- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198634568
感想・レビュー・書評
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飛田のことを何も知らずに読んだから、大阪にこんなところがあるのか、と驚いた。どこの世界も厳しいなあ。
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今に生きる赤線地帯、遊郭の風情と隠微さを醸す歓楽の秘境・飛田新地。本書は第三者によるルポルタージュではなく飛田の「住人」である筆者がその内部事情を赤裸々につづった貴重な記録でございます。
飛田―僕がこの界隈のことを知ったきっかけは作家、黒岩重吾の小説がきっかけでした。株で失敗し、原因不明の奇病に全身を冒され、西成で息を潜めるようにして生きていたころに飛田に勤める「おねいちゃん」たちと交流があったのだそうです。
本書は「遊郭」を10年経営し、現在はスカウトマンとして「飛田に生きる」住人が書いた「裡側」の赤裸々なまでの記録です。以前、ここでも紹介した「さいごの色街・飛田」では遊郭を経営する親方のことを『仁・義・礼・智・信・忠・孝・悌の八徳を失った者、また、それらを忘れさせるほどおもしろい所』の意である『亡八』というまことにショッキングな言葉で揶揄されている、という箇所を思い出し、これは当事者が書いた手記なんだということを改めて思い出しました。
筆者は高校時代の柔道部の先輩であり、再開したときは裏の『住人』になっているであろう『村田さん』から飛田での遊郭経営の話を持ち込まれます。ある程度考えた後、『いかがわしい場所とか言われるけど、そういう場所で人間の道極めるのもオモロイで』という言葉が後押しとなって、筆者は「実地検分」の後、料亭を持つことに踏み切ります。ただ、そのときの不動産屋の主人が言った
「店の女の子には、気いつけていな。女の子しゃべりおるから」
ということを後年筆者はイヤというほど思い知らされるのです。
飛田のシステムはかつて赤線、青線というものがなくなって、大阪の遊郭は、東京がソープという形態で残ったのに対し、料亭での仲居との自由恋愛という形で残ったのだそうです。たとえば15分のちょんの間(意味はご察しください)は11000円。取り分はおばちゃん1000円、女の子5000円、店(親方・マスター)5000円が相場で、時間によって変動するというのは言うまでもありません。
念願かなって店を持つことになるも、筆者は女性の持つ『業』というものにとことん振り回されるようになります。たとえば、店の売り上げは「オバちゃん」(あるいは『遣り手婆』)しだいだというのだそうですが、いい「オバちゃん」につけばいいのですが、悪い『オバちゃん』が入ると、売り上げを盗まれたり、気に食わない『女の子』をいじめたり、少しでも店の経営が傾いたりすると彼女たちの『ネットワーク』を利用してさっさと別な店に移るんだそうです。この「むきだし」感に、まずは衝撃を受け、店に来る女の子がさまざまな「事情」をもって「苦界」である飛田に飛び込み、あるものは目標だった額のお金をためて飛田を去り、あるものは飛田の持つ「魔力」からそこから離れられなくなり、とことんまで「堕ちて」行ってしまう…。人間の持つ「性」という根源的なものを「商品」として売買している現場に立っていた人間だからこその視点に衝撃をさらに受けてしまいました。
ここにつづられているミもフタもないやり取りは虚飾を排した人間の生々しい姿です。そこには金があり、それを掴むものもいればそれによって堕落してしまうものもいる…。いつの時代も変わらない「真実」があるような気がいたしました。現在、筆者は料亭をたたみ、そのときに培った経験を生かして「スカウトマン」として現在も飛田界隈の「住人」として活躍しているのだそうです。妖しい魅力を今でも放ち続ける「さいごの色街」飛田。本書はそこに生きる人間の貴重な証言であり、また記録であると思います。 -
読みかけで忘れていたので一気読み。
飛田新地で親方をしていた方の暴露本。
飛田遊郭の内情を語ることはタブーということもあり貴重な証言だと思います。
具体的なエピソードを交えて飛田の内情が語られますが、正直内容は薄いですね…。
飛田を必要悪と言うのもナンセンスな気がしますが、飛田が無ければ生きられない人は確かにいるんだろうと考えさせられました。 -
読み物として面白い。
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サラリーマンから飛田の遊郭経営者になった人の体験記。開業のきっかけ、開店資金の必要額や開店手続きの苦労、実際に経営する上でのリスクとリターンなどを一通り書き綴っているが『体験記』以上のものではない。
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「人間の道極めるのもオモロイで」から始まった飛田での親方業。今までベールに包まれてたことが,この本で明らかにされている。最後はちょっとええ話やん,と思ってしまうエピソードもあり,面白い一冊でした。
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一読の価値あり。飛田以外の新地の存在を知れたのがよかった。