黒十字サナトリウム

著者 :
  • 徳間書店
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198625979

作品紹介・あらすじ

黒十字サナトリウムは患者様の性別、年齢、人種、また資産や社会的地位など一切を問いません。けれども一つだけ共通点がございます。此処にいる方は、どなたも御自分を吸血鬼のたぐい、異形の存在だと思い込んでいらっしゃるのでした…。ある朝、目が覚めて自分が狂っていることに気づいた梶原章吾教授は、知人の医師を殺害し、北へ向かった。結核患者である凪雲龍司は美貌の伯爵夫人に魅せられ、眠りとは違う圧倒的な底へと沈みこんだ。ミシィカとレイナ、双子の兄妹は易出血症と虐待に悩み、母と主治医を殺害。その家はいつしか『吸血鬼屋敷』と呼ばれるようになった。そんな彼らが集う、黒十字サナトリウム。復活祭の日、何かが起こる-。第9回日本SF新人賞を受賞した、流麗かつ壮大な幻想譚。

感想・レビュー・書評

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  • 著者新刊のタイトルに魅かれて、まずは処女作であるこちらを図書館で借りました。
    こちらのタイトルも素敵。帯が無くてまっかっか。ヒィーッ。
    読み始めから気に入りました。
    教授!狂気!犬神!夢野久作的!
    と思いきや、吸血鬼!萩尾望都的!
    好きなテーマばかりで楽しませていただきました。
    是非手元に置いておきたいなあとAmazonを見ましたら在庫切れ…。
    文庫化希望です。
    日本SF新人賞にも興味が沸きました。
    他の受賞作も読んでみよう。

  • 8+1の短編からなる連作。読みづらい、分かりづらい話もあったが、この美しく妖しい世界観に惹き込まれた。日本SF新人賞(新人賞!?)受賞作品。
    双子のミシィカ&レイナが登場してから断然面白くなる。一番気に入ったのは最後の話かな。ああ、カイ…。(この、ネーミングに雪の女王を連想した人は多いはず)こんなにいい子が可哀想すぎる。

  • 面白かったー!二段組で読みごたえあった。長いけれど、たいくつしない。
    ミシィカとレイナは、「こいきなやつら」の双子ちゃんを彷彿とさせるイメージ(あくまでも個人的に…)
    お耽美な世界観(表紙絵の影響もある)の中に、いろいろ勉強したんだろうなぁという蘊蓄が詰め込まれていて面白い。
    言葉遣いがしっかりしていて、お耽美にふさわしいレトロな構文もあったりするけど古くさくはないのもいい。

  • 好きな要素がたっぷりつまっているはずなのに、衒学的な小説も好きなはずなのに、なんだか重苦しくて読み進めるのがしんどかった。
    しばらくこの作家さんはいいかなという感じもするけど、黒猫ギムナジウムのほうは波長があうと思うので、そちらだけは読んでみたい。

  • 短編集なのかなと読み進めますが、最後に繋がり、
    なんて華麗で素敵な物語なのだろうとうっとりしました。
    耽美な文章は心地よく、あまりの酩酊感に本を閉じ、眠りました。
    アホな私は吸血鬼ではなく睡魔に襲われ、何度も読むのを諦めかけました。
    せめて行間をもう少しあけてくれませんかねと、何度も呟きました。
    しかし、それも途中までです。
    後半からは幻想の世界に夢中になりました。
    本当に愉快で美しい世界です。
    吸血鬼とは夢の生き物だと私は思います。
    その感覚に当て嵌まる、幻想的な吸血鬼譚はとても好きな物語でした。

  • 吸血鬼のお話です。
    最初は1文が長い箇所が結構多かったので
    読みづらいかな?と思ったのですが慣れました。

    単に「吸血鬼が出てきて、血を吸います」という話じゃないのが良い。
    部落差別、易出血症、キリストの復活等が絡んでくるのが興味深いところでした。
    「なぜ吸血鬼は存在するのか」
    そこの語りが面白かった。

    星は本当は4つでも良いのですが
    最初はドキドキ感やなるほど感を持てたのですが
    終わりに近づくにつれて、失速している気がしたので
    星は3つとしました。

  •  久しぶりに2段組の本を読んだ。字が小さい!読み応えあるよ!である。
     感想はともかくとして、この中に出てくるナースドリーがあまりにもニーナに見えてしょうがなかった。よいナースでした。

     批判的な意味合いはないけど、しかしこれがSFなのかと驚くww SFも裾野広いなぁ。

  • 時系列が時間通りに語られないところは‘ポーの一族’っぽいですが。思春期に出会ったエドガーの世界とはちがうような気がする。第五話は少しだけロビン・カーの気持ちがわかるかも。(自分もエドガーが迎えにくるのを待っていたので)

  •  時系列を超えて、吸血鬼である双子の兄妹を中心に描かれる幻想譚。全編にわたる抑制の効いた表現が却って戦慄的であり、冷たい蒼色が通奏されている。

     内容も充分に整合性がとれ、読み心地が良く文章も美しい。医学的描写も光っている。個人的に印象が残ったのは「通りの瓦斯燈に青い灯が入ったとき」という章。妹レイナが職人に、吸血鬼も姿が映る鏡を作らせる話。作者の知的かつ怜悧な筆運びが冴え渡っている。

  •  おもしろかったです。吸血鬼にまつわる知識なんて、興味でもなければ全く知ることもなかったでしょう。ですから、吸血鬼にまつわる様々ないわれも知ることができた、ということがおもしろくて読んでいたようなものです。本作につけられた、SFという目印は、妥当なものだとおもいます。他のジャンルにされていたら、私は読むこともなかったでしょう。本書のおかげで、他の映画なり本なりをおもしろく思える機会が増えそうです。


     本書においても、ときどきちらほらと読み進めていたので、どの部分が気に入った文だったのか思い出すことができません。とりあえず、記録だけでもしておきます。

    p343  『教会が売春に目くじら立てる理由はさ、協会が律している肉欲に励んで簡単に報酬を得られたんじゃ、示しがつかないからだよ。快楽に見をゆだねてお金を稼げたんじゃ、みんな苦労してあくせく働く気が失せるだろ。』

    その前ページ 『教会が売春に目くじらたてるのはなんでだと思う?不道徳?そりゃ買春の方だろ。』

     たしか、鏡屋カジミールの章でも、気に入ったところがあったはずなのですが、思い出すことができません。それ以前の章ならなおさらです。


     本書を購入したきっかけは、mixi において著者の方の足跡があったことからです。リンクから本書のことを知って、amazon.com でも評判がよさそうだったので買うことにしました。

    2009.05.23. 23:40 机にて読了

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著者プロフィール

2007年に『黒十字サナトリウム』で第9回日本SF新人賞を受賞し、デビュー。2012年『カンパニュラの銀翼』で第2回アガサ・クリスティー賞を受賞。他の著作に『黒猫ギムナジウム』『コンチェルト・ダスト』などがある。

「2015年 『みがかヌかがみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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