- Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198937423
作品紹介・あらすじ
若者たちの不安を煽るように、仏教推進の阿部上皇派が大学寮出身者を排斥し始め、儒教推進派の今上天皇・大炊帝との対立は激化していった。斐麻呂が尊敬する桑原雄依は、儒学派から崇仏派に寝返った高向比良麻呂を襲撃し、斬刑に処された。雄依の無二の親友で弓の名手であった佐伯上信は、義に殉じた雄依の心を胸に、大炊帝とともに最後の戦に臨む。権力や理不尽の中で生命を賭して「義」を貫こうとする大学寮の学生たち。彼らの思いはどこへ向かう?
感想・レビュー・書評
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恵美押勝の乱後、大学寮の学生たちは散り散りになりつつも、理想と信念の為に、それぞれの人生を賭けていく。
血生臭い戦争描写もあるので苦手な人は注意。
面白かったですが、人物描写がちょっと浅いかなという気はします。なぜ、そう信じたのか、どうして気持ちが変わったのかとかが、さらっと書かれている時があるので、その辺がもう少し深く描かれていれば、もっと感情移入できたかなぁと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦争の始まりは正義
女帝の(同じ女として痛恨の極みだけど)まさに女らしい、女のダメなところだけが際立った人間味と、権力を上り詰めたがために自分の礎から逸れてしまった事に気が付けず、立場を固守するために帝を盾に立ち上がった押勝。
お互いが正義と思ってることが、端から見ると完全に自分たちのことだけで全く義がない。
そこに巻き込まれる義を持つ人々。
例え負けて死しても、死ねなくて生き残ってしまっても、道を違えて反対側に立ってしまっても。
芯に義が植え付けられていれば、それでも何か行動を起こし、未来を拓くという。
責難は成事にあらず。
未来を拓く為の行動と、自分が納得できる行動を取れる為の知識や信念が大切だと思った。 -
奈良時代の官僚制度が理解しにくい。
広子と赤土が自分の意志で人生を進んでいるのがいい! -
(Yodobashi電子書籍版)
なるほど、下巻はかなりフィクション色が強くなるのか。歴史とはかけ離れてきている部分がちょっと引っかかるけど、面白さは増す。これが奈良時代と思われるとちょっと困るけど。その時代らしさをまとったパラレルワールド小説としては一気に読める面白さ。まあでもこの著者の奈良時代物は、読んでいてどうしても細かいところでそれはどうかなという部分が出てくるのでもういいかな。(へたに学生時代に続日本紀などをかじったもので…) -
2019年ベストの小説。
国を思い、義を貫く若者たちの生き様を描いた奈良の時代小説。
■各人物の義を通す姿が熱い
斐麻呂、雄依、上信を中心に仁義、仲間を最後まで優先させる姿に心惹かれる。それ故に政変に巻き込まれ、生まれる悲劇がより悲しく、涙を誘ってしまうのだと思う。
また、義を貫く彼らへの単純な憧れの気持ちが強い。最も好きなキャラクターは光庭で、同じ気持ちやプライドはあるのに、現実を見ると冒険はできず、保身に守ってしまう。そんな自分が情けなくてならない。この苦しむ姿は多くの現代人が共感するところだと思う。そこを作者は否定せず、そういう人も必要だと上信に言わせるのも憎い演出。同じことは清野にも言える。途中までは憎たらしい清野も冷静に考えれば決して批判できない。
■格言の引用が何よりも良い
p193与に学ぶべきも、いまだ与に道を適くべからず。与に道を適くべきも、いまだ与に立つべからず。与に立つべきも、いまだ与に権るべからず。
→まさにその通り。同じ信念でも下す決断は違うし、それは誰かに否定されて良いものではない。
p341滄浪の水、清まば、以って汝が纓を濯うべし。滄浪の水、濁らば、以って汝が足を濯うべし
→清濁に身を委ね、柔軟に生き延び、次の機会を待て。
まだまだ、赤土と斐麻呂の関係やそこにある奴隷制度、差別問題、磯部王や、山部王(桓武天皇)など、語ろうとすれば語り尽くせない、盛りだくさんの小説。 -
涙なしには読めなかった。。。それぞれがそれぞれの義を貫く姿に何度胸が熱くなったことか。1人1人の生き様が鮮明に心に焼きついた。