日本経済を襲う二つの波―サブプライム危機とグローバリゼーションの行方

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  • 徳間書店 (2008年7月3日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198625535

日本経済を襲う二つの波―サブプライム危機とグローバリゼーションの行方の感想・レビュー・書評

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  • このかたも共感できる点が多くあります。
    バランスシート不況は、この前からずっと言われている事で、 この本が発売された2008年当時、アメリカのサブプライム に対しての提言も書かれていますが、予想よりも早くアメリカは 回復できているように感じます。 これもブックオフの100円コーナーから。。
    100円で見つけられれば是非皆さんもよんでみてください。

  • 著者:リチャード・クー
    出版:徳間書店

    『日本経済を襲う二つの波』
    二つの波とは・・・
    ⑴戦後最悪の金融危機・サブプライムローン問題
    ⑵内需低迷、格差拡大を招くグローバリゼーション

    ◉第一章
    『サブプライム問題は戦後最悪の金融危機』
    米国の住宅バブルに端を発して起きたのが、欧米のサブプライム問題である。急激な下落を続ける金融商品を抱える為、疑心暗鬼に陥った銀行は、融通しあうインターバンク市場に資金を供給しなくなった。金融市場の防衛のために各国の中央銀行は資金投入している。
    2000年末に起きたアメリカ・ITバブル崩壊は、株の大暴落を起こし、資産の減少に直面した企業は借金返済に回った。民間資金需要が弱まった為、金利を下げ続けた政策は住宅バブルを引き起こした。ITバブル崩壊は、住宅バブルによって乗り切ったウォール街だが、その住宅バブルにより、運用圧力に悩んだ末、サブプライムローンに資金を投入した。(市場に投入された額は1兆ドル。)
    出鱈目な格付け機関、債務を売り買いするデリバティブ商品の多様化は、実体の損失が分からなくなるほど複雑化し、先の疑心暗鬼を引き起こす事態になったのだ。大恐慌以来の金融危機である。

    ◉第二章
    『住宅バブル崩壊のアメリカはバランスシート不況』
    バランスシートが毀損すると、企業は借金返済に注力するようになり、設備投資に資金を振り向けなくなる。(バランスシート不況)∴家計部門でも同じ。
    資金需要が無い中で、金利下げの金融政策を行っても、借り手は増えない。更なる金利下げを実施しても、効果はないどころか住宅バブルを引き起こしてしまう。
    従って、サブプライムローン問題によるバランスシート不況にはインフラ整備に金を使う政府による財政出動で対応するべきである。

    ◉第三章
    『ドル危機に世界はどう対処すべきか。』
    サブプライムローン問題に対応する為、FRBは継続的な金利下げを行ってきたが、借金返済に注力する中、借り手は現れない。反応したのは為替である。金利が下がることによって、ドルの価格が下がったからである。これによりアメリカの貿易赤字が減少し、GDPの押上要因となった。しかし、ここには大きな問題が内包されている。
    ドル安の進行は、基軸通貨としての役割を破壊する。それにより、二つの現象が起きる。
    ①ドル建資産の減少
    ②石油価格のドル表示中止
    アメリカは基軸通貨を持つ国ゆえに外貨が無い。更なるドルの崩壊は全世界の金融を大混乱に陥れることになるだろう。
    アメリカの貿易赤字の大部分が、対アジアに対するモノであり、アジア圏の通貨同時切り上げを一つの対処策として述べられている。
    また、サブプライムローン問題に隠れているが、食品価格の高騰は世界を混乱に落とす懸念事項の一つである。
    行き場の無い投資資金が流れ込んでいるのが、主要因である。
    この章での結論は、世界を取り囲む問題を完治させるには、世界規模での財政出動が必要だ、という事である。

    ◉第四章
    『日本はバランスシート不況を脱却出来たのか?』
    資産価格の急激な下落により、中身が大きく傷ついたバランスシートを修復するのに、手元のキャッシュフローから優先的に返済に回す。本業は堅調であった日本企業がバブル崩壊後にとった当たり前の行動である。個としての当然の行動が、全体のマイナスを助長する、つまり多くの企業が投資よりも、返済に回った為、民間の資金需要は皆無に陥った。政府がゼロ金利にしても、借り手がつかなかったのはその為である。
    マネーサプライが減少しつづける中で、日本のGDPがあまり変化が無いのは政府が借り入れて資金の使い手を担ったからである。結果、大きな財政赤字が蓄積されてしまったが、巨額の国富損失を防止したのである。
    2005年頃から、景気回復が本格的になったのはバランスシートの毀損回復が一巡し、ようやく前向きな行動が見られはじめたからである。しかし、これを持って、政府が財政再建に舵を取るのは早計である。
    一度、バランスシート不況の中、借金返済地獄を味わうと借金への大きな心理抵抗が経営者に生まれる。貸借対照表が回復しても、依然民間の資金需要が弱いのはこの心理が大きい。まさにバランスシート不況の最終局面であり、この心理抵抗を除く投資減税が必要であり、政府は財政出動を継続することで、景気の下支えをしなければならないのが、現状である。

    ◉第五章
    『日本に襲いかかるグローバリゼーションの大波』
    日本にとって、グローバリゼーションとは中国の台頭である。
    長らく欧米に追いつけ追い越せでやってきた日本のSystemは、追い上げについては対応できない。世界の先進国と同じ労働力が、中国から世界に供給されている。このショックは一度追い上げを経験している欧米より、日本の方が大きいと言えるだろう。1970年代に日本によって壊滅的打撃を受けた欧米が達した結論は、新しい発想・アイディアを持って世界をリードする人材を育成しなければならない、ということである。それが後のマイクロソフトのビル・ゲイツ、Appleのスティーブ・ジョブズ、Facebookのザッカーバーグである。今はこの人物たちが、業界をリードしている。日本には出る杭は打たれるという諺があるように、均一化・画一化という点では優れている。しかし、欧米に追いつくために効率性を重視している時は有効であったが、中国をはじめとするアジアからの猛追を交わすには、創造性を重視する教育に転換しなくてはならない。
    グローバリゼーションは勝ち負けを明確にする側面がある。
    資金も人材もある大企業はグローバリゼーションに乗りやすいが、中小企業には無理である。その格差が地方の衰退を加速させている。勝ち組の集まる東京では、グローバリゼーションのもたらす脅威が感じにくく、政治の混迷にもつながっている。本質的な構造改革が求められている。

    【経済学用語】
    ・逆イールド‥‥長期金利が短期金利を下回る現象。
    →将来の不況(金利の下落)を心配する人たちの経済行動によって起こるとされている。

    ・リターン・ザ・キー
    アメリカのシステム呼称。
    借り手が家を銀行に返してしまえば、銀行は残額を請求出来ないようになっている。
    →信用度は落ち、ローンは利用出来なくなる。

    ・グラス・スティーガル法
    預金や決済システムを担う商業銀行の破綻には責任を持つが、投資銀行や証券会社の破綻には関与しない。

    ・IMFの設立経緯
    1930年代の大恐慌、損失を回避したい各国の通貨切り下げ競争を抑止するため。

    ・合成の誤謬‥‥個々の企業や個人がそれぞれに正しいと思う行動を同時にとった結果、全体としては大変な事態を招くこと。

    ・レバレッジ‥‥自己資本に対する借金の割合。

    ・オートマチックスタビライザー機能‥‥景気の良い時は税収の伸びがGDPのそれを上回ることで景気の加熱にブレーキをかけ、またその逆に景気が弱い時は、失業保険など政府の支出は増える一方で税収が落ち、景気を下支えする機能のこと。

    ・クラウディング・アウト‥‥政府が財政赤字を埋めるために民間の貯蓄を吸い上げてしまい、その結果金利が上がり、民間が資金を借りられなくなる状況。

  • サブプライム危機が顕在化し、リーマン・ショック前に書かれた一冊。
    と言いつつもテーマは日本経済への警鐘鳴らしなわけですが、結局は財政出動の重要性を何度も語るということで…
    ここについては個人的には同意できない部分も多くあるのだけど、経済学の観点で言えば正しい部分もあるのでしょうね。
    せっかく政府の仕事もしているんだったらもう少し出し惜しみしないで処方箋を出してほしいものです。

  • さまざまなエコノミストがバブル崩壊後の日本経済の分析を行っているが、私の知る限り彼の分析が一番私のお気に入りだ。自分にとって一番説得力があると感じるということ。

    さて、「日本経済を覆う二つの波」では、クー氏が現状のサブプライムローンに端を発する世界経済に暗雲をもたらしている状況について、日本のバブル崩壊にともなうバランスシート不況の状況が世界に蔓延したというのは、至極納得できる論である。

    これにドル安や原材料価格高等に伴うインフレが絡んでいる状況が日本と大きく違う点かもしれない。

    つまり日本よりもより複雑な状況ということで、今度世界経済がどのように変化していくのかについては、これによって生命を脅かす生活に陥るかもしれない人々にとっては、大変なことでこういっては非常に申し訳ないことなのだが、純粋に知的好奇心を沸き立たせると言う意味で、非常に興味深い時代に入ったなという印象である。

    ここでバブル崩壊のプロセスをクー氏の著書から引用してみると下記のようになる。

    ①バブル崩壊直後は、誰しも資産の下落は一時的なものと判断。
    ②企業・個人の所有資産価格の暴落に直面すると、バランスシート修復のため、債務圧縮に走る。
    ③マクロのレベルで債務圧縮(借金返済及び銀行等の不良債権処理)が進むとこれによって更に資産価格の暴落や内需の落ち込みを加速させ「合成の誤謬」が発生。
    ④民間資金需要が不足し、中央銀行の金融緩和策が無力化。
    ⇒現在は、原油などの商品市場に資金が向かっているが、市場が金融商品に比べて圧倒的に小さいため、カネ余り状態の解消までいかない。
    ⑤政府は、民間需要不足を、財源又は借金で固定資産投資することで埋め合わせし、経済成長を維持し、社会的混乱を防止。
    ⑥更に金融機関に公的資金を注入して、不良債権処理のための引当資金を提供。
    ⑦資産価格の下落が落ち付き、企業・個人の借金が減少あるいは債権者の潤沢な引当資金が準備される。⇒今の日本はこの状態で、バブル崩壊後のバランスシート不況から脱出しつつある段階。
    ⑧企業・個人が再度、借金して投資に向かう。
    この状態になって初めて、国の借金返済・公的資金の回収が始まる。

    以上の具合だが、さてドル安・原材料価格高騰による世界的インフレ状況の中で、今後いったいどうなっていくのか、自分の資産を守る意味でも真剣に経済状況を注視する必要があると思っている。

  • 「バランスシート不況」という言葉もすっかり定着したが、現状分析はいいとしても対策とすると矢張りケインジアンの面目躍如とは言いにくい。マクロ経済政策の問題に、政治と官僚システムとアホのマスコミがもたらす日本の「気分」は、なかなか関数に乗せづらい。竹中よりはという所か。

  • バランスシート不況という概念を初めて聞いたが、それに関することととグローバル化の解説の本。
    バランスシート不況とは、企業がバブルの崩壊により資産価格が下がり、バランスシートがダメージを受ける。そのような状況下では、キャッシュフローを使いバランスシートを直そうとする。その間、企業の利益最大化という目標はあと回しになるが、ステークホルダーにとってそれは望ましいことである。
    しかし、たくさんの企業がそれを同時に行うことで合成の誤謬が発生、銀行に借金返済の資金が大量に流れ込み、このような状態では金利をいくら下げても借りてくれるところはない。また、一度こういう状況に直面した経営者は借金恐怖症に陥ってしまう。そこで、その滞留した資金を政府が財政出動という形で使う必要があり、財政再建をする時期ではないと述べている。これらの前提には、「民間には必ず資金需要がある」という間違った概念が存在している。
    また、そのような滞留した資金が民間の需要不足のため、商品市場を介して世界中にインフレをもたらす、という構図が発生している。

    そしてもう一つが「グローバル化」である。

    最後に「なぜ日本は豊かになれないか」の部分の考え方は、斬新でとてもいいと思った。確かに、巨額の資産を消費する日本に対して、ストックしていく諸外国では豊かさに差が表れても不思議ではない。日本の内需は減少していくというが、それでも人口は1億人を超える巨大な国である。その人数がこれに取り組めば、かなりの富がストックできるだろうと思われた。

  • メディアが教えてくれなかった
    サブプライム・ローンにばっちり斬りこんだ本。
    メディアは騒ぎ立てるだけで役立たずなのが
    よーく分かる本でもあります。

    ふたを開けてみるといかに見通しが甘かったが
    よくわかってくることでしょう。
    こんな世界不況を招いたのは
    ある意味「人災」采配ミスです。

    そのほか日本の視点でもいろいろ出てきますが
    日銀の総裁の苦労も載っています。
    著者の言うとおり、ぜんぜん報われない職業ですよね。

    最後には
    ある日本のシステムの不備を指摘しています。
    確かに、あれが減価償却になるのは、ないですね。

  • 2009/10/30
     バランスシート不況/日銀は出来​る範囲でよくやった ...なるほど”

     この人の本は、ちゃんと読んでおく必要がある

  • 彼を、気に入った。
    かなり感情的に、記載される文章に。
    批判、不満の表し方が潔い。


    サブプライムローン問題の危機の脱し方、をわかりやすく述べている。問題に至った経緯、と、これから。バランスシート不況、という単語を使いながら、その現在を説明する。


    今まで「住宅」を資産として、2世代3世代と代々、その富を引き継いできた、米国。一連の問題で、その「住宅」の価値がゼロとなった。資産を作りにお金が向かい(-貯蓄)、お金が回らず、貸し渋り。金利下げても、借り手無し。残すは、財政出動のみ。と、風が吹けば桶屋が儲かる的な、リズムで紐解く。
    さらに、日本の住宅事情までに踏み込む。この国の欠陥は、住宅を作っては壊し作っては壊し、富の上に富が蓄積されない構造だ、よって日本人は欧米よりリッチになれていない、と。


    今まで、あまり意識しなかった、選挙と経済、発言と景気、の一端も理解できたような。自民党、民主党どっちが何をやろうとしているのか、というより、麻生さんと小沢さん、それぞれ何をやろうとしているのか。政党ではなく"その人"の意見を参考に政治を理解した方がよさそうなことが、ようやく分ってきた。
    財政再建?、財政出動(公的資金投入、工事、減税)?、ん~、大統領選の行方と次回国内選挙が、今まで以上に、気になるわけで。


    本日のセミナーの木村さんと、本のクーさん、共通の話題はこう。
    「米国でも日本でも空前の貸し渋りブーム。少なくとも良いブームではない。銀行、企業、個人。プレイヤーの各々が自らの借金返済(バランスシートの修復)に向かう、つまり金が回らない。これを回すのは各国の政策にかかっている。」

  • 日本だけでなく世界のB/Sが狂っているらしい

    2008年の経済危機について緊急出版した本。
    数年経ったらこの本の評価が定まるでしょう。
    経済関係の本は読むととても面白いけれど、結局は仮説であったり、過去の出来事を振り返って自説の正しさを主張する本が多いですね。
    読んだ記録には残るが、記憶には残らない、、。

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米住宅バブル崩壊とともに噴出してきたサブプライム問題、ドル危機、食糧・資源の高騰など、いま世界が直面している危機は旧来の経済学ではまったく対応できない!バランスシート不況の分析で世界から注目を浴びるリチャード・クーが、世界大恐慌を回避するためにいま日本と世界はどう対処すべきか、明確な見取り図と処方箋を提示する。

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