アメリカン・パイ (秋田文庫 2-3)

著者 :
  • 秋田書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (337ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784253176729

感想・レビュー・書評

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  • 短編9本を収録しています。

    表題作の「アメリカン・パイ」は、マイアミに暮らすロック・ミュージシャンのグラン・パが、ボルドーのブドウ園から逃げ出してきたリューという少女の物語。病に身体をむしばまれるリューが、グラン・パに出会ったことがきっかけで、歌うことで精一杯に生きている自分自身を表現する道を見いだします。

    「白い鳥になった少女」は、インゲという高慢な少女が、罪を償い物語。「妖精の子もり」は、まもなく母親が再婚することになるウォルト・ウッディホルという少年のもとに、一人の少女が訪ねてくる物語。

    「アロイス」は、ルカス・キップハルトという少年が主人公の、ホラー仕立ての物語です。彼は、鏡に映る自分の姿に、幼い頃に死に別れた双子のアロイスの影を見いだします。しかし、彼を取り巻く現実と、アロイスとの関係に亀裂が生じ、彼はしだいに追い込まれていきます。続く「ビアンカ」も、鏡の中の自分と対話するビアンカという少女の物語です。

    「ジェニファの恋のお相手は」は、一転してコミカルな作風で、まじめなジェニファという少女と、死神の手違いで13日後に死ぬ運命にあるアリスおばあちゃんの中身が入れ替わってしまう話。「ベルとマイクのお話」は、スケート場で出会った少年と少女がすれ違う、初々しい恋を描いています。「雪の子」は、エミールという意地悪な少年と、彼の遊び相手として招かれることになったブロージー・セールマンという少年の物語。

    「ヴィオリータ」は、時を超えて繰り返されるヨハンとヴィオリータの愛を描いた物語です。恩田陸の『ライオンハート』にも通じる内容ですが、ひょっとして影響関係はあるのでしょうか。

  • 萩尾さんの短編集。
    どれもこれもお気に入りばかり。

  • 萩尾望都さんの作品は、読んでると死にたくなる、もの凄く絶望する。
    だけど、同時にもの凄く生きたくなる。
    みっともないくらい足掻きたくなる。

  • 表題作を含む9作の短編集。
    表題作は、最初の「グラン・パ」が歌う曲の歌詞のバランスが悪くて残念…。

    当時の日本人は、やたら訪米の白人文化にあこがれていたのかな…。
    ドイツとかフランスとかを良いものとした大前提のうえで、それらを舞台にした恋愛が描かれるのがなじめませんでした。

    このなかでは孫娘とおばあちゃんの体が入れ替わる『ジェニファの恋のお相手は』が一番良かったな。

  • 「アロイス」が好きだなあ。
    パンを踏んだ娘…「白い鳥になった少女」も印象的。

  • たくさんの様々な形の物語、舞台は西洋か外国のどこかで
    小さい子供達が多く出てくる不思議な話が多かった。
    胸に刺さる話も多く不思議な話だった

  • ジェニファの恋のお相手は?アメリカン・パイは泣いちゃうなあ・・・

  • 中島らもが号泣したと聞いて、読んでみた。
    宝塚でも上映された「アメリカン・パイ」

    読み終わったときは、そんなに感慨がなかったのだけど、
    アメリカン・パイという音楽を聴いたら、なんだかぐっときた。
    こういう音楽を歌っていた少女の物語だったのかと思うと、
    切なくなった。

    「わたしなんにもやってない」

    …かなしい。

  • アメリカン・パイ
    白い鳥になった少女
    妖精の子もり
    アロイス ◇多重人格の少年の話。
    ビアンカ ◇たった七日間で心に入り込んできた少女の話。
    ジェニファの恋のお相手は
    ベルとマイクのお話 ◇すれ違いの幸せ。
    雪の子 ◇少年? 少女?
    ヴィオリータ ◇少女の面影がぐらんぐらん。

    少女の絵柄が可愛くも怖い。
    テーマで考えたのは、悪について。



    2012年8月初読。
    2021年10月再読。

    ■アメリカン・パイ 79p
    はっきりと「メッシュ」のミロンと同系列のグランパの顔。好きだ。
    そしてリューという少女の、救済……。

    ■白い鳥になった少女 16p
    「11月のギムナジウム」旧版にも収録。

    ■妖精の子もり 16p
    なーるほど王道の少女もの。すべて陽性。
    しかしこの裏に「アロイス」や「雪の子」が控えているかもと想像すれば……。

    ■アロイス★ 84p
    これは凄い!
    まずは1975年に二重人格という題材の先見性。
    おそらく双子への興味から導かれたのではないか。
    ただし鏡という極めて絵的なモチーフや、モノローグを誰に設定するかによって多層的にものが見えてくる語り方や、それに何よりも怖……。
    ルカスとアロイスという名前は憶えておこう。
    映画になったらまたよさそうだなあ。
    ちなみに金子修介「ガメラ2 レギオン襲来」に登場していた。

    ■ビアンカ 16p
    「11月のギムナジウム」旧版にも収録。

    ■ジェニファの恋のお相手は 31p
    ドタバタコメディ。どこかで似た話を読んだ気もする。

    ■ベルとマイクのお話 31p
    これもまた邪気の無い少女もの。

    ■雪の子 31p
    「11月のギムナジウム」旧版にも収録。
    にしてもこの本……コメディとシリアス(というかホラー)が交互に収録されて、どういう気持ちになったらいいんだか……。

    ■ヴィオリータ★ 16p
    これは凄い!
    連続する少女のイマージュに圧倒される男、それだけ。
    しかし人が人に焦がれるとはどういうものか、を話にすればこうなるのではないか。根源的。

    ◇解説:小柳奈穂子(宝塚歌劇団演出家)4p

  • 短編集で萩尾さんの多彩な作風が楽しめます。

    「わたしが目のまえで死んでも信じないでいてくれる?」
    諦観しているリューが健気で哀しい。
    歌詞も綺麗なのでもし原曲があるのなら聴いてみたい。

    「ぼくが少年からおとなになるってことは罪悪なんだ」
    エミールとアイロスも好みの話です。
    個人的に『妖精の子守』の数年後が気になる。

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著者プロフィール

漫画家。1976年『ポーの一族』『11人いる!』で小学館漫画賞、2006年『バルバラ異界』で日本SF大賞、2012年に少女漫画家として初の紫綬褒章、2017年朝日賞など受賞歴多数。

「2022年 『百億の昼と千億の夜 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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