空色勾玉 (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (541ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198931667

作品紹介・あらすじ

輝の大御神の双子の御子と闇の氏族とが烈しく争う戦乱の世に、闇の巫女姫と生まれながら、光を愛する少女狭也。輝の宮の神殿に縛められ、地底の女神の夢を見ていた、"大蛇の剣"の主、稚羽矢との出会いが、狭也を不思議な運命へと導く…。神々が地上を歩いていた古代の日本"豊葦原"を舞台に絢爛豪華に織り上げられた、日本のファンタジー最大の話題作。

感想・レビュー・書評

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  • こちらはフォロワーさんのレビューで知った作品
    ファンタジーが好きなのに日本のものを読んだことないことに気づき、これは読まなくては!…というきっかけ

    ”神々が地上を歩いていた古代の日本“豊葦原”を舞台に絢爛豪華に織り上げられた、日本のファンタジー最大の話題作”とのこと!

    古事記を多少かじったのでその比較が面白い!
    天照大御神と月読命が照日王(てるひのおおきみ)と月代王(つきしろのおおきみ)
    月読命は古事記ではほとんど触れられないため、こちらの小説ではなかなか面白く楽しめた
    二人は似た者同時ながら対称の存在
    照日王(てるひのおおきみ)がだいぶ天照大御神より男っぽくて勇ましかった
    稚羽矢(ちはや)が須佐之男命(スサノオノミコト)
    荒ぶる神のイメージだが、ここでの稚羽矢はどちらかと言うと少女のような世間知らずのイメージでこのキャップも意図的なのか面白い
    輝の大御神(かぐのおおみかみ)がイザナギ
    闇の大御神(くらのおおみかみ)がイザナミ
    黄泉の国へ行ったあたりも同じ設定

    さて、本書は「〈輝 かぐ〉の大御神の御子と、〈闇 くら〉の氏族とが激しく争う戦乱の世」という設定なのだが、要は古代の日本“豊葦原”と天上の神々の争いという感じか
    そんなの天上の神々が勝つのが当然となっては面白くないため(?)
    闇(くら)では、姉や兄と同様に「変若」(不死)の能力をもつ末っ子の稚羽矢(ちはや)や大蛇の剣、そして実は「水の乙女」の生まれ変わりである主人公である狭也(さや)、闇の大御神(くらのおおみかみ)などが中心となり、戦う

    本当の自分を知り、運命に翻弄されながらも自分らしさを失わず生きる狭也(さや)はすがすがしいし、誰よりも稚羽矢(ちはや)が人間界に触れ、成長していく様は感動を覚える(しかし稚羽矢(ちはや)のキャラクターがあまりにも変貌を遂げすぎで、若干少女漫画っぽさは否めないが…)

    各キャラクターたちの個性の強さも面白いし、垣間見れる人柄も魅力あふれる
    善悪だけではない彼らの背負った宿命と、「生きる」ための戦いが物悲しくもあり、勇ましくもあり…
    永遠の命である神と無常な世界で生きる八百万の神と人間たち
    どんな立場であろうとも、変えられない宿命を背負っており、その中でいかに生きるか…
    そうどんな場所で生まれようとも、生まれた場所で花を咲かせ散っていくしかないのだ
    大切なことを考えさせられた

    もちろんエンターテイメントとしても十分楽しめる
    電車で没頭していると一瞬自分が今どこに居るのかわからなくなる
    (こういう感覚いいですねぇ♪)

    こういう小説で日本神話を知る若者が増えるといいなぁ
    日本神話って本当に面白いんだから!
    3部作とのことなのであと2部もぜひ読もうと思う

    やっぱりファンタジーは面白い
    しかし「ファンタジー」という言葉がそぐわく感じてきてしまっているこの頃
    (少々メルヘンとフワフワ感があるように思えてしまうのだが…)
    もっとしっくりくるネーミングはないものかしらん

    • b-matatabiさん
      ハイジさん、こんにちは。
      レビュー、楽しんで読ませていただきました。
      「ファンタジー」という言葉で誤解を受けている部分ってありますよね。...
      ハイジさん、こんにちは。
      レビュー、楽しんで読ませていただきました。
      「ファンタジー」という言葉で誤解を受けている部分ってありますよね。
      結構骨太で読み応えのあるものも多いので、ジャンルに惑わされず手に取ってもらいたいです。
      2021/10/27
    • ハイジさん
      b-matatabiさん
      コメントありがとうございます。
      そうなのですよ!
      「ファンタジー」という言葉が実際と乖離している気が前からし...
      b-matatabiさん
      コメントありがとうございます。
      そうなのですよ!
      「ファンタジー」という言葉が実際と乖離している気が前からしておりまして…おっしゃる通り骨太で重厚な多くの作品がイメージだけで読み逃されてるのでは…と不安を感じますよね!
      しかしこちらはb-matatabiさんのおかげで手に取ることができました。
      ありがとうございます!
      2021/10/28
  • 光と闇の戦へと運命的に巻き込まれていく少女のお話。

    最近よく思うのは、この手の児童文学と呼ばれる作品の、どこが児童向けなのかと純粋に疑問が生じる。しかしながら、他に理由が見当たらないから仕方がない。私が10歳の心を持つ純真で、清い人間だということで十分に納得した。

    読み慣れない言葉が多い分、時間をかけて読了。
    複雑な伏線などは無いが、読了後しばらく考え耽ってみると、想像以上に難解な世界観だな、と感じた。登場人物は十分に魅力的で、物語に深みを与えている。
    主人公の少女はどこまでも純粋で、身勝手とも思える衝動的な部分も見える。
    それも一つ、抗いきれない運命の為だろうか。

    輝(かぐ)の王と、闇(くら)の王が存在し、勢力は二分されていた。
    かつて世界を創造した神々が天と地に隔たり、その子孫による覇権闘争の末期を描いている。
    死という概念が、大きなテーマであると容易に気づく。
    死を受け入れ、世代を超えてきた闇の一族と、死を持たぬ王に支配された国。

    それぞれの王の思惑が交錯していた。少女は戦いを鎮め、この世界と愛すべき人々を守ることに命を懸けてゆく。

    一つ一つの選択が、残酷にも天秤に掛けられたように世界の行く末を左右した。
    そしてクライマックスは美しく、読者として救われた。

    読了。

  • 唯一ハマったファンタジーです。

    小中学生の時に図書館でファンタジーを読み耽っていたことが思い出されます。

    ぜひ続編も読んでみたいです。

  • 日本神話をベースに描かれたファンタジーです。
    所謂“ティーン向け”ではあるのですが、神話もファンタジーも好きなので楽しく読ませて頂きました。

    天上の輝(かぐ)の大御神と地下・黄泉の国の闇(くら)の女神の対立から、地上・“豊葦原”を制定しようとする輝の御子達が率いる光の軍とそれに反発する闇の一族が争う世が舞台です。
    幼少の頃に孤児となり、村で養父母に育てられていた主人公の狭也は、実は闇の巫女姫だった事が判明するも、迎えにきた闇の一族達を拒み、光の御子の弟君“月代王”の元に行くことを選びます。
    行った先の宮で、“大蛇の剣”の守として幽閉されていた、光の御子の末弟・稚羽矢と出会ったことから、狭也のそして“豊葦原”の運命が動き出します・・。
    未熟で、変な部分で強情な狭也は、キャラとしてどうも好きになれなかったのですが、それを補うように稚羽矢が魅力的でした。登場当初は子どものようだったのに、物語が進むにつれて、目覚ましいほど成長して“人の心を知る神の御子”として強くなっていきますし、それでいて天然なところも良いですね。
    あとツンデレキャラ科戸王(想いを寄せる狭也に塩対応されて不憫・・結構いい奴なのに)、身体も心も寛大な伊吹王、そして忘れちゃいけない茶目っ気がありながらご活躍の鳥彦・・・と、狭也以外のキャラは割と好きかもです。
    結局、世界は陰陽あってこそ成り立っているわけで、狭也と稚羽矢が光と闇の架け橋となってくれそうな、希望のあるラストは良かったです。
    この“勾玉”の物語は三部作との事で、あとの二作も読んでみたいです。

  • 王道和風ファンタジー。これでもか、と言わんばかりのてんこ盛り状態。敵味方が入れ替わったり、仲間の死であったり、甦りもあり、魔法とは言わないが神の力があり、当然恋の話もあり。あらゆる要素が詰まっています。さすが日本の女性ファンタジー作家三羽鴉のお一人。

    元々気にはなっていたのですが、読書メーター仲間さんのおすすめもあり、やっと読めました。確かに人に薦めたくなる1冊です。

    RDGが比較的ゆっくりと進んでいるのに対して、こちらは次から次へとイベント発生で、一気にラストまで駆け抜ける感じ。

    三部作ということで、1冊目では完結しないと思っていたら、一応完結していますよね、これ。第二部はどんなつながり方をしているのかな?
    いきなり狭也が切られてビックリ。そこから先は稚羽矢の活躍や狭也の想い、鎮めの説得にうるうる涙目で最後。感動のまとめでした。

    強いて言えば、イザナギ・イザナミのネタ話があるせいか、ちょっと心に残りにくいところはあったかな。

  • 上橋菜穂子から辿り着いた『空色勾玉』。

    古事記と日本書紀をベースにしたファンタジー。
    文庫なのにかなりの厚み。でも、その厚みをものともしない面白さ。

    永遠の命を持つ輝の者と、死を尊重する闇の者。変わらない美しさに憧れる少女と、変化があるからこそ生を見出す少年。
    どちらの気持ちも、よく分かる。

    最初、歌を贈り合って男女が結ばれるという祭のシーンがあまりに艶やかで、思わずドキっとするところで物語に引き込まれ。

    輝と闇がイザナギとイザナミを祀りながら戦い、その果てに何が待つのかを期待しながら見届けたクライマックスが、ものすごい!
    それまで、ぽーっとした印象であった稚羽矢が、序盤は采女達をメロメロにさせていた美青年の月代王なんてメじゃないくらい格好良くてたまらない成長を遂げるのだ。

    古事記も日本書紀もしんどいよ、という古典嫌いの人にも是非読んで欲しい。きっと、原典に立ち返りたくなるほどの魅力があるから。

    とりあえず、稚羽矢かっこよすぎ。

  • RDGが面白かったので勾玉三部作にも手を出してみました。
    RDGは続きが気になってしょうがない感じでしたが、こちらは一冊でずっしり。満腹になれます。
    古事記もずっと気になっていたので、多少触れた気になれるのも嬉しいです。
    改めてファンタジーっていいなと思いました。

    青空文庫で古事記物語を参考にしつつ読んだのですが、
    古事記のイザナギとイザナミが、こちらでは輝の大御神と闇の大御神で、
    アマテラスとツキヨミとスサノオの三貴子が、輝日王、月代王、稚羽矢なんですかね?
    狭也だけは完全オリジナルでしょうか。

    とにかく登場人物が神様やら王様なのが乙女心をくすぐります。
    勾玉や剣、鏡などのアイテムも夢があっていい。

    おおまかに言えば、輝と闇との氏族争いですが、輝の御子であり大蛇の剣の主である稚羽矢と、闇の氏族である狭也が心を通わせ、行動を共にし、その結果どう転ぶのかが終始鍵を握っていたように思います。

    「闇」という暗いイメージの者のほうが、人間らしく、主人公もその闇の人間だったのが不思議で、どっちが正義なのか?と惑わされましたが最後まで読んで納得。

    あと鳥彦が十二国記の楽俊みたいでかわいかった!

  • 先に薄紅天女を見つけてそれを読もうとしたらどうやら三部作ということで、この本から読み始めた。
    日本神話をベースにしたものは好み。描写が細かく、私の好きな古代日本ということもあって、とても入り込みやすかった。つい最近まで殺伐した描写のものばかり読んでいたこともあってか、日本の自然を柔らかく表現した描写には何だか懐かしいものがあった。言葉が綺麗で優しい。日本語の、日本にある古来の自然の美しさに触れた気がする。
    物語としては稚羽矢が出てきてからがぐっと面白くなった。二つの世界が出てくるけれど、それぞれにそれぞれの美しさがある。だから互いに無いものに惹かれるんだろうな。そちらになれないと分かっていながら。だから切なさが所々にある。
    稚羽矢が狭也と出会い、そこから徐々に成長していく過程がすごく好き。狭也が攫われて、自分を顧みずに助けに行きたいと強く願う彼を目の当たりにした時、登場したばかりの時の彼とはもう違うのだと何だかはっとした気がした。主人公の説く自然のあり方や自分のあり方がとても良かった。自然を見て自ずと浮かんでくる感情を言葉したらきっとこれなのだと思った。

    照日王は自分の父親と自分の在り方を信じ続けた純粋な人なのだろうし、月代王は輝にいながら闇に憧れ、でも、そうはなれないと覚っている切ない人。
    人が亡くなるところは泣きそうなほどに辛い。
    それでもハッピーエンドで終わって良かった。あとはあの二人が、その周囲の人々が幸せな未来を歩んだと信じたい。

    登場人物では稚羽矢と科戸王、伊吹王、鳥彦が好き。とくに鳥彦が現れると、どんなシリアスな場面でもほっとした。稚羽矢と狭也の掛け合いも好きだった。

    本当に綺麗な、面白い話。時間が取れた時にでも次のシリーズも購入して読みたい。読み終えてからふと思い返すと、感動がじわじわと来ていつの間にか本を手に取って好きな場面を読み返している。

  • 舞台は豊葦原を創造した神々が天地に分かれ、それぞれの末裔である輝と闇の氏族が争っていた時代。「闇」の姫として生まれながら「光」に焦がれる少女と、不死の「光」でありながら「闇」を夢見た少年が出会う古代ファンタジー。

    初めてこの本と出会ったのは中学生の頃。屋内で静かにしているよりも外で飛び回っている方が好きだった当時の自分にとって、図書館で借りたこの分厚い本を一週間で読み切ってしまったのは今でも驚き。

    児童文学というカテゴリーであっても、死生観や無常観が根底にあって大人が読んでも深い。自然の描写がとても綺麗。

    ジブリ作品みたいなところがあって、読むたびに新しい発見があるけど、そのたびに失くしてしまったものがあるように感じられる作品だと思う。

  • 古事記と日本書紀をもとに描かれた壮大なファンタジー。
    文体も読みやすくするすると読めるし、話の筋がわからなくなるなんてこともなく文句なしに楽しめました。

    カグノミコトとクラノミコト。
    光と影。
    どっちがよくてとかではない。
    分かり合えないものらがわかりあうとは。

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著者プロフィール

荻原規子・東京生まれ。早稲田大学卒。『空色勾玉』でデビュー。以来、ファンタジー作家として活躍。2006年『風神秘抄』(徳間書店)で小学館児童出版文化賞、産経児童出版文化賞(JR賞)、日本児童文学者協会賞を受賞。著作に「西の良き魔女」シリーズ、「RDGレッドデータガール」シリーズ(KADOKAWA)『あまねく神竜住まう国』(徳間書店)「荻原規子の源氏物語」完訳シリーズ(理論社)、他多数。

「2021年 『エチュード春一番 第三曲 幻想組曲 [狼]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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