神去なあなあ日常 (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198936044

感想・レビュー・書評

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  •  日常に疲れた方へお勧めしたい一冊。

     冒頭に描かれている「なあなあ」という言葉。意味を知るだけで、安らぎがもらえる。

     壮大な自然にかこまれた神去村。この地域で使われる「なあなあ」という言葉。村の風景。人々の暮し。・・・。

     何もかも新鮮で、物語にすっと入り込み、独特の世界観を楽しめた。

     命がけで林業に携わる男性達、胸が熱くなる程素敵だと思った。

     破天荒で女好きだけど、山仕事に誰よりも勇敢に立ち向かうヨキ。スター性があって格好いい。

     繁ばあちゃんは、可愛らしく、面白い。物語にそっと彩りをそえている。大好きになった。

  • 三浦しをん(2009年5月単行本、2012年9月文庫本)。
    この作家のジャンルは広いなとつくづく思う。そしてマニアックだと。辞書編纂がテーマの「舟を編む」、箱根駅伝がテーマの「風が強く吹いている」、そして今作の「神去なあなあ日常」のテーマが林業だ。
    「なあなあ」と言うのは「ゆっくり行こう」とか言うようなニュアンスらしい。杉の苗木が大木になるまで100年かかると言うのだから、時の捉え方が根本的に違うのだろう。
    林業なんて全く縁がない世界なんでどうかと思っていたが、なかなか興味深い話が満載だった。

    主人公は平野勇気18歳、横浜の高校卒業した日に三重県中西部山奥の神去村に林業に携わる為に無理やり行かされる。進学も就職もせずにフリーターになろうとしていたのを高校の担任教師と勇気の両親が結託して、有無を言わせず行かせたのだった。

    神去村には三つの地区があって、駅とか役所などがある下地区、一番山奥にある神去地区、二つの中間に位置するのが中地区で森林組合がある。勇気は駅から車で1時間かかるこの森林組合で20日間の研修を受けて、更に車で30分弱かかる目的の働く場所、神去地区に行く。

    物語は勇気が当初は逃げようとしていた神去村で徐々に仕事の仲間達に認められ、仕事にも魅力を感じて、よそ者の人間が神去村の皆んなに受け入れられて村の仲間だと認められていく感動ストーリーでもある。
    勇気の就職先は中村林業株式会社という従業員20名の会社だ。100年前に植林された杉やヒノキなどの大木を伐採して売るのが仕事だと思っていたら、そんな単純な仕事ではなかった。100年後の為に苗木を植林するのだが、その前に山を手入れしなくてはならない。地ごしらえ、苗木の植え付け、雪起こし、下刈り、間伐、そして枝落としに皆伐と季節によって仕事の内容は多種にわたる。

    主な登場人物は、山持ちで代々続く中村林業の親方の①中村清一35歳位、人望も厚く経営手腕にも長けていて、しかも現場にも率先して出る。中村家の所有する山は1200ヘクタールに及び東京ドーム256個分に相当する。
    そしてその妻の②中村祐子、二人の一人息子の③中村山太5歳の3人家族だ。二人は東京の同じ大学のサークルで知り合って結婚。
    裕子は東京の出身で10歳位年下の④直紀という妹がいて、神去村で小学校の教師をしている。亡くなった祖父母が神去村の中地区の出身で、その残された家に直紀が一人で住んでいる。
    勇気はその年上の直紀に恋心を抱いてしまい、告白するがあっさり振られてしまう。直紀は義理の兄になる清一にずっと気を寄せているのだ。
    神去地区の中学生以下の子供は5歳の山太しかいない。それで山太にとって一番年の近いのが勇気で、勇気は一番の遊び友達という存在になっている。山太が勇気に声をかける言葉は「あそぼう」だ。

    そして清一の片腕とも言うべき男が⑤飯田与喜(ヨキ)30歳位、筋骨隆々の大男で公私共に勇気の面倒をみる。ヨキは幼馴染で妻の⑥飯田みきと⑦繁ばあちゃんと言う祖母と3人で暮らしていて、そこに勇気は居候することになる。勇気は繁ばあちゃんに気に入られたようで孫のように可愛がわれる。
    田舎のことではあるがヨキの家も、清一の屋敷ほどではないにしろ、東京の感覚で見ればかなりの大豪邸だ。二人の家は徒歩10分位のところにあり、妻のみきの実家もヨキの家から徒歩5分で、夫婦喧嘩の度にみきは実家に帰るのが日課になっているようだ。
    清一とヨキとみきは家が近所の幼な友達、そして神去村の女性は美人ばかりのようで祐子も直紀もみきも凄い美人らしい。

    18歳の見習いの勇気は、中村清一35歳をリーダーとするチームに入る。メンバーは天才肌の飯田与喜30歳、ベテランの⑧田辺巌50歳位、⑨最年長現役の小山三郎74歳を含めた5人のチームで仕事をすることになる。
    巌には息子がいるが、山仕事を嫌って大阪で働いている。今は農協で働く妻と二人暮らしで、勇気を息子のように親身に仕事を教えてくれる。
    三郎じいさんは奥さんに先立たれて寂しいはずだが、年齢を感じさせない知識豊富な現役の働き手だ。時折清一も三郎に意見を求める。

    物語は勇気が覚えていく山仕事と同時に、季節毎のイベント祭事や神事、弔事や災害の模様が描かれ進行していく。
    切る木は杉やヒノキが多い。杉、ヒノキと言えば花粉、林業に携わる人と花粉の描かれ方が面白い。
    清一と巌は花粉症で養蜂家のような風体で作業しているのに対して、ヨキと三郎じいさんは花粉症には縁がない。勇気も今まで花粉症には縁がなかったのに山で作業中に地震に見舞われ、大量の黄金色の花粉が視界を遮り、頭からどっさり被り、高熱を出したその日を境に花粉症の仲間入りだ。

    最初の出来事は山太が行方不明になった事件だ。村中探しても見つからない。5歳の子供がそんなに遠くへは行けないはずなのに。危険な場所もある。静まり返る村人に村一番の長老の繁ばあちゃんが「村の中にはいない、神去山を探せ」という。そして「三太は神隠しに会った」と言う。
    清一は皆んなに頭を下げ、協力をお願いする。清水で身を清め、白装束で神の山、神去山に入り、無事山太を見つける。山太が歩いて行けるはずもない場所なのに。山奥の村の神秘的な出来事だが、実際に起こってもおかしくないと思わせてしまうぐらいの雰囲気を感じてしまうのだ。

    そして最初のイベントは豪快な花見だ。清一の屋敷の裏山の頂上に咲く神去桜の下に神去村全域から村人が集まる。前の日に一日で裏山までの歩きやすい道を丸太で作ったり、沢を渡る橋を作ったりしてしまうのには驚きだ。当日は朝から村人各人が料理や酒を持ち寄り、自由につつき、酒を酌み交わす。未成年の勇気も酒を断れる雰囲気ではなく、いい気分に酔っ払う。直紀へ接近するも相手にされなかった。

    6月の終わり頃、下地区に住む村田と言う爺さんが亡くなった。繁ばあちゃんが前の日にそれを予言するかのようなことを言っていた。この前の山太の神隠しの件もあり、このばあちゃんはやはり只者ではない。
    葬式には神去村全域から参列するのも隔離された社会のようでちょっと違和感があるのだが、思わず笑ってしまったのは、出棺の時に黒礼服を着た男の参列者全員が小さな三角の布を額に結びつけるのだ。勇気はこのお化けルックに抵抗するが渋々風習に従う。18歳の都会の若者にはかなり恥ずかしいのがよくわかるシーンだ。

    葬式が終わると直紀は清一の家に寄ってご飯を食べて帰ることになった。それを聞いた勇気は気が踊る。与喜の家では繁ばあちゃんが山太と一緒に留守番をしている。山太を迎えに直紀も一緒に来るかも知れない。そわそわしながらも散歩に出た勇気、偶然バイクで帰る途中の直紀にばったり出会う。そして思わず「つきあってください」と言ってしまい、「好きな人いるから。じゃ」と秒殺。しかし「諦めない、頑張るんだ」とめげない勇気だった。

    次のイベントは夏祭り。神去地区の「南の山」と呼んでいる小さな山の山腹にある「神去神社」が会場だ。夏祭りには神去村だけでなく、周辺の村からも人がやって来る。屋台は全て神去村の住人が出店する。清一の5人のチームの屋台は毎年「鰻の蒲焼き/200円」と「ミニ鰻丼/300円」だが超人気で完売だ。鰻は神去川で三郎じいさんと巌が生け捕った新鮮なウナギだ。
    早々と店じまいをすると勇気は山太にせがまれて他の屋台で綿菓子を買ってやり、金魚すくいをする。金魚すくいは全く上手く出来ないでいると直紀が側に寄って来て上手に金魚をすくう。いい雰囲気になってきたのに、勇気は直紀に清一との関係にふれた為、苛立った直紀は勇気の前から去って行く。勇気、後悔しても後の祭りだ。

    夏祭りの翌日、勇気は夏休みを貰って横浜へ帰省する。4ヶ月の山仕事で勇気は変わり成長していた。父親からはたくましくなったと言われ、前は親としゃべるのはウザかったのが、神去村での出来事をいっぱい話した。街で高校の友達とばったり会って話して楽しく、しばらく会えないと思うと寂しくてたまらなかったのに、2日で夏休みを切り上げ、神去村に戻った。直紀に会いたくてたまらなかった。

    秋の神事、「オオヤマヅミさんの祭り」が近づいてきて、その打合せの寄り合いで勇気の参加に反対する者が声を上げた。特に今年は48年振りの大祭に当たる。よそ者の神事の祭りへの参加を認めたくない人が少なからず居るという雰囲気は感じていた。寄り合いを仕切っていた清一は取り敢えず保留にする。その時どーん、どーんと遠くで低く地面が鳴った。神去山の地鳴りだ。何かが起こる前ぶれかも知れなかった。

    1週間位経った日、神去小学校の裏山が火事になった。消防と役場に通報すると同時に清一のチームは裏山へ向かう。他のチームと役割を決めて、火元の風下の木を切り倒しに行く。切り倒した向こうから火がどんどん近づいて来る。ヨキと勇気は水を被り、ホースを持って伐倒した木をまたぎ、熱気で口も開けられない火の近くまで放水に行く。赤いヘリが消火剤を散布し始めた。出火から3時間半後に鎮火した。
    山火事の後、村の人達が勇気を見る目が変わった。勇気が祭りに参加できそうだ。

    「オオヤマヅミさんの祭り」の本番は11月半ばだが、1ヶ月以上前から小さな神事は始まる。かなり大がかりな祭りだ。本番の祭りはかなり危険な行事で、繁ばあちゃんは勇気に「祭りで男らしいところを見せろ(直紀に)」と言う。今年のメド役はヨキが選ばれ、メドの居る班は祭りの中核を担う。ヨキは「この機を逃さず、男を上げろ」と言う。勇気はメドとは何か知らない。実はこの行事自体がとんでもない危険な行事で、メドは目立つがさらに危険なポジションだった。

    祭りの当日、まず深夜の2時に起き神去川に入る。11月半ばは既に冬だ。痛いほどの冷たい水の中で5分ほど清め、白装束に着替える。神去村で働ける年の男は皆んな参加だ。全部で40人ほどの男が夜の道を神去川から神去山までを歩いて目指す。麓まで1時間はかかる。そこで斧やらチェンソーを受け取り、獣道を登って行く。1時間ほどで斜面を登ると稜線に出て、そこから頂上までの傾斜は更に厳しかった。勇気は一人遅れてしまったが何とか頂上に辿り着く。
    そこには直径3mはあろうかと思われる高さ30mの杉の巨木がそそり立っていた。樹齢千年は行っていた。48年に一度の大祭とは神去山の巨木を1本切り倒すことから始まる。普段の祭りはせいぜい樹齢百年から二百年くらいの木を切るらしい。
    実は切るだけで終わらなかった。事前に半月かけて作った修羅(切った木を斜面に流す大きな樋)で千年杉を流し、途中からからは90度進行を曲げて、そこからは地面を麓まで一直線に直滑降させると言うのだ。しかもその千年杉に乗って斜面を滑り下りるという命知らずな無茶苦茶なことが始まろうとしている。
    メドと言うのは丸太の先頭近くの幹に刺した2本の角のような棒のことを言う。そのメドに手綱用に何本かの荒縄を結びつけ、丸太に乗った人皆んなが持つ。メドに選ばれたヨキは先頭のメド(角)を持つ権利が与えられ、同じ班の4人も先頭に位置することが出来る。確かに無事に麓まで墜ちずに辿り着けば男を上げることは出来そうだ。死ななければの話だが。古文書によると過去に8人死んでいるらしい。
    勇気は“絶対無理”と叫ぶが無視されて丸太の滑降はスタートする。

    ジェットコースターなんて比じゃない恐怖の滑降なのに勇気以外は楽しんでいるように見える。修羅の上から地面の上へ直滑降へターンする場所で後ろで手綱を掴んでいた一人が落っこちた。そんなこと気にすることもなく丸太は滑降して行く。
    終点の麓の広場ではほぼ村人全員、大勢の女達や引退した年寄りが丸太が滑って来るのを待っていた。祐子やみき、繁ばあちゃん、そして直紀もいた。各々用意した料理や酒、実は昼間から待っている間に既に酒盛りは先に始めていたらしい。
    山の林を出て麓広場に入って来た丸太は広場の先の神去川の崖手前ギリギリで止まる。広場にいた村人が一斉に千年杉の周りに集まって来る。こうして48年に一度だけ行われる大祭、巨木を下ろす儀式は無事に終わった。

    皆んなが勇気を褒め称える。巌さんが、みきさんが、繁ばあちゃんが言葉をかける。そして三郎じいさんが「メドを掴んで立つ勇気の姿を見たおなごは皆んな惚れたはずや」と直紀をちらちらとうかがっている。繁ばあちゃんが「この隙を逃すねぃな、勇気」とせかす。するとヨキが「メドの権利を勇気に譲る」と言う。「メド役の男は好いたおなごに、まぐあいを申し込めるんや!」と胸を張って言い切った。
    勇気が直紀に「直紀さん」と声をかけると秒で「いやや」と返ってくる。取り敢えずデートの約束だけは取り付けることに成功する。固唾を飲んで成り行きを見守っていた三郎じいさんと巌さんが「よっしゃあ!」と拍手した。気の早いことに繁ばあちゃんが「これで子供ができれば、村の過疎化に少し歯止めがかかるでな」と言う。
    勇気は「メドの権利は大事に取っておく」と言うと、直紀は「取っといても、使うあてもなく腐るだけで、無駄だと思うで」とそっけない返し。勇気は「このつれなさが、たまらないんだよなあ」と思ってしまうほど粘り強さが身についていた。
    長い年月をかけて木を育てる林業は、どんな風雪が襲ってきても悠然とかまえていられる性格じゃないと、とても勤まらない。
    それに自分を支えてくれる、信頼してくれる、そして頼りにしてくれる仲間がいる。勇気は立派に林業の男になっていた。

  • 面白かった!!
    三重と奈良の県境の林業の村に高校新卒で就職した都会の少年/青年が村に馴染み受け入れられていくストーリー。奈良県の東と西の違いはあれど、故郷と似たような雰囲気を感じ、あるあるやな、、と、妙に頷きながら読んだ。クライマックスは御柱祭的な神事で基本通りの王道的面白さ。ちりばめられた重い題材をそうと感じさせないように非常にソフトにうまく描き出している。

  • 高校を卒業したばかりで、横浜の街からいきなり三重の奥地の田舎の林業の世界に放り込まれた、勇気が主人公。
    ネットもまともに通じない、娯楽もなんにもない世界に戸惑い、難しい林業の仕事に嫌気がさし何度も脱走を試みながら、
    無鉄砲な山仕事の天才・ヨキや村の親方でやり手の材木会社の社長・清一さん、ベテランの三郎さん、巌さんの中村班チームで鍛えられ
    徐々に仕事にも慣れはじめ、森を守り、木を切り出し、生計を立てる神去の日常にも溶け込んで成長していく物語。
    クライマックスは48年に一度の大祭。大木を切って運び出す描写は迫力がある、、というかおっそろしい。

    勇気が暇つぶしに見つけたパソコンで書いているという体で、結構ポップな語り口。
    「なあなあ」はいろんな意味を持つ言葉で、悠久といえる森に住む神去の人々に根付く価値観。
    林業に関する知識が疎いせいで、働く姿や仮設で作る木道?などの描写はイメージしきれない部分もあるものの、各キャラが魅力的で面白くサクサク読めました。

    林業ってほんとうに地味で苦労の絶えない根気のいる商売だろうと思いました。何十年もかけて森を育てて、火事でもあれば一瞬で資本はなくなる。
    神去も相当に限界の田舎で、若い人も全然いなくて、これはけっこう厳しいよな、と思う。
    うーん、なんだかんだ前向きな勇気だけど、本当にこの街でがんばっていけるんだろうか。
    日本全国の勇気のような若者を応援したくなります。

  • まるでノンフィクションのような感じで読み終えた。日本では若者の姿が消え老人だけになった村が、いずれは限界集落になっていく現実。都会育ちの青年(勇気君)が自分の意思ではなかったけれど、山林の仕事に就く羽目になり、都会では経験出来ない事に遭遇していく。自然に対し畏怖の気持ちは忘れてはならないものだけれど、便利な暮らしに慣れきった私達はつい忘れている様な気がする。

  • 一人の青年が林業の世界に飛び込んで、様々な経験をしながら成長していく物語。情景描写や仕事の様子が目に浮かび、とても良かった。温かい気持ちになります。オススメ!

  • 2020(R2)6.22-6.26

    安易な理由で高校の先生と母親から林業への就職を決めつけられ、抗うこともできないまま、三重県の山村で働き出した若者の物語。

    話がとんとん拍子に進みすぎて、今どきの18歳がこんなにも簡単に林業に馴染むのか?という最大の疑問点にこだわらなければ、個性豊かな人物たちの楽しい物語の世界に入り込める。

    その主題は続編の『神去なあなあ夜話』で明らかになるが、大自然の中、不便ではあるけど幸せな日々を送る神去の人たちの生き方に、主人公が染まっていく感じが素敵だった(多少ご都合主義的なところはあるが)。

  • 山で生きて山で死ぬ。山仕事は仕事じゃなく、生き方そのもの。
    壮大な自然に対峙した時、人間はなすがままになるしかない小さな存在だ。
    「なあなあ」という言葉が持つ奥深さを感じる物語でした。

  • 横浜で生まれ育ち、高校卒業後はフリーターになろうと考えていた勇気は、両親と担任教師の陰謀?で三重県の山奥にある神去村へ送りこまれる。意図せず林業に携わることになった勇気自身による神去村での1年間の記録という形になっている。四季ごとの山の様子、林業のこと、村の行事、村人たちとの交流が鮮やかに描かれている。神去村の人たちの勇気を温かく見守る様子にほっこり。林業を生業とする彼らの山や生き物への敬意、「なあなあ」の精神で厳しい自然の中を生き抜くタフさも心に響いた。

  • 将来を何も考えていない主人公が、担任教師により遠く離れた三重の山奥の林業に送り込まれる。逃げることばかり考える主人公が、徐々に神話の世界の様な山村に馴染んでゆく。若い人がいない山村で、自然の中の情景が次々と出てくる。勇壮な神事も諏訪の御柱を思わせてドキドキさせられる。恋愛の話しを含め主人公のその後が気になり続編を注文してしまった。

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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