- Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
- / ISBN・EAN: 9784255007182
作品紹介・あらすじ
あの町と、この町、あの時と、いまは、つながっている。<br><br>初めて人生の「なぜ?」と出会ったとき――きみなら、どうする?<br>一緒に立ち止まって考え、並んで歩いてゆく、8つの小さな物語。<br><br>失ったもの、忘れないこと、生きること。この世界を、ずんずん歩いてゆくために。<br><br>累計20万部、生きることをまっすぐに考える絵本「こども哲学」から生まれた物語と、新作「あの町で」を収録。<br><br> *<br><br>「小さな小さなお話を、ミロコマチコさんの絵の助けを借りて、一冊の本に編んでもらいました。<br> すごくうれしいです。小さなお話でも、深い問いかけを込めたつもりです。<br> きみの町と、きみに思いを寄せてほしい遠くの町のお話とを組み合わせました。<br> ゆっくり読んでいただければ、と願っています。 ――重松清」
感想・レビュー・書評
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『こどもの哲学』全7巻シリーズの付録として書かれたお話。
それをまとめるに当たって真ん中に『あの町で』を入れた。「あの町」とは東日本大震災に被災地のこと。
『よいことわるいことって、なに』では、電車の席を譲れなかった子ども、譲った子ども、それぞれの複雑な気持ちに焦点を当てた。
「わたしの正しさ」は電車に乗っている人の数だけある。それは「ほかのひとの正しさ」とは一致しない。「みんなの正しさ」から「それぞれの正しさ」がはみ出してしまうこともあるという。
好きと嫌いの間で揺れる気持ち、周りに合わせてしまう子どもの気持ち、演じている自分、たくさんの子どもの気持ちが詰まっている。
幸せってなに?人生ってなに?たくさんの問いが詰まっている。決めつけることなく、立ち止まって考えることを促す。
「ある町に、とても子ども思いの父親がいた」「ある町に、とても子ども思いの母親がいた」から始める話には、身に覚えがあって苦笑い。
『自由って、なに?』の章は、重松清自身のエピソードだそうだ。
子どもが生まれて育児とか親の責任とか、いろいろと新しい「不自由」を背負い込んだ。そんな「不自由」を楽しんで、味わって、生きていける「自由」が俺にはあるという。
そうだよね。
その場面のミロコマチコさんの挿絵(装画にもなっている)がすごくいい。
『あの町で』では、春夏秋冬を桜、ホタル、鮭、雁、自然と結び付けた4つの話。
真ん中に挟まれた「ある町」はたくさんの「きみの町」のひとつで、きみと変わらない子どもがたくさんいるんだ。
きみの町であったかもしれない事なのだと身近に引き寄せて考える。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「こども哲学」と言う本に掲載されていたシリーズ。
席を譲りたいのに譲るのに勇気がいる、戸惑う気持ちは、自然と、幼かった頃の自分と重ね合わせてしまう。
重松さん自身の友人が逝ってしまったことを書かれてたので、その友人の想いまでも、今のこどもにも伝えたかったことが凝縮されていると思った。
「不自由」を感じられるからこそ、生きている・・・・うんうん、そうなのだと言い聞かせる自分が居る。 -
いろいろ考えさせられる。
自分である事とか、幸せって何だろうとか、、、 -
重松清だなぁ。本当に重松清。
純粋なのにモヤモヤしてて、読んだあとはなんだかスッキリする。上手く言えないけど、重松清らしさの詰め合わせみたいな素敵な本。出会えて良かった。 -
なかなか本屋ではお目にかかれない本だが、ネットで買っても損のない本だった。少ない分量の中に考えるべき内容がたくさん詰まった良書。
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「なんだ、子ども向けの本か」とも思ったけど、そうも思わなかったり。
「哲学というのは、生きることを好きになるためのヒント」って、いいこと言う!
勉強ができる、仕事ができる、スポーツができる、友達がいっぱいいる、イケメン/美女、お金もち、色んな幸せの形があるけれど、そんなことを全部足しても「生きる」以上の幸せなんて無い。
生きるのに疲れた人、生きるのが不安な人、生きるのがツライ人、生きていれば、きっといいことがあるって。
ホントだよ! -
小川糸さんが紹介していたので読んでみました。子供たち向けに書かれた哲学をテーマにした本ですが大人が読んでもとても考えさせられる内容でした。震災について書かれた部分が深く胸につきささりました。自由について、自分について、人生について、改めて考えるきっかけになる一冊です。
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ポロポロと涙がこぼれた。どこに感動したのか、
言葉にはできないけど、世の中が嫌になったとき、世の中が分からなくなったときに心に問う、そして自分の中で答えを見つける瞬間はひとの心を震わすのかもしれない。
若者の気持ちの描写に優れた重松清さんの作品を久しぶりに読みました。子供がいる人はぜひ、と貸してくれた職場の先輩に感謝です。学校に行かない我が子に読んでもらえたらいいなと思います。 -
図書館をぶらついていたら、薄さが目に付いて借りてみた本。(『ぼくがぼくであること』の著者かと思っていたら違ったんですね…。著者名は本当に覚えられない…)
しかし、薄い=読みやすいとは限らない感じですね。初出を見ると、殆どの話は『こども哲学』というシリーズの付録として書かれたとの事なので、主な読者対象は小中学生あたりでしょうか。まず、句読点の位置が独特と言うか癖があって個人的にはちょっと読みづらかったのと、各話に出てくる子供が大概頭でっかちと言うか、随分考えすぎる子ばっかだなぁ!と言うのが気になったというか。
例えば、最初の話の『よいこととわるいことって、なに?』では、電車で座っている主人公の前に立っている人に対して席を譲るかを悶々と考えちゃうような話ですが、うーん、小中学生でそんな考えてたら生きるのしんどそうだなーとか思っちゃったし、優先席に座ってなければまぁいいんじゃない?とも思ったし。言われもしないことをあれこれ考えるのは不毛かなと。最近観た『魔法使いの嫁』のセリフで「言葉は分かりあうためではなく話し合うためのもの」みたいなのがあったけど、これでいいんじゃないの、と思いました。
『いっしょにいきるって、なに?』では喉が痛くて喋れないから聞き役に徹するミッちゃんの洞察力に脱帽しましたわw 自分以外の8人の口癖や仕草を把握するなんて、自分が小5の頃はここまで考えてなかったし、逆に言うと、人が好きじゃないとここまで観察できないかな、と思いました。
『自分って、なに?』はイソップ寓話にありそうな話だなと思いました。自分思いの少年の「がんばれ オレたち」で終わるのはなかなか良かったです。
『自由って、なに?』は人間の「不自由」と「自由」について考えさせられました。(空腹になったり眠くなったりすることを「不自由」とする発想はなかった)
『人生って、なに?』は「すべての雲には銀の裏地がついている(Every cloud has a silver lining.)」を思い出しました。
『あの町で』は瓦礫を運ぶ様子を雁風呂に例える冬の話が印象的でした。
そして、「荒れ野」は「あれの」と読むんですね…。(「あれや」だと思っていた)