おもいでエマノン: 〈新装版〉 (徳間文庫 か 7-4)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198937713

作品紹介・あらすじ

異国風の彫りの深い顔立ち。すんなりと伸びきった肢体。ジーンズにナップ・サック。ながい髪、おおきな瞳、そしてわずかなそばかす―。彼女はエマノン、ぼくが出会った不思議な少女。彼女は言った、「私は地球に生命が発生してから現在までのことを総て記憶しているのよ」と。彼女の口から紡ぎだされる、母から娘へと伝えられたさまざまな『地球』のおもいでたち。
地球の意思に導かれ、旅をする彼女の軌跡を描く人気シリーズの原点。

感想・レビュー・書評

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  • とても有名な本なのですね。
    読み放題になっていたので手に取ってみました。
    時代を感じさせない、SFさをあまり感じさせない優しいお話です(宇宙戦争なんて出てきません)。
    構成はショートストーリーの集まりになっていて、どこからでも、どの巻からでも読めるようになっています。エマノンは、旅をしながらいろいろな人と出会い、自分の ”おもいで” として記憶していきます。それが彼女の旅、なのでしょう。

    原始時代、まだ単細胞のような時代、というようなくだりもでてきます。
    小さな生物は、なんのために、どうやっていきているのか、単細胞は1つで1つの生命なのか、と考えるとやっぱり違うように思います。
    今年のベスト本として挙げられる、植物について書かれた本「樹木たちの知られざる生活」で、樹の根本では、菌糸が樹とネットワークを作り大きな生命体として機能している、と書かれていました。
    生物の単位が1個体だ、というのは狭い考えだったのだと改めて思います。
    ウィルスも1つ1つが生きているのではなく、連携してひとつの世界を創っているのかもしれません。共生、とは思いたくはないですけれど、進化のために必要なものなのかも。

  • 地球に生命が誕生してからの総ての記憶を持ち続ける少女エマノン(=NONAME)。
    彼女が旅する先々で出会う人との話。

    中にはエマノンと同じく、普通の人間には持ち得ないような能力があるキャラクターも登場するのだが、人智を超えた存在への昇華には皆否定的であるのが印象深い。
    某大な力を扱うのに、人間の身体では容量が少ない。なのに、どうして彼等は「人間であること」に拘りを持つのだろう。

    この作品はシリーズ化されており、一話完結で非常に読みやすい構成となっている。
    記憶というのは、非常に曖昧なものである。
    しかしエマノンの持つ、種としての悠久の記憶は信憑性がある(設定になっている)、彼女もまたそれを持つことに対して疑いがない。
    彼女の抱える疑問は「なぜ、それを私が持つのか」という点に終始している。

    人が「覚えている」、または「忘れる」ということの不思議を考える。

  • 2011年5月16日漫画版を読み終えてから
    「是非活字で読みたい!」と思っていたから
    ★は甘めかもしれない。
    表題作のなんともいえない空気の漂う感じは
    この短編にあう音楽を見つけたいのだが見つけられない。

    切なさをまとったロマンティックな時間と恋愛系の
    「ゆきずりアムネジア」「あしびきデイドリーム」
    MADな感じの
    「さかしまエングラム」「うらぎりガリオン」
    超能力者の意味を追う「たそがれコンタクト」
    それらの中間に位置する「とまどいマクトゥーブ」
    人類の存在の方に中心を置いた「しおかぜエヴォリューション」

    あたりはずれはあるけれど、これから3ヶ月連続で
    エマノンに会えることが、まずは幸せ。

  • 鶴田謙二さんのイラストに惹かれて読んでみた。
    短編集で読み易い。
    エマノン多分何人もいたんだと思う。
    どれかをどれだかわからないけど、関係なく同じ人格何でしょう。
    2回くらい結婚してるのか。
    特殊な人何人もいた…
    いつエマノン出てくるのか、どういう役割ででてくるのかわからなくて少しドキドキしながら読んだ。

  • あてどなく旅に出たくなる作品。

    時系列が交錯しているようで、次巻以降のどこかのエピソードと繋がっていると思われる部分があったりする。

    身体こそ代替わりするものの膨大な生命の記憶を持ち続けているエマノンにとって、その時代時代で出会う人々はみな、通り過ぎてゆく存在になってしまうのだろうか。

    それが例えどんなに大事な約束を交わした相手だとしても。

  • 読んだのは1983年刊の単行本。

    【感想】
    ・長年気になっていた作品をようやく手にした。
    ・鶴田謙二さんのファンなので彼の絵がカバーの文庫本をと思ったのだが最初の形で読みたくもあったので単行本を。カバー絵は新井苑子さん。一九八三年、まだ活版印刷の時代。本って感じがする。
    ・今となってはちょっぴり古くさい感じはする。
    ・「キノの旅」の原型って感じもある。
    ・三十年前に読んでたら耽溺してたかも。

    【一行目】一九百六十七年といえばジェミニ計画が一段落した翌年で、まだアポロも月に着陸していなかった。

    【内容】
    ・地球に生命が誕生してから現在までの記憶を持っているエマノンと、彼女に惹かれた男たちのせつないお話。
    ・不死者譚もののバリエーションのひとつと言える。
    ・大型フェリーでエマノンと出会った青年。
    ・事故でケガをしエマノンから輸血を受けた少年。
    ・記憶を失ったエマノンと結婚した男。
    ・人類を超えた能力を持つ少年。
    ・vsコンピュータ異星人。
    ・超能力者コンビ。
    ・放送局のアナウンサーと石油備蓄基地建設予定地にはえてきている植物たち。

    ▼エマノンについての簡単なメモ

    【アイオン】エマノンと同じくすべての記憶をもっている植物。「永遠の時」という意。エマノンの知り合い。
    【猪部一雄】肥乃国日報文化部芸能欄担当の記者。裏のない性格で飄々としている。
    【エド】サンデイの夫、トミーの父。
    【エマノン】だいたい粗編みのセーターとジーンズを身に付けナップザックを背負っている若い女。《私は地球に生命が発生してから現在までのことを総て記憶しているのよ》「おもいでエマノン」p.18。そして記憶の重みにうんざりしている。昭和二十五年生まれ。最初の話の時点で十七歳。娘が生まれたら記憶は娘に受け継がれ元のエマノンには残らない。
    【エマノンの名前】no nameの逆さ読みらしい。
    【邑上】九肥放送のVTR編集室勤務。大柄で繊細さとズボラが同居している男。「ワイドおはよう列島」というキー局発信の番組で鉈地英子と組むことになった。
    【学生】名前はわからない。最初のエピソードでエマノンと出会った青年。SFが好き。ずっと後にエマノンと再会するが。
    【片岡雅子】九肥放送のアナウンザーだったがある日突然マイクの前でしゃべれなくなって今は資料室勤務。
    【神月潮一郎】初めてエマノンと会ったときどういう者であるかをを看破した傲慢で酷薄な高校生。わかってしまう能力とケガをしてもすぐ治る肉体を持っている。
    【ガリオン】コンピュータ。意志が感じられる。
    【記憶の引き継ぎ】娘が生まれたらその娘に記憶は移行してしまい母には残らない。ということは「生命の記憶」そのものがエマノンという存在なのだろう。
    【傷つける】《本質的に彼女には、決定的に他人を傷つけることができないのだ。》「とまどいマクトゥーヴ」p.119
    【サンディ・ペイジ】新しい人生を送ろうとしている女。トミーという息子がいる。
    【晶一】セラピーにかかっている瞳の大きな少年。出生前の記憶を持っている。両親が死んだ交通事故のときエマノンから輸血を受けた。《でも、晶一くんはほしになったんだわ。願いがなかったじゃない。》「さかしまエングラム」p.60。
    【ダウジング】エマノン特殊能力のひとつ。道具なしでダウジングできる。砂漠で水を見つけるのも簡単!
    【田口】セラピスト。晶一を治療している。
    【旅】《エマノンは記憶の原初からずっと、旅を続けているのだった。理由など見当たるはずもなかった。そらはエマノンにとって本能なのだ。》「とまどいマクトゥーヴ」p.120
    【丹下丈二】創業以来九肥放送勤務していたが取材中の事故で退職したらしい老人。今は酒びたりの日々。
    【ツチノコ】美郷健が高校教諭をしていたころのアダ名。ツチノコに似ているからとか。今はJ・K・インダストリィ傘下の企業をやっている。
    【トミー・ペイジ】サンディの息子。
    【鉈地英子】ローカル局、九肥放送報道局のアナウンサー。天草に行く途中のバスでエマノンと出会う。エマノンと同じE・Nというイニシャル。
    【ヒデノブ】予知能力者。ヨシフミと組んでいる。未来に起こることが全て書かれている一冊の本を持っている感じで読めばなんでもわかるが、決定された運命を自分がなぞるだけだと悟りヒデノブはなるべく読まないようにしている。エマノンとは真逆の方向の能力者。
    【古橋】東阪石油の備蓄基地建設のための駐在員。いろいろ苦労している。
    【フレデリック・F・フリードマン】サンデイの父、トミーの祖父。〝狂気の3F(ルナティック・スリーエフ)〟と呼ばれた有名な研究者。宇宙生物学を研究していた。ガリオン・ラボを開いた。
    【マクトゥーヴ】「運命づけられたもの」とか「予定されたもの」といった意味。神月潮一郎が自分のことをそう評した。
    【ヨシフミ】精神感応力者。元暴走族だがケガをしてオートバイの運転ができなくなり今はヒデノブと組んでいる。
    【良三】五十間近の男。フリーのシナリオライター。1973年に記憶を失ったエマノン(荏麻/えま)に会い結婚した。その娘が荏衣子(えいこ)。
    【歴史】《歴史って、人類や生命全体の〝おもいで〟に違いないのよ》「おもいでエマノン」p.30
    【老人】良三が荏麻と名付けたエマノンの父親。

  • 短編sf小説ですがあんまり説明ったらしくなくて純文学的なので読み易くて面白かったです

  • 再読読了。
    若いころ、名前なんて記号だぜとかやっていた思い出。
    刹那!

  • おもいでエマノン: 〈新装版〉 (徳間文庫)

  • SF。短編集。シリーズ1作目。
    『アステロイド・ツリーの彼方へ』で「たゆたいライトニング」を読んで面白かったのでシリーズに挑戦。
    最後の「あしびきデイドリーム」には、「たゆたいライトニング」のキャラが登場。
    30億年に渡る記憶という、極めて時間的スケールの大きな設定が魅力的。
    どの話も好きだが、「とまどいマクトゥーブ」がベスト。
    個人的には、エマノンの永い記憶を少しでも共感できるよう、時間をかけてゆっくり読むのが合ってるかも。

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著者プロフィール

熊本県生まれ。「美亜へ贈る真珠」でデビュー。代表作に『地球はプレイン・ヨーグルト』『怨讐星域』「あしびきデイドリーム」(星雲賞)『未踏惑星キー・ラーゴ』(熊日文学賞)『サラマンダー殲滅』(日本SF大賞)、そして映画化した『黄泉がえり』や、舞台・映画化した『クロノス・ジョウンターの伝説』など。

「2022年 『未来のおもいで 白鳥山奇譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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