- Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198504199
感想・レビュー・書評
-
最初は退屈だった。
千尋の書いた小説を読んでいる時は、むしろ苦痛もあった。(閉所恐怖症の私としては…)
最初の頃の作品なんて、こんなものかなとも思ったのだが、途中からはやはり矢口敦子さんらしい、人物と展開の魅力を感じた。
(むしろ、途中からはすっかり矢口さんの文章だったから、千尋のまだ未成熟な文章をそのように書き分けて、読者に読みにくさを感じさせるのはさすがだと思う。)
償いやあれからに比べると読みやすさは少し劣るけど、人の内面が深く描かれているようで、読み応えを感じた。
「死は償いではない」という部分は、『償い』に繋がるものがあり、胸にぐっときた。
それにしても、矢口さんの作品には共通する部分がとても多い。
美少年(美少女)、医療従事者、過去のトラウマ、複雑な家庭環境、外界と切り離された生活。
矢口さんの生い立ちからくるものだろうか。
この作品はラストに怒涛の展開があり、ことが起こるのも大分後半だったが、個人的には償いのように事件が最初に起こり、迷走しながらも徐々に真相に迫っていく方が好きだなと思った。
総括すると、個人的な好みは置いておいて、人の心情や真理の描写が他の作品よりも繊細に強烈に深く掘り下げて描かれていたようで、洗練されて無駄のない最近の作品よりも、人の内面の宇宙に触れるような、深みのある作品を読ませて頂いたなというように感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
PC通信初期時代の話。
そこを割り引いても、もうちょっと、な感じかなぁ。
好きな作家さんなので、読むのは楽しかった。