- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198633554
作品紹介・あらすじ
「ナルニア国物語」のライオン王アスランは、なぜあれほど、特別な感じがするのか。『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』が伝える、現代の人間とはまったく異なる生き方とは…。子どもの本の中だけでなく、古典や神話においても重要な役割をになっている、幻獣やさまざまな動物たち。「勾玉」三部作、「RDG」シリーズなどで知られる、日本のファンタジーの旗手荻原規子が、幼いころから愛した"動物物語"をふり返りつつ、ファンタジーとは何か、物語が人の心にもたらすものは何かを掘り下げてゆく、珠玉のエッセイ。ファンタジーや児童文学、神話や古典の読書案内としても楽しめます。
感想・レビュー・書評
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荻原さんの勾玉三部作にはまって以来、彼女のおすすめを道しるべに児童文学ファンタジーを読みあさってきました。
ほぼ外れなく面白く読めました。豊かな読書体験をされてきたんだなぁと羨ましく思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
こちらも以前読んだ気がするが、ほとんど忘れていて楽しく読んだ。
ウォーターシップダウンのウサギたちと、ダイアナ・ウィン・ジョーンズのグリフィン一家のホームドラマが気になる。 -
勾玉三部作で有名な荻原規子さんの、動物をテーマにしたエッセイ集。架空の動物だけでなく実在の動物、さらには動物の形をした人形も出てくる。ファンタジー、特に児童文学の紹介も多く、よみたい本をストックできた。
大人になった今でもファンタジーは大好きだが、子どもであった頃とは違う見方しかできなくなってしまっただろうと思う。勿体ないことだが、世界の広がりを知ることで得られる楽しみにもある。見えなくなっても、そこにいるだろうと思えることも、きっと楽しい。 -
荻原さんのファンタジーに見る動物や幻獣物語。可愛らしい装丁の中で綴られる文章は想像よりも本格的で、けれども動物たちへの想いが優しく何とも愛おしいエッセイ。ぽつぽつと語られる荻原さんの幼少時代のお話に惹き込まれ、その頃に出会った本や登場する動物たちが素晴らしい作品世界を創り上げたのだなぁと思うと感慨深くなります。ファンタジー読みでない私なのだけど、紹介される作品に生き続ける動物たちに会いたくなりました。あ、コロボックルは子供の頃大好きで本好きの私を作ってくれたであろうシリーズの一つ。ユニコーンが印象的。(2012年3月読了)
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ファンタジーに登場する動物や幻獣を取り上げながら、荻原規子さんが自身の読書体験を綴った本です。
『ナルニア国』シリーズや『ゲド戦記』といった王道ファンタジーから、『源氏物語』やコンラート・ローレンツ博士の『ソロモンの指環』など、さまざまな本が登場します。
特に、ファンタジーの深いところで脈々と息づく神話について語られているところが印象的でした。
また『山月記』のエピソードは、共感しながら読みました。
尊大な羞恥心と臆病な自尊心。
いずれ自分も李徴のように虎になってしまうのではないか。
高校時代に『山月記』に出会ってから、いつも私の心の中にある思いが、再び鮮やかに意識されました。
恥ずかしながら、まだ荻原さんのファンタジーを読んだことがないので、本書を機会に読んでみたいと思います。 -
ファンタジーや神話民話に登場する有名無名の動物たちを、章段ごとに作者の思い出を絡めながら語る一冊。
私は未だに、自分が幼少〜中高生時代にファンタジー含む日本・世界名作にあんまり触れてこなかった(専ら漫画と星新一)のがちょっとコンプレックスなのだが、
それでも「本に登場する動物」という存在には心ときめくものがある。
『大造じいさんとガン』の残雪とか名前ひっくるめてかっこよすぎる。
この本はその辺をいい感じにくすぐってくる良書であった。
椋鳩十は取り挙げられてないし、鳥で出てくるのは白鳥くらいだけど。
以下、特に響いた箇所を引用。
「私の一番の財産は、結局これしかないと思うのだ。子ども時代に、子どもの感性で児童文学を読んだこと。そして今でもおぼえていること。」
(p.108)
「デフォルメした動物キャラクターを動かすことは、動物をよく観察して忠実に写すこととは別の範疇にある。観察するべきは、私たちの内面、私たちの神話のありかなのだろう。動物が語る言葉は、動物の持つ言葉ではなく、人間から抽出された、人間が持つよりもピュアな何かなのだろう。
そんなふうに人間から外部に抽出されてしまったものは、ほとんど『神』とも呼べるものではないだろうか。」
(p.155)
「私は、J・R・R・トールキンやC・S・ルイス以後に文学ジャンルとなったファンタジーとは、この系統であり、太古の語り物の末裔なので、近代からの意味で言われる「小説(ノヴェル)」と同列ではないと思う。
子どもだましと見下げるのはまちがいだが、小説と同じ手法の文学論で論じるのもまちがいだ。同じものさしで測るから、小説仕立ての奥に持つ真価にうまく手が届かず、ファンタジーの優劣に的を射た批評が生まれないのだ。」
(p.213) -
荻原さんがどんなふうに育ち、何を考えてきたのか、その一部が垣間見えるエッセイ。
ここから勾玉三部作や現代ファンタジー作品ができあがっていったんだなあ。 -
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古典や神話において、重要な役割を担う空想上の生き物や言葉を話す動物たち。動物物語を通して、ファンタジーとは何かを考察しながら、読書案内としても楽しめるエッセイ。
著者は子供のころの自分は、想像力が豊かだったとは言えないと書いているが、私も意外と冷めていたように思う。実際物心ついたころから、テレビに映るアニメやヒーローが実際にいるとは思ったことが無いし、芸能人さえテレビの中の存在で実在しないと思っていたぐらいだし。でも想像力はないくせに空想するのは大好きだったので、よく本を読んではその世界に浸るのが好きだった。残念ながら読んでいたはずなのに、子供のころ好きだった本としての記憶はないけど。
考察としてファンタジーが古典や神話と結び付いているというのはよくわかる。その辺りから題材を取りやすいし、土壌がしっかりしていてすんなりと受け入れやすいからだろう。でも優れたファンタジーはそういうもので、シャボン玉じみた空想話との差がそこだというのは引っかかりを感じた。本は優劣じゃなく面白いかどうかだ。それも個人の好みによるところが大きいだろうし。
余談だけど、『ネズミ』の項で著者が上げたのが『アルジャーノン』だった。私は『ガンバ』だけど、何より『アルジャーノンに花束を』はSFだったのか!そう思って読んでなかったのでびっくり。 -
ファンタジーに見る動物たち、といいつつ、児童文学作品の書評のような感じ。『ナルニア国物語』『ウォータシップ・ダウンのうさぎたち』など、荻原さんが感銘を受けた作品について書かれているのだが、その内容にかなり詳しく言及しているので、未読で内容を知りたくない人はご注意を。
『空色勾玉』『RDG』などを生み出した荻原さんの好きな作品やその作品に対する思いが熱く綴られていて、荻原作品ファンには嬉しい一冊。