化石少女 (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
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感想 : 73
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198638788

作品紹介・あらすじ

学園の一角に建つ壁には日暮れると生徒たちの影が映った。そしてある宵、壁は映し出した、恐ろしい場面を……。京の名門高校に次々起こる凶悪事件。古生物部の部長にして化石オタクのまりあが、たった一人の男子部員をお供に繰り出す、奇天烈な推理の数々とは?

感想・レビュー・書評

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  • 化石オタクの女子高生と振り回される後輩くん、おかしな凸凹コンビが学園の殺人事件に挑む! #化石少女

    ■あらすじ
    私立ペルム学園の古生物部の部長、化石オタクの神舞まりあと後輩である桑島彰。学内の生徒会勢力と、様々な事件に巻き込まれてしまう連作短編ミステリー。

    ■きっと読みたくなるレビュー
    さすがベテラン先生です。
    化石をテーマにしつつ、ラノベ風の学園ミステリーを書かせてもお上手。面白かったです。謎解きミステリーというより、エンタメの魅力がたっぷり詰まった作品でした。

    一番の読みどころはやはり、ホームズ&ワトソン役である主人公、まりあと彰の二人の会話。ライトな会話や関係性の中にも、気の利いた日本語表現が小気味よく、読み手をぐいぐい惹きつける。

    先輩後輩でありつつも、変な主従関係が微笑ましい。
    特にまりあが大好きで、美人で金持ち、でも圧倒的に口も成績も悪いっていうトンデモキャラ。やたら我儘で化石オタクのまりあに振り回される彰に同情しつつも「まりあ、もっとやれ」と思ってしまうんですよね。

    また、ありえないような学園社会が背景にお話が進むんですが、やたら説得力のある設定や魅力あふれる登場人物が、世界観をリアルさせてくれています。

    生徒会の面々も、確かに学生時代こんな奴いたかもなぁ、と思わせてくれるような人物像。特に推したいのは荒子生徒会長ですね。もっともっと主人公との会話や対決シーンを読みたかったな~

    本作、化石を小道具にして、うまくお話が進んでいくところがいいですね。
    せっかくならもう少し化石自体の解説もしてくれると、さらに厚みが増したのではないかと思いました。

    エンタメ力が素晴らしい本作ですが、謎解き要素としても後半には、ぐぐぐっと来きますね~。主人公二人と、私立ペルム学園のこれからが楽しみになってくる作品でした。

    ■ぜっさん推しポイント
    ホームズ&ワトソン役の二人が推理を進めるミステリーはたくさんありますが、本作の二人の能力や関係性はとても興味深いです。

    自分都合で摩訶不思議な推理をするホームズ、それを事件解決には導かないワトソン。どんな探偵役なんじゃ。

    しっかりとした謎解き要素がありますが、ミステリーや探偵役はこうあるべきというよりも、肩肘張らずに、気軽に楽しめるところが素晴らしいですね。

  • 神様ゲームが面白かったので期待したけれど残念。まともなストレートでは来ない作家だとは思っていたけれど、でもねえ、これはちょっと捻り不足だな。もっと驚かせてほしいよなあ。変人化石少女の無茶苦茶推理に、茶々を入れる桑島彰だが、その茶々が最後に効いてくるのは分かるけどね。

  • 名門高校で次々に起こる事件を、古生物部の部長が推理する連作短編集。毎回、部を廃部にしようとする生徒会の面々を犯人と決めつけて暴走推理する部長と、それを止めるお目付役の後輩という構図。
    学園ミステリーというにはひねくれていて、後味の悪さはさすが麻耶雄嵩だが、全体としては地味である。
    一番面白かったのは次々に現れる変なクラブ名で、そりゃこんなに乱立してたら部室も足りなくなるわ。

  • 私立ペルム学園。お金持ちが通う高校。まりあはそこの古生物部の部長。お目付け役の彰は無理やり部員。
    乱立した部活を廃部にしようとする生徒会。会長、副会長、書記・・と生徒会グループと対立したり。
    学園で、連続殺人事件が起こるのよ。起こりすぎでしょ、くらい毎回起こるのよ。まりあが推理し、彰がダメ出しする。何も解決せず、話が進む。
    この作者らしい結末。うん、これだよ。すっぱり解決しない。これはこれで大好きなの。
    まりあが化石好きである意味はない。

  • 最初、いつまでのこの終わり方が続くんだろうと思いながら、いつかネタ晴らしがあるかもしれないからと読み進めるうちに、もしかしてこれは…というちょっと予想通りに近いオチで終わったため、拍子抜けといえば拍子抜け。動機の部分は、予想とは違ったんだけども。簡単に読み進められるという、夜ベッドで読むにはちょうどいいくらいの感覚で、それはそれでアリなんだと思う。

  • 快感絶頂!とまではならない本作だが、これで貴族探偵ドラマ化前の麻耶ドーパミンの準備は万端。素人探偵&ワトソンが蔓延るこの時代に、既存の枠に収まらない相棒関係を見せてくれた。まりあの推理は、琥珀に閉じ込められた蟻んこよろしく、ひっそりと価値あるものに違いない。

  • 推理小説としては胡散臭く、青春ものとしては中途半端、化石のうんちくはなるほどなのでしょうがこちらに興味がないし、主人公二人にも魅力がない。どちらかというと否定的な要素満載なんだけど、(安易に人が死にすぎる)、最後薄ら寒い怖さが良かったです。

  • マイナー文化部に所属する高校生が
    部の存続をかけて生徒会と丁々発止を繰り広げながら
    身の回りで起こる事件を推理していくという
    手垢がつきまくりの学園ミステリー。

    キャラ立ちを優先された造形で
    やたらとエネルギッシュなホームズ役の女の子と
    その女の子に振り回されるやれやれ系のワトソン。
    涼宮ハルヒとキョンを彷彿とさせる掛け合い。

    事件も推理も凡庸というか平凡で目新しさはなく
    凡作としか言い様がない作品。

    最後に麻耶雄嵩らしさがあるのだが、
    エピローグの数ページでオセロのように
    すべてがひっくり返って良作になるかというと
    当然そんなはずはなく、
    どちらかというと作者から信者への餌としか感じられなかった。

    「ほら、お前らこういうのが好きなんだろ」と
    主人から与えられた餌に、よく飼いならされた犬が
    「さすがご主人様。わかっていらっしゃる。
    このブラックさがたまらないんです!」と
    尻尾振って喜んでる、そんな図式を感じた。

    まあ、それでも2015年の各種ミステリーランキングの
    TOP10にはしっかり入ってくるんだろうなと思うと
    やれやれという気持ちで読後を締めくくる思いだった。

  •  各種年末ランキングの集計期間が過ぎた今、ミステリ界一食えない男・麻耶雄嵩の新刊が届けられた。何となく手に取ってしまうんだよなあ。最近は刊行ペースがコンスタントだが、内容のひねりもやや弱いと個人的には感じていた。

     京都の名門・私立ペルム学園で続発する殺人事件。部員たった2人の古生物部の部長・神舞まりあの迷推理を、いつも全力で阻止にかかる、幼なじみの後輩・桑島彰。別に古生物に興味がない彼のミッションは、まりあのお守り役であった。

     廃部を迫る生徒会を目の敵にしているまりあは、事件が起こる度に生徒会のメンバーを犯人に名指しする。それを彰は理詰めで否定し、絶対に推理を口外するなと言い含める。いわば、ワトスン役が探偵役を否定するという異例の構図である。

     この構図のため、各編とも解決編がない。推理を聞いているのは彰だけ。彼が否定したところで終わってしまう。おいおい、真相はどうなんだよっ! 最後のエピローグで何かオチがあるのだろう。それをモチベーションに、何とか読み進める。

     構図以外の部分では、近年のミステリ界の傾向を意識したわけではないだろうが、麻耶作品にしては会話が軽妙な印象を受ける。ライトミステリ好きな読者でも、読みやすいかもしれない。各編にオチがないことに目をつむれば…。

     まりあと彰の関係は、敢えて言うなら木更津と香月の関係に近いだろうか。木更津と香月も歪んだコンビだったが、まりあと彰の方がある意味より歪んでいる。エピローグのためだけに読んだようなものなのだから、驚かせてくれるんだろうな?

     すべて前振りだったという点では『貴族探偵対女探偵』を連想させるが…うーん、正直想定の範囲内だったかな…。せめてもの願いは、化石少女まりあの卒業まで古生物部が存続し、本当の後継者が入部してくれることか。というより、化石好きというまりあの設定は必要だったのか。何少女でもいいんじゃないの? その点もちょっと残念。

  • 最初は麻耶雄嵩らしからぬ爽やかな青春小説といった趣ながら、事件が発生すると『らしさ』が全開になる。そして、どうにもきな臭い雰囲気が漂い始めたところでとても『麻耶雄嵩らしい』エピローグで終了。いや〜、堪能した。
    しかし、何が嬉しいって、ずーーーーっと新刊が出ていなかったのに、ここに来て何冊も新しい本が読めることだ。新刊ラッシュまでは望まないが、この先もコンスタントに新しい小説が読めますように……。

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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。京都大学工学部卒業。大学では推理小説研究会に所属。在学中の91年に『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』でデビューを果たす。2011年『隻眼の少女』で第64回日本推理作家協会賞と第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞。15年『さよなら神様』で第15回本格ミステリ大賞を受賞。

「2023年 『化石少女と七つの冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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