発電所のねむるまち

  • あかね書房
3.70
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本棚登録 : 96
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (85ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784251073044

作品紹介・あらすじ

マイケルはミセス・ペティグルーのくらす湿地の客車へ行くのが大好きだった。ペティグルーさんはロバや犬、ニワトリと亡き夫の愛した土地でひっそりとくらしていた。しかし、原子力発電所の建設計画がもちあがり、ペティグルーさんのくらしが脅かされていった。マイケルは「何事も変化しないことはない」ことを学んだ。輝かしい未来をうたった科学技術の粋を集めた発電所にも時は流れ…。あらゆることに感謝したいというぼくの思いは、ふっつり消えてしまった。-滝のように降る流れ星、生命に満ちあふれた湿地。その湿地が原子力発電所の建設予定地になったとき、マイケルは…。

感想・レビュー・書評

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  •  テーマになっているのは発電所ですが、ダムの建設など、他の事柄も当てはめることができるかもしれませんね。あなたは、何を思い浮かべますか?

  • マイケル・モーパーゴって、いつもそこそこの物語で、問題提起のある作品を書く人なんだけど、どれを読んでも、詰めが甘いというか、いい加減というか。
    ディテールがおろそかだから物語に乗れない。
    母親がペティグルーさんと仲良くなれたのはなぜなのか(その後一緒に行動し、自宅に住ませたんだから、相当な友情を感じていたはず)は書かれず、ペティグルーさんがいきなり火をつけたみたいな書き方をして、本はちゃんと持って出ていたりする。
    一番良く分からないのは、湿地の地権者は誰かってこと。勝手に決められてしまったんだから、ペティグルーさんのものではないのだろうと思うが、アーサーはまるで自分の土地のように語っているし、借りていたとしても、借り手の権利もあるだろう。そこらへんは全く書かずに「エエ話」にするところがはっきり言って嫌い。
    『モーツァルトはおことわり』もひどかったけど、これも同じいい加減さを感じる。
    反戦とか反原発を訴えたいなら、それなりに周到に理論だててやらないと。感情論だけでは意味がない。
    たとえ児童書であっても。

  • どこかのブックガイドから。絵本というと語弊があるかもだけど、挿絵が結構大きなウエイトを占めることもあり、そこに分類。やっぱり原発は『やれやれ…』だよな、と。

  • 何の発電所だろう。きれいな表紙。と手に取ったら、原子力か…っ。しかも、数年後には稼働されてないで、もとの土地になるには数百年もかかるという、なんて…なんてものを人は作り出したんだろ…
    住んでる人たちとも意見がわかれてギスギスな上に心も散り散り。結果だれもいない。
    悲しいことに、原発このおかげで今の生活がある。そこで一生懸命働いてくださっている人もいる。けれども、あぶない力すぎるよ…。一度、止めてみたらどうなのかな…。慣れ、じゃないのかな。なかったらなかったでなんとかなるのが人間ではないのかな。

  • 科学の発達と自然保護の問題は、相入れないのかしら⁉️

  • モーパーゴの少年時代を回想した小説。原子力発電所ができるまで。

  • イギリス、ブラッドウェルには1962年から2002年まで稼働していた原子力発電所があった。その原発が建てられる際には、一人の婦人が、亡き夫とのの家も、思い出も、すべてが奪われた。もちろん、その類い稀な豊かな生態系を持つ湿地、美しい自然と生物のすべても、住処を追われた。
    その50年前の思い出の故郷に、マイケル少年(今は大人)が戻っていくと、稼働を止め、閉鎖された原発は、残留放射能を封印するためにコンクリートで全体を覆われ、少なくとも200年はそのままにしておく予定だという。
    美しい故郷、自然の湿地と人々の暮らしを奪って、建てられたものは何だったのか?
    いったい、求めたものは何だったのか?
    「数年分の電力のためにだ。そんなもんはとうのむかしにつかいきって、なくなっちまった。発展の代償だと、連中はそういうだろうよ。だがオレにいわせれば、大はじだね」
    昔、暮らしていた人々は、みんないなくなっている。原発に賛成した人々も、すべて。
    何が得られて、何を失ったのだろう。

    福島第一原発での事故を経験した今の日本では、さらに考えることが多い気がする。

    やわらかい色調の優しいイラストが表紙で、中にも見開きイラストなどが多く、子どもも手に取りやすく、読みやすいのではないだろうか。

  • この物語の舞台はイギリス南東部の海沿いの村である。
    主人公マイケルはこの村で少年期まで過ごし、50年ぶりにこの街を訪れる。
    だれしも50年という年月は感慨も深く人間を感傷的にするだろう。しかし、彼の思い出には苦い苦い思いが詰まっていた。
    湿地ではタイ人の女性がロバと犬3匹とともに、亡き夫の思い出とともに、手つかずの自然の中でおだやかに楽しく暮らしていた。
    そこに、原子力発電所を建設するという。
    大量の電力が必要なこと、働き口が増えて地域経済が上向きになることなどの説得により、地域の人も最初は皆反対していた。
    そんな中彼女とマイケルの母は原子力のことを勉強して、生き物たちのくらす場所を破壊する権利はないこと、科学は完璧ではないこと、一度放射能に毒された建物は、子々孫々までその付けを残してしまうことなど、を訴える。
    そのうち、賛成派がどんどん多くなり、結局彼女は立ち退きを迫られ、建設が決定する。
    最後まで反対に回った彼女と少年の母は結局その地を離れることになる。
    そして、50年後に訪れた故郷。
    原子力発電所は使われていず、廃炉になったむざんな姿をさらしていた。
    それを目にした少年。
    声を上げることもできなかった少年の日の自分。
    この物語は子供向けに書かれたものだけれど、原子力の怖さだけでなく、目先のことでしか人間は判断できない弱さなど、現代的テーマを余すことなく語っている。
    マイケル・モーパーゴにはほかに映画で有名な「戦火の馬」「世界で一番の贈り物」など感動ものがいっぱいです。この人の作品、もっともっと読んでいきたい。

  • イギリスはロンドンにほど近いブラッドウェル。マイケルの子供の頃、そこは豊かな湿地で、たくさんの生き物が住んでいた。その湿地の近くに電車の客車を置き、そこを家にして住んでいるペティグルーさんは、ロバや犬、ニワトリとひっそりと暮らしていた。亡き夫との楽しい思い出とともに。
    しかし、その湿地に原子力発電所を建てる計画が持ち上がった。
    はじめは、原発反対の人が多かった街が、少しずつ、確実に賛成派に変わってゆき、ついに、原子力発電所はできることに。
    ペディグルーさんは引越しを余儀無くされた。
    マイケルと母は、ペディグルーさんと友情を深め、最後まで反対派として戦ったが、無力だった。
    祖国のタイに戻ったペティグルーさんが、間もなく亡くなったと伝え聞く。
    そして、さらに数十年後、マイケルが故郷を訪れると、そこには廃炉となった原子力発電所が・・・。もう、知る人も少ない故郷では、何のためにアレを作ったのだか、と話す人がいる。

    原子力発電がただちにノーだと、言えるのかといえばわからない。
    だけど、人の手に負えないものであることは確か。
    それをどう、後始末をしてゆくのか。
    考えさせられる物語。

    小学生中高学年からでもいけるかな?読みやすく、読書感想文などにもよい。

  • 切ない話。考えさせる話。
    『発電所があるまち』ではなく『発電所がねむるまち』。

    日本も現在脱原発の風潮だけど、いろんな場所でこんな町が増えていくのだろうか。
    “ニュークリアービュー(新眺望)”、ゾッとしないね。

    科学は進歩して加速していくけれど、決して後戻りはできない。
    一回りして、自然を増やすことができる科学がもっと発展すればいいのに。
    ボクにできることは殆どないだろうけど・・・。


    いくつかの見開きの絵が素敵。

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著者プロフィール

1943年英国ハートフォードシャー生まれ。ウィットブレッド賞、スマーティーズ賞、チルドレンズ・ブック賞など、数々の賞を受賞。作品に『ゾウと旅した戦争の冬』『シャングリラをあとにして』『ミミとまいごの赤ちゃんドラゴン』『図書館にいたユニコーン』(以上、徳間書店)、『戦火の馬』『走れ、風のように』(ともに評論社)他多数。

「2023年 『西の果ての白馬』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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