僕と日本が震えた日 (リュウコミックス)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784199502866

感想・レビュー・書評

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  • 著者はかつて『週刊ファミコン通信』誌上にて「あんたっちゃぶる」や『コミックビーム』で「オールナイトライブ」などを執筆。ルポルタージュを漫画にするのが上手な方だと思う。
    その著者が今回は3.11.を機会に、いくつかの分野を取材した。
    内容は「都市被災編」「書籍流通編」「先端科学編」「日本経済編」「食品汚染編」「東北取材編」に分かれる。
    基本的に著者のスタンスって、関連企業の担当者に話をうかがう形だと思うのだが、今回は珍しく学者にも取材をしている。
    特に「日本経済編」。一昔前から、テレビでは様々な経済学者が日本の経済や世界の経済を見通そうと意見を出しているが、まとまっていない。だから一人の意見だけを扱うのは極めて危険ではないかと思われる。
    しかし、ここでは小幡氏のみの意見を挙げている。少々拙速に過ぎないかと気になる。
    この書で一番注目に値すべきは「先端科学編」と「食品汚染編」だろう。
    ガイガーカウンターの使い方を正しく知らずに使用している人もいそうだ。それが新たな誤解や差別を生む恐れがあるし。
    現代は情報が本当に多く、溢れている。だから集めるのは簡単なのだけど、精査するのに時間がかかってしまう。その労力を少なくするためにも、情報はできるだけ正確なものを提供してほしいものだ。
    そして受け取る側は精査するための「ものさし」が必要なのだと感じた。

  • むかーしファミ通でゲーム業界のルポタージュマンガを書いていた漫画家さんなので,親近感があります.
    当時からだいぶ絵柄もノリも変わっていますが.

    本作は震災と原発事故の取材短編集です.

    あとがきにもありますが,取材をすることで落ち着きを集めていくドキュメンタリとも読めますね.

    面白かったです.

  • 放射線への正しい理解

  • ルポコミックの名匠・鈴木みそが、等身大の被災を元に取材して描く、あの日からのドキュメント全8編!

    ルポコミックの名匠とはよく言ったもので、(他のルポコミックをそんなには知らないが)この人の漫画は面白くて読みやすい。
    恐らく取材の仕方も上手いのだと思う。
    専門家から色々な話を聞き出せるとゆーか。
    そしてそれを自分の中で噛み砕き、独自の視点でしっかり漫画としての表現してくれる。

    今回のこの本は、ルポコミックの決定版と言ってもいいと思う。
    誰もが敬遠してしまいそうな題材、”東日本大震災”を取り上げて、自分の意見も盛り込みながら、ここまで客観的に描けるって凄いと思う。
    かつ分かりやすい。

    震災から一年半。
    まだまだ問題は山積みだけど、被害に合わなかった人も、同じ日本人として向き合っていなかければならない問題だと思う。

    また、この本の原稿料は全て義援金に行くそうです。

  • 3.11の当日は珍しくテレビ画面に釘付けでしたねぇ

  • 漫画の力はすごい。分かりやすかった。

  • 良書です。買って読んでください。是非。

    雑誌連載時の原稿料は、すべて義援金になっているようなので、コミックの売り上げが、この作者に対する正当なる報酬となりますので、是非、新刊で、近所の書店で、お求めください。(Amazonにリンクがありますが、むしろ、近所の書店でこそ買っていただきたい。理由は、本書「僕と出版が震えた日」参照のこと)

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    ぼくは個人的には、3.11により、大きな被害は受けていません。

    自分自身にも、また身内にも、特に被害はありませんでした。(ヨメが帰宅困難状態にはなったけど、幸い仕事仲間の方々のおかげで、特に問題はなかったようです)

    なので、3.11関連でネットやメディアで様々なことが取りざたされても、特にそれらに対して意見を言うのは控えてきました。

    なにせ、我が身における情報がない。

    何ら被害を受けていない人間が無責任なことを言うのははばかられるし、科学的な知識もなければ、ボランティアに行くような精神的経済的余裕もない中、実体験がないままに、「震災の被害」に関して、想像することや情報収集することはできるけど、それらの情報を精査して自己判断することができないのです。

    ネットやメディアの情報が、すべて正確であるとは思いませんし、さりとて、すべてが間違っている、とも思いません。(隠蔽や陰謀という言葉をよく聞きますが、おそらく、日本はそんなマンガみたいな「裏社会」の土壌は、特になく、実際にはたいしたことないと思ってる。もし隠蔽や陰謀などが行われているのだとしたら、とっくの昔に、首相レベルの政治家たちが、5,6人は暗殺くらいされていてしかるべきです)

    なので、3.11の話題は、とにかく避けてきました。

    僕には何らの責任を持った発言ができないからです。

    ぼくの周りにも、震災による被害をことさら大声で言い立てる人、放射能被害による危険性を声高に警告する人、とにかくすぐにでも日常に戻ろうとする人、これをチャンスとばかりに震災ビジネス(とまでは行かないにしても、お金儲けに走る)人、様々です。

    そしてツイッターなどを見ても、放射能問題、原発問題、電力不足問題、様々な観点に立って、賛成・反対、激論が毎日交わされています。

    時にその激論は、相手をなじるだけの暴論に成り下がり、一方的に相手にケンカを売るような、見にくい状態にもなります。

    それは、それぞれが、それぞれの正しいと思っていることを、本気で言い合っているからこそなのでしょう。

    そしてそんな言葉を見るにつけ、目を閉じて、顔を背けてしまいたくなる思いを持ってしまいます。

    なぜそうなるのか。

    誰にも正確なところがわからないからです。

    専門家と言われる人たちは、専門家である以上、無責任なことは言えない。

    正しいことを伝えようと思えば思うほど、意見が言えなくなる。

    それでも、知らなくちゃ行けないし、知るのであれば、できるだけ正確に知るべきなのです。

    「何となく危険だと思う」じゃなくて、「正確に知って、その上で、怖がるか安心するか、個人で判断する」ということを、このマンガは、ルポルタージュとして、丁寧に冷静に伝えてくれています。

    もしかすると、このマンガの記述も、すべてが正しいとは限らないかもしれません。

    でも、まずは「ちゃんと知る」ところから始めるべき。

    それを教えてくれて、できうる限り正しく、丁寧に情報を広めようとしてくれている本書を、たくさんの人に読んでいただきたいと、切に願います。

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    以下、内容紹介。

    ・僕と家族が震えた日
     震災当日の、作者本人の家族の話。
     ディズニーランドも含めた千葉の現実。
     まさに作者の娘さんが、TDSにいたらしい。すごいな。

    ・僕と出版が震えた日
     「紙」媒体である「書籍」が被害に遭った話。
     出版業界がどれほどの被害を受けたのか、わかります。
     紙がいかに脆弱か、それと同時に、紙がいかに強いか、わかります。
     100人以上の子どもたちが読んだ、一冊のジャンプの話は、紙媒体ならではです。(電子書籍では無理なこと)

    ・僕と加速器が震えた日
     つくばにある加速器の研究所の話。
     かなり有名な研究施設ですが、かなりの打撃を受けていたらしい。
     全然知りませんでした。
     換気は重要。

    ・僕と経済が震えた日
     ミセス・ワタナベと、円高についての話。
     この話に出てくる経済学者の方のお話は、とても興味深い。
     物事の判断の仕方が明確で、力強い。
     「メディアで自由な発言ができない」
     「政府もメディアも信用を失っちゃった」
     そして、「復興は誰も望んでいない。ただの復旧しか望んでいない」
     この考え方、現実感には、がつんとやられる。

    ・僕と放射能が震えた日
     食品の、正しい放射能の測り方の話。
     細かいことは気にしない派、まあまあ慎重派、リスクを最小限派、それぞれ、間違っているわけじゃない。
     ただ、個人の判断による。(これは致し方がない)
     ただし、「気にする気にしない以前に、単位は正確にね」→これが一番大事な気がする。
     あと、銀だこが素晴らしい。(たこ焼き屋さんね)

    ・僕と日本が震えた日
     実際に岩手旅行をして取材してきた話。
     人っ子ひとりいない村。
     すべてが流された町。
     でも、「生きてさえいたら何とかなる」

    正しい放射線の測り方(※以下の二編は、パブリックドメインで無償配布されていますので、興味のある方は実際に本編をお読みください)
    I・ガイガーカウンター編
    http://p.booklog.jp/book/30823
    II・食品線量計測編
    http://p.booklog.jp/book/43253

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    繰り返しますが、この本は良書だと思います。

    もちろん、すべての記述が正確なわけでもないとは重々承知していますし、震災から、また雑誌掲載時からある程度時間も経っているので、情報の精度、という意味ではまたいろいろと変化しているかもしれません。

    でも、今、この本を読むことには、意味は必ずあります。

    ネットで情報収集もいいですが、玉石混淆でどれを信じていいかわからないのであれば、極力、情報を偏らないように丁寧にルポルタージュとして描いてくれている本書は、一読の価値はきっとあります。

    ぜひ、お近くの書店で手にとって、購入してください。

    おすすめします。

  • 震災後話題になった「ガイガーカウンターの正しい使い方」を含む震災ルポ漫画。非常に綿密な取材と、冷静な描写をされています。特に「震災と経済」の部分について、個人的に疑問に思ってた部分が解決。ためになりました。

  • 東日本大震災
    ノンフィクション

  • 2018/11/20読了

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著者プロフィール

漫画家。ちんげ教教祖。1963年静岡県下田市出身。美術予備校時代から編集プロダクションのライターとして雑誌作りに関わる。ゲーム攻略、記事、コラム、イラストなどをこなす。元編集者兼ライター兼イラストレーター。東京芸大油絵科除籍後、多忙すぎるプロダクションから独立。マンガを描く。1ページのルポ漫画から、広告マンガ、ストーリーマンガまで幅広く受け付けている。著書に『ナナのリテラシー』『限界集落(ギリギリ)温泉』など。Twitter: @MisoSuzuki 鈴木みそオフィシャルBlog『CHANGE』

「2015年 『凡庸な作家のサバイバル戦略──結局どうすりゃ売れるのさ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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