- Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198638221
作品紹介・あらすじ
時は鎌倉時代末期。足利家の家宰・高師直は、幕府より後醍醐帝追討の命を受け上洛の途に就く。しかし師直は思う。「これは主人である尊氏に天下を取らせる好機だ」。帝方に寝返った足利軍の活躍により、鎌倉幕府は崩壊。建武の新政を開始した後醍醐帝だったが、次第に尊氏の存在に危機感を覚え、追討せよとの命を下す。だが師直はすでにその先に野望の火を灯していた。婆娑羅者・高師直の苛烈な生き様を伊東潤が描いた南北朝ピカレスク、開演!
感想・レビュー・書評
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鎌倉幕府の滅亡から室町幕府の成立にかけては、太平記を読んでから個人的に一番好きな時代。
実像はどうあれ、色々黒い逸話の多い高師直の栄枯盛衰は、まさにこの時代を表している。
しかし女性の存在から、人生の歯車が徐々に狂い始めるのは、いつの時代も変わらないな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
足利尊氏の家宰であり曲者の高師直。高師直に焦点をあて、その計り知れない野心、謀略をよく描いている。
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実力主義で、野望にもえる高師直をえがく、時代小説。
室町幕府のはじまりが、これほど不安定で、一進一退の状況だったのか、と。
大将らしからぬ気の弱さをもった、足利尊氏。
躁鬱を行き来する尊氏を、師直がおだてては、うまく動かしていく。
ふたりのやりとりがコミカルでたのしい。
敵対する楠木正成も存在感がある。
師直の鋭さがにぶっていく後半は、ややテンポが落ちる。 -
高師直一代記。
タイトルからすると、本当の主人公は野望っていう実体のない思念で、それが憑依した人間の生き様と末路のお話。
乱世には、野望に憑依されたような人間はたくさんでてくるもので、野望という思念からすれば、楽しくて仕方ないのでしょうね。まさに人がゴミのようだ、でしょう。
しかし、足利尊氏のみっともなさときたら。ただ、時代の主に担ぎ上げるだけの材料がそろっていたからこそ、歴史に残った人物。そういう低評価になるよね、高師直一代記を読むと。よくもまあ。将軍になれたもんです。 -
15代続いた室町幕府。終盤のごたごたを考えれば、同じ15代の徳川幕府と比べるのは失礼かもしれないが、時代背景か暗殺色の強い時代の統治者だったともう。室町幕府のもし?を考えたらやはり面白いのは初代のような気がする。
「野望の憑依者」
やはり伊東潤先生の想像力と話のテンポは面白い。息をつく間もなくの表現しかできないが次から次へと続く展開は読んでる側を舞台に引きずり出すような感がある。常にだれかの尻馬に乗り、さらには弟の直義に家臣の高師直に尻を叩かれつつ、頂点に乗ったような感のある足利尊氏。
本作はそんな弱弱しい尊氏の側にいて敵は次々と撃破していく高師直にスポットを当てた作品です。もともと大筋は掴んでいたのですが、この時代の難題を次から次へと処理していくカリスマ性に能力はもし一部将として存在していたのなら源氏の嫡流などという名門嫌いの傾奇者たちが味方に付いたんじゃないでしょうか。
多くの身内に家臣を殺した尊氏の室町幕府とは師直が作り、そして師直の不遇が暗殺の歴史を繰り返したのではないでしょうか。 -
南北朝時代や『太平記』の内容を知らなくても楽しめる。この時代の武士は、戦国期の武士とは異なっていて予測がつかない。動員される兵の数も、現地調達というか自然発生的というか、状況次第でどちらにも転ぶ日和見ばかりで計算が立たないし、京に攻め込み敵を蹴散らしたのにそこを死守せず兵を退いてしまうのも不思議。何より面白いのが、足利尊氏の極端な躁鬱ぶりで、傍らにいる高師直が何度も「もうダメだ」と天を仰ぐほど。頭を抱えた殿をなだめすかして叱咤するのだが一向ダメで、諦めかけたとき「おのれー」と立ち上がる様は腹がよじれる。
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高師直。足利尊氏の右腕として、主に軍事面で活躍するが、尊氏の弟直義と対立し、斬首される。
鎌倉時代と室町時代の間で、世間一般ではなじみの薄い南北朝時代。2人の天皇が並び立ち、その間を多くの武士たちが裏切りを繰り返す、ややこしい時代だ。しかし、著者は高師直のみにスポットライトを当てて、南北朝時代をシンプルに描くことに成功している。
小説の冒頭で師直が命乞いをする盗賊を斬る場面が見事なツカミ。生きることとは野心を持つこと、という師直の強烈なキャラクターが明示される。
そこからは、師直の軍師才能全開。鬱病っぽい尊氏を操縦し、頑固な直義と妥協し合い、敵対する楠木父子や新田義貞らを倒す。時々、女もつまみ食い。こうして、師直は尊氏を武家社会のトップへおし上げることに邁進する。師直に見えるのは力だけ、天皇や公家も役に立たなければただの人だ。
高師直はピンチをチャンスに変える野心の男だ。そして、彼が野心を失うことは、彼の破滅を意味する。 -
鎌倉末期から室町まで、学校で習ってもあまり記憶にない時代。
自ら表に立って野望に燃える者と、それをあくまで陰から、後ろから支え、実際に動かしていく者と。歴史はいつもそうやって動かされていくのだろうね。
この時代、本当はすごく面白いんだと思うんだけどあまり人気がないのはなんでだろう。 -
高師直の果てない野心の行く末。淡々と状況が推移していく場面もあるが、太平記の時代の流れが把握できて面白かった。
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「高師直」降臨。
北方太平記(佐々木道誉、赤松円心、北畠顕家、楠正成)と合わせて読みたいですね。
太平記ものに外れなしです。
尊氏が馬鹿に見えるようにしたんだろうけど、それはどうかな?