中絶と避妊の政治学―戦後日本のリプロダクション政策

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制作 : Tiana Norgren  岩本 美砂子  塚原 久美  日比野 由利  猪瀬 優理 
  • 青木書店 (2008年8月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784250208188

中絶と避妊の政治学―戦後日本のリプロダクション政策の感想・レビュー・書評

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  • 本書は、中絶に関しては進歩的だが避妊に関しては保守的な現在の日本がどの様な過程を経て誕生したのかを解き明かす事を目的に書かれた本で、その手段として、日本の中絶政策は日本文化の産物ではなく政治の産物と言う視点に立った分析が行われています。


    粗筋を簡単にご紹介すると、


    明治時代、富国強兵や東アジアにおける覇権確立を目的とした人口増加政策が取られていたのが、第2次大戦敗戦後には一転、食糧難対策と経済立て直しの為に人口抑制政策がとられ、その結果、中絶が合法化された事。

    その後の新興宗教団体「生長の家」による反中絶運動と彼らと中絶を行う医師達が作った「日本母性保護医協会(現:日本産婦人科医会)」の対立。

    彼らの激しい対立を目の当たりにした当事者である女性達が自ら立ち上がり、「生長の家」の反中絶運動が失敗に終わった様子。

    また、ピルの承認と共に中絶手続きの厳密化を図る勢力に対して、中絶の権利が奪われる事を危惧した女性グループが反ピルの立場を取った事。

    反ピルの立場を取った彼女たちはピルの安全性に疑問も抱いていた事。

    将来の労働人口減少を危惧したエリート層の存在。

    #女性活動家達の動きは、結果的にピルと言う安全な避妊方法の導入を阻害した。

    そして、1990年代になり、中絶を合法化していた優生保護法にある優生学的条文に反対していた小規模な障害者グループが外圧をうまく利用する事により、この法案の改正に初めて成功した事などが書かれていました。

    #現在、優生保護法は母体保護法と改称。


    上記の様に、日本では国益を中心にした生殖イデオロギーを持つエリート層が、個々人の生殖活動へ影響を与えようとしてきた歴史があります。

    この生殖イデオロギーに基づく政策が、意図せぬ副作用を及ぼし、戦後、女性に対して中絶の権利の付与したのですが、

    その権利の付与が、今度は避妊に対して悪影響を及ぼしていった様子が書かれていました。


    つまり、本書によれば、本文中の以下の文章

    「日本におけるピルの物語は主人公のいない物語」

    の様に(上述した様に、時に女性が反対運動などを繰り広げた事はあっても)当事者である女性不在のまま進められてきたのが日本の生殖政策と言う事になりますね。



    中絶や避妊などは激しい議論を引き起こす可能性大のテーマですが、

    この議論において、正しい判断を下すには日本の生殖政策の流れをきちんと把握する必要があるのは言うまでもありません。

    今後、使用に際して過剰な条件がつけられているピルや最新の避妊技術の日本への導入問題などで、中絶、避妊に関する激しい国民的議論が起きる事も十分考えられます。

    その可能性を考えれば、詳細な調査に基づき客観的な分析を行っている本書に目を通しておくと今後何かと役に立つかも知れません。


    まあ、別に上記のような考えでなくても良いのですが、色々と為になる知識を仕入れる事が出来ますので一読されてみては如何でしょうか?

    おすすめですよ。

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中絶と避妊の政治学―戦後日本のリプロダクション政策の作品紹介

中絶「合法化」=1948年、ピル解禁=1999年。世界的にも希有なこの政策は、なぜ生み出されたのか?産婦人科医ら医師団体と宗教団体の攻防、女性たちの運動はじめ、利益集団と国家アクターの駆け引きを中心に、避妊政策をめぐる政治過程を描きだす。

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