登場するとは思わなくてびっくりした一冊

  • 「中の国」の話・・・だったと思う。違ったか。
    でも、世界観は一緒だったはず。

    三人でがんばって生きていって欲しい。

  • 文庫版あとがき、赤裸々なセルフセラピーとはよく言ったもの。心情描写の巧みな寓話あるいは神話。テーマまみれで心地よい。食う食われるという概念に感じるところのある若い人なら読んで損はしないはず。

  • もう二十年近く前。
    僕が十代前半の頃に大好きだった小説です。

    その後、この『ラビリンス《迷宮》』のオマージュ小説まで書いたなぁ……。

    それほどまでに、僕に影響を与えた小説です。

    さすがに古い作品だけあって、少々舞台設定は古臭いというか、今読むとちょっと恥ずかしくなってしまうようなところはあるんですが、全体的なテーマは、重い。
    重くて、深い。

    「悩む」ということ。
    「生きる」ということ。
    そして「進化」という概念。
    それら全てを《迷宮》に見立てて描ききった作者の力量に、今読んでも共感させられます。

    「力」を持ったサーラと、「知恵」を持ったトゥード。
    そしてその両方を持ちつつも、悩み苦しむ「神」。

    その三者の奇妙な関係が、何とも言えず良い味を出しています。

    だいぶ久しぶりに読んだんですが、それでもかなり細部を覚えていたことに、我ながら驚きです。
    何度も読んだもんなぁ……。

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著者プロフィール

1977年「わたしの中の・・・・・・」が奇想天外新人賞佳作に入賞し、デビュー。以後『いつか猫になる日まで』『結婚物語』『ひとめあなたに・・・』『おしまいの日』などを発表。1999年に発表した『チグリスとユーフラテス』が第20回日本SF大賞を受賞。

「2022年 『絶対猫から動かない 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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