あやかし草子 みやこのおはなし

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著者 : 千早茜
  • 徳間書店 (2011年8月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198632281

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あやかし草子 みやこのおはなしの感想・レビュー・書評

  • 『あやかし草子』 千早 茜  徳間書店

    これは文庫では無いので、
    まるで陽光に晒した茜色の和紙のような表紙で、「みやこのおはなし」
    と言う副題が付いています。

    人と、あやかしの不思議な交流を描いた六つの物語。
    こんなにも美しいあやかしの物語を初めて読んだ、と思いました。
    異界の物が潜む暗闇が、禍々しい物では無くて、美しい笛の音や、
    木々のざわめき、衣擦れの音が聞こえて来る様です。
    蛍がひかり、赤いぼんぼりが遠くに灯り、月の冷たい光が緑色に染まる様な、
    夢の中をたゆたう様な気持ちにさせられました。

    幼い頃、昔話や地域の伝説で聞いた話が、美酒に漬け込まれてえもいわれぬ
    香りを放ちながら、再び現れた様な錯覚を覚えました。

    読み終わって、あやかしも、人間も、何かに強く執着する時、その境界は
    危うくなるのだと感じました。
    「天つ姫」と「機尋」と言うお話が特に気に入りました。

  • あやかしが魅せる、人間の悲しく美しい姿。
    千早茜はささやかな心の変化を切り取って
    その心理描写を情景へ落とし込むのが本当にうまい。
    あやかしであれ、人であれ、
    誰かとつながりたいと思っている。

  • 人を狂わせる笛の音を奏でる一人の男。夜中に誰もいない朽ち果てた門の前で笛を吹いていると、そこに異形の鬼がやって来て・・・「鬼の笛」

    流れに背いた狐の死を見て、古ムジナは人を知ろうとし・・・「ムジナ和尚」

    この世でいちばん強いものに連れ去られようとした姫と、天狗の頭目・梁星の恋物語・・・「天つ姫」

    見たものしか彫れないと、龍神の住むという淵に向かった彫り師の男。そこで出会った美しい女の正体は・・・「真向きの龍」

    盗人集団に裏切られ、けがを負いつつ逃げる吉弥。彼を竹林に導いた女・・・「青竹に庵る」

    染屋の柳は紅と共に織屋の宮津屋に向かうが、そこには幼子が消えるといううわさがあり・・・「機尋」

    京都に伝わる民話・伝説をベースに、泉鏡花賞受賞作家が繊細な筆致で紡ぐ摩訶不思議な物語、とのこと。
    「鬼の笛」がちょーっと凡庸で、「あれ?これ千早さんらしくないなぁ」と思っていましたが、次の「ムジナ和尚」からはぐいぐい引き込まれました。
    あやかしと出会う者たちはみなどこか人界からはぐれそうな、そんなあやうい存在のものばかりで、彼らがあやかしと触れあい知っていく哀しみは素直に胸を打ちます。
    人の世は常にむなしく哀しい。
    あやかしたちは強く美しく、ある意味無邪気で、そんな彼らに惹かれるのも無理はないと思います。
    それでも彼らの手を振り切り、むなしく哀しいこの世に留まり、自らの生を生きようとする主人公たちの姿に思わず涙ぐんでしまいました。

    「奪うことしか知らなかった。飴なんて、くれなければよかったのに。そしたら、こんな気持ちを知らなくて済んだ。これから先も返せなかったものを抱えたままなのは辛い」
    「あの飴があんなに甘かったのは、外の世界が辛かったからなのか。おれは何も感じてないと思っていたのに」
    「ここに来るのはもう少し後にする。誰かにあの甘さを与えることができるまで」

    吉弥をこの世に引きとめた、たった一つの飴の優しさが、ほんのり胸に残りました。

  • 人とあやかしが混とんとしていた時代の、まさに御伽草紙。
    『ムジナ和尚』は、『まんが日本昔はなし』にしてもいいようなお話。

    ふと気づいたのだが、≪昔話≫は平安・室町を時代背景にしているものが多いように思った。
    何故だろうと思っていると、京都出身の友人が言った。

    「もののけは京(みやこ)にしかいないから」

  • まるで和綴じの説話を読んだような印象を受けた。一見地味な語りなので、人によってはいささか退屈してしまうかもしれないが、いずれも静かに寄せるさざ波の下で熱い願いがふつふつと泡立っているようで、個人的にはわりと好みの短編集だった。

  • 人と妖かしの関係に想いを巡らせる6つの短編集。
    幼い頃に観た「日本昔話」のような物語だった。

    特に「ムジナ和尚」「天つ姫」「真向きの龍」が切なくて泣ける。
    妖かしの目から見た人とはなんと強欲なことか。
    人は恐れたり憎んだり喜んだり悔しがったりと幾多の感情をさらけ出す生き物だ。
    そんな人を惑わす様々な妖かし達。
    妖かしの一匹(?)のセリフ「私は嘘はつきません。嘘をつくのは人だけです」に衝撃を受けた。
    そして人の流す涙に妖かし達は衝撃を受けたに違いない。

    切ない余韻の残るお伽噺だった。

  • 人と人ならざるものが触れ合うお話6篇。『鬼の笛』では『陰陽師』を連想し、『青竹に庵る』では『蟲師』を思い出した。どのお話においても人もあやかしも美しく切なくて、どんなに時代が変わっても変わらないものがあるのだなぁと。

  • 真向きの龍がよかった。

  • 美しい、心に染み通る良い短編集だった。たまたま手にとってみたけれど、大正解だったな。一つ一つの表現が本当に綺麗。
    なんだけど、たまに読みづらい箇所がポツポツあった。字数の問題かもしれない。「機尋」はもうちょっと長く読みたかった。柳のことももう少し知りたいし。
    人と人ならざるものの心の交流六編。そして人は、人の世界に飽いている者ばかり。でも、人の世をまだかすかに信じている者も何人か。それが少し救い。
    「鬼の笛」「真向きの龍」「機尋」は「何かを生み出すこと」を真摯に描いていてとても良い。
    どれも好きだけど「ムジナ和尚」と「天つ姫」が特に好き。
    ただ天つ姫で砂糖菓子がひょいと出てきたのが少しだけ気になった。何時代なのかな。牛若丸の後だから鎌倉室町?

  • 古き都の南、楼門の袂で男は笛を吹いていた。門は朽ち果て、誰も近づくものなどいなかった。ある日、いつものように笛を吹いていると、黒い大きな影が木立の中に立っていた。鬼だ。だが男は動じず、己を恐れない男に鬼はいつしか心を開き…(『鬼の笛』)。いにしえの都に伝わるあやかしたちを泉鏡花文学賞作家が紡ぐ最新作品集。

  • 2015.4.23 読了

    様々な妖(あやかし)の短編集。

    不思議な世界観。
    文体なのかな。
    嫌いじゃないです。

    妖の話とか 元々 嫌いじゃないし、
    漢字とかも あえて使ってる感じ(シャレじゃない)で、
    最初は 読みにくい部分もあったんだけど、
    だんだん たまらなくなってきた。

    最後の話は、少し切なかった。
    てか、どの話も ちょっと切ない。。。

  • 「あやかし草子」千早茜◆人間になりたい妖、妖に誘われる人間。彼らの境界は曖昧なのかもしれないけれど、ギリギリ詰まりきらない微妙な距離がもどかしいようなこれで良いような。人間の涙に心惹かれたムジナの「ムジナ和尚」と、色鮮やかな染物が溢れ出しそうな、白い座敷童の「機尋」が良かった。

  • 「むじな和尚」「天つ姫」など短編集。

    タヌキが和尚に化けた むじな和尚のある素朴な疑問。
    ある娘に父のように慕われ、あるキッカケから問いの答えを知るむじなの悲しみ。

    「天つ姫」は、とある姫と天狗の心のつながり。
    強き姫と強き天狗。あぁ。

    私は千早茜が描くあやかし話が大好きだ。
    おとぎ話に目が離せない子どもような純粋な気持ちになれる気がする。
    この短編集は人心のどす黒い部分が少なめ。そのぶん沁みる。

  • 異形のものの世界

  • あやかしとは、日本の妖怪やら怪異のこと。
    6編の短編は、鬼や天狗、竜などのあやかしと、人間とのはかない触れ合いを描いている。そのどれもが、哀しく切ない。
    西洋の童話をモチーフにした「おとぎのかけら」に比べると、毒もなく、しっとりと情緒豊かな仕上がりで、読後感もよい。

  • あやかしと人間の物語6篇。和ファンタジー。少し哀しくて切なくて、美しかった。独特な世界観、好きです。
    そして、千早さんは色を言葉で表現することが本当にお上手。どの話も色がはっきり見えてくるようで、これは他の作家さんの作品ではあまり感じないことです。

  • 昔の話の短編。案外すいすい読めてきもちのいい終わり方をしてくれる

  • 下と同じ作者。これもおもしろかった。
    「いにしえの都に伝わるあやかしたちを」描いた短編集。
    人間の哀しさ、強さがあやかしを通して伝わってくる感じ。あやかしもまた哀しいんだけども。

  • 千早さんの妖怪もの。
    この人の描く「孤独」がすごく上手いなぁ・・と思う。
    人と妖が関わって得るもの、知ること。
    これ読んだ後に、百鬼夜行図とか見ると面白いです。

  • あくさんの地獄変を読み返したくなった。

  • 好:「ムジナ和尚」「天つ姫」

  • 天つ姫、で意外にも涙が。
    どれも長い作品の一章のような質量。

    吉弥、と紅、が気になるなぁ。

  • 人とあやかしの間に紡がれる、残酷で悲しいけれど引き込まれる大人のための御伽噺たち。どれもが厳しい現世を描き、いわゆる昔話のように「かわいそうなひと」にたいして救いも用意されていなくて、容赦はないけれど、一筋どこか人にしかない温かみを携えていて、重いばかりではない独特の世界を作り出しています。冷酷さと人の情け、その両方を描くことでかえって血の通った人々の物語となっているように思います。またどの短編でも怪異やあやかしというモチーフをさりげなく素朴に、けれどとても魅力的に描いていて、巧さを感じました。

  • うすぐらい、境界線上のお話。

  • 大人のお伽話。
    冷たく鋭い。
    かなり好き。

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あやかし草子 みやこのおはなしの作品紹介

古き都の南、楼門の袂で男は笛を吹いていた。門は朽ち果て、誰も近づくものなどいなかった。ある日、いつものように笛を吹いていると、黒い大きな影が木立の中に立っていた。鬼だ。だが男は動じず、己を恐れない男に鬼はいつしか心を開き…(『鬼の笛』)。いにしえの都に伝わるあやかしたちを泉鏡花文学賞作家が紡ぐ最新作品集。

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