昔、火星のあった場所 (徳間デュアル文庫 き 2-2)

著者 :
  • 徳間書店
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784199050527

作品紹介・あらすじ

この世界には、人間とタヌキという相反する二つの勢力が存在している…。火星開発会社の新入社員のぼくには、ようやくそれがわかってきた。とうに分解して、無くなってしまったらしい火星の奪還をめぐって、利害が対立するふたつの会社が、戦いを続けさせていた。そして、その人間とタヌキとの戦いによってこそ、世界は成立している-そういうことなのだ、たぶん。ほろにがくって、なつかしい未来。すこし不思議で、とっても変な北野勇作ワールドの原点!第4回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 火星というのは昔からSFファンを魅了し続けている惑星で、それはもう様々な火星が描かれているけれども、それはたいてい、探査またはテラフォーミングされている途上の火星そのものが舞台であったり、既に太陽系の繁華な場所のひとつとなった火星が(たいていは無法者が活躍する)舞台となっているのであって、火星に到達する事が物語の根幹となっているものはあまりないんじゃないか、と思った。
    実は、物語の世界観は、最初はつかみにくい。
    ただ、ふたつの会社が、火星の有人化において競い合っているのだ、という事だけが最初に明らかにされる。
    次いで、このふたつの会社が、「門」と呼ばれるものを同時に使用したために、火星の存在が不安定となり、分解されてしまったのだ、という事がわかる。
    ところがこの時点で、主人公がいるのは火星なのかそうじゃないのか、いったいどこにいるのか、というのがとてもわかりにくくなる。というか明示されない。
    途中からはもしやこれは夢落ちなんじゃないのか、という不安も感じる。いやいや、夢落ちとは違います。
    実は、火星が不安定になって分解しちゃいましたという理由は、火星の可能性が複数となってしまったため、どちらの可能性が現実となるのか未定であり、そのため不安定となったのだということが漠然とわかってくるわけだ。
    このあたりの、手探りでしかわからないもどかしさと、卓抜なSF的仕掛けが大変に面白い。
    しかもそれが、どういうわけか、日本の有名な民話と、化け狸というとんでもないものをツールとして語られてしまうのだ。
    いや。騙られてしまうのだ!

  • 火星での物語を昔話風に仕立てているんですが、実は悲しい話ですよね。小春と、脳をメモリー代わりにしたというのが紐解く鍵かな・・・

  • 大名作。
    完成度の面では『どーなつ』などには敵わないかも知れませんが、そこに込められた想いの切実さ、瑞々しさなどは、他の北野勇作作品には無い輝きを放っています。
    間違いなく、オールタイムベストになり得る一作。
    復刊を強く希望する作品の一つです。

  • 火星は昔話。未来からしたら現在はメルヘンであり、ただの記号となる。真偽交えてそれは柿の種となるのさ。懐古主義的SF。

  • やっと手に入りやすくなったと思ったら、もう絶版なんて!

  • 米澤穂信の100冊その53:これも真似できない。

  • 青春アドベンチャー原作

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著者プロフィール

1962年、兵庫県生まれ。
1992年、デビュー作『昔、火星のあった場所』で第4回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞、『天動説』で第1回桂雀三郎新作落語〈やぐら杯〉最優秀賞を受賞。2001年には『かめくん』で第22回日本SF大賞を受賞。『どーなつ』『北野勇作どうぶつ図鑑』『どろんころんど』『きつねのつき』『カメリ』『レイコちゃんと蒲鉾工場』ほか著書多数。
ライフワークとも言える【ほぼ百字小説】は、Twitterで毎日発表され続けており、その数は4000を超える。

「2023年 『ねこラジオ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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