マインド: 心の哲学

  • 朝日出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255003252

感想・レビュー・書評

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  • ※本書はメンタルヘルスや宗教に関する本ではありません。 どちらかというと、科学哲学的な内容です。意識とはなにか。自分はどのようにして意識をもって思考しているのか。機械(人工知能)に自己を自覚する意識を与えることはできるのか。こんなことを考えたことある人は結構いるのではないでしょうか。私も物心ついたころから、何度となく、この手の疑問について考えてきました。自分ひとりで考えていると、なんだかまとまりなく様々な考えや思いが浮かんでは消えるだけなのですが、本書を読むと、かつて自分が考えたこと、考えなかったこと、いろんなテーマが分類され、体系的に記述されており、読んでいて非常に知的好奇心をそそられる内容でした。とりいそぎ、この本を出発点として、積年の疑問を再考してみようと思っています。この本は何度も読み返す必要のある良書だと思います。

  • ジョン・R. サールは自著「心の哲学」で断言している。

    「心身問題」は伝統的なフレームワーク「心身二元論」と「唯物論」を捨て去れば簡単に解決すると…

    そして新たに、「因果的な還元/存在論的な還元」「一人称的な存在論/三人称的な存在論」という視点を導入している。

    志向性・自由意志・心的因果・知覚・意図的行為といった「意識」は、ニューロンの振る舞いによって引き起こされ、脳のシステム内でリアルな存在となる。つまり「意識」は、胃の消化や胚の減数分裂と同じ、単なる自然現象に過ぎない。
    また「意識」という概念は、主観的な特徴を理解すること(因果的に還元可能)だが、これを客観的な言葉で記述し直すと失われてしまう(存在論的には還元不可能)という性質を持っているのだ。

    つまりサールの唱える「生物学的自然主義」のベースは「唯物論」だ。ただし、既存の「モノ」の概念に主観的要素を加味した「条件付き唯物論」といえる。

  • 【NASA推薦・読んだらゲシュタルト崩壊必至・パラレル移動前に読みたい意識の不思議本厳選2冊】その1

  • 心の哲学について。哲学の古典から最新の脳科学までよくまとまっていた。

  • 何を思ったのか、久しぶりに手に取って読んだハードな哲学系の本でした。
    著者のジョン・サールに出会ったのは、ホフスタッター&デネットの『マインズ・アイ』の中に所収されている有名な中国人の部屋の論文を読んで以来、約13年ぶり。

    本のテーマは、意識、志向性、自由意志、心的因果、知覚、自己、など、「心」の周辺にある問題系であり、筆者はここでそれらの問題整理と解決に向けたアプローチを提示している。(各章ごとにたいてい"結論"が付いていますが、後で見返すときの役にはあまり立たない...)
    まず始めの準備として、心を扱う上で一般的な「心身二元論」と「唯物論」に代表される各主義を基本的に誤っていると宣言し、正しいアプローチはそのどちらでもない方法だと指摘している。専門家ではないので、実のところ筆者が意図する深さまで理解は到達していないのかもしれないですが、次のようなことなんだと思います。
    ・「心」というものは、脳内の神経生理学的な過程から生じる(因果的に還元できる) → 心身二元論は×
    ・「心」というものは、因果的に還元できるが、存在論的には還元できない (一人称と三人称とでは、存在論的な位置が異なるので、一人称の話を三人称の言葉で語ることはできない) → 唯物論は×

    このような考え方をベースにして、各問題系の解釈に挑んでいます。

    本の中でもあったように、この辺りの問題は近年に脳神経生理学から得られた知見が非常に貢献しているのだと思います (本で言うとオリバー・サックスの『妻を帽子と間違えた男』やラマチャンドランの『脳の中の幽霊』など)。そう感じるために求めて読んでいるような気がしますが、改めて人間てまあ不思議なもんだな、と思います。

    また、一人称/三人称の部分は『探求II』あたりのころの柄谷行人の議論を思いおこさせます(「この私」の"単独性"について議論したあたり - 久しぶりに読み返してみてもいいかな)。

    全体としては知的刺激性は十分。正しさについては判断できる範囲ではない。面白さは、...まずまずですかね。関連する問題群について網羅的にカバーしようというところもあって、ちょっと読むのがしんどいところも正直ありました。

    ということで星4つ。

  • 読み通すのが大変だったが、なかなかよい心の問題への入門書です。入門書といってもかなり難しい内容で、とくに志向性の問題はぼくにはまだ未消化。しかし、生物学的自然主義や、心身問題を因果論的還元と存在論的還元に組み替えて論じるところ、そこに一人称的存在論という心に特異な存在論が関わることなどは、比較的容易に理解できます。また、認識可能なのはセンスデータだけだという論に対して、発生論的誤謬や物とその像の類似概念が意味を持たないことなどの概念で論駁しているところは面白いです。しかし、無意識概念の混乱、自由意志の謎、などは残されたままで、やはり心の哲学の深みを感じます。とにかくサールは、常識的な確信を大事にしていて、科学的世界と日常世界の分離などないことを示そうとしていて、強靱な思索の力を感じます。訳者たちが書いた『心脳問題』もなかなかいい本でした。『心脳問題』の方が、心の問題の「出口なし」の状況をつきつめていた点は興味ぶかいが、社会論の方へ転換してしまうのがちょっと残念だったので、こちらを読めば、もっとディープな心の哲学を考えることができます。

  • 脳科学の観点を盛り込んで、意識とは、心とは何かを問う作品。
     科学は追い求めすぎると、人間を支配してしまうのではないか、そうならないためにはどうすればいいか、実際に我々の「心」は存在するのだろうか。そのような問いに対して、肯定的、否定的両側面から考察した上でさらに読者に疑問を投げかけている。意識や心についての考えを構築する手助けをしてくれるような内容。

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