図書館に児童室ができた日: アン・キャロル・ムーアのものがたり (児童書)

  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (40ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198636579

作品紹介・あらすじ

19世紀終わりのアメリカ合衆国。女性が自分の考えで仕事を選ぶことが珍しかった時代、小さな町に生まれ育ったアン・キャロル・ムーアは、自分の考えをしっかり持った女の子でした。やがて、ニューヨークで図書館学を学び、図書館に勤めると、ニューヨーク公共図書館の児童室の創設にかかわり、図書館児童サービスの先駆者のひとりとなります。ひとりの女性の生き方としても興味深いムーアの生涯を通して、図書館児童サービスの歴史を紹介する絵本。

感想・レビュー・書評

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  • 児童図書館サービスの先駆者である、アメリカのアン・キャロル・ムーアの伝記絵本。
    図書館で読んで、はからずも涙が流れた。
    借りて帰り、再読してまた涙。
    未来を担う子どもたちの魂が強く賢くあるようにと願い、上質の美しい作品に出会えるよう率先して行動した先人たち。
    高い志を掲げて捧げた人生に、頭を垂れる思いだ。

    女の子は「女の子」としてしか生きられず、図書館は一部の大人のものだった時代。
    子どもが図書館に入るのさえ難しかった頃の話だ。
    アンは子どもたちに図書館の約束をさせる。
    「わたしは、ここに、自分の名をしるし、ちかいます。家でも、図書館でも、本をたいせつにあつかい、図書館のきまりをまもります」
    そしてノートに名前を書き、小さくて字が書けない子は◎や△など好きなしるしを書いてから利用したという。
    1911年春、ニューヨーク公共図書館に初めて児童室が出来た日。それはアンの夢が叶った日だ。アンはまた、人種や貧富の差を超え、全ての子どもたちに同じチャンスを差し出した。

    『子どもの図書館』の著者である石井桃子さんは、留学中にアン・キャロル・ムーアに会い、帰国後「かつら文庫」を開いた際、子どもたちは同じ約束をして文庫を利用している。
    それがやがて私立東京子ども図書館への底力になったかと思うと、感無量だ。

    和訳された張替恵子さんは、その東京子ども図書館の常務理事さん。
    後書きまで、アンへの感謝にあふれている。

    前述した「走る図書館」も「児童室」も、決して最初からあったものではない。
    先人たちの大変な努力の上にやっと実現したことだ。
    私たちは山ほどその恩恵に授かっているのだから、せめて先人たちの努力を無駄にしたくない。それには何が出来るかと、そんなことを考え続けている。

    児童書の体をなしてはいるが、すべての図書館好きにおすすめ。
    そして、良書を紹介してくださったブク友さんには心からの感謝を。

    • ロニコさん
      nejidonさんこんにちは

      先日は「シャエの王女」の感想にコメントをいただき、ありがとうございました^_^
      自分のコメント欄に返信してし...
      nejidonさんこんにちは

      先日は「シャエの王女」の感想にコメントをいただき、ありがとうございました^_^
      自分のコメント欄に返信してしまいまして、nejidonさんのコメント欄に返信するべきでしたね、反省しておりますm(_ _)m

      さて、今回も図書館にまつわる素敵な本を教えて下さり、ありがとうございます。
      自分で調べてもなかなかなので、本当にありがたいです。図書館にあれば予約したいと思います!

      当たり前のように利用している図書館ですが、「夢見る帝国図書館」を読んだ時も、先人達の多大な努力の結晶なのだな…とつくづく感じました。
      2020/02/26
    • nejidonさん
      ロニコさん、こんばんは(^^♪
      ようこそいらっしゃいました!コメントもありがとうございます!
      「シャエの王女」のレビューの感激が、まだ残...
      ロニコさん、こんばんは(^^♪
      ようこそいらっしゃいました!コメントもありがとうございます!
      「シャエの王女」のレビューの感激が、まだ残っております・笑
      そしてコメントへのお返事は、特に決まりもないのでどちらでも良いかと思います。
      現に私も、今自分のコメント欄に載せておりますし(^^;
      確かにお相手の方にお返事した方が、すぐ見つけられますけどね。
      ロニコさんが当本棚のこの本をクリックして、お返事を見つけてくださいますように。

      そしてこの本を読みたいと思って下さって、本当に嬉しいです。
      こういった先人のおかげで、子供の頃から図書館に親しんでこれたんですよね。
      どうか首尾よく入手されますよう、お祈りしています。




      2020/02/26
    • ロニコさん
      nejidonさんおはようございます

      コメントをありがとうございます。
      また、コメント欄のアドバイスもありがとうございました(^-^)

      ...
      nejidonさんおはようございます

      コメントをありがとうございます。
      また、コメント欄のアドバイスもありがとうございました(^-^)

      こちらの本、図書館にありましたので、早速予約しました。また読み終えましたら、感想を書きたいと思います。
      2020/02/27
  • この本も、フォローしている方の感想を読んで図書館で早速予約。

    現在、近くの公共図書館は、新型コロナウィルスのために閲覧が出来なくなっており、予約の本の受け取りと返却のみの対応になっている。こんな状況は初めてで、行ってみて愕然とした。

    さて、本書は、アン・キャロル・ムーアという女性が、19世紀の終わりから20世紀初頭にかけて、ニューヨークの図書館に児童のための本の配架やイベントを推進していった史実が、素朴なタッチの絵と共に語られている。

    アンは、その当時の大半の女性たちの生き方とは違う、自立した一人の女性としての生き方を選んだ。絵本には書かれていないけれど、平坦な道のりではなかったはずだ。
    巻末には、アンの足跡と、図書館に児童のための場所を作るために腐心した他の女性についても書かれている。
    このアンは実在の人物なのだが、読んでいて時代も重なる「ダーウィンと出会った夏」の主人公キャルパーニアを思い出した。少女時代のエピソードも似ている。

    子どもたちが小さかった頃、図書館へ行く度に、当たり前のように抱えきれないほどの本を借りていたが、100年ほど前の人々の思いと努力の積み重ねによって与えられた恩恵なのだ、と改めて噛みしめた。2020.3.8

  • アメリカの図書館における児童サービスに尽力した一人、アン・キャロル・ムーアの伝記絵本です。
    図書館学科を卒業し、当時では珍しい女性司書としてニューヨークで働くことになります。
    この頃の図書館に児童サービスは無いに等しく、女性同様に子供にも図書を提供していないことが多かったのです。
    そんな中で数々の既存図書館を訪れて、児童サービスの改善に取り組んでいきます。
    そして1911年春、新しくニューヨーク公共図書館が完成します。
    そこには大きな児童室があり、読書会、コンサート、お話会等が催されました。
    アメリカの児童サービスの波は、日本の図書館界にも影響を及ぼしました。
    女性や子供にも図書は必要、そんな当たり前を当たり前にしてくれた人々を知ることができる一冊。

  • 大人が読んでも心にグッとくる良書。「自分の考えをしっかり持った女の子」というフレーズが心に響く。子供によっては興味を持ちづらいかもしれないが、図書館が身近な子であれば感じるものがありそう。うちの息子達(小3、年長)がすごく集中して聞いていて、珍しくもう一度本を開いて各々気になったページをめくったり、わからなかったところを質問したりしていた。

  • [江戸川区図書館]

    伝記特集で集められていた一冊。表題からもすぐに内容は理解出来たけれど、図書館を作ったとか、学校教育を広げたとか、それらに近しいようで「図書館の中に児童室を作る」というのは、やや一線を画するはず。例えば図書館なら識字率とか教育水準の促進とかの面、学校なら文部省的な子供目線の面、それらに近いようでも児童室というのはきっと厚生省的な、女性・子供保護の目線??それともマザーテレサやナイチンゲール的な万人に対する慈愛的な面から達成した偉業?

    細かな困難や彼女の人生の道筋はともかく、恐らく勘違いしていないだろう偉業が、どの角度から発生というか達成されたのだろうという興味をもって開いてみた。

    少し長めな感じだけれど、子供の読み聞かせにも使えるかもな。

  • >19世紀終わりのアメリカで小さな町に生まれ育ったアン・キャロル・ムーアは、自分の考えをしっかり持った女の子でした。
    やがて、ニューヨークで学び、児童図書館サービスの先駆者のひとりとなります。
    ひとりの女性の生き方としても興味深いムーアの生涯を通して、図書館児童室の歴史を語る絵本。

    アン・キャロル・ムーアさん、初めて知りました。

    ニューヨーク公共図書館や東京子ども図書館に行ってみたい気持ちがむくむく。
    今のように無料化されていなかったり、子どもや女の子は図書館に入れなかった時代を経て、アン・キャロル・ムーアさんはじめ、多くの方の力で今の図書館になっているんだと感慨深く読みました。

    去年通信教育で念願の司書資格を取ることができたので、いつか生かせるように楽しみながら学び続けたいと思います。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「いつか生かせるように」
      拍手!
      「いつか生かせるように」
      拍手!
      2014/05/10
    • はぴさん
      >猫丸さん

      コメントありがとうございます^^
      実現できるよう頑張ります。
      >猫丸さん

      コメントありがとうございます^^
      実現できるよう頑張ります。
      2014/05/11
  • どこかで目にして読んでみたくなり、図書館で借りた。

    1870年ごろ、アメリカに、アン・キャロル・ムーアという女の子が いました。
    アンは、おとうさんに ものがたりや詩を よんでもらうのも、じぶんで ざっしを よむのも すきでした。
    でも、むかしは、子どもは図書館のなかに いれてもらえなかったのです。
    そこでアンは、図書館のべんきょうをして、大人になってから、子どもだけのための「児童室」で はたらくことにしました!

    興味深いおはなしでした。
    伝記絵本なので小学生以上向け、自分で読むのは三年生からという感じでした。
    時代がこういう女性をうんだのでしょうか。
    人脈がすごいです。
    マーシャ・ブラウンとニューヨーク公共図書館で働いていたそうだし、ほかにも名だたる有名人たちと同時代を共に生きていたなんて。
    あとがき「アン・キャロル・ムーアについて」によれば、当時、アメリカ各地で、女性図書館員たちが児童サービスの基礎をきずいたそうです。
    絵本の中の児童室は夢のよう。
    子どもたちのための本はもちろん、当時から「わくわくする もよおし」があったって。
    図書館って本を借りる・読むだけではなく、広い意味での教育・文化施設なんですよね。
    さすが、いいなぁ、と思います。
    個人的には、色々と自分なりに見極めて、着実に歩を進めていこうと思い直しました。

  • 図書館に行くと児童室があるのは当たり前。
    カーペットや小さな椅子、低い書架
    幼い子供たちが自由に取り出して眺めている

    そんな光景は百年前には想像もできなかったのです。

    生涯を通して子どものための場所と良書を届けたいと
    奮闘してきたアメリカの女性の物語

    カーペットに座り込み絵本に夢中になっている
    この子たちを見られたらどんなにか喜ばれることでしょう

    やさしい絵本です

    ≪ どの子にも 開かれてるよ 児童室 ≫

  • 本が、図書館が、大好きと言いながら…
    恥ずかしながらアンさんの事を存じ上げなかった。
    このお方と、たくさんの方々の努力のおかげで、読みたい本が小さい時から読めていたんだなぁっと知って、心の底から感謝した。アンさんが生きておられた時代的に子供たちに本を読む環境を整える事は本当に大変なことがたくさんあっただろうに…
    アンさん、感謝で感謝でいっぱいです!!!!
    ありがとうございますっ!!

  • こどものための図書室を、というアンの強い思いに共感しちゃった。わたしも、彼女に続くべく、子どもたちと本をつなぐ図書室作りをしたいなぁ。

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著者プロフィール

アメリカ合衆国テキサス州出身の作家、編集者。ブリガムヤング大学修士課程修了後、雑誌の編集にたずさわる。やがてフリーランスのライターとして活躍。本書がはじめての子どもの本。

「2013年 『図書館に児童室ができた日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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