- Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198917593
作品紹介・あらすじ
耽美派小説の巨匠、重松時子が薬物死を遂げてから、四年。時子に縁の深い女たちが今年もうぐいす館に集まり、彼女を偲ぶ宴が催された。ライター絵里子、流行作家尚美、純文学作家つかさ、編集者えい子、出版プロダクション経営の静子。なごやかな会話は、謎のメッセージをきっかけに、いつしか告発と告白の嵐に飲み込まれてしまう。はたして時子は、自殺か、他殺か-?気鋭が贈る、長篇心理ミステリー。
感想・レビュー・書評
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女は怖いなと。いやいや、逞しいのか。
転んでもただでは起きないぞって。
騙し騙され、そして騙して。
耽美派小説の巨匠、重松時子の死の真相を巡って、女たちの心理戦は何処へ向かう。
最後、ひとりほくそ笑むのは誰なのか。
「決まってるでしょ。去年までと同じように、知らん顔して生きてくのよ」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
4年前に薬物死した大女流作家を偲んで、1年に一度集まる彼女に縁深い5人の女性たち。
ノンフィクションライターの絵里子、売れっ子作家の尚美、純文学作家のつかさ、編集者のえい子、出版プロダクション経営の静子。
それぞれが物書きをなりわいとし、夢見がちな、妄想を商売とする女たちが思い出しては語る、作家の死の当日の記憶。
不審な行動、不穏な花束や不吉な電話、銅版画の裏に残された封筒、缶詰に仕込まれた毒、不自然な遺書…、謎が解けたかと思えばまた違う謎が浮き上がり振り出しに戻る。
3日間×5人の告発と告白の嵐は、思わぬ方向へ飛び火したりどんでん返しが起こったり、上質の舞台劇を見ているような緊迫感と筋書きの妙。
カバーの折り返しに映画の写真が載っていたが、こちらも観てみたいものだと思う。 -
空気感が程よいミステリーで面白かったです。知性のある女性たちが集まって、推理を繰り出し、それぞれの抱えていた秘密が告白されていく。真実が何かわからないまま続く空気感が読んでいて面白かったです。一枚二枚上手の女性たち。
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今まで読んだ恩田陸さんの作品は数える程だけだけれど、今回の作品は色が違うなと感じたのはミステリーっぽさが強かったからだろうか。
大団円近くに大作家「時子」の死の真相が暴かれ、彼女を崇拝する4人の女性がこれからについて思いを巡らせている時、私はまだこのままでは終わるはずがないという不安定な気持ちを持ちながら残り少ないページで私のその不安定感を取り去ってもらえるのかという焦燥感があった。
これ以上はネタバレになるので終了。
本作を読みながら思ったのは、クルクルと代わる話し手が誰なのか、誰と誰が対話しているのか分かりにくいと感じました。
そしてひとつ、難癖をつけるつもりはなく疑問が。
「木曜日の午後」の章の最初の頃、文芸評論についての意見を述べるところで「四人で対談している・・・」とあるのだけれど、四人でも「対談」というのだろうか?
チョット調べてみた。
二人 : 対談
三人 : 鼎談
となっているが、四人は見つからなかった。
会談、懇談、座談、ならば四人以上で話し合っている雰囲気だが、という説はありました。
恩田陸さんほどの作家であれば、さらに出版する際の校正の様な作業が有ればまずミスは無いのだろうから、「四人で対談」も問題無いのだろうけれど、作品を読んでいた私の中の理解の流れのようなものが一度断ち切られたという思いはある。 -
大作家・重松時子が謎の死を遂げて4年。毎年、時子を偲んで集まる時子と関わりの深い女性5名が死の真相に迫る。
5人の中に犯人がいるのか、共犯者はいるのか、お互いが敵なのか味方なのか、はたまた時子は自殺だったのか…状況が次々に変化し、大変面白かった。最後の展開には唸ってしまった。 -
小説の巨匠・重松時子が薬物死を遂げてから
時子の命日の週である木曜日には
彼女の親戚兼同業者の女性5人が
集まることが習わしのようになっています。
そんな彼女たちは一癖も二癖もあります。
時子の死から4年が経ったある日、
時子が最後に書いていた小説の主人公と
同じ名前の人物から、意味深な
メッセージと共に花が贈られてきます。
まるでその家にある花瓶に生けることが
分かっていたのようにピッタリな花が。
それを変わり切りに、4年前の出来事を
5人で話し合っていきます。
時子の死は果たして本当に自殺だったのか。
他殺だとしたら、誰が?
それぞれの会話のテンポも良く、
キャラも立っているので読みやすいです。
そして、衝撃のラスト。
読んでいて飽きない。さすが恩田陸さん。 -
4年前に薬物で自殺した作家、重松時子。
時子が亡くなったときにその家に居合わせた編集者、作家、血縁者などの5人の女性たちが、毎年その命日に同じ場所に集う。美味しい料理を食べてたくさんのお酒を飲みながら、時子の死について語り合ううちに、それぞれが時子との間に起きていたできごとなどを告白を始め・・・。
圧倒的な会話劇。全員物書きにまつわる仕事をしているという設定なので、会話の密度と重量におしつぶされそうになりつつも、ときどき挟まれるたわいのない会話でふっと肩の力が抜ける感じ。読みごたえありました。恩田陸さんの小説は、本当に会話に圧倒されるとしか言いようがない。 -
耽美派小説作家「時子」の姉妹、従姉妹など、縁がある女性5人が織りなす心理ミステリー。
今年も時子の家「うぐいす館」で薬物死した「時子」をしのぶ会をするという。
集まってきたのはゆかり(親戚)の女性たち。
ノンフィクションライターの「絵里子」
出版プロダクション経営の「静子」
純文学作家の「つかさ」
人気売れっ子作家の「尚美」
編集者の「えい子」
みんな「物書き」の妙齢の女性たちが、瀟洒な洋館で繰り広げる会話とご馳走の3日間だから、何事が起ころうかとわくわくする。この設定はうまいなーと思う。楽しみながら、時の経過ということを意識した。
会話だって文学の話が出るだろうしと期待、果たして満載、本好きには応えられない。
恩田陸さんの小説は時と空間の追求が必ずひとつある。すごく個性的な時間の経過だ。どこからきたのだろう、と恩田さんに不思議な感覚を覚える。
思うのだが、文学を読むときに普遍的な思想、思索を論理的に受け取るということがある。不条理を、神の存在を示唆されることもある。しかし、このごろこは「時間の不思議さ」という事を強く感じるという読み方をしている。 -
物書きってのは少々狂気なのだと教えてくれる作品となっております。物語が5人の女性の対話で進んで行きます。それぞれの個性やら思惑やらが見えて、謎が出てきて、謎が解けていき、たまりません。
いや、おもろい。