勁草 (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
3.50
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本棚登録 : 389
感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198639570

作品紹介・あらすじ

橋岡は「名簿屋」の高城に雇われていた。名簿屋とはオレ詐欺の標的リストを作る裏稼業だ。橋岡は被害者から金を受け取る「受け子」の手配も任されていた。騙し取った金の大半は高城に入る仕組みで、銀行口座には金がうなっているのだ。賭場で借金をつくった橋岡と八代は高城に金の融通を迫るが…。一方で府警特殊詐欺班の刑事たちも捜査に動き出していた。最新犯罪の手口を描き尽くす問題作!

感想・レビュー・書評

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  • 「綺麗な表紙だなぁ…。」

    荒波打ち寄せる月明りの岸壁に
    はらはらと零れる可憐な花と舞うアゲハ蝶にうっとり見入る。

    >でも、黒川氏の小説や。
    この風光明媚な絵の裏にきっと何か隠してるやろ…。
    (読後、しばらく抜けない大阪弁。(^^;)

    案の定だった。
    読む以前とその後では
    軽く貧血起こしてしまうそうになる程の衝撃が…!

    発端はオレオレ詐欺で
    善良な市民から騙し取った金、だった。
    そんな黒い金が
    手にした輩どもを幸せに導くはずもなく…
    (いつか地獄に突き落としてやるからね。)
    虎視眈々とその背中を狙っていた様な印象。

    ところで
    救いようもない犯罪しでかした、この虫けらのごとき2人なのだが…
    黒川氏にかかると、何故こうも憎めない悪人になってしまうのだろう。
    追う刑事の2人組みの味方につきたいのは山々だが、
    シーンが切り替わり、この二人の登場になると
    (おっ♪)と思ってしまう自分もいる。

    ドロドロした物語だったかも知れないが、
    世の中を潔く舐めくさった感じがかなり好き。
    読み終えるのが本当に惜しくて
    逸る心と葛藤させつつも読了。
    はぁ~…♪








     

  • もう流石、としか言いようのない面白さ。黒川博行さんお得意の大阪府警もの。今回のテーマはオレオレ詐欺。それを警察目線と犯罪者目線の両方から描いていく。その中身は非常にダークで重たいものながら関西弁というフィルターと無駄な会話文を多用することによって読み口がユーモラスかつ軽い印象を受けるものになっている。犯罪者目線ではおよそ同情できる要素は無いのだが転落していく様は見事としか言うほかない。後半に向かってどんどんとスピードアップしていき、これしか無い、という結末を迎える。終わり方がサッパリとしている点も◎だ。

    というか映画化するのか、この作品は。原田監督かぁ。内容が変わりそうだな。

  • 令和5年9月にbad landsというタイトルで映画化されると聞いて読みました。特殊詐欺の世界でそこそこ生きてきた主人公の橋岡が、あることをキッカケに人生が転落していく物語。詐欺に関わっている時点で犯罪者なのだろうが、だれが金主かも知らされない組織の中で命令され金を得る方法しかない人生は、社会の裏側で起こっている現実なんだろうなと。
    勁草とはこの場合何を指しているんだろうと考えていたが、、弱者をターゲットにこの社会に蔓延り、警鐘を鳴らしても消えることのない犯罪の仕組みそのものなのかな。

  • 一気読みでした。
    橋岡さん残念でした。

  • 橋岡恒彦は電話詐欺グループの名簿屋の高城政司に雇われ、小金のある老人を騙して金を巻き上げていた.大阪府警は特殊詐欺班の佐竹と湯川がコンビになって捜査をしている.金をまきあげる具体的な手口が詳細に描写されており楽しめた.橋岡に矢代穣という仲間ができて話が展開する.賭場で大負けした矢代が高城に借金を申し込んだが無碍に断られ反感を抱き、遂に殺害してしまう.それを隠すために苦労する橋岡と矢代のドタバタ劇が面白かった.高城の貯めこんだ金を通帳から引き出すのに苦労する場面が真に迫って楽しめた.癖のある人物が数多く登場するが、新井登茂子の存在が妙に光っている感じだ.更に徳山英哲も殺めた橋岡と矢代は拉致されそうになったが、橋岡は辛うじて逃亡し沖縄まで逃げるが御用となる.佐竹と湯川が地道に捜査する過程が良かった.

  • 1

  • オレオレ詐欺の犯人の顛末。

    オレオレ詐欺の名簿屋の高城は、NPO法人を隠れ蓑に、生活保護受給者を囲い込み、宿を提供しながら受給金をピンハネし、裏でオレオレ詐欺に加担していた。

    その高城に雇われている橋岡と矢代は、グループ内のトラブルにより、高城を撲殺してしまう。

    詐欺グループのケツ持ちのヤクザに追われる2人、警察の佐竹、湯川もこの詐欺グループに迫る。

    警察とヤクザの追跡をギリギリにかわし、逃げきれるか!?


    犯罪に手を染めていく落第者たちのリアルな描写が良いです。

    展開に派手さはないので、初めて黒川作品を読む人には向かないかも。

    刑事や犯罪者達のやりとりが面白いです。

  • 黒川作品らしく、どうしようもない小悪党が主人公。テンポが良く読みやすい。

  • 普通に面白い/ オレオレ詐欺のグループと、それを取り締まる刑事の話/ 黒川博行らしい破滅に向かう犯罪者たちの話/ ただ、いつも同じ調子で飽きてくる/ 最後の終わり方はつまらんね/ 

  • 橋岡が沖縄へ行ったのを玉城がなんで知っていたのか?橋岡は玉城たちに沖縄に行くとは言ってないのに。それが不思議だった。矢代はどうしょうもない奴で酷いことになったが、橋岡の最後はほぼ予想通りだった。

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著者プロフィール

黒川博行
1949年、愛媛県生まれ。京都市立芸術大学彫刻科卒業後、会社員、府立高校の美術教師として勤務するが、83年「二度のお別れ」でサントリミステリー大賞佳作を受賞し、翌年、同作でデビュー。86年「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞を受賞、96年『カウント・プラン』で推理作家協会賞を、2014年『破門』で直木賞、20年ミステリー文学大賞を受賞した。

「2022年 『連鎖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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