日本戦後史論

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198639068

作品紹介・あらすじ

右傾化する日本と世界、新米保守という矛盾、領土問題の本質、反知性主義ともいえる現状……。この国が来た道、行く道を、『日本辺境論』『街場の戦争論』などの内田樹氏と『永続敗戦論』で大注目の論客、白井聡氏が縦横無尽に語りつくす。「敗戦の否認」という呪縛や日本人に眠る「自己破壊衝動」など、現代日本に根深く潜む戦後史の問題の本質をえぐりだす。戦後70年、集団的自衛権や憲法改正の問題を考える前に、ぜひ読んでほしい一冊。

感想・レビュー・書評

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  • ところどころ、というか、要所要所で「ん?」となりがち。今の政治の出鱈目ぶりは保守の自己解体願望でーみたいな話が繰り返し語られるが、「無意識下で」といえば何でも言えてしまうので、こういう文系インテリ仕草はちょっとついていけない。

  • この本が出てから2年ほど間が空いているので、今頃読んで話題が古くなっているのではと危惧したのですが、私のそんな心配は全く当らず大変面白く読みました。
    安倍政権も長期になっているため、安倍首相がニュースに登場するのは毎度のこと、野党という勢力も殆ど機能せず、自民党中心とした一党支配体制の下、最近は憲法改正にも意欲を見せる言動ありの最中に読む価値ありです。
    今時マルクス、レーニン主義を言う人に30年ぶりに出会ったと内田先生に言わしめた白井さん、「永続敗戦論」の著者です。構造主義の見方から世の中を論ずる内田先生との対談形式のこの本は、予想に反してとても読み易く眼から鱗の話ばかりです。
    戦後日本の国家戦略は、対米従属を通じて対米自立を果たすこと。これを内田先生はのれん分け戦略と評しています。徹底的にアメリカに負けて、アメリカに従属する姿勢しか考えられない日本の戦後社会。とても主権国家と言えない国の成り立ち。負けた原因を精査しないまま、社会の中枢に居座った支配層。その後、冷戦構造の中でアメリカ陣営に立ち同盟関係を結び70年。うやむやにした戦争責任が隣国の人たちから突きつけられる昨今。この本が出た後ですが、とうとうアメリカは本音を言う自国第一主義を唱えるトランプ大統領になり、今までのスタイルが通用せず、右往左往しているのでしょうが、ある意味これも日本にとっては良かったのかも?とも考えました。いつまでも何処までもついて行きますじゃあねえ…
    最近は奥さんまで政治の舞台に出てくる安倍首相、心理的には親米を装いつつ反米のねじれた感情を持つ、多分人格が乖離しているのだろうと解説されている安倍さんの心理構造が特に面白かったです。また、歴史を顧みると、明治時代に遡る戊辰戦争以来のつけ、恨みが高じて自滅的な戦争に走ったこと。最近話題になった「忖度する」ことが大事であるために生み出される無責任な組織構造。無意識に破局を求めるカタストロフ願望、方丈記にあるような無常感が日本人の伝統的な感情であるが故の社会構造であること等々、表現は過激ですが、本質を突いているので、今の日本がどうしてこんな成り立ちであるのかよくわかりました。

  • フランス現代思想の内田樹さんと,社会思想の白井聡さんの対談集である.

    お二人の共通認識は,今,日本は危機的状況にあるということにある.

    その危機の具体例として,原発の事故で日本の国土の一部が住めなくなっているのに同じ過ちを繰り返そうとしていること,および,戦後70年の平和と繁栄を捨てて戦争やテロの標的になろうとしていること,が挙げられている.この危機の原因は,敗戦の時に「まっとうに負けなかったこと」にあり,結果として,そのねじれが現在の安倍首相(とそれを無批判に支持してしまっている私たち)の政治の方向を決定している,ことが示される.
    なぜ私たちは,「日米同盟」以外の政治的オプションを考えないのか,「敗戦を否認」し続けているのか,対中国感情を「急速にに悪化」させているのか,好き好んで破局へ向かおうとしているのか,などなどについて「情理を尽く」した論が展開される.

    そして「日本列島に住む人間の幸福や健康や財産,国土の健全性などといったことは,日本以外の地域に住む世界の大多数の人々にとって,どうでもいいことだから」,日本列島に住む人間の幸福や健康や財産,国土の健全性などといったこと「について責任を持つ存在は,私たちしかいない」と考える責任感を「愛国」と呼び,私たちが何をしなければならないかについても「情理を尽く」して語られる.

    また一人新しい論客を知ることができ,今一度立ち止まり,考えられることをうれしく思う.

  • なかなか良かった。戦後史が学校であっという間に終わってしまったり、事実の羅列だけで深い解説がなかったりするのも、日本が「敗戦を否認」しているからなのかなと思った。ちゃんと勉強したい。日本人として。

  •  白井聡氏の著作「国体論」に興味をもったものの、専門的な内容のため断念。本書は内田樹との対談形式で読み易くなっている。戦後日本を貫く呪縛。「対米従属を通じての対米自立」「敗戦の否認」「永続敗戦の構造は戦後の国体」 もちろん、いずれの敗戦国も敗戦の否認を行ってきたのであるが、日本とフランスは戦後の症状が重い。日本では戦争を指導していた人たちが戦後、ふたたび支配的な地位に留まり続けたことが歪みを生んでいる。親米的雰囲気は、かなり人為的に作られていった部分が多い。戦中派は明言しないものの、アメリカに勝つ!という目的を共有しており、代替戦争としての経済競争があった。戦後生まれが支配的となった現在、目的を失い倒錯した経済成長戦略を続けている。尊敬できるブルジョアジーがいない。「カタストロフ願望」 無謀な戦争は、実は日本人が日本を憎んでいたから、と述べたのは興味深かった。近代日本のトラウマは150年経ってもいまだに言語化されない。現代でも不合理な選択をし続けており、破局願望から逃れられていない。

  • うーん、期待して読んだのだが、イマイチだった。。。

  • 「二〇二〇年の東京オリンピックって、もし何とか開催できればその後一〇年国はもつ。もし開催できないというところまで追い込まれると、もう五年しかもたない。そういう嫌な感じがするんです。」
    なんていうヒリヒリするような発言が続出する。

    日本は戦後、「対米従属を通じた対米自立を目指す」という捻れた形で政策を作ってきた。しかし、アメリカはもちろん自国の国益を優先するので、いつまで経っても対米自立ができない。
    また、敗戦の否認をしており、どこか韓国・中国という近隣諸国を見下しているところがある。
    仮に中国が尖閣諸島に攻め込んだとしても、アメリカは日本の防衛をしないだろう。アメリカはそのような事態にならない程度に日中関係を維持したい。
    日本はそのような状況の中、アメリカの利益にも国益にもならない政策を進めており、自滅を望んでいるように見える。
    といった内容の対談。対談形式の本には珍しく、盛り上がっていることがわかる。

  • 強烈な本であった。知的に刺激を受ける。
    特にアメリカで、木材産業の自立に向けた話をした後では。
    補助金のことをたくさん言われたけれど、その歴史性などを明らかにする必要があるなぁ。
    林業が自立できない背景には、日本社会の構造的な課題があるように思えて仕方がない。

  •  ぼくには合わないような・・・
     時間を置いて読み直してみよう。

  • まったく自分の中になかった考え方
    物事を見る新しい視点を教えてもらったような気がする。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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