月下のサクラ (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198651534

作品紹介・あらすじ

私は前に、前に進む――。
組織に巣くう不条理な倫理。
刑事・森口泉が闇に挑む。


事件現場で収集した情報を解析・プロファイリングをし、解決へと導く機動分析係。
森口泉は機動分析係を志望していたものの、実技試験に失敗。しかし、係長・黒瀬の強い推薦により、無事配属されることになった。鍛えて取得した優れた記憶力を買われたものだったが、特別扱い「スペカン」だとメンバーからは揶揄されてしまう。
自分の能力を最大限に発揮し、事件を解決に導く――。
泉は早速当て逃げ事件の捜査を始める。そんな折、会計課の金庫から約一億円が盗まれていることが発覚した。メンバー総出で捜査を開始するが、犯行は内部の者である線が濃厚で、やがて殺人事件へと発展してしまう……。

感想・レビュー・書評

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  • 朽ちないサクラの続編

    刑事となった森口泉は、機動分析係を志望していたが、実技試験に失敗した。
    しかし、優れた記憶力を買われ、係長・黒瀬の推薦により、無事配属されることになった。

    移動当日に、警察の金庫から、一億円近くの現金が、紛失するという事件が起こった。
    メンバーからは、特別扱い「スペカン」と揶揄されながらも、能力を最大限に発揮し、事件を解決に導き、自分の居場所を見出す。

    情報分析して、犯人を追い詰めて行く。
    ひと昔前では、想像もできなかった。
    それにしても、今回も面白かった。

  • 柚月さんの今回の主人公は女性刑事、森口 泉(34歳)。

    県警内部で9,500万円ほどの現金盗難事件が起こります。
    二重ロックの警察本部会計課の金庫から盗まれたのです。
    警察の威信をかけ、事件解決にあらゆる手が尽くされます。
    そんな中、容疑をかけられた者の突然の死が報じられ
    事件はますます混迷を深めます。
    詐欺の受け子、裏で暗躍する中国人犯罪組織と
    調べを進めるうちに思わぬ方向へと展開するのですが…。

    今作品で、ストーリー展開以上にワクワクさせられたのは
    森口泉の特殊な能力と まっすぐでぶれない姿勢でした。

    2015年に出版された『朽ちないサクラ』では
    泉は広報の事務職員だったということです。
    前作で起こった事件に触発されて警察官になることを決意。
    自分が生かせる場所を求めて、捜査支援分析センターに志願します。
    防犯カメラ分析やNシステムを駆使した追跡などをする部署です。
    不法外国人検挙に備えて中国語と韓国語を独学で学び
    パソコンのスキルをしっかり磨くことも怠りません。

    筆記試験では合格したのですが、実地の追跡試験でうまくいかず
    「追跡テスト、落第」と申し渡されてしまいます。
    ところが、分析センター機動分析係長・黒瀬が泉の記憶力を買って採用。
    (この黒瀬、『孤狼』シリーズのガミさんにちょっと似ている)

    泉は一度目にしたものを忘れることがありません。
    また、人並外れた集中力で一瞬の出来事を何倍ものスロー送りにして
    細部を記憶に呼び起こすという特殊能力を持っています。
    例えば、ある人物を追ってレストランの駐車場で張り込みをしていると
    ベージュの車が 駐車場の端に停車します。
    泉はその車に見覚えがあり、集中して記憶をたどります。
    Nシステムで見たことを思い出し、頭の中でナンバーを拡大。
    同一の車であると断定したのです。

    また、上司の黒瀬が秘密裏に捜査していた内容について
    泉は県警本部長から問い質されます。
    「黒瀬警部は独自調査をしていなかったか」
    「知りません」
    自分が従うべきは黒瀬だと、圧力に屈しない。

    そして事件解決の終盤。
    泉は自分の信念に基づいて大きな相手にひとりで対峙します。
    命の危険を感じさせる切迫した場面にハラハラドキドキ。

    泉さん、もう、カッコイイったら ない!

  • 主人公の森口泉の成長がすごい。前回からかなり出世してた。正義、信念のために相当努力したのを感じる。自分に欠けてるところは勉強して、得意分野を最大限に利用出来るように鍛える。並大抵のことではないと思う。

    上司の黒瀬が新人の泉を連れて捜査をしていたけど、どういう意図があるのかがずっと気になってた。試験では失格にしたのにどうして?読み進めていくと、泉の能力を買ってたと分かったし、機動分析係の仲間にも認められて良かった。「頑張ったね。」と拍手を送りたいです。

    だんだんいい方向に向かってたのに、公安登場で一気に雰囲気が悪くなってしまう。それと同時にみんな怪しくなって、私は疑いまくってしまった。で前回と同様に「権力があれば何をやってもいいの?」と言いたくなる。 

    これは、私の願望というか妄想の話です。米崎市が舞台ということで、違うシリーズの私が好きな佐方検事が出てこないかなー、なんて思いながら読んでたら、それらしい人が一瞬出てきた。『紺色の背広を着た若い男』という風に書かれてけど、私は佐方検事だと思う。そう信じたい。



    • メイさん
      yyさん、こんばんは。お返事ありがとうございます。

      虎狼の血でしたね。間違えてしまいました。
      (^_^*)佐方検事シリーズに出てくる刑事が...
      yyさん、こんばんは。お返事ありがとうございます。

      虎狼の血でしたね。間違えてしまいました。
      (^_^*)佐方検事シリーズに出てくる刑事が出てるみたいなので読んでみたいです。来年になったらトライしてみたいです。

      お茶目心っていいですね。読むのが楽しくなりますね。♪
      2022/12/01
    • yyさん
      メイさん

      ごめんなさい _(._.)_
      間違えたのは私。
      「孤狼・・・」であってます。
      ホントに「うっかり屋」ですみません。
      ...
      メイさん

      ごめんなさい _(._.)_
      間違えたのは私。
      「孤狼・・・」であってます。
      ホントに「うっかり屋」ですみません。
      メイさんの足引っ張っちゃった。m(__)m
      2022/12/01
    • メイさん
      yyさん、教えて頂きありがとうございます。(^^)
      これからもよろしくお願いします。
      yyさん、教えて頂きありがとうございます。(^^)
      これからもよろしくお願いします。
      2022/12/01
  • 朽ちないサクラの続編です。
    読み終わりました。

  • 警察の広報職員だった森口泉が念願の警察官となり、持ち前の集中力と記憶力を発揮して操作に関する情報分析を行う機動分析係への配属を勝ち取る。そして、因縁のある警察内部の敵・公安に立ち向かっていく小説。

    bmakiさんもレビューでおっしゃっているけど、盛り上がらなさそうな地味〜な事件。背後に大きな組織があったり…と展開はしていくし、ドキドキしながら読ませるけれども、最後までしっくり来なかった。

    シリーズ1作目の「朽ちないサクラ」をまだ読んでいないので、公安との因縁の部分がいまいち心に響いてこないんだと思う。

    たぶん、シリーズ順に読むべきなんでしょうね。

  • 女性刑事、森口泉のシリーズ。
    前回の作品も何となく記憶に残っている。

    最初は、これで盛り上がってくるのかなぁ?という簡単そうな事件だったのだが、次第に事件に潜んでいる大きな背景が見えてくる。
    相変わらず、女性が書いているとは思えない小説だが、この物語は女性が主役ということもあって、かなり読みやすく、あっという間に読み終わってしまった。女性でも読みやすいのではないかな??

    この機動分析係のメンバーでの続編も読みたいなぁ。
    シリーズ継続して欲しい!

    いつもの柚月先生の作品を期待している人には、少し物足りない作品かも??



    事件現場で収集した情報を解析・プロファイリングをし、解決へと導く機動分析係。
    森口泉は機動分析係を志望していたものの、実技試験に失敗。しかし、係長・黒瀬の強い推薦により、無事配属されることになった。鍛えて取得した優れた記憶力を買われたものだったが、特別扱い「スペカン」だとメンバーからは揶揄されてしまう。
    自分の能力を最大限に発揮し、事件を解決に導く――。
    泉は早速当て逃げ事件の捜査を始める。そんな折、会計課の金庫から約一億円が盗まれていることが発覚した。メンバー総出で捜査を開始するが、犯行は内部の者である線が濃厚で、やがて殺人事件へと発展してしまう……。

  • 森口泉は、映像から犯人の行動を分析する機動分析係に志願し、テストで失敗するも何とか配属される。警察内部での紛失事件を追う中、警察内部の問題に巻き込まれていく。

    同じ主人公の本があり、話の中にも前作で起こったことが心情的な理由となったりするところはあるが、配属も違い、その配属での仕事が重要なときともあるので、それほど気にせず読めたw

    機動分析係は、街の防犯カメラや道路に設置されるNシステムなど画像を分析し、犯人の特定を行う。駐車場の防犯カメラに映った映像から車を特定しNシステムでどこに向かったかを追跡する。数倍速で再生する中から見つけたり、映像を繋げて見ていくことで足取りを追ったりする描写がプロフェッショナルの仕事らしく描かれていてよい。その反面、小説としてデフォルメされてる点があるにしろ、現実にもこれほど情報が得られてしまうのかと思うと、ちょっと怖いところもある。

    怖いと言う意味では、公安や警察に描かれどころもけっこう怖いところがある。組織の問題を扱う上ではやむを得ない描写とは思うが。。。

    分析係のメンバーも特色や過去など触れているが、主人公がメインになっているせいか、ちょっと影が薄い。もう少し絡ませてもいいのにと思った。犯人側も背景など気になる感じで描かれているのに、もう少し描き込んでもと言うところがある。

    米崎県警の話なので、前に読んだ『検事の信義』でも見かけた名前が出てきたりする。それぞれきちんとシリーズを読むともっと楽しめるかなと思った。

  • 追尾テストに失敗しながら、特別扱いで米崎県警捜査支援分析センターに配属された、森口泉。
    そこで、警察署内での窃盗事件が発覚し……。

    泉のバックグラウンドは単行本1冊分になりそう、と思ったら、実際に『朽ちないサクラ』という前作があるよう。

    シリーズ第2作。

    事務職から警察官となり、刑事にまで上り詰めた、努力の泉。
    その頑張り、前向きさは、読んでいて清々しかった。

    泉の記憶力が超人的過ぎ、展開もややご都合主義。
    筆者にしては軽めの作品。

  •  やっぱり柚月裕子は外さない。自分の趣味もあるのだろうが、私の中で内容を確認しなくても安心して読める数少ない作家さん。

     さて、刑事の森口泉は機動分析係を強く希望。実技では失敗したものの、係長・黒瀬の計らいで配属された。

     機動分析係とは、事件現場で収集した情報を解析・プロファイリングして事件解決へと導く部署だ。

     配属されてまもなく、警察署内部で事件が発生。会計課の金庫から1億円が盗まれたという不祥事だ。

     調べていくうちに、盗難と同じ時期に会計課の保坂課長が退職していることが発覚。防犯カメラの映像からも、退職後の保坂が何度か警察署を訪問していることが分かった。
     また、保坂は借金があったのを同じタイミングで返済していることも判明。

     有力被疑者として保坂を追う機動分析係のメンバー。そんな中、保坂が不審な死を遂げる・・・。

     果たして保坂は自殺なのか他殺なのか。そんな矢先、独自に捜査していた黒瀬に謹慎処分が下り・・・。


     私は好きで刑事小説をよく読むのだが、この警察組織の摩擦が度々取り上げられる。公安と警察との関係性なのだが、本当にここまでの障害があるのだろうか。
     事件解決もそうだが、まずはこの連携を良いものに変えていかないとと感じでならない。

     この物語もやはり、警察と公安の在り方の問題から後味の良い結末とはなっていない。

     しかし、面白いのは間違いなく、物語自体は大いに楽しめた。

  • ◆激突する警察の悪と正義
    [評]千街晶之(文芸評論家)
    月下のサクラ 柚月裕子(ゆづき・ゆうこ)著:東京新聞 TOKYO Web
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/117285?rct=shohyo

    不条理と戦う女性刑事を通して"人間"を描く『月下のサクラ』柚月裕子インタビュー | ほんのひきだし
    https://hon-hikidashi.jp/enjoy/130519/

    月下のサクラ - 徳間書店
    https://www.tokuma.jp/smp/book/b577755.html

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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