微睡みのセフィロト (徳間デュアル文庫 う 1-1)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784199051043

作品紹介・あらすじ

三百億個の微細な立方体に"混断"された被害者。倒れもせず、死にもせず、彼は佇みつづけていた-。超次元的能力をもつ感応者と人との間で、拡がっていく憎悪が生みだした、いびつな事件。そのきしみの中で、捜査官パットは、敵対する立場にあるはずの超感応少女ラファエルとともに、真相を追いはじめる。新鋭が描くSFハードボイルド中篇、書き下ろしでここに登場。

感想・レビュー・書評

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  • ストーリーに飛躍があって、んん?って感じるところがある。
    そのため、主人公の心理移動に納得が出来ず、★2.5位な感じ。

  • 面白かった。恥ずかしながら、ラスト近くで泣きそうになりました。

    この作者の文体はライトノベルのものではない気がする。リズムや構文はラノベのものながら、比喩やボキャブラリはむしろSFや純文学寄り。それが独特のリズム感を呼んでいる。

    エヴァンゲリオンやブギーポップからの借用と思われるガジェットが見られるのは、戦略的なものだろうと思う。この作者はそこに自分のものを持ち込んでいる。

  • マルドゥック・スクランブルの著者の一冊読み切り。マルドゥック読んでみようかと思って、先にこちらを試してみた。
    凝った世界観とそれを表現する技量がある。しかしこの本に関して言えば、それが空回りしている。広がりのありそうな予感を裏切るしかないページ数。例えば近未来なプロファイリングが出てくるが、ばっちりすぎる的中。
    また登場人物に面白みがない。深みを感じないうちに終わってしまうせいかもしれないが、元の着想が弱いかもしれない。感情をロックされた過去を抱える巨漢。スペシャルな能力の優等生ヒロイン。患者を手足に罪を犯す精神科医。
    あとがきにひかわ玲子さんのディスカッションに行ったと出てきて、うーん、この作家の長編に手を出すべきなのか余計迷ってきた・・・

  • この設定、この世界で結構な長編が書けそうなのにこの短さ。人間が次の段階に進化するのか、他の種の進化によって滅ぼされるのか、SFのメインテーマの一つですねぇ。

  • まず、香りの表現が好きになった。次元の歪みからくる、独特の香り。ラファエルの花の香りを胸一杯に吸い込んでみたい。
    書き下ろしの中編らしい(煽り文的には)のですが、冲方さんは長編の方が似合う気がする。世界観の作りがしっかりしているから、あまり短いと物足りない感じがしてしまうと思う。
    ラファエルとパットの関係は、バロットとウフコックに似ているような感じもした。でも、少し違うかも。冲方さんらしい“信頼関係”というかなんというか……。
    好きとかそんな俗っぽい感情じゃなくて、それさえも超越してみせるくらいの相手を信じる気持ち。相手を認めて、相手に認めてもらう。その為なら何でも出来るぐらいの、そんな潔すぎるほどの関係。
    一度、崩壊してそこから作り直させれた、綺麗すぎる幻想的な未来。感覚者と感応者という、持たないものと持つものはいつでも対立してしまうけれど、でも失敗しているからこそ、共存しようという姿勢が感じられてよかった。
    最後の伏線回収は、わかりやすい故に簡潔でよかった。

    冲方さんは、ドイツ語がお好きなのでしょうかねぇ?

  • 全3巻くらいで読みたかったような、濃縮されたSF。高レベルすぎて世界についていくのが最初は難しいが、乗ると面白い。ヘミングウェイとパットが段々仲良くなってくのが微笑ましい。ラストの癒しは意外で好ましかった。ぐっと来る。マルドゥックを先に読んでいるので、どうしても期待値が高くなる。本作も素材はとても良質なので、ラファエルの背景や信念、ライスの葛藤、パットのトラウマなどがもっと突っ込んで書き込まれていればな、と思う。面白いんだが、ちょっと勿体無い。

  • たった今まで「ほほえみの」だと思ってたら「まどろみの」でした……彼の文体が変わる前の中編。叛旗を翻した能力者たちとの戦いで世界が大きな打撃を受けた黒い月のもとにある世界。再編が進む世界で起きたひとつの要人の襲撃事件。能力者に妻子を殺された捜査官のもとに、複数の高い能力を持つ一人の女の子が支援として派遣されてくる……という共闘の話なのですが、この捜査官パット、あるいはあり得たボイルドかも。せっかく創った世界なのに、これ一冊で終わりなのかなぁ。

  • 「マルドゥックスクランブル」の人の読切。多胞体とかのイメージがきれい。混断は(幸いにも)想像できなかったですが。

  • 作中の「混断(シュレッディング)」の描写がすごかったです。文字だけでこれだけ想像できるんだと感心しました。

  • 超能力者と人との間に勃発した凄惨な戦争の後のギクシャクした社会を舞台に、家族を超兵器によってゲル状にされてしまった元兵士パットが、超能力少女ラファエルと協力して、超能力犯罪に立ち向かう、という物語。壮大な世界観であるが、主にパットの内的葛藤が描かれているので、いわゆるセカイ系ではない。だからなのか、未消化な感じもある。特に「戦争」に関するエピソードをまとめたら面白いのではないかと思う。

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著者プロフィール

1977年岐阜県生まれ。1996年『黒い季節』で角川スニーカー大賞金賞を受賞しデビュー。2003年『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞、2010年『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞、第4回舟橋聖一文学賞、第7回北東文学賞、2012年『光圀伝』で第3回山田風太郎賞を受賞。主な著書に『十二人の死にたい子どもたち』『戦の国』『剣樹抄』『麒麟児』『アクティベイター』などがある。

「2022年 『骨灰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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