- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198631895
作品紹介・あらすじ
蘆野原の郷は、古より、人に災いを為す様々の厄を祓うことが出来る能力を持つ者を輩出してきた。その若き長・和弥が娶った妻・優美子が、ある日猫になってしまい…。文明開化の移りゆく時代。変化しつつある時代の端境に使命を負った青年と幼馴染みの親友・泉水。彼らの未来は…。丹念な筆致で描く、叙情的幻想小説。
感想・レビュー・書評
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楚々とした若妻なのに、ある日突然猫になって玄関の上がり口にちょこんと座り
「にゃん」とご主人の和弥を迎える優美子さんが素敵です♪
彼女が猫に変身する時は、決まって
事を為す(災いとなる厄を祓う)使命を帯びた和弥の窮地を救うためなのだけれど
その変身が、災厄を予知し、「夫を助けなくては!」と意識してのことではなくて
夫を愛する余り、無意識のうちに行われてしまうといういじらしさ!
蘆野原の長筋として生まれながら、故郷を離れて生きることを選んだ和弥も
突然猫になった妻を見ても「そういうものか」と納得し
「事を為す」にあたっても、正式な道具を恭しく使うべきところを
そこらにあった茶碗や料理用の塩や割り箸で無造作に済ませてしまうあたりが
肩の力が抜けているというか、かなりゆるゆると自然体です。
黄土色の手漉きの和紙に、日本中に散らばる蘆野原の生き残りが
何か月もかけて順繰りに真名を記し、最後に長である和弥が名を記すことで
仲間の死を準備し、見送る「果無偲」(はかなし)の儀式など
今まで読んできた小路さん作品とは一風変わった風情にうっとりして
私も猫になって「にゃん」と大切な人をお迎えしてみたい♪
なんて思ってしまう、日本情緒豊かな物語でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
冒頭からいきなり「!?」となります。
なにせ主人公の妻が猫に姿を変えているのです。
物語の展開が読めないまま手探りで進むうち、すっかり独特の世界観にはまりこんでいるのでした。
古代より、蘆野原の出の者は人々の災いのもととなる厄を祓う力があるという。
主人公の和弥はその長筋の生まれであり、強い力を持っています。
現在は妻と二人で暮らしながら大学に勤めていますが、郷を離れた今でも和弥のもとにはさまざまな厄が持ち込まれます。
日々の暮らしとこの世ならぬモノたちとの境界がゆるりとしている様は、梨木香歩さんの『家守綺譚』(新潮社)の世界を彷彿とさせました。(本書のほうは"祓う"という立場ですが…)
特別な力がある、ということを知らない人が見たら、四季の移ろいとともに穏やかに日々を過ごしているように見える主人公たち。
まるで凪いだ水面を眺めているような感じがします。
水面下では常ならぬ水流が渦巻いているのですが。
厄の訪れを予感すると猫に姿を変える妻もすてき。
くつろいでいるときの仕草も愛らしいですが、猫の姿で厄に対峙し夫を助けるときの、すべてを見透かしたような立ち居振る舞いも、猫好きのツボにぐぐっとはまりました。 -
不思議な世界観。キライじゃないです。
小路先生の別な一面をみつけました。恩田さんの「常野~」や梨木さん「f植物園~」に雰囲気似てるような。
目に浮かぶ猫と和弥さんともう一匹の小猫のたたずまいが静かな音楽のように霧のように流れていて、なおかつ泉水氏のイキイキした笑顔や声も聞こえてきそうで。
心が錆びついた時には軋んだところに入り込むようなそんな優しさを感じる素敵な小説でした。 -
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この本を読むと、猫に変身して、家族が帰ってくるのを
玄関で「にゃん♪」とお迎えしたいなぁ、と思ってしまいますよね。
妻が猫に変身しても、慌...この本を読むと、猫に変身して、家族が帰ってくるのを
玄関で「にゃん♪」とお迎えしたいなぁ、と思ってしまいますよね。
妻が猫に変身しても、慌てふためいたりしないで受け入れてしまう和弥も
和弥を想う気持ちから、ピンチとなると無意識のうちに猫になって助けてしまう優美子も
揺るぎない愛を感じさせて素敵でした。
和弥が割り箸とかそこらへんのお皿とかを使って事を為してしまうあたりもとても良くて
気負わず、ゆるやかに生きている感じがとても好きな本です(*'-')フフ♪2013/04/13 -
☆まろんさん
わ、さすがまろんさん!読まれているのですね!
そうそう、奥さんが猫になっても「猫になったのか」ぐらいに
ゆったり構えていて可笑...☆まろんさん
わ、さすがまろんさん!読まれているのですね!
そうそう、奥さんが猫になっても「猫になったのか」ぐらいに
ゆったり構えていて可笑しいぐらいでした。
こんなふうになれる相手と出会いたいものです。笑
2013/04/18
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望郷の年にとらわれるような、こんな話好きだなぁ…。不変のものが形を少しずつかえながらも続いていくのって素敵だと思う。常野物語、百鬼夜行抄、ホリックの世界観好きにはたまらない。
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奥さんが急に猫になったら一大事だろうに、すんなり受け入れるところから始まる。
一つ一つのお話はとても短く、ひたすら淡々と物語が進んでいく。蟲師のように静かな雰囲気。ふわふわ不思議な世界を漂っているうちに終わってしまった感じ。?が多く、物足りなさもあるけど、それでいいのかも。
故郷があるのにそこへ帰れない、いつ帰れるかわからない思いが偲郷という言葉に詰まっている気がした。 -
「にゃんこ本100選」に載っていたので。著者の本は「東京バンドワゴン」シリーズ以外では初めて。
不思議な趣のある話で、目に見えないものを題材としている。
最初に何の断りもなく、読んでいくうちに読者が設定などを理解していくようになっているので、読み手により色々な解釈や想像ができる本だと思う。 -
とんでもない世界に連れ込まれてしまった
少ない情報で やんわりと奥深い異世界に引きずりこまれたという感じ
節目ごとに掲げられた言葉もセンス良く意味深
改めて表紙写真の猫をじっと見てみる
昔むかしこのような猫はいなくても こういう暗やみというか不思議を司る人が居たことは居た
この人の書く本は全部こういう感じ?
確認したくなった -
小路さんの小説は、嫌な人が出てこない
都合のいい展開だけれども
なんとなく人の良さで救われるのは変わらず
今回は幻想小説というだけあって
不思議な雰囲気も醸しだしていて
読んでいると違う世界に入り込んでいく感じ
恩田陸さんの常野物語シリーズや
梨木香歩さんの『家守奇譚』と似ている世界観で
小路さんは、多彩な作家さんなんだなと思いました -
大学で研究する和弥は、恩師の娘を嫁に貰った。ある日、帰宅すると妻が猫になっていた。実は和弥は、古き時代から妖(あやかし)に立ち向かう蘆野原(あしのはら)一族の若き長。幼馴染みで悪友の和泉と、猫になった娘とともに、文明開化の世に出没する数々の災厄を防いでいく。陰陽師や祓師のような力を持つ主人公と悪友との軽妙なやりとり、猫になったときの記憶がない美しい妻との叙情的な日常を、丹念な筆致で描く幻想小説。
ってそのまんま解説をコピーしちゃった。
こういう幻想的なお話大好きです。