自殺

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著者 : 末井昭
  • 朝日出版社 (2013年11月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255007502

自殺の感想・レビュー・書評

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  • 母親のダイナマイト心中をネタにできるなんてあーあいいご身分だなと斜に構えていたところはある。
    が、それにしても先入観で敬遠していた自分を罵りたい。
    いや優しく教え諭してあげたい。

    ・同情なしの笑い話で自殺スパイラルから脱却。
    ・母の爆発が故郷から自分を吹き飛ばしてくれた。
    ・いじめの加害者は自分の癒しのために。
    ・世間サマは真の人間を嫌う。
    ・山浦玄嗣。ケセン語聖書。
    ・青木麓。両親が心中。
    ・パフォーマーから編集者まで。バブルに纏わる大借金。
    ・ホームレスパチンカーと友達。
    ・吉岡尚文。秋田県の憂鬱。
    ・早野梓。樹海で声掛け。
    ・神蔵美子。ダブル不倫相手→結婚相手の写真家。「たまもの」「たまゆら」「たまきはる」
    ・月乃光司。壊れものの祭典。
    ・千石剛賢。千石イエス。イエスは熱中していたので性欲はなかった。シオンの娘。
    ・永沢光雄。「AV女優」の。

    ただひとりの語りではないのだ。
    多くの人の証言を拾い集めていく。形式ばったものでなく。
    自殺を真ん中に据えて、家族友達同僚恋人する人残された人やり遂げた人やり損ねた人主観的客観的笑い深刻などなど様々な切り口で、自殺や死に切り込んだり迂回したり。
    こうやって読んだり表現したりすることで少しだけゆとりを持つという点で、作者も読者も同じ作業をしているという構成。
    こんなに柔らかい作りなのにパワーを持つ。まさにいい本。会えてよかったという言葉がしっくり。

  • 自殺を否定も肯定もしない、静かで穏やかなエッセイ。
    著者の生い立ちや人生は壮絶の一言なんだけど、それを突き放して書いているから、心をざわめかせずに読んでいられる。
    書かれている遍歴はかなりとんがっていて、ずいぶん生きづらい人生なんだなと思う。淡々と書いているけど、けっこうすさまじい人だ。
    いちばん心に残ったのは、青木ヶ原樹海の話。いかに「樹海」のイメージが作られたものかっていうのが伝わってくる。
    「自殺」ってやっぱりセンセーショナルな出来事で、いろんなことを突きつけてくるから、何か言ったり思ったりせざるを得なくなるんだろう。
    やたら感傷的に扱ったり、怖いもののように思ったり、腫れ物に触るように扱ったり。特別視して、自分の世界から遠ざけておきたいと思うのも無理はない。
    でも、ある種の人たちにとってはとても近しいもので、気がつくと自分のすぐそばに「自殺」がある。
    いいとか悪いとかって判断してみても、だからってどうなるものでもなく、死んでしまう人はどうやっても死んでしまうんだろうし、そんなことをかけらも思わない人には理解できないままのものなのだ。
    年間3万人もの人が自殺してるという統計があったり、秋田県は自殺者が多いという統計があったりして、一応自殺予防の考えは出てきてはいるけど、それでもまだ、「自殺」ってどこか別の世界の、自分とは無縁の出来事だと思われてる。どうかしたら、「死ぬ奴はだめなやつ」と切り捨てられてたりもする。
    「病気で、生きたくても生きられない人もいるのに、自殺するなんて傲慢だ」と非難する人もいる。
    でも、誰も、誰かの代わりに生きたり死んだりはできないのだから、自殺を止めるための理屈としては不完全だといつも思う。
    この本には、そんな酷い言い方はなかった。
    ただ、淡々と、「やっぱり死なない方がいいんじゃないかな」と微笑んでる著者がいる。(微笑んでるっていうのは私の勝手な想像だけど)
    私も、死んでしまいたいなと思うような時があったけど、たぶん「死にたい」は「生きたい」なんだろうなとこのごろ思う。
    生きたいのに、楽に生きていられないから、死にたいと思うんだ。
    自分が楽になれるように、いつの間にか身にまとっていたいろんな柵や鎖を取り払えばいいんじゃないかな。
    読み終わってそんなふうに思った。

  • 末井さんのお母様が青年とダイナマイト心中。
    エッセイの中には、ご両親が自殺をした人、
    ホームレス、アルコール依存症、いろいろな人が出てくる。<みんな死なないでくださいね。生きてて良かったということはいっぱいあるんだから>と末井さん。
    秋田大学医学部法医学教室の吉岡尚文教授の言葉。
    自殺予防には<社会の人たちが自発的にどうしたらいいかみんなで考えてみるとか>
    若い人の自殺願望がニュースになっている。
    末井さんの<生きづらさを感じている人こそ、社会にとって必要な人です>
    この言葉がみんなに届くといいな。

  • 内容があまり合わなかった。けど自殺されてからかなりの年月が経つと、だいぶ傷もふさがるので笑って話してもいいじゃん…相手もそっとうなづくか、やさしく無視するか笑って軽く流してくれると気持ち的に助かるというのはわかる。「かわいそうに、気の毒に」とか言われるとかえってみじめになる。

    (うちもそうだけど)親が自殺した子というタグや腫れものに触れるかのように扱われるのはかえって傷つくだけだし、落ち着いた頃に素直に吐き出せるがもっと存在すれば、遺された家族の心の回復も少し楽になるのかも。色々と折り合いがついた頃に、話しても大丈夫な家族以外で話せる人、場所があるということが大事なんだと思った。

    末井さんの実母(30歳)は10歳年下の若者とダイナマイト自殺。『断片的なものの社会学』で、この本に触れられていてちょっと興味がわいて借りた。クマさんこと篠原勝之さん(57ページ)と青木麓さん(75ページ)の話が印象深く心に残った。11章の「秋田の憂鬱」や前半部を読んで他はパラ見。読むとしんどくて若干憂鬱になったので末井さん自身の話は流してしまった。

  • 7歳で母親がダイナマイト自殺、億単位の借金、鬱。
    どんだけ盛りだくさんなんだ、この人生。
    そんな中で末井さんが自殺を選ばずにここまで生きてこられたってのはある意味一つの奇蹟だよな、と。
    どの時点で死を選んでいても不思議はない状況で、それでも生きる道を選んでこられた、それはなぜなんだろうと思いながら読んでいく。
    死ぬまで自死を思わずに生きていられる人なんていないかもしれない。そんなときにこの本を読めば、ちょっと明日まで待ってみようか、と思えるだろう。

    「どうせロクでもない社会なんだから、真面目に自分を突き詰めるんじゃなくて、もっといい加減に生きたらいいのに」

  • スエイさんのことは奥さんの神蔵美子さんの写真集(「たまもの」)で知ったのだが、
    そこに写っているスエイさんはとても不幸そうで、一体どんな人なのかなあと思っていた。

    自分を語るときに外せないキーワードが人それぞれにあるが、スエイさんにとってはそれが「自殺」だったのだと思う。

    「笑える自殺の本を作ろう」という発想が素晴らしく、
    事実こんなに暗くて辛い題材をたくさん集めているにも関わらず、この本は面白い。
    それはスエイさんが「自殺」とがっぷり組んで、懐の深い相撲を取っているからに他ならない。

    加えて、神蔵さんの写真集で垣間見たスエイさんのどーしょーもないところも正直に描かれているのもいい。
    昔付き合っていた女の子のエピソードなど、ほんとうにどうしょーもなくて悲しくて、残酷なのに私は一番好きです。

    この本を死にたかったときの私が読んだらどう思ったかなあ。
    ヘビーな題材が続くので、真剣具合が悪いときにはおすすめしないが、
    スエイさんがこの本で書きたかったことは「死なないでください」ということで、
    それは確かな温かさを持って心に届いたのだった。

  • 大好きな末井昭さん。
    大傑作です。

    各章、すべて自殺をテーマに末井さんの経験や
    考えを具体的に、そして優しい視点で語ってくれています。

    主張は一つ。「死なないでください」

    自殺の原因第二位のお金について。
    末井さんの散々な先物取引、そして土地取引。
    最後は8500万円の借金残ったけど、交渉してもらって
    その額が減って今、毎月5万円の返済をしているところなどは、
    お金で死んではいけません、がリアルにわかるかな。

    また、末井さんが悩んでいるときにブログでその気持ちを
    書いていたとき、悟ったことは
    内向した文章は人に見せるのが恥ずかしい。
    でも、自分にとって恥ずかしいことや深刻なことほど
    人にとっては面白い、ということ。これは我々が表現するときの
    ポイントにもなるかなと。

    同僚と不倫関係となって、彼女が病んでいくお話「眠れない夜」。
    小説のようで、そして最後の1行にしびれてしまいます。

  • タイトル通りのテーマもストレートですが、不謹慎ながらかなり楽しい内容。
    下品なところも借金のところも不倫やらお遊びやらのところも、
    私からみれば、なんだよそれ?ばかな人たちだよ、と思うところ多々あるんだけど、
    それでもよく生きてこれたなあみなさん、
    笑いやら生きる力にかえて過ごしてることが、なんだか微笑ましいというか、

    元気づけられるわ!って押し付けがましいもんでは全然なくて、
    人ってすごい力を持っているんだな、
    それはきっとすべての人にあてはまる、私にもあてはまるんだな、とじんわりきたというか。

    重いテーマなのに、読後はすっきり、
    でも負担なくさらっと考えさせられる内容でしたね。たくさんの人に読んでほしいです。

    死にたいぐらいつらい気持ちになっても、とりあえずこの本読んでからに、
    何か感じるものがきっとあるだろうと思うので。

  • 自らの、自殺に関する強烈な体験を芯に、関わった人やそうでない人の自殺について、それから自分のその強烈な体験から始まった人生について赤裸々に書かれた一冊。

    雑誌でこの方の現奥さんのインタビューを読み、更に夫婦でインタビューに答えている記事も読み、「この人一体どんな人なんだろう」と思っていたらこの本を出していたということで手に取りました。
    「自殺を考えている人に思いとどまって欲しい」という思いもこめて書かれたということですが…正直この装丁とタイトル、ダイレクトすぎて手に取りにくいんでは、と私は思うのですがどうでしょうか?
    私がこの本を持ち歩いていたら同僚がぎょっとして「すごいタイトルの本持ってるね!」と若干引かれました。

    自殺によって周りの人間の人生をいかにゆがめてしまうのかということを考えさせられますね。
    著者がインタビューした人が何人か登場しますが、みなさん中々強烈です。まぁ著者(とその現奥さん)の上を行く強烈な人はいないように思いますが。

    楽しい話では決してないのですが面白い、といっていいと思います。でも誰にでも薦められる本ではないですね…

  • 末井さんのやわらかな語り口に耳を澄ますと、
    暗い森に光る一筋の稲妻が、心の鼓膜を震わす。
    自分だけの森の奥深く。
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    死ぬ事ばかりを考えてきた少女時代から、
    今こうしてここに生きている自分を思うと、時々不思議に感じてしまう事がある。
    あの混沌とした地獄絵図のような思考の中で、私はどうして生き続けることが出来たんだろうか。

    いつもいつも「死」を追い求めて、
    私にとってのこの世の光が「死」だと錯覚し、
    光に手を伸ばすかのように「死」に焦がれていた日々。

    しかし本当は「生」が眩しくて、
    「生」を直視する勇気がなかった。
    本当は誰よりも生きたかった日々。

    様々な出会いの中で、息継ぎの仕方を覚え、
    気が付いたら「生」と「死」は別々のものではなく、
    二つで一つだという事を知り、
    私は生かされ、生きている。

    「なんとなく」の日々の積み重ねでいい。
    なんとなく楽しい
    なんとなく嬉しい
    なんとなく悲しい
    なんとなく悔しい・・・

    その意味を知ろうとするのではなく、
    その「なんとなく」という全体性を感じること。

    辛いこと悲しいことは今でもあるけれど、
    固く固く拳を握り続けた自分の手のひらを開くと、
    生きてきて良かった…という温かさが「なんとなく」いつもある。

    太陽が眩しい時は、月や星を眺めりゃいい。
    春の陽気が辛い時は、家で好きな本でも読んでりゃいい。

    知らない事がまだまだたくさんあるから、
    私はもうちょい生きたいと思う。

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自殺の作品紹介

母親のダイナマイト心中から約60年――衝撃の半生と自殺者への想い、「悼む」ということ。伝説の編集者がひょうひょうと丸裸で綴る。笑って脱力して、きっと死ぬのがバカらしくなります。

「キレイゴトじゃない言葉が足元から響いて、おなかを下から支えてくれる。また明日もうちょっと先まで読もうときっと思う」――いとうせいこうさん
「優しい末井さんが優しく語る自殺の本」――西原理恵子さん
大人気連載、ついに書籍化!

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世の中、自殺について醒めているような気がします。
おおかたの人は自分とは関係ない話だと思ってるんでしょう。もしくは自殺の話題なんか、縁起悪いし、嫌だと目を背けてる。
結局ね、自殺する人のこと、競争社会の「負け組」として片づけてるんですよ。
死者を心から悼んで、見て見ぬふりをしないで欲しいと思います。
どうしても死にたいと思う人は、まじめで優しい人たちなんです。(「まえがき」より)

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