- Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198618841
作品紹介・あらすじ
聞いてビックリ、見てビックリ。朝日の記者生活は「驚き」の連続だった!「捏造は当たり前」「偏向は常識」が朝日の社風?!-元朝日新聞記者の苦闘の青春記。
感想・レビュー・書評
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今まで読んだ中で、最も痛烈かつ辛辣な新聞評、というより体験的朝日新聞評。新聞記者の仕事がいかにダメか。そして、そうした記者を擁する朝日新聞社の体制がいかに腐っているか、が著者の体験を通して数々の具体例とともに書かれている。朝日新聞のこととして書かれているが、ここで挙げられていることのほとんどは、日本の大手メディア(新聞・テレビ)に共通していると見るべきだろう。
それにしても、朝日新聞の中身がこれほどダメとは・・・。「年功序列」「上司による嫌がらせ」「前例がないでボツ」「デスクが捏造を強要」・・・あーあ。朝日新聞の誤報や記事捏造が問題になるたびに、こういうことは日本の新聞界に共通するものであって、たまたま表面化したのが朝日だった、と思っていたけれども、これを読んでいると、どうも違うらしい。表沙汰にならないねつ造騒動の多いこと多いこと。これはもう、朝日の「体質」と考えるしかなさそうだ。
それと言うのも、朝日新聞社では東京本社の「政治部」「経済部」「社会部」が主要3部と言われていて、そこ以外で仕事をする記者(そこで仕事をしたことがない記者)はカスのような扱いなのだそうだ。だから、みなそこへ行くために必死で競争する。その競争の要件とは、記者クラブの中で「抜いた・抜かれた」レースでいかに得点を上げるか。所属クラブ以外の独自ネタでいかに良質な記事を書いても一切評価されず、「あんなのは記者の仕事じゃない」と言う上司までいるのだそうだ。
クラブ発の「抜きネタ」なんて、「○○氏をあす逮捕」とか「××氏を△△容疑で事情聴取」とか、待っていれば発表される類のものだ。それを1日とか半日とか早く報じたところで、読者や視聴者にどんな利益があるのだろう、とつくづく思う。(テレビは、逮捕前の容疑者が連行されるところを撮ろうと、これまた熾烈な人権侵害競争を繰り広げている) こういう競争が無意味どころか有害なことは著者の意見にまったく同意するが、こういう競争に「勝つ」ことによってしか評価されない朝日新聞社では、みな、このレースに没頭する。そういう仕組みが出来上がっている・・・。
ニューヨークやロンドンといった、「花形」とされる支局には政治部、経済部、社会部の「指定席」が用意されていて、そこで功績(功績といっても、これまた記者クラブ内の身内レース)を上げた者が順送りで派遣される、というのは何となくわかるが、そうして出される特派員の無能なこと無能なこと、というのはちょっと意外。だいたいは英語もろくに話せず、支局に閉じこもって、通訳兼アシスタントの書いたものをまる写ししたりするのだそうだ。
著者の鳥賀陽弘道さんは、17年間の朝日在籍期間中、10年をAERA編集部で週刊誌記者として過ごした人。新聞の仕事をせず、一つの媒体に10年も在籍するというのは、「異例の長さ」なのだそうだ。(そりゃそうだろう)
私は、大学1年以来ずっと自宅でAERAを購読しているという、朝日から表彰してもらいたいくらいの「模範読者」なので、鳥賀陽さんの名前はよく知っている。いろいろ面白い記事を書いていたことを記憶している。こういう能力の高い人が、なぜ絶望感を抱くのか。そして、ここ10年ほどのAERAがなぜつまらないのか、本書を読むと、よーくわかる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者はもと朝日新聞記者。もとはインターネットで発表されたもの(http://ugaya.com)で、すでに斜めに読んではいたが、きちんと単行本で読み直すと、よくある朝日批判のようにサヨクだとか中韓寄りだとかいう段の話ではなく、本当に会社としての体質がおかしくなっていると思える。<br><br>
「アエラ」の「現代の肖像」のコラムに新しい書き手が欲しいというので、編集部員の筆者が書いて持っていくと、なぜか編集長代理が「俺は聞いていない」と言い出し、ヒラの編集部員が書くのは「前例がない」と言って没にする(ご丁寧にも、実は前例はあった。そんなことも調べなかったらしい)。せめて読んでから決めてくれと食い下がると、「読んだら、載せないわけにいかないじゃないか」という意味不明の理由で拒絶する(要するに判断する能力がないということだろう)。<br><br>
アメリカにいる特派員が、十分な英語力がないものだから現地のアシスタントにつきっきりで通訳してもらい(正直、特派員なら当然英語くらいできるだろうと思っていた)、時にはインタビューも記事書きもやってもらって、のみならずその記事に自分の名前を入れる。おかげで、知日派の若いアメリカ人を激怒させ、日本から気持ちを離させてしまう。これはいささかショックだったし、人の仕事を横取りして平気という腐敗ぶりには肌寒いものを感じる。
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「自己保身」「上役の顔色窺い」「年功序列」「横並び」「仕事の本来の目的を忘れた無意味な狭い仲間内の競争」といった、日本の会社とか役所の典型的な欠陥の塊みたいで、これで他の会社だの役所だのをよくぞ批判できるものだと思わせる。「自分を棚に上げる」という言葉を絵にかいたよう。<br>努力した者もしない者もまったく同じに扱われるというあたり、昔の社会主義国かと思わせる。これじゃやる気をなくせというようなものだ。
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なお、2007年2月現在、筆者のオリコンの統計について疑義を示した記事に対して、同社は5000万円の慰謝料という恫喝的な裁判をしかけて口封じにかかっているが、これに対して外人の記者クラブは協力して声明を出したのに対し、日本の記者クラブの記者は筆者の名前の読み方や生年月日を当人に聞く体たらくだったという。そんなもの、ネットで調べる程度の予習もしないのだ。 -
今なら「知ってた」の一言で済みそうな一冊だが、初版 2005年当時の雰囲気はどうだったろうと思い返すに、まだ「『朝日』ともあろうものが」(暗に、インテリ、エリート集団の「朝日」という前提がある)という風潮が残っていた時代ではなかったかと思う。なにせマスコミにすっかり騙されて民主党が政権を取るのが 2009年のことなので。
その「朝日ともあろうものが」が、今となっては「またマスゴミか…」なのだから、著者の予言は残念ながら現実のものとなった。記者クラブに対する批判など、経験したものでなければ書けない貴重なルポタージュになっている部分もあるが、21世紀の価値観をもって旧弊を批判し、私憤をブチ撒けただけの文章に堕しているところも少なからずある。もう少し抑えて書けば情報リテラシーに関する歴史的な著作になっていたであろうに残念だ。 -
記者時代の苦労話や面白いエピソードも交えて書かれている。
10年ちょっと前の本なのだが、巻末には誇りの持てる民主主義社会には、誇りの持てる政治とマスメディアがあるはずだ、と書いておられる。近刊ではなんだかマスメディアの擁護をしているようにしか思えない。やっぱりこの著者はあまり好きではない。生で会ったら面白い人かも知れないけど。 -
元朝日新聞記者による朝日批判本。17年の社員生活のうち10年をアエラで、そのうち2年は米国に私費留学まで行って、結構好き放題させてもらっているのに、恨み言がすごい。そもそも新聞社に入るべき人でなかった気もする。高校野球をはじめとする我が社モノが記事がクソだというところには激しく同意。
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ぼくはなぜこの仕事を選んだのか/みじめでまぬけな新米記者/パワハラ支局長/高校野球報道って偏向じゃないの/記者クラブには不思議がいっぱい/夕刊は不要どころか有害/朝日の人材開発は不毛の荒野だった/ぼくが初めてハイヤーに乗った日/捏造記事はこんな風につくられる/上祐へのインタビュー原稿がオウムに渡っていた/「前例がない」の一言でボツ/かつて愛した恋人、アエラ/さようなら。お世話になりました。
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非常に面白い。
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元・朝日新聞記者による告発?告白?本。エリートで権威ある、あの!朝日がこんなことしてましたよ。という本だが、どの朝日でも駄目なものは駄目だし、そもそも「あの!」が朝日に対して無いので、ただのグズグズの会社の内情って感じも否めず・・・。
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昔にいたブン屋ゴロを思い出しました。
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当初、仕事のカウンターパートである立場にあった著者の(著者ご自身とお会いしたことはありませんが)、「暴露話」をのぞき見ようかと思って読んだのですが、読後の感想は全く違ったものとなりました。 ご自身の思いとは違う方向に向かう職場、メディアに対する思い、上司・同僚・後輩に対する思いなど。 自分の今の立場と考え合わせて、フクザツな思いにさせれられた作品でもありました。