勁草(BAD LANDS バッド・ランズ 映画原作) (徳間文庫)
- 徳間書店 (2017年12月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198942854
作品紹介・あらすじ
橋岡は「名簿屋」の高城に雇われていた。名簿屋とはオレ詐欺の標的リストを作る裏稼業だ。橋岡は被害者から金を受け取る「受け子」の手配も任されていた。騙し取った金の大半は高城に入る仕組みで、銀行口座には金がうなっているのだ。賭場で借金をつくった橋岡と矢代は高城に金の融通を迫るが…。一方で府警特殊詐欺班の刑事たちも捜査に動き出していた。最新犯罪の手口を描き尽くす問題作!
感想・レビュー・書評
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大阪人の裏社会で生きる男たちが次々に事件に巻き込まれる様をコミカルに描く、相変わらずな黒川博行作品のすばらしきマンネリ。
本作の主人公はオレオレ詐欺グループで中間管理職的立場の橋岡。ボスの指示の下、電話担当、金銭受取担当へ役割を割り振る。それなりの社会常識と知識を持ち合わせている橋岡はボスにとって、こき使いやすい存在だ。そんな橋岡が、常識を持たずカタギにもヤクザにもなり切れない男、矢代と知り合ってから、彼の運命は急転回する。大金を手にしたはいいが、殺人事件に巻き込まれ、ヤクザと警察から追われることになる。
そんな運命に弄ばれる橋岡だが、警察捜査や金融機関とのやり取り、死体の処理まで、冷静に対応する。やることなすことがその場しのぎの矢代とは対照的で、橋岡の方をいつの間にか応援したくなり、追いかける大阪の刑事たちから逃げ切ってほしいと期待してしまう。そんな奇妙な魅力を持つダーティーヒーローが活躍しながら、オレオレ詐欺についての知識も学べるハードボイルド小説。 -
【オレオレ詐欺】【振り込め詐欺】総じて「特殊詐欺」呼ばれる社会問題となって久しい詐欺を扱った本作、徹底したリアリズムで読者をぐいぐい引っ張る手腕には安心感がある。「劇場型犯罪」と言われるだけあって、手口、システム、手順すべてに手が込んでいて、「自分は騙されるはずはない」と思っている人(主に年寄り)でも、これは騙されるかもしれない、と逆に勉強になる。
貧困ビジネスと特殊詐欺がワンセットになって暴力団の資金源になっているという設定(というより、現実?)も、現代社会の闇を見るようで背筋が寒くなる。
物語は、〈主人公〉の橋岡がいわゆる「ちょっとしたボタンの掛け違え」から、逃げ場のない状況へと追い詰められていくさまがテンポよく描かれる。オレオレ詐欺(オレ詐欺)集団を追う大阪府警特殊詐欺班の刑事たちの泥臭く地道な捜査に敬服しながらも、どんどん悪い方へと転がっていく橋岡になんとか逃げ切ってほしい、などと妙な感情移入してしまうのも黒川マジックの醍醐味といったところか。
映画か連続ドラマでぜひ見てみたいと思うのは私だけではないだろう。橋岡は波岡一喜でぜひ! -
映画を観た。ネルこと安藤さくらとジョー山田涼介の血のつながらない兄弟の関係がよくわからなかった。ネルのために殺しをする動機をマンダラこと宇崎竜童が「お前がほんまに好きだったから」と告げることでしかわからなかった。「勁草なんや」と言い聞かすシーンがタイトルに繋がっていた。
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オレオレ詐欺の名簿屋に雇われ、「受け子」の差配もする橋岡。
ターゲットには警察がつくこともあり、そうなると捕まるわけにはいかない。
橋岡はその辺りの感覚や対応力には長けている。
しかし、同じように雇われている矢代は、感情的で後を考えない。
そんな矢代の行動に振り回されることになる、橋岡。
そして、それを追う刑事たち。
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詐欺世界では半端な人間が警察から極悪人として追われる。逃げ切れるはずは無いのだが、まさかの結末。
テンポ良く軽く読み進めます。是非。
追記
2023.10.6.映画観てきました!!
原作からの脚色がかなりありますが・・・、特に問題無し。安藤サクラがサイコーにヨカッタですよー!!
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映画BAD LANDSの原作と知って読んでみた。お馴染みの黒川ワールド。勁草(けいそう)とは、風雪に耐える強い草のこと。何故この題名にしたのだろう?哀れな生き様の受け子役のイメージだろうか…。
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結構、時間を忘れて読んでしまった。というか、この本を読み進めるために睡眠時間一時間くらいなら削ろうかとか、気が付いたらこんなに時間が経っていたとか、そんな感じ。映画を先に観たのも良かったかもしれない。いや、良かったのかなぁ。良くも悪くも映画の印象に左右されそうな。橋岡が男だと言われようが私の中ではやけに安藤サクラさんがチラついた。ただ事件の経過をなぞる話かと思いきや、最後はそう来るんだ。久しぶりに、一気に読み進めたいという焦りとわくわくで楽しい本だった。
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クライム小説で一貫しており、印象に残った作品でした。
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映画「BAD LANDS」の出来がすこぶる良かったので原作も読んでみた、するとただの犯罪小説でがっかりした、そこにはドラマらしいドラマがひとつもなくただただ犯罪がるる綴られているだけだった、原作者は映画脚本の方が数倍良い場合どう感じるのだろう、近頃は原作レイプ作品が多い中、本作のように原作を凌駕する映画も偶にあるのだなあと感じた、この原作者の作品を読むことはもうないだろう。
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テンポよく読めた
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関西弁だったのでテンポよく読めて飽きない。
2日で読めた。
情景も描きやすかった。 -
原田眞人監督の『BAD LANDS』がとても良かったので原作にも手を出してみた。
基本的なストーリーラインは映画と同じなのだが、登場人物は原作は男性主人公で映画の方は女性主人公である。バディは共に男性だが、映画の方は兄弟である。
原田眞人監督は登場人物を魅力的に描くことに長けており見た目や話し方、仕草一つとっても面白い。原作はそういう描き方はほとんどないので一番の魅力の部分が欠けた感じ(原作がこちらなので欠けたも何もないけど)
良かったのはやはりオレオレ詐欺の細かい描写部分。
黒川博行作品は初めて読んだが、他の著作を見てみるとその道のプロフェッショナルを描いた作品が多い。そういう描写は映画では見えないところも多いので、面白かった。
それとこの分厚さながらとてもリーダビリティが高く、あっという間に読めてしまった。
全体を通すと原作の方が綺麗にまとまっていて完成度は高い。だが余りにも綺麗にまとまりすぎていて面白くないのが欠点。
映画の方は原田眞人監督らしい粗さがあるのだが、そこがとても魅力的だ。
映画から見ると原作に面白みは感じないかな。ただ原作が好きだと、今度は映画が全然違うじゃねえかみたいなことになりそうではある……笑 -
映画「BAD LANDS」の原作
名簿屋、道具屋、掛け子、受け子、出し子、オレ詐欺に関わる人間達
その奥の闇に隠れるヤクザ
詐欺に関わる人間が多種多様で多い、まるで会社組織のようだ
名簿屋の高城に使われる矢代と高岡
ある日、賭場で250万を溶かした矢代がヤクザに追われる身になり高城の金に目をつけるところから歯車が狂って行く…
映画を見て原作を読んだが、映画はかなり設定を変えていて、全く別の物語と思った方がいい
どちらも面白かった -
映画の予告を観て本を手に取った。きょうだいが出てくる話だと思って読み進めても一向に出てこない。
間違って異なる本を選んでしまったか、と思い映画のサイトを観たところ、原作と映画で主人公の性別や設定を変えているとのこと。そうだったのか。。 -
久しぶりの黒川博行でした。疫病神シリーズでハマった作家です。軽妙な語り口で読者を飽きさせません。ただ、その軽妙なやり取りに新鮮味が感じられませんでしたので☆3つです。内容は、振り込め詐欺の手口が詳細に書かれていて内情が知れて面白かった。特に名簿屋のヒアリングは、なんでも話させてしまう怖さがあります。
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勁草(けいそう): 風雪に耐える強い草 思想、節操の堅固な例え 疾風に勁草を知る
オレオレ詐欺の詐欺グループのパシリ橋岡と矢代の二人が、元締めの高城を裏切り、犯罪を重ねて、逃亡するはなし
9月に映画公開とのことで、どんな映像になるのだろうと想像しながら読んだ 電話のコード、ブルーシート、花柄の毛布、血みどろで殴られるシーン、刑事が追うシーンが浮かぶ
オレオレ詐欺、自分は騙されないと高を括っていても、巧妙に練られたシナリオで畳み掛けられたら、私も騙されるかも この本は、旅先で読んでいたが、周りにいる人が全て犯罪者に思えて、常に疑心暗鬼になり、出歩くのが怖かった たった今も騙されている人がいて、本当に新聞やニュースに出てきそうなくらい臨場感がある 人気のない産廃施設には、何かがあると疑ってしまう
元はと言えば、歳の若い半グレの矢代が賭場で作った借金(トロと言うらしい)250万円が事の発端 悪事を重ねると麻痺して、歯止めが効かなくなるのか 欲とは怖いものだ
カッと血がのぼると止められない矢代に比べると、橋岡のほうが冷静で悪知恵が働く 最後まで逃げ切れるかもと思ったら、あっけない最後
いつも思うのは、日本の警察は優秀だということ
今回も一気に読めました
小説が面白いので、映画は観ないかも