生きるぼくら (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (423ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198940140

感想・レビュー・書評

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  • 両親の離婚、いじめ、引きこもり、認知症、就活の失敗、、、今の世の中の様々な困難を取り上げているのに、重たくない。
    正直言って、
    いじめのシーンは目をそらしたい苦痛な場面で、いじめ側に天罰が下ればいい!と本気で思ってしまったし、
    認知症の症状が悪化したり、日々の状況で家族が悲しい思いをするのは、読んでいて辛かった。
    でも、この物語には、素敵な大人たちが沢山いて、素晴らしい自然の景色や空気や水があって、
    そんな辛さがありながらも、希望があって優しさがあって、重たいままではない。
    世の中には、人生の言う「勝ち組」の人間は一定数いるのが現実だし、「負け組」になって、そのままダメになっていく人もいるのも現実。でも、こうやって、何かをきっかけに人と出会い、心を奪われる何かに出会い、豊かな人生を取り戻せる人もいるんだ。小説じゃないか、と思うところもあるけど、、、やっぱり農業を生活にしていくのは、本当に大変なことだし。でも、人間の根本はやっぱり、自然の一部であり、自然と共に「生きる」ものなんだ、と。それは確かだと思う。
    もうひとつ。おばあちゃんの認知症の症状が悪化してしまい落ち込む人生たちに、介護士の田端さんが言う言葉「具体的で現実的な希望をひとつでも持つことが大切。どんな小さなことでもいい」。この言葉は将来もし肉親が認知症になってしまった時にも思い出したいけど、日々を生きる上で、辛くて先が見えなくなった時にも心に留めておきたい言葉だと思った。

  • 広島の美術館で東山魁夷の作品を見たとき、あまりの緑の深さに目を奪わて、息をとめたのを覚えています。
    読んでいてあの時の感覚を何度となく思い出しました。
    私はひねくれ者だから、人生君もつぼみちゃんも蓼科に来てからも文章にないところで毎日たくさんの戦いがあったのではと想像するけれど、そういうものもまるっと包み込んで、生きていく、生きていることを感じるお話でした。
    想像するほどに、入り込んで、そしてこちらに染み入ってくる、森の湖のような一冊です。


  • 原田マハさんの”本日は~”を読んで、どういう言葉を受け取るか投げかけるかで、その人に大きな影響を与えられるっていう意味で、”言葉”って凄いなって改めて感じたけど、本作品はもう少し”人との出会い”にフォーカスされつつも、誰と出会うかその人をどう受け止めて向かい合うか、で人に与えられる影響って良くも悪くも大きいなと思った作品。

    物語の中心は、主人公の人生/父親の元再婚相手のつぼみ/マーサおばあちゃんで進んでく。
    それぞれが違った苦しい過去やトラウマを持ってる中で、たまたま蓼科のおばあちゃんの家で、文字通り一人ぼっちの3人が一緒に生活していく話。

    本読み進めていく上で、人生の考え方/発言/行動が、蓼科来てからちょっと時間おかず変わりすぎちゃう?、って思うこともあったけど、以下が彼を変えた要因なのかな。

    ・マーサおばちゃん
    人生の中で最後に持ってる楽しい記憶が、マーサおばあちゃんがいる蓼科での記憶で、おばあちゃんに会いに行こって思って、おばあちゃんが街のみんなから愛されてたり、米作りを通して生きるって何かを教えてくれたりしから、話の核なのは間違いない。
    マーサおばあちゃんのために頑張ろうと思って仕事を始めて、田端さん含め色んな人と会話して、自分でお金を稼いで、お米を作るようになって。

    ・食堂で働いてる志乃さん
    蓼科にあって初めての人が志乃さんで、本当に良かったんやろうね。
    自室で引きこもってた人生が外に出て、1番しっかり向き合ってくれた大人が志乃さんで、作品通して、誰よりも自分の周りの人の身の上を案じてくれてるから、”大変やけど頑張って。何とかなるよ!”とか曖昧な言葉じゃなくて、現実的に具体的に、厳しさの中に優しさがある、言葉を投げてくれたり行動をとってくれたり。
    学生時代の同級生は勿論、学校の先生含め、こんな大人がいなかったから塞ぎ込んでたけど、志乃さんに会って世の中嫌な人ばっかじゃないって思えたんかな。

    ・つぼみ
    自分と同じように学生時代にいじめにあった経験があって、人とのコミュニケーションを取るのが難しい中で、同じような理由でおばあちゃんに会いに来た。
    そんな中で彼女も心を開いてくれるようになって、だから自分も自分の話をするようになって、しんどかったこと、モヤモヤしてたことが頭の中でぐるぐるするだけやったのが、人に伝えられたこと、悩みを誰かに打ち明けられたことが大きかったのかな。

    後は田端さんの息子の純平君が世の中に対して思ってたこと、家に篭りきりになりかけてたおばあちゃん、引き篭もってた時の人生と被る色んな出来事があって、それを蓼科に来て違った角度で見れたからこそ、その時抱えてた純平の気持ち分かるなあとか、けど自分なんでああいうふうに考えてたんやろ、とか自分を見つめ直す機会になったのかな。

    読みながら書いてたから、上のコメント書く段階で感じてたのは、人生考え深くなるし、成長しすぎちゃう?、それは本やし尺もあるしなって最初は思ってた。

    けどたぶんそれは違って、人生は誰よりも考えるし悩んできた中で、いじめられて塞ぎ込んでしまってから、そとの世界に出るタイミングが無かっただけで、今も昔もたぶん本質的なところは何も変わってないんやろうなって。
    誰よりも優しくて、けど優しすぎて嫌な経験もいっぱいして、だからこれから彼に会ってく人は、彼が志乃さんに救われたみたいに、彼も色んな人の人生変えていくんやろね。

    後はツラツラと感じたことを書いてるけど、いじめられて、その時の嫌なきっかけがあって梅干し食べられへんくて、親のお金で生きるためだけに無機質なコンビニのおにぎり食べてた人生が、蓼科に来て米を作り始めて、生きるためだけに栄養素として取ってた米を作ることで向き合うことで、色んな人と触れてサークルオブライフを感じて、最終的にはおばあちゃんが作ってくれた梅干しをふいに食べて過去の清算をして、ストーリーの描かれ方が良かったね。

    タイトルの”生きるぼくら”、お米が苗から収穫してご飯になって食べるまでの過程と、人生がお米と向き合いながら成長していく過程で、吐露してたこの作中以下フレーズが大好きやし、言いたかったこと全部詰まってる気がするので、書き留めとこ、素敵な作品でした!

    あんなに小さく一粒の苗から、青々と育ちつつある稲、その力。”お米の力を信じて、とことん付き合ってあげなさい”と、米づくりを始める前にばあちゃんが言っていた。
    自然に備わって生きる生き物としての本能、その力を信じること。すなわち、生きる力、生きることをやめない力を信じること。
    お米の力という言葉を、人間の力という言葉に置き換えてみる。すると、それは、自分の力という言葉になる。

  • いじめ、引きこもり、認知症という現代社会の問題とスローライフと原始的な米作りという、真逆なものの中に、家族や地域のつながり、人の温かさ、本当に大切なものに気づかせてくれる素敵なお話でした。 
    梅干し入りのおにぎりが食べたくなりました。

  • 引きこもりだった人生が母に家を出られ、祖母からの年賀状を頼りに蓼科にやってきた。
    祖母との暮らしで人生の‘人生 ’は変わる。

    読み始めたら止まりませんでした!とても良い作品で、元気を貰えました。
    お米が好きな人,農業に興味がある人,勇気が欲しい人にピッタリの1冊です(*^^*)

  • 読書記録
    『生きるぼくら』
    原田マハさん

    ひきこもりの24歳の人生くん
    どうしょうもない状況に追い込まれて
    お祖母ちゃんのいる蓼科に行く
    そして人生くんの人生が変わっていく
    なんかずっと涙目で読んでいた
    人は変われる
    人が生きるために必要なことは
    ごくごくシンプルで誠実なことの積み重ね
    そんな事を思い出させてくれる

  • 今まで、母が作ったおにぎりをなにも思わずに食べていた。自分の親不孝さが嫌になると同時に、両親や祖母の存在にもっと感謝しなければいけないと思った。


    私たちは、生きるのをやめられない力を持っている。
    そのことを知れただけでこの本を読んだ価値があった。
    原田マハさんが書く、再生の物語はいつも勇気をくれる。

    「あなたも私も、本当はやりたいけど、それをがまんしてるだけ。ああ、大人って、なんだかつまんないわねえ。」マーサばあちゃんの言葉で1番好きな言葉!

    志乃さんやマーサばあちゃんや田端さんみたいなカッコいい大人になりたいな。

  • 今回は、完全にジャケ買い。原田マハさんなので大丈夫だろうと、あらすじも何も見ずに購入。

    先日、「東山魁夷展」に行き、蒼や碧色の心に沁みる絵を沢山見る機会がありました。そこにも出展されていた絵がカバー絵になっており、ついつい惹かれてのジャケ買いでした。

    中高生時代のいじめをきっかけに引きこもっていた主人公が、一緒に暮らしていた母親が家出して一人になったことから、やむなく家を出て茅野にある祖母の家を訪ね、そこで祖母の介護に向き合う中で手間のかかる米作りに挑戦しながら、心を開き、自分の足で歩き始める物語。
    ジャケ買いした東山魁夷の絵は、そのモデルとなった茅野の御射鹿池が
    主人公たちにとって大切な場面である、ということで登場。

    引きこもり、認知症介護、農家の後継者不足、人のつながり、親子の情愛・・・などがいい具合のスパイスになっていて、興味深く読み進めました。都会に居るとついつい忘れてしまいがちな、いろいろ不便であっても、不便を楽しみながら丁寧に生きる、ということの大切さが軸になっているようにも思います。

    ストーリーが少々出来すぎの感は否めないけれど、世の中に大勢いる、引きこもりたくないのに引きこもってしまっている若者たちにも、この主人公のような人との出会いや気づきがあればいいだろうなぁ、人の温もりを味わう瞬間に出会えたらいいだろうなぁ、と思いました。

    …という内容とは別に、美味しいもの好きの私には、この本を読んでいる最中に、おいしい梅干おにぎりが
    食べたくて仕方なくなって困りました。夜中に読んでいるのに・・・。
    原田マハさんの小説は、「(海外の)美術館に行きたくなる」「旅に出たくなる」そして、今回は「おにぎりが食べたくなる」。五感を大いに刺激されることが多いです。

  • 読み終わって機械ではなくひとの手で握られたおにぎりが食べたくなりました。そして食を日本古来のものに変えるだけで温かい活力が湧いてきます。焼鮭とかお漬物と白米という程度ですが。そして最近、最新のスマートフォンに更新するのをやめてバッテリー交換にとどめたり、スマホでニュースを読むのをやめたりと前のように何かを追うことをすこーしずつやめ始めています。一足飛びに地方でのスローライフには飛び込む勇気はなく、それを続けることが自分らしいとも思えないけれどやはり脳が中毒になるようなものは食べものも含め少しずつやめるようになってきました。昔は好きだったファストフードも今はあまり欲さないようになってきたし。人と自然に囲まれて過ごす体験をこの先も振り返ることができるように別に贅沢なということではなく暮らしていきたいなと思います。

  • いっき読みです。 
    人生のお母さんがすごい人だと思います。父親のことがもう少し知りたかったかな。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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