火星の笛吹き (徳間文庫 501-4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784195977484

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  • ・火星の足跡
    火星に長く滞在した二人の男は孤独や寂しさに耐えていた。女のものと思われる足跡を発見した二人は急いで足跡を追いかける。女が倒れているのを発見した時、一人がもう一人を銃で撃ち、女は自分のものだと言い出した。しかし、女はずっと昔に死んでいた。火星には大気も雨も風もないため、足跡は消えず、死体もそのまま残っていた。二人は火星を後にし地球に向かった。ロケットの噴射によって足跡は消えてしまった。

    ・防衛機能
    長い火星への航海のため精神を病んだ男は、精神科医により火星を地球だと思い込んだ。人手不足のため男に仕事をさせていたが、火星上で迷い火星人に仲間ごと拉致されてしまった。それでも男は地球上での出来事だと考え危地を脱し無事地球へ帰還できることになった。しかし、今度は火星へ向かうと思いこむようになった。

    ・振子
    タイムマシンを作ろうとした科学者が、協力してくれた他の科学者を乗せてタイムマシンを作動させたところ、自分以外の科学者が全員死んでしまった。罪に問われた科学者はタイムマシンを改造して作った振子の中に閉じ込められ、以後揺れながら外の世界を見ることしかできなくなった。いつしか化学者の世話はロボットが行うようになり、その後、一千年を過ぎた頃、地球に宇宙船が現れ人類を皆殺しにしてしまった。化学者は地球唯一の生き残りとなったが最後には振子に骨だけが残った。

    ・地球のはぐれ者
    地球上では気が狂ったといわれる女だが、宇宙にはそんな人間を受け入れる星があった。女の家族がその星に女を送り届け、彼女は妄想のとおりロシアの女帝、エカテリーナとして受け入れられた。

    ・天国への短い旅
    老婦人たちが天国行きロケットの旅を大金を払って申し込んだ。しかし、これは詐欺でロケットはボロボロの代物だった。しかし老婦人たちは強引にロケットを発射させ宇宙空間へ飛び出した。ロケットはすぐに爆発し、詐欺師は太陽の方向へ飛び出した。一方、老婦人たちは外宇宙に向けて飛び出し、すぐに酸素がなくなるなか、神のもとへたどりついたと感じた。

    ・未来を救った男
    金に困りタイプライターを売り払った作家が家に帰った。部屋の中には新しいタイプライターが存在していた。タイプライターは自動で動き出し文字を打ち出した。500年後の未来からタイプライターだけを過去に送り連絡している。相手は女で、次元研究のエキスパートだという。そして、500年後に独裁者となる男の祖先を殺すよう依頼される。作家は彼女の言うとおり祖先となる人間を殺し最後にタイプライターをたたいた。自分は彼女を愛していると。しかし、殺人者として追跡を受け部屋のドアが打ち破られた。

    ・青い蠟燭
    金物屋の店先で銃と青い蠟燭を見つけた男。妻が新しい男を作り離婚を迫られていた。店主の話では青い蠟燭に火をつけ、殺したい相手の名前を三度言うと本当に死んでしまうという。高額のため店主を殴り倒して奪ったあと、妻に贈り物として青い蠟燭を送った。蝋燭が届く直前、不倫相手から暴力を受け考えなおした妻はろうそくに火をつけ、夫の名前を三度つぶやいた。

    ・死体回収ロケット
    地球と金星の間で戦争が起き、地球から宇宙空間での戦死者を収容するロケットが飛んでいた。死体を100体収容すれば地球に帰れるところ、ようやく97体まで回収できた。98体目の死体を調べると様子が少しおかしかった。それは金星人で、全知全能の男として知られる人物の右腕とされる者だった。しかし彼は宇宙船が破壊されたため死んだと装って死体回収ロケットを奪い、金星に帰ろうとしていた。金星人に乗っ取られたロケットは全知全能の男として知られる金星人を回収し、金星に向かうことを迫られる。しかし、ロケットの乗組員の二人は全知全能の男を回収時に殺し、隙をついて右腕の男も殺した。その際、乗組員の一人も死亡し死体がちょうど100体となった。

    ・草の葉
    全ての動物、植物、微生物までもが死滅し、ロボットのみが生きる世界。一人のロボットが禁を犯し人間の赤ん坊を育てていた。はるかな昔、人間が創りだしたロボットは人間と争いロボットが勝った。ロボットは生きるものすべてを殺し地球はロボットしかいない星となったが、僅かな生き残りを探し出し、人間を生まれさせることまで到達した。しかし、ほとんどのロボットたちは、生きるもの、成長するもの、死ぬものを怖れた。ロボットは巨大な旋盤から作られたと信じ人間の関与を否定した。結局、人間を育てたロボットは錆刑に処せられた。

    ・木星行きの予言者
    呑んだくれの元宇宙船乗組員の老人が火星から木星行きのロケットに乗り込んだ。ロケットにはアステロイドベルトの小惑星を避けるためコンピュータが搭載されていたが、故障の危険があるため老人を乗せていくことにした。老人は昔、小惑星を避ける事に長けていたが、コンピュータの発達により職を奪われ酒に浸っていた。アステロイドベルトに差し掛かる直前、老人は断っていた酒を飲んでしまった。コンピュータを打ち壊した老人は皆から白い目で見られる。しかし、最初に酒を彼が飲む原因を作ったのは敵対する火星人のスパイだった。スパイに撃たれた老人は木星の見える小惑星に自分を置き去りにし、ロケットは彼が誘導する航路進むよう説得した。最後の力を振り絞りロケットの航路を木星へ誘導する老人、そしてロケットは無事木星にたどりついた。

    ・生きているルアナ
    自殺を決意した男は、最後の瞬間、昔を振り返る。冒険家だった男は森で道に迷い、月を信仰する部族の儀式に遭遇した。人間を滅ぼすよう礼拝する彼らを殺した冒険家は呪のため月を恐れるようになる。十二回目の満月の夜、鏡を見ると自分の姿が部族の者たちと瓜二つになっていた。

    ・宇宙のヒッチハイカー
    宇宙船の外壁に張り付きタダ乗りする宇宙のヒッチハイカーの中に、金星のスパイにより脳内に情報を仕込まれた者が紛れていた。地球のスパイである男はこの者を地球の関係者に引き渡すのが役目だった。ヒッチハイカーの一人が誤って他のヒッチハイカーを突き落としロケットの炎により殺してしまった。スパイの男は彼が情報源だと見破り無事確保した。この功により彼は地球への配転が約束されていた。

    ・火星の笛吹き
    火星人の笛吹きは木星人にとらわれていた。すでに彼以外の火星人は殺されたため、害はないとして火星に連れ戻された。火星は今では木星人によって開発され自然は破壊されていた。笛吹きはある時、アメーバ状の生物が大量に生き残っているのを発見した。この生き物はカム鳥の泣き声を追いかける修正があった。笛吹きは笛でカム鳥の泣き声を真似し、それを木星人の街でスピーカーに流すことができた。アメーバ状の生物は街と木星人を押しつぶし、火星人の笛吹きもこれに巻き込まれた。

    ・ロケット・サマー
    月へのロケットを開発した男は、最後の最後で発射を中止しようとした。ロケットが戦争に利用されることを怖れ、規制する法律を先に作ろうとしたためだった。しかし、目先の利益に目が眩んだ人々は彼を脅し強引にロケットを発射した。月から帰ってきたロケットから乗組員が降りてきたが、眼はこぼれ落ち、肉は腐っていた。これを見た人々はロケットを破壊した。しかし、これはロケット開発者が仕組んだものだった。

    ・苛立った人々
    アメリカとヨーロッパの戦争が一触即発の状態まで進んだ時、双方が相手国に嫌がらせを行った。精神的に苛立った人々は嫌がらせを徐々にエスカレートさせた。

    ・輝くフェニックス
    図書館に黒い消し炭色の制服の一団が現れ、有無をいわさず本を燃やし始めた。図書館員と図書館の利用者は直接的な反抗はしないが、制服の一団を無視し、ほんの引用から間接的に抗議した。最後には制服の一団は逃げ出した。

    ・よみがえるラザルス
    死体回収ロケットで宇宙空間の死体を回収していると、三百年前の死体を発見した。死体の服装、装備から超兵器を開発していた科学者だとわかった。ロケットの船長は彼を蘇生させ超兵器が地球の手に入れば、火星との戦争を一気に集結させることができると考えた。科学者を蘇生させることには成功したが、ロケットの唯一の同乗者が彼を裏切り、科学者を火星人に引き渡し対価を得ようとした。ギリギリのところで同乗者を殺したが火星人に生きた人間を引き渡さなければこのロケットは破壊され超兵器は手に入らない。そのため、船長は科学者の服を着て火星人の元に赴いた。

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著者プロフィール

1920年、アメリカ、イリノイ州生まれ。少年時代から魔術や芝居、コミックの世界に夢中になる。のちに、SFや幻想的手法をつかった短篇を次々に発表し、世界中の読者を魅了する。米国ナショナルブックアウォード(2000年)ほか多くの栄誉ある文芸賞を受賞。2012年他界。主な作品に『火星年代記』『華氏451度』『たんぽぽのお酒』『何かが道をやってくる』など。

「2015年 『たんぽぽのお酒 戯曲版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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