駿河城御前試合 (徳間文庫 な 1-45)

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  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (541ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198923211

感想・レビュー・書評

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  • 江戸時代の講談寛永御前試合の原型になったといわれる、「徳川忠長公秘書」を基に駿河御前試合を描いた作品。

    駿河御前試合に出場する11組22人の剣士たちの凄惨な闘いを12の短編で綴る。

    江戸時代の初期、駿河の国に冷酷な君主徳川忠長あり。
    将軍家の次男でありながら、密かに天下を狙っていた。

    天下に号令せん日を望んで名だたる豪傑たちを集めていたが、あるとき余興に真剣での御前試合を思いつく。

    様々な遺恨をもった十一組の剣士たちが繰り広げる血の饗宴。
    読みどころは、人間離れした剣士たちの卓越した技!
    一瞬にして抜く、斬る、鞘に戻すといった目にも止まらぬ技の応酬に慄然となった!

    また、十一組の試合が全てに闘うに至った経緯から試合に勝たなければならない理由がはっきりしており、叙情感たっぷりの展開。

    特に面白かったのが、どMな剣士が主人公の「被虐の太刀」。
    美しい青年・女性に斬られることで快楽が極度に高まるという天才剣士が巻き起こす泥沼劇。
    どんな剣の使い手にも勝る腕を持ちながら、美しい男女に斬られことを楽しむあまり、血みどろになりながら斬られ続ける下りは爆笑でした。

    全編を通して飽きのこない小説でしたし、笑いと凄惨な描写のコントラストが非常に上手いと思いました。
    予想以上に楽しめたのと、南條範夫という作家ともっと早く出会っておけばよかったと、いい意味での後悔をさせてくれた作品でした。

    男女の粘着質なドラマとサムライが好きな方にはオススメしたい一冊です。

  • 『シグルイ』の原作本として有名だが
    としてしか今は知られていない
    剣法十一番勝負の個々因縁を語る描写はおしなべて質高く
    同じような剣豪もの背景を並べながら飽きさせず
    御前試合での決着も素晴らしい
    ただ連作物語の結局帰結するところが読者好みでないのだろう
    同様材料の『甲賀忍法帳』と比べ
    どちらが好かれるかが作品の寿命を決めたのか
    あるいはサムライとニンジャのファンタジー要件違いなのかもしれないけれども

  • 駿府城御前試合での対戦をその因縁を含めて書く、それぞれの試合の短編のような作り。
    登場人物が男女のもつれなど因縁を抱き、御前試合に選ばれ、実際対決する流れ。
    ドM剣士、蝦蟇男など濃いキャラクターが最後の戦いに見せる姿などは面白く読める。時代小説が好きではない人が読んでも面白いと思う。

  • ・マンガのシグルイを読んだので、興味があった

    ・無明逆流れ以外の試合は、あまり面白くないのかなと
     勝手に思っていたけど、そうでもなかった

     無明逆流れほど、奇想天外な剣術は出てこないけど
     どの試合も見どころがあったと思う

    ・試合で生き残った人が最終的に全員死ぬのは
     そこまでやるかと思ったけど

    ・家名、女性、名誉などが原因で、結局みんな死ぬのね
     

  • 漫画『シグルイ』の原作というので読んでみた。
    この本では全部で十一番の真剣試合が描かれているが、漫画の方は最初の一試合を描くのに七年十五巻を要して居る。
    この調子で行けば完結に後五十年以上かかるためか、一試合目までで漫画は終わっている。

    折角なので全試合描いてもらいたいものだと思いながら原作を読んだ。
    非常に面白い。
    漫画『シグルイ』では原作の各所に散らばるモチーフや小話を上手く物語に織り込んでいて、見方によっては全十一試合を一試合で表現したと言える。
    原作、漫画併せて読み応えがある。
    原作が面白く、大幅に脚色された漫画版も面白いなどというものはなかなかない。

    それにしても、それぞれの剣士が真剣試合に臨む理由は似た様な物が多く、後半の方は、またこんな理由で、と思わされる。
    逆に、それだけに切実で、そういう価値観もあるのかと徐々に感情移入させられてしまう。

  • 寛永六年(1630年頃)に行われ、あまりに悲惨な内容のため後に開催事実が隠滅されたとしている、架空の「駿河城御前試合」十一戦+後日談一戦の全十二話の短編集。
    多くは、「絶対無敵の技を身に着けた」ものの戦いで、現実とは離れているものの、その技を身に着けるに至る時代設定にあったエピソード(多くは女性がらみ)や、全体通しての古風な表現から、「歴史ものを読んでいる」感が高かった。
    特に「身替り試合」が、全体と同じ悲劇話しながらも喜劇要素があったり、また、そもそも道場剣法と戦技との差異という、この本の中ではリアリティのあるベースであったことなどから、もっとも面白かった。
    全体的に短くまとめられた話の中で、第十一戦はずいぶん冗長に感じた。また、その後の顛末を描く第十二話は、今までの悲惨を総括するために強引に話を進めているように感じ(急に出てきた「車大膳」って・・)、私にとってはかえって興醒めだった。
    全体通しては面白かったが、著者の別作品を近日に読みたい、と思うほどではなかった。

  • 歴史小説舐めてたわ。そこらのラノベよりよっぽどいかれてる。
    しかし、毎回盛り上げるだけ盛り上げてラストバトルがあっさりなのが残念だった。

    内容的には☆3でもいいんだけど、「美少年に散々に自分をぼこらせておいて快感が頂点に達した瞬間に相手を殺すのが最高に気持ちいい」というキャラが最高にクールだったので評価を引き上げました。

  • 漫画「シグルイ」の原作ということで読んだ。15巻くらいあったシグルイと違い、原作の「無明逆流れ」は短編。これを含めて11の御前試合の顛末が描かれるのだが、様々な人物が様々な事情で戦う過程が面白い。ネットで「車大膳」を調べたのは私だけではないはず。

  • シグルイの原作、といっても漫画とは別物で割とまともな小説。虎眼先生がボケ老人だったり、右手の指が常よりも一指多かったり、牛股の口が耳まで裂けてたり、いくが乳首ちぎられてたり、そのちぎれた乳首を牛股がチューインガムみたいにプギュプギュ噛んでたり、虎眼流の門弟にセルフフェラをたしなむヤツがいたり、かじきという全長2メートルくらいある素振り用の木剣があったり、舟木一伝斎の息子にホモの双子がいたり、藤木と伊良子の決闘をガマがうんこしながら見ていたり、は全然しないのでそういうのを期待してはいけない

  • 今話題の漫画の原作のところを、読んでみました。

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著者プロフィール

明治四十一年(一九〇八年)、東京・銀座に生まれる。代々医師の家の生まれ、東京大学法学部、経済学部を卒業。小説家のほかに経済学者の顔を持ち、長く大学で経済学の教鞭をとる。昭和三十一年「燈台鬼」で第三十五回直木賞を受賞。一躍人気作家となり、時代小説、歴史小説を執筆するようになる。デビュー作『出べそ物語』、『子守の殿』(オール読物新人賞)『細香日記』で吉川英治文学賞を受賞。人気シリーズとして「月形兵庫シリーズ」はよく映像化されている。昭和五十四年(一九七九年)死去。

「2023年 『傍若無人剣』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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