審判 (徳間文庫 ふ 13-20)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (493ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198929800

感想・レビュー・書評

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  • 懲役刑を服した柏木が冤罪を主張し当時の関係者の元に現れる話。柏木は本当に冤罪なのか、新たに起こる事件に関与しているのか、二転三転しすぎて残りページを確認しまだあるのかと目を見張る。全くこちらに落ち着く隙を与えてくれない。立場を変えると見える景色の違いに愕然とした。

  • 元警察署長が勲章を授与されたということで開かれたパーティー。そこには、招かれざる客がいた。その人物は、過去に女児誘拐殺人の罪で逮捕されて、懲役刑をくらっていた。この度、刑を終えていたが、ずっと無罪を主張。冤罪を訴えるホームページも立ち上げていた。
    その後も、事件を担当した元刑事に近づいたり、被害者の母親に会ったりとしている。
    果たして、本当に冤罪だったのか?


    約500ページというボリュームのある量でしたが、最後の最後で真実がわかるので、最後まで飽きさせませんでした。

    冤罪をテーマにした作品というと、逮捕された人物が本当に無実かのような雰囲気を漂わせます。ですが、この作品は「本当に冤罪?」といった疑惑の雰囲気があったので、何が本当で、何が嘘なのか、最後までずっと疑心暗鬼で読んでいました。

    二部構成になっていて、第一部は当時の事件の模様と現在での人々の動きが描かれています。

    強引な捜査、何が何でもホシをあげる警察にいかにも冤罪を生み出すかのような行動で、警察の闇を感じました。

    一つの事件をきっかけに渦巻く人間の憎悪や疑惑が、細かく書かれていて、「事件」の恐ろしさを感じました。多少説明口調でしたが、楽しめました。

    そして、新たに起きる殺人事件。

    第二部では、ある裁判の模様から始まります。いつの間にか、ある人物が逮捕されて、過去の事件と絡みながら、淡々と進んでいきます。読み手としては、犯人は誰なのか?とジワジワと真相がわかっていき、あっと驚く犯人にたどり着くことを期待していました。

    しかし、ここでは事後報告かのようにわかっていくので、ちょっと興醒めしてしまいました。

    それでも、登場人物と一緒に傍聴席にいるような感覚でしたので、その世界観には引き込まれました。

    ただ、これで事件は終わりかと思いきや、まだまだ続きがあり、全てが分かった時には衝撃的でした。

    あまりにも事件の関係者たちが可哀想で、何ともやりきれない気持ちになりました。

    冤罪を生み出さないためにも、しっかりとした捜査が重要であることを感じました。

  • 少女誘拐殺人事件の取り調べ担当刑事と冤罪を主張しながら十五年の服役の後に出所した「犯人」との真相を巡る確執。最後のどんでん返しは、なかなか面白かった。

  • 刑期を終え出所してきた女児殺害事件の犯人は冤罪を訴える。
    自分は無実なのだと、真犯人は別にいるのだと。
    そして、彼の復讐心は真犯人だけでなく捜査をした警察へも向けられる。
    何故やってもいない犯罪を自白したのか?
    犯罪や警察と無縁の人間は考える。
    本当に無実ならば自白などしないだろうと。
    柏木は当時の目撃者である女性へのメールでこう訴えている。
    取調べの厳しさに肉体的にも精神的にもへとへとになり、正常な精神の糸が切れる寸前まで追い詰められてしまったのだと。
    取調べの苦しみから抜け出したい、先のことは後で考えればいい、いまは刑事の言いなりになり、裁判が始まったら本当のことを言おうと思ってしまったのだと。
    そして「自白の研究」や「自白の心理学」、「冤罪はこうして作られる」などの書籍を例にあげて読んでみてほしいと女性に頼むのだ。
    設定も展開も、そして結末も意外性があって面白かった。
    もう少しだけ深く掘り下げていればもっと面白かっただろうに・・・という思いもあるけれど、結果的に冤罪で裁かれた柏木をめぐる事件の顛末はいろいろと考えさせられるものがあった。
    人は愚かだ。
    目の前のことを先送りにしてどうにかその場をしのげればいい。
    そんなふうに考えてしまうことはよくあるだろう。
    けれどそのツケは必ず自分に戻ってくるのだと、物語を読んであらためて思った。

  • 良心の呵責、保身、自分本意など、人間の業がしっかり描かれており、読みながら自分までアイタタタ(。>д<)

  • 懲役15年の刑で刑務所に入った柏木。その執念の凄さたるや。ここまでくると共感は出来ないし、同情もできなかった。

  • 230119

  • 審判といっても、バスケットボールではありません。

    日本でも裁判員制度が始まりました。

    今年の候補には、入りませんでしたが、いつ自分に順番が回ってくるかはわかりませんよね。

    自分の判断で誤審になったらどうなってしまうのだろうか?なんてことを考えずには置かない作品でした。

    この作品自体は、少女誘拐殺人事件で容疑者となり、20年の懲役を終えた元青年が、自分の無罪を証明するために、ホームページを立ち上げ、そして事件の真相に迫っていくというもの。

    冤罪の影にある警察の不正、元青年の深い思い。

    そして二転三転する犯人像。

    最後に現れる真犯人が、まさか・・・。

    話の設定にかなり無理があるものの、真実を追い求める青年と青年を自白に追い込んだ、元刑事、そして被害者女児の母親。

    これらを中心に人間模様を描いていく。

    そして冤罪の青年は最後にどうなってしまうのか?事項までに逃げ切った真犯人の心持は。

    冤罪と懲役という深いテーマを、裁判員制度が始まるこの時期に読めたことで、自分が裁判員になったときに、何を考えなければならないかの判断基準が変わったように思います。

  • 一言で言えば「惜しい」作品。
    題材や冒頭の展開はかなり期待させるものがある。でも、それぞれの人物の描写がなんとなくしっくりこないというか、納得いかないというか、それをミステリーの部分に活かしているかというと、あまりそうでもないように感じられてしまい…
    それでも、最後まできっちりと読ませるだけのものはある。損はしないけど物足りなさは残るかも、という不思議な作品なのかも知れない。

  • 何かこう、リズム感がなかった。

    一つのセリフにこんな説明補足みたいなのいる?
    小説には読み手それぞれの受け方があるのだからそれでいいんじゃないのかな。
    それを作者が今のセリフはこういうことだからね、分かる?といったような説明を記すのでサクサク読みたいのに止められる感じが不快でした。
    それでいてラストはえっ、じゃあ、あの件はどうなってんの?という疑問が・・・

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著者プロフィール

1943年東京都生まれ。東京大学理学部卒。82年『ハーメルンの笛を聴け』で第28回江戸川乱歩賞候補。85年『殺人ウイルスを追え』で第3回サントリーミステリー大賞佳作。〈壮&美緒シリーズ〉に代表されるトラベルミステリー、『自白の風景』『黙秘』『審判』『目撃』『無罪』などの法廷ミステリー、『「法隆寺の謎」殺人事件』『人麻呂の悲劇』などの歴史ミステリーにも定評がある。

「2023年 『殺人者 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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