沙門空海唐の国にて鬼と宴す〈巻ノ1〉 (徳間文庫)

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  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198931193

感想・レビュー・書評

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  •  空海関連3冊目?高村薫『空海』が空海自身というより、真言密教の歴史と変遷、現代における空海や密教の存在価値を語ったノンフィクションで非常に重かったので、少し軽めと思って読んでみたが、お手軽過ぎた。マンガだ!

     人気作家の筆による小説なので非常に読みやすくエンターテイメントとしては優れていて、いい時間つぶしにはなる。読書の楽しみのいくつかは満たしてくれることは間違いない。中学生で読んだなら「空海、すげー! かっちょええー!」と寝る間を惜しんで読んだだろうな。

     北方謙三の『三国志』も吉川英治版を過激にデフォルメし、伝説のような甘い味付けの箇所を排除したハードボイルドタッチでワクワクして読んだ。続く『水滸伝』シリーズになってくると、だんだんそれが大仰になり、「あれ?これって『北斗の拳』を文章で読んでるようなもんか?」という感じになったもの。 なんとなく、この『空海』もそのニオイがする。

     確かに、遣唐使で唐の国渡った間の記録がまったく残ってないという史実に基づいて、大陸に渡ってから書き始めるのは面白い。同じ空想の物語としても日本国内で数々の弘法大師伝説を物語化するよりはスケール感があって楽しい。
     三筆と並び称された橘逸勢が、なるほど年代もほとんど一緒でいいコンビとなるわけだ、というのも本書を読んで初めて気づく(空海774-835年 逸勢782-842年)。二人の性格付け、人物造形も物語の主要登場人物として申し分なく筆者の手練れぶりがいかんなく発揮されている。

     が、唐の国に渡り長安にたどり着き、大事件の端緒となるエピソードとして柄杓の精霊や妓楼での餓蟲(邪気のようなもの)退治などの話が出てくるあたりで「あぁ、これって『陰陽師』」!?となる(きっと、誰もが気付くだろうな)。もうそうなると橘逸勢が伊藤英明にしか見えなくなってきた(笑)
     非常にテンポよく読める。その他の登場人物も魅力的で、伏線のはり方、物語の組み立てに破綻はない。単行本を手に取ったときは500ページほどのボリュームに一瞬ひるんでしまうが、会話を多用した文章は思いのほかサクサク読めてしまう(句点ごとの改行でもあり)。巻ノ一で実質ボリュームは通常の小説の文庫本200ページ分くらいか?

     この巻ノ一も物語の端緒に過ぎず、面白そうな出だしであり、勢いを駆ってそのまま読み進めようかとも思うのだが悩むところだ。恐らく、このまま読み進めば、それなりの時間つぶし、文字を読む快感、一定量のカタルシスと満足感は得られるだろうと予想する。でも、それって文章で『北斗の拳』を読み切った―! やったね、鬼退治完了!ってくらいのもんだろうな、というのも想像できてしまう。

     巻ノ二以降は、悩ましいところだ。巻ノ四まであるし。。

    (追記)
    なんだかんだで巻ノ四まで読了。冗長な巻ノ二の後半から巻ノ四の序盤部分はできればカイツマンデ欲しかった。表題の通り、鬼との宴がクライマックスではある。死者と生あるものが一堂に会し舞を舞う、これはお能の話?(能の形が完成するんはこの時代よりもっと後だけど)。 僧(ワキ)=空海がいて、霊(シテ)=玄宗、楊貴妃の時代の人物がいて、最後に成仏、鎮魂される様は夢幻能の世界だね。
    やはりマンガ感は否めなかったが、読後感は悪くない。
    著者の自画自賛の”あとがき”は要らないけど。

    描き出して(1987年から)本になるまで(2004年)、足掛け18年という年月というのはスゴイ。空海の話として書きはじめ、書いているうちに、安倍仲麻呂や楊貴妃のクダリを思い付き、どんどん話が伸びていったというのも(あとがきより)週刊少年マンガ(ジャンプ的)のようでもあるのだけど(苦笑)。

  • 西安旅行のおともに。
    晴明と博雅じゃん!と思ったのは絶対私だけじゃないはず…

  • 若き空海、怪異と出会う

    【内容】
    唐にやってきた空海は相棒の儒学者逸勢とともに不思議な事件に対することとなった。

    【感想】
    そこそこ分厚い一冊でまだ最初の事件はとっかかり部分かなあ。なかなかたいへんですが読むのがしんどいというような感じではないのでゆったりゆったりやってくれればいいかなあと思います。(2013年06月15日読了)

  • こんなに面白いと思わなかった。四巻まで揃えてから読み始めればよかった…。

  • 今まで見知ってきた“弘法大師 空海”のイメージが、ガラッッと変わった

    そげん面白か人やったとか スゴかお人やぁ  と♪

  • 陰陽師の読者はマンネリ化を感じるかも。
    登場人物と場所が変わっただけ?
    でも、この人の”語り”は何処か心地よく読みやすいのは確か。

  • 空海の飄々とした感じが素敵。

  • 『空海の風景』と『餓狼伝』は我が偏愛の書。司馬遼太郎は終生、格闘小説を書かなかったが、夢枕獏は空海を描いた。司馬遼とはまったく異なった書き手である夢獏が空海という日本史における突然変異とも言える孤高の天才をどう描くが興味を持って読む。空海の前半生を省略して物語はいきなり唐の国にて幕を開ける。スーパーバイオレンス伝奇の巨匠が描いたにも関わらず空海が爽やかな青年なのが少し意外。『風景』の空海はもっといかがわしさに満ちていた。脇役が自己増殖して収拾がつかなくなるのが夢獏。はてさて空海は唐の都でどうなることやら。

  • 読み始めて思うのは、「唐が舞台の『陰陽師』」。
    この本の空海と橘逸勢の関係が、『陰陽師』の安倍晴明と源博雅の関係にそっくりなのである。

    しかし、橘逸勢は才能もプライドも人並み以上にある人物なので(ただ、空海が常識を逸した才能を持っているので、彼に比べると逸勢の才能がかすんでしまうのである)、そんな彼が空海に説明を求める際に「俺を騙すなよ」と念を押すのが面白い。
    確かに空海の言うことは突飛すぎて(奇抜というわけではなく、物の考え方が「日常」を超越しているのだ)、聞いていると全く違う価値観に戸惑ってしまう。その面食らう感覚を「騙す」という逸勢の気持ちはよくわかる。
    この逸勢の人物造詣がよくて、彼が空海と会話することによって、空海の物事のとらえ方を上手く説明しており、物語がテンポよく進んでいく。

    1巻の時点では、まだまだ物語は序章というところ。
    この二人に楊貴妃はいったいどう絡んでくるのかな?

  • 空海のキャラクターが飄々としていていい。
    でも、空海と橘コンビが陰陽師の2人とキャラ被ってる…。書きやすい組み合わせなんでしょうな。
    橘逸勢なんて日本史でちょっと聞いたことがある程度の人物だったけど、この話での橘逸勢は素晴らしいツッコミ要員で好感が持てた。

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著者プロフィール

1951年、神奈川県出身。第10回日本SF大賞、第21回星雲賞(日本長編部門)、第11回柴田錬三郎賞、第46回吉川英治賞など格調高い文芸賞を多数受賞。主な著作として『陰陽師』『闇狩り師』『餓狼伝』などのシリーズがあり、圧倒的人気を博す。

「2016年 『陰陽師―瀧夜叉姫― ⑧』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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