デフレ救国論 ~本当は怖ろしいアベノミクスの正体~ (徳間ポケット)

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  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198635602

作品紹介・あらすじ

強引に推進しようとしている「インフレ誘導」というお題目は、日本を危機に陥れる恐怖の政策だ!真実を見抜く目を養って、冷静に今を乗りきるための緊急提言。

感想・レビュー・書評

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  • 本格的なアベノミクス以前に書かれたものだが、今となっては結構当たっていることが多く感心した。企業業績の回復はアベノミクスより前から始まっているトレンドだし、こんなにジャブジャブお金を刷っても一向にデフレは解消しないし、良くも悪くもアベノミクスが機能していないのは、こういう背景があったのかと納得した。
    LGが三星の関連会社だとかデタラメなことも多くてイマイチ信用ができかねるのだが、債権国日本の庶民にはデフレの方が都合が良いとの理屈は理解できた。

  • 「デフレこそが、諸悪の根源」「アベノミクス肯定」が主流となるなか、現在流布されている主張にことごとく反論していき、デフレによる救国を示す書。なるほどと思える論理構成もあるが、強引な手法も随所に見られ、どちらにころぶのか、果たしてアベノミクスの今後、あるいは現実の経済がどうなっていくのか、興味津々というより、とても心配になってくる。

  • 昨年(2012)末の総選挙で安倍氏率いる自民党が政権に復活してから、円安・日本株高と、一見すると好況になったようですね。民主党政権の失敗(?)に3年間もつき合わされた私たちは、この状況を好ましく思っているように思います。

    ところが、震災後には「原発ゼロ」という動きがあったものの、いつのまにか方針が変わっているし、先日オバマ大統領と会談した安倍氏は、事実上、TPP参加も決めてしまったようです。このままでは消費税も上がることになりそうですし、本当にこの流れに乗ってしまってよいのでしょうか。

    そんな私に明確な回答を示してくれたのが、増田氏の書かれた最新のこの本でした。この本では今までの日本経済の特徴であった「円高・デフレ」が殆どの人に幸せをもたらすと断言されています。

    社会人になってずっと円高の時代でしたが、今後は変化していくのでしょうか、日本が動き出しそうなこの年にふさわしい本を読ませていただきました。

    最後の部分(p246)に書かれていたことですが、アップルが失速すると世界経済を脅かすという記述は、肝に銘じておこうと思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・デフレだからこそ日本経済は強い、デフレと円高を享受して、私たち一般国民が世界のどこよりも豊かで、高水準な生活を獲得してきた(p13)

    ・フランス革命の時代に一番変わったのは、社会制度や階級身分ではなく、モノの考え方であった、カトリックを従順に信じていたが、革命政府が、カトリックは野蛮な宗教であると宣言した(p36)

    ・中国文明の3大特徴は、科挙・宦官・纏足であり、これらは見事にプラグマティズムの失敗例を提供してくれた(p45)

    ・科挙の一番悪いところは、子孫に伝承できないので、自分一代で稼げるだけ稼ごうとしたこと(p48)

    ・インフレの世の中は、「お金を借りた」人間にとって有利な世の中、デフレは、「お金を貸した=銀行預金をする」人間にとって有利な世の中、貸すときは必ず契約時の貨幣価値で契約するから、3%インフレだと、23年で返す負担は半分になる(p53、63)

    ・デフレは不況と同一ではない、1873-1895年まで長期間にわたって、賃金が下がる・物価も下がる、というデフレが続いたが、不況にはなっていない、アメリカでは鉄道建設が盛んになり、小麦・とうもろこし・石炭・鉄鋼生産が急成長した(p65)

    ・1930年代の不況は、GMが極端な生産削減をしたために投資額が激減したことにある、FEDが金融引き締めをしたのは31年あたりでその後(p69)

    ・アメリカは不況を回避するには、市場で価格支配力をふるえるような企業の成立を許さない、独禁法、公正取引法を適用すべきであった(p73)

    ・インフレ政策をしている国のほうが、労働人口(特に若年)の失業率が高い(p85)

    ・日本の場合、男性は15-24歳グループは5年後に、非正規から正規に変わっているが、女性のほうは 40%近くが非正規の状態にある、これはデフレが原因ではなく、日本の労働市場における男女差別が原因(p93)

    ・日本が貿易黒字を続けられたのは、同じ値段ならいいモノ、同じ品質なら安いモノを作り続ける技術開発ができていたから(p95)

    ・円安は、自社製品の安売り以外には方法がない輸出企業を助けることになる(p96)

    ・日本の2007-2011年のGDP増加の絶対額(ドル換算)は、中国に次いで世界二位で、アメリカ(3位)、ブラジル(4位)よりも大きい、世界GDPの15%を日本が達成(p109,111)

    ・中央銀行が制御できるのは発行量のみ、流通速度は制御不能なのでインフレを起こす力は無い、1年間に2回転すればGDPは2倍になる(p118,120)

    ・設備投資とは儲けの中から行うのではなく、初めからコストに入っている、設備投資をしたあとに残るのが企業の利益(p136)

    ・戦争時に赤字財政を行っても問題がない最大の理由は、終わったら自国へ戻ってきた兵士によって生産性が高まるのが確実視されるから、但し平時に積み上げた負債は解消しない(p148,153)

    ・中国の国有企業は株の流通制限をしているので価格がつく、自由化すると値下がりする恐れあり(p162)

    ・アメリカでは2005年以降、企業売上は5000億ドルしか上がっていないのに、利益が8000億ドルも増えたことにある、これは労働者の報酬が削られていることを示す(p206)

    ・高福祉のスウェーデンやフィンランドでは、強姦事件や銃による大量殺人はよく起きている(p213)

    ・AKB48は、生の露出度が他と比べて高い、時間つなぎのための凡庸な曲を集めたCD販売の商売は通用しなくなった(p221)

    ・インフレ期とは、すでに名の通った人達が巨大な利益を得るためには適しているが、新しいモノを生み出す環境ではない(p224)

    ・日本企業は、誰がどう考えても安い場所で行った方が有利な最終消費財の組み立て部分を捨てて、資本財や中間財の生産に特化(合計8割)する発想を強めている(p226)

    ・日本の労働生産性は欧米比較で低いというのは、サービス業を含めたもの(p229)

    ・イギリスポンドは、戦後から日本円比較で10分の1程度に下がっているが、イギリスの製造業はロールス・ロイスを除いて壊滅(p231)

    ・最後の1滴までお湯を切る湯切り口が採用されたので、塩味等の淡泊味付けも可能となった、冷蔵庫の製氷器のプラスチック化により、水をタンクに入れるのみで製氷可能となった(p252)

    2013年3月3日作成

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著者プロフィール

1949年東京都生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修了後、ジョンズ・ホプキンス大学大学院で歴史学・経済学の修士号取得、博士課程単位修得退学。ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授を経て帰国。HSBC証券、JPモルガン等の外資系証券会社で建設・住宅・不動産担当アナリストなどを務めたのち、著述業に専念。経済アナリスト・文明評論家。主著に『クルマ社会・七つの大罪』、『奇跡の日本史――花づな列島の恵みを言祝ぐ』、(ともにPHP研究所)、『デフレ救国論――本当は恐ろしいアベノミクスの正体』、『戦争とインフレが終わり激変する世界経済と日本』(ともに徳間書店)、『投資はするな! なぜ2027年まで大不況は続くのか』、『日本経済2020 恐怖の三重底から日本は異次元急上昇』、『新型コロナウイルスは世界をどう変えたか』(3冊ともビジネス社)、『米中貿易戦争 アメリカの真の狙いは日本』(コスミック出版)などがある。

「2021年 『日本人が知らないトランプ後の世界を本当に動かす人たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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