自殺

著者 :
  • 朝日出版社
3.73
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本棚登録 : 997
感想 : 108
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255007502

感想・レビュー・書評

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  • 自殺したいと思った事が無いかと言われれば「ある」という答えになります。脳天気と思われている私でもあるので、世の中沢山沢山いると思います。人間関係や社会との関わりが複雑化した現代ではあらゆる事に憂鬱の種があります。昨日まで円満でも今日は死にたいとか、ありえない話ではないです。
    本書は末井氏の母親がダイナマイトで心中した壮絶な経歴を生かしたエッセイです。不謹慎ではありますが、そのエピソードを一つの売りとして語る末井氏の柔らかい語り口は妙に心地よかったです。
    お金で億の失敗をした筆者の言葉で「お金位の事で死ぬなんて馬鹿馬鹿しい」と言われると説得力抜群です。今後自分が大きな借金を負っても(負わないけど)強く生きて行こうと思えました。どんなに借金が有っても結局命までは取られないんですね。

  • 多感な時期に黒歴史を刻むため読むといい。
    アラーキーの濃さが忘れられない。

  • 自殺をテーマにしたエッセイ。
    著者自身の母親も自殺しているが、その自殺方法が特殊で、その特殊性をネタにしている。死ぬ人は死ぬ理由があるのだろうけど、残される方にもトラウマができるが、ネタにすることによって、母親にも、自身のトラウマにも成仏してもらうことができるようになるのかな。
    すごく優しい文体で、前半部分は自殺について思うことを書いているのだが、その優しい文体とはうらはらに、著者の人でなしな部分も読めて面白かったですw
    僕自身はまだ生きます。

  • 自殺

    著者 末井 昭
    朝日出版社
    2013年11月1日発行

    タイトルはおどろおどろしいのですが、内容は、楽しく、かつ、真剣、真摯。著者は雑誌の名編集者。今月、朝日新聞のbe「逆風満帆」で取り上げられ、読んだばかりだったので、他の本を借りに行った時に図書館の受付の横に置いてあったこの本を借りました。

    岡山の片田舎出身。家は貧しく、7歳の時、32歳の母親が隣家の10歳年下の男性とダイナマイトを抱いて爆死。つまり、心中。幼い著者。ショックである上、隣の若い男性を巻き込んだ犯罪者の家族として白い目で見られて暮らす。
    高卒後、工員やキャバレーの看板書きなどを経て、エロ系出版社の設立に関与、やがて「写真時代」「パチンコ必勝ガイド」「パチスロ必勝ガイド」などのビッグヒットを飛ばし、名編集長となる。

    しかし、そんな彼の成功談を語る本ではない。自身の歩みが半分、そして自殺に関わる人へのロングインタビューが半分、といったところ。そんな構成のエッセイ集。自殺を扱っていて、悲惨な話もたくさん出てくるのに、気持ちが軽くなり、元気づけられる本。高橋歩の著作のようなリズム感もある。

    彼がなぜパチンコ必勝ガイドにたどり着いたのか。これがまた、普通なら自殺してしまいそうな体験があったからこそ。
    編集者になってから、商品先物取引の営業マンを信じ、貴金属に投資。バブル真っ盛りの1987年に起きたブラックマンデーで株が暴落し、逆にチャンスだと借金して大幅に商品への投資を増やす。しかし、2日ほどで商品相場も暴落、1300万円が40万円に。

    その後、農産物の先物に乗り換えるがもうからず。チンチロリンで勝った2000万円(すごい!)を粗糖(そとう)に全部つぎ込んだが失敗。そんな憂鬱な時に出逢ったのがパチンコ。毎日、通うようになる。会社に行くのも億劫だし、社会から落ちこぼれた気分になってパチンコをする。「こんなことしていていいのか」と思う。みんなパチンコをしている人は孤独であることに気づき、では孤独にさせないように雑誌を出そうと思いつく。

    雑誌は当たったが、個人的には、その後、バブル末期に不動産で失敗し、3億年の借金。今もそれを抱える。返済期間は70年。到底、払いきれない額。

    一方、自殺に関わる人へのインタビュー。この面々がなかなか。
    両親が、人生でやるべきことはやったから、みたいな動機で自殺してしまった若い女性(両親を亡くしたのが17歳、インタビュー時20代半ば)。その語り口があっけらかんと衝撃的。
    青木ヶ原樹海を歩く仕事をし、100体以上の死体を発見した作家・早野梓氏は、死体を捨てに来て、自殺をしている死体を発見して腰を抜かし、警察に駆け込んだヤクザの話などを披露。
    自殺数日本一の秋田県で法医学をしている教授の口からも、大変に興味深い話が出てくる。

    これを読むと、自殺マニアになってしまう。
    決して、悪い意味ではなく。
    著者は言う。自殺をするのは明日まで待て。その1日があなたを少し変えてくれるかもしれない。

    コメント
    1番~3番を表示
    2015年
    03月30日
    23:08

    1: きたはらんなコメント返信ボタン

    ***(メモ)****

    いじめられて自殺するところまで追い込まれたら、ひきこもってしまえばいいのです。みんなと同じ時間軸で生きていく必要なんかありません。(49)

    近所の長時間駐車を匿名で110番するなど、自分の手を汚さないで、自分たちに都合の悪いもの、不安になるものを排除する意思を、僕は「世間サマ」と呼ぶ。近年の息苦しさは世間サマが増長しているからではないか。(51)

    世間にどうしても収まることができず、その軋轢で自殺を考えている人は、世間に背を向けて生きればいいのではないか。(60)

    切腹ショーという会がある。外科医で切腹マニアの人とか、自分のお腹をメスでちょっと切って、腸をちょこっと出してみたりするらしい。(93)

    パチンコで1000万円の借金を作ったという女性がテレビに。しかし、「1000万円で孤独が癒されたのだから安いものだ」ということだって考えられる。パチンコで自殺をまぬがれた人だっているはず。(154-155)

    (地方では)普段、警察に依頼されて死体見ているドクターはそれが専門のわけじゃない。東京のように監察医務院があって、監察医がちゃんと死体を見るというのとは違う。町医者が診察の合間に死体を診て、死因を決めている。ちょっと危なっかしい。本当は違う死因かもしれないこともある。(194-195)

    ユーチューブにある、青木ヶ原樹海のドキュメンタリー映像。堆積している溶岩の鉄分の影響で磁石が狂う。これは嘘、やらせ。火山岩はある程度磁気を帯びていて、磁石を置いたら多少針がぶれるかなという程度。1メートル離すと影響しない。(222)

    日本人って律儀だなと思うのは、樹海に来て自殺するのは休みの日が多い。(229)

    樹海では、薬を飲んで自殺を図ると、たぶん溶岩に熱を奪われて、体温が急激に下がり、血液が回らなくなって足のほうから壊疽していく。助かっても腕と両足を切断した人が多い。(234)

    首つりは30秒ぐらいで脳がマヒする。遺体はあまりきれいではない。鼻汁は出ているし、ダラーっとしているし、死後5時間から10時間だと顔が紫色になっている、死後硬直もあるし。それを通り越しちゃうと意外ときれい。(238)

    樹海に来る人はひとりぼっち。そういう意味では楢山より残酷。口減らしではなく、今は社会に適合できない人減らし。(248)

    イエスの箱舟の責任者、千石剛賢(せんごくたけよし)に、「千石イエス」といういんちきくさい名前をつけだのはマスコミ。(302)

    死ぬときはいつ来るのか、死ぬ瞬間はどんなものか、そえを最後の楽しみに取っておきたい。(346)

    ***(メモ)****

    いじめられて自殺するところまで追い込まれたら、ひきこもってしまえばいいのです。みんなと同じ時間軸で生きていく必要なんかありません。(49)

    近所の長時間駐車を匿名で110番するなど、自分の手を汚さないで、自分たちに都合の悪いもの、不安になるものを排除する意思を、僕は「世間サマ」と呼ぶ。近年の息苦しさは世間サマが増長しているからではないか。(51)

    世間にどうしても収まることができず、その軋轢で自殺を考えている人は、世間に背を向けて生きればいいのではないか。(60)

    切腹ショーという会がある。外科医で切腹マニアの人とか、自分のお腹をメスでちょっと切って、腸をちょこっと出してみたりするらしい。(93)

    パチンコで1000万円の借金を作ったという女性がテレビに。しかし、「1000万円で孤独が癒されたのだから安いものだ」ということだって考えられる。パチンコで自殺をまぬがれた人だっているはず。(154-155)

    (地方では)普段、警察に依頼されて死体見ているドクターはそれが専門のわけじゃない。東京のように監察医務院があって、監察医がちゃんと死体を見るというのとは違う。町医者が診察の合間に死体を診て、死因を決めている。ちょっと危なっかしい。本当は違う死因かもしれないこともある。(194-195)

    ユーチューブにある、青木ヶ原樹海のドキュメンタリー映像。堆積している溶岩の鉄分の影響で磁石が狂う。これは嘘、やらせ。火山岩はある程度磁気を帯びていて、磁石を置いたら多少針がぶれるかなという程度。1メートル離すと影響しない。(222)

    日本人って律儀だなと思うのは、樹海に来て自殺するのは休みの日が多い。(229)

    樹海では、薬を飲んで自殺を図ると、たぶん溶岩に熱を奪われて、体温が急激に下がり、血液が回らなくなって足のほうから壊疽していく。助かっても腕と両足を切断した人が多い。(234)

    首つりは30秒ぐらいで脳がマヒする。遺体はあまりきれいではない。鼻汁は出ているし、ダラーっとしているし、死後5時間から10時間だと顔が紫色になっている、死後硬直もあるし。それを通り越しちゃうと意外ときれい。(238)

    樹海に来る人はひとりぼっち。そういう意味では楢山より残酷。口減らしではなく、今は社会に適合できない人減らし。(248)

    イエスの箱舟の責任者、千石剛賢(せんごくたけよし)に、「千石イエス」といういんちきくさい名前をつけだのはマスコミ。(302)

    死ぬときはいつ来るのか、死ぬ瞬間はどんなものか、そえを最後の楽しみに取っておきたい。(346)

  • 母親に壮絶に死なれた自殺遺族が、自らをさらけ出しながらインタビューや旅などさまざまなアプローチで自殺について書いた本。自分にはよくわからないがこういうのが救いになる人たちもいるのかもしれない。

    [more]<blockquote>P19 世間というものは幽霊のようなもので、幽霊にびくびくしている人に幽霊が出るように、世間を怖がる人に世間圧がかかってくる。

    P179 お金は悪魔だと思っていても、それを捨ててしまえない僕は、無一物の人にコンプレックスを持っているのかもしれません。【中略】貧乏を経験している僕は、なかなかお金から自由になれません。だからお金のことで自殺する人の気持ちはよくわかります。反面、お金のことなんかで絶対自殺してほしくないと思うのは、お金の束縛から自由になりたいと思っていることの投影でもあると思います。

    P239 ま、白骨になっちゃえば勝ちですけどね。(樹海捜索経験のある作家早野梓)

    P240 死体は見ただけだと腐ってるか腐ってないかそれだけの話で、見つけたらこの死体を誰かに返さなくちゃという気持ちが起きるけど、花束を見つけると悲しみだけが見えるじゃないですか。そういうときのほうが、まだ自殺した人に思いを寄せてる人がいると思って切なくなりますね。(早野氏)

    P263 不思議なもので、自分を肯定できると、相手のことも肯定できるようになります。自己嫌悪から抜け出してからは喧嘩をすることも少なくなってきました。そして嘘もつかなくなりました。嘘をつかなくなると、晴れ晴れした気持ちになります。

    P300 自殺未遂とか散々繰り返したけど、過剰に生きたいっていう自分がいるってことに気づいてますね。対人緊張があるのもなんでかというとだいたい欲望の裏返しなんで

    P317 自分の力を信じて頑張って頑張って頑張り抜いてへとへとになっている人も多いと思います。そういう人は孤独です。本当に愛せる人がいないとひからびてしまいます。相手の中に自分自身を見ることができれば、その人を本当に愛するようになります。そして孤独ではなくなり、うきうきした気分になり、まわりにもいい影響を与えます。愛する人がいればそれで十分です。そのことに真剣になれば後のことはいい加減でもいいのではないかと思っています。

    P324 決して負け惜しみではありませんー人生も勝ち負けではないことも、体で知るようになった。あくまでも勝ち負けにこだわるならば、どのような状況であれ、窓を開けた時にふっと入り込んできた小さな風に気持ちよさを感じられることができれば、その人の人生、勝ちである。(役者永沢光雄)

    P331 私に自死するつもりはありませんし、多分しないでしょう。けれども「死」が向こうからやってきたら甘んじて受けるつもりです。(永沢氏)</blockquote>

  • 自らの、自殺に関する強烈な体験を芯に、関わった人やそうでない人の自殺について、それから自分のその強烈な体験から始まった人生について赤裸々に書かれた一冊。

    雑誌でこの方の現奥さんのインタビューを読み、更に夫婦でインタビューに答えている記事も読み、「この人一体どんな人なんだろう」と思っていたらこの本を出していたということで手に取りました。
    「自殺を考えている人に思いとどまって欲しい」という思いもこめて書かれたということですが…正直この装丁とタイトル、ダイレクトすぎて手に取りにくいんでは、と私は思うのですがどうでしょうか?
    私がこの本を持ち歩いていたら同僚がぎょっとして「すごいタイトルの本持ってるね!」と若干引かれました。

    自殺によって周りの人間の人生をいかにゆがめてしまうのかということを考えさせられますね。
    著者がインタビューした人が何人か登場しますが、みなさん中々強烈です。まぁ著者(とその現奥さん)の上を行く強烈な人はいないように思いますが。

    楽しい話では決してないのですが面白い、といっていいと思います。でも誰にでも薦められる本ではないですね…

  • 2022年4月13日読了

  • 人の生き死にに興味があったのと、読書会で紹介されていたので読んでみた。
    著者は今70代。昭和の時代に多額の借金を背負い、ギャンブルに手を出し、同時に複数の女性と付き合い、生きてきた人。

    読書会でこの本を紹介してくれたのが20代の女の子で、「こんなクズみたいな生き方しても、生きてていんだな〜って思えた」と言っていて(笑)昭和を知らない世代からしたらそうよね。
    今の時代は良くも悪くもキレイすぎるのかもなと。

    著者のような人に関わって振り回されるのはゴメンだけどwでも、そんなでも、どうにかなるよ、ダメダメでも生きてていーんだよ、と、生きづらさを感じている人に伝わればいいなと思う。

    自死した家族の心のケアも、忘れてはいけない問題。

    著者の母は、自身の病気を苦にダイナマイト心中したそうだけど、昭和と令和ではきっと自殺の原因も微妙に変わってきているのではないかな。

  • すえいあきらさん 知らなかったけど、面白い人だった
    樹海の話が怖かった

  • タイトルと表紙から、もっと重々しい内容が連想されたが、末井氏の自伝的内容に自殺というテーマを取り入れながら、軽快なトーンで語られていた。エッセイといってよいだろう。自分のダメな部分をさらけ出すことが全体を支配している。ちゃんとした仕事や成果もたくさんあるだろうが、それらにはあまり触れられていない。

著者プロフィール

1948年、岡山県生まれ。編集者・エッセイスト。工員、キャバレーの看板描き、イラストレーターなどを経て、セルフ出版(現・白夜書房)設立に参加。『ウイークエンドスーパー』『写真時代』『パチンコ必勝ガイド』など15誌ほどの雑誌を創刊。2012年、白夜書房退社。現在、執筆活動をしながら、ペーソスというバンドにTサックスでときどき参加。2014年、著書『自殺』が第30回講談社エッセイ賞を受賞。 主な著書に『素敵なダイナマイトスキャンダル』(ちくま文庫)『絶対毎日スエイ日記』(アートン)『パチンコからはじまる〇×△な話』(山崎一夫・西原理恵子との共著、主婦の友社)『自殺』(朝日出版社)『結婚』(平凡社)などがある。

「2017年 『末井昭のダイナマイト人生相談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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