神獣聖戦 Perfect Edition 上 (徳間文庫)

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著者 : 山田正紀
  • 徳間書店 (2011年7月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (627ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198934088

神獣聖戦 Perfect Edition 上 (徳間文庫)の感想・レビュー・書評

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  •  『最後の敵』で日本SF大賞をとった山田正紀が受賞後第1作として発表したのが『神獣聖戦』を構成する最初の短編であった。3冊の短編集と2冊の長編で構成される連作は2つめの長編が未完(未執筆?)のまま1980年代から放置されていたが、このPerfect Editionにおいて再構成された。

     超光速達成のため、非対称航行が開発された。これは背面世界を跳躍し彼方の星域に赴く航法であるが、背面世界に入るためには人類は自身を改造し、狂人=鏡人(M・M)にならなければならなかった。背面世界では時間と空間が逆転し、内と外が反転し、ホルモンが外部へと放出され世界に影響を与える。非対称航行では航宙刺激ホルモン(FISH)を分泌する脳が必要だった。そしてそのような脳はたったひとつ、牧村孝二の脳しかなかったから、これは大文字のブレインと呼ばれた。すべての〈船〉はレインと呼ばれるその脳のクローンを搭載していた。ところが、航宙事故が多発する。原因は人類の宇宙進出を好ましく思わぬ何者かによって遺伝子に仕掛けられた罠であり、エンドルフィンが過剰に放出されるのだ。
     遺伝子に仕掛けられた罠は非対称航行のための脳となってはじめて発現するものだったが、それが人間において発現したもの悪魔憑き(デモノマニア)であり、彼らは無意識の過剰に耐えられる存在だった。そして、背面世界に存在する狂人=鏡人と虚空間にいる悪魔憑きとの千年戦争が始まった。
     狂人=鏡人たちは人間が想像もできないような眠りを眠る。それは「大いなる疲労」ともよばれるが、背面空間を統べるのは"大いなる疲労の告知者"たちである。悪魔憑きたちは"大いなる疲労の告知者"を倒そうとする。
     他方、非対称航行は重力に影響を与え、地球の自転は次第に遅くなり、地球には大いなる午後が達成される。他方、その重力によって幻想生命体が誕生し、人々を幻想の中に沈めていく。そして人類はゆっくりと滅びていく。

     ま、こんな話、というか設定が、諸短編において小出しに語られているのである。かつてはここにメタフィクションの長編を加えて、収拾がつかなくなってしまったようだ。そこで『Perfect Edition』では新たに別の話を持ってくる。諸短編では非対称航行のための実験材料とされる庭師・牧村孝二とその恋人・関口真理の物語がひとつの系譜を作っているのだが、別の世界の牧村孝二と関口真理の物語を新たに書き足して、それが上巻の大部分を占めているのだ。心理検査士の関口真理の一人称で語られる、彼女が北海道東部の永劫市の聖ニーチェ病院で患者として運び込まれる天才的物理学者・牧村孝二と出会う物語である。

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