紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす

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著者 : 武田砂鉄
  • 朝日出版社 (2015年4月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255008349

紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐすの感想・レビュー・書評

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  • CINRA.NET の「フジワラノリ化論」やcakes.mu の「 ワダアキ考」で知ってから、面白い人だなあと気になっていた武田砂鉄さん。去年Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞した初の書き下ろし本『紋切型社会ー 言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社)をようやく読みました。すごく読み応えがあった。

    まず、緑の中を走り抜けてくポルシェのごとく真っ赤な装丁に、意気込みを感じる。
    「これはこうだから」というような一言で何か物事を雑に(または上から乱暴に)片付けられてしまった時にモヤ〜っとのこる、「いや、それはそうだけど…」という違和感や不快感をしつこく掘り下げて論考する。かといってモヤモヤを払拭して「スッキリ!」させようなどとはそもそも思っていないようなスタンスで、モヤモヤしたままなんとか自分の着地点を見つけようとする。言葉と思考の丁寧で地道な作業に誠実感を感じ、勝手に好感を持ちました。

    今世の中にはびこる言葉の現象から現代社会の問題点を紐解いてゆく、という諷刺的内容の論旨。特定の発言者を引合いに出すことは少ないけど、たまに実名が登場する。糸井重里の「なるほど。わかりやすいです。」的な「認め合い」はズルい、とか。(でもきっと「いいまつがい」は好きなんじゃないかなという気がする。)
    曽野綾子や林真理子などの発言をひっぱり出し、「それは違う」とパキッと言い切る。ツイッターで、「曽野綾子さんについては、定期的に暴言が放たれるので、ついつい「もういいよ」という対応になりがちですが、その都度「違います」と言うべきだと思うので、また書きました」と言っているように、ある種の乱暴な発言に対しては、意識的に追及し、闘っているようです。
    たとえば、「戦争を知らない」から派生する「今の若い人は、本当の貧しさを知らない」というような言葉遣い。「「戦争を知っている」には耳を傾けつつも、「戦争を知らないくせに」には、もっと好戦的に臨んでいくべきだ」と言っています。
    また、cakesでの深澤真紀さんとの対談では、「自分が経験していることを相手は経験していない、という時に、その一つで“未経験”ではなく“未成熟な存在”として規定してしまう。これって、結婚や出産の話題には特についてまわりますね。この手のことは今までに何度か味わってきていますが、これに慣れてはいけない。毎回、根に持つようにしています。「そうかー、ボクもそのうち分かるのかなぁー」なんて絶対思わない。子供がいれば分かるのかもしれないけれど、いないなら、いないなりのことを思う。」と。
    こういうことをきちんと言ってくれる人がいてよかった、と思う。

    「あらゆる“こうでなければならない”から、言葉は颯爽と逃れていかなければならないと思う。」
    同感です。

  • 紋切り型な言葉が、自由を奪っている。日本を「ニッポン」と表記する、そこに潜む狙いにもっと敏感になるべき、と思った。性犯罪者が、アニメ好きだとわかれば、その因果を問うのに、カントに傾倒していると言われても、そこに因果は問わない。英語には、語尾というものはない。月曜に増える自殺を減らすためには、「情熱大陸」の代わりに「ザ・ノンフィクション」を日曜夜にながすべきだ、という話。いろいろとうなずかされることも多いが、時々文章をこねくり回しすぎて、分かりにくかった。著者の主張からすべば、「文章は分かりやすいことが目的ではないはず」となりそうですが。

  • 食わせ者の著者の渾身の独演会──そんな読後感で巻を閉じる。こういうへそ曲がりの跳ね返りは嫌いじゃない。けれど難しい。「嫌いじゃない」と言っている自分さえもが彼の手間を惜しまぬ「解体作業」を「渾身の独演会」と呼んでしまう。一つの「芸」だとどこかで思っている。各トピックを綺麗に、毎回ほぼ同じボリュームにまとめ上げる手管、物書きとしてのテクニック自体が既に「紋切り型」に通じるマニエリスムと呼び合うものがないかと意地悪く思ってしまう。ストップ高のポトラッチのように、圧力鍋の中で行き場を探す蒸気のように、表現はもはや打破すべき対象を実は既に見出せなくなっており、ほじくり残した「差異」を探して右往左往しているのではないか──そんな漠然とした思いがふつふつ湧いてくる。だからこそ著者のような威勢のいい若い物書きを、兎も角も応援したくなるのだ。

  • ★言葉の強度★著者のことは知らず何の本かも分からなかったが、書店で偶然目にして立ち読みでほとんど一気に読んでしまった。言葉が成り立つ文化や政治の背景を読み解く強度に引き込まれた。ライターとして、何をして何をしないかの意識がはっきりしているのだろう。

    「わかりやすいです」に収斂してしまう安易な承認に対する違和感、「禿同」も一方通行の同意という意味では近いだろう。「情熱大陸」での時代がかった問いかけは、ノンフィクションから最も遠いところにある。「誤解を恐れずに言えば」は使いがちだなあ、と苦笑。ゼクシイに載っている結婚式の挨拶のパターンは本当に罪だと思う。どうしてこの漢字でこの音になるのという子供の名前も、たまひよに書かれているからOKという点でもリクルートの罪は深いなあ。

  • タイトルを見た途端、「そう!そうだよね~」と勝手に想像した内容とはかなり違っていた。著者は若手のライターらしいが、現状への憤りが前面に出た前のめりのスタンスで、これはこれで新鮮に読んだ。

    よく見れば副題にあるとおりで、これは巷にあふれる紋切型の言葉を切り口に、柔らかさを失っていく現代社会にパンチを浴びせようとしたもの。あらゆることが想定の枠内に落とし込まれていくネタとして扱われるとき、言葉もまた、その場でのおさまりだけがいい、どこにも届かないものになる。そのことへのいらだちが、やや荒っぽい文体で語られている。こういう書き方ってあまり見ないように思う。「新しい書き手」という帯の惹句もわかる気がする。

    次の三章がおもしろかった。

    05「若い人は、本当の貧しさを知らない 老害論客を丁寧に捌く方法」
    事実さえゆがめていく勝手な「メモリー」がなぜこうまで氾濫するのか。マスコミは作家批判をしないけど、曾野綾子はまったくひどい。

     15「”泣ける”と話題のバラード プレスリリース化する社会」
    多くの人がこれに乗っかかりつつ、そのアホらしさもわかってるんだろう。又吉推薦本がこれほど売れるのは、背後に誰かの計算があるように見えないからだろうな。

     17「逆にこちらが励まされました 批評を遠ざける『仲良しこよし』」
    これも「文化人村」ではあまり誰も言わないけど、アイドル好きを公言する男性論客たちにはうんざりする。それって「ボクって賢いだけじゃなくて、こんなこともわかる柔軟な人間なのよ」ってアピール?

    言い回しにわかりにくいところがあったりして、決してなめらかに読める文章ではないが、この違和感は「買い」。どんどん暴れてほしい。
    (著者のせいではなかろうが、誤植が目につく。「新しい書き手」のデビューならば、そこはちゃんとしてほしいなあ)

  • ダラダラと長いです。3倍に薄めて飲むカルピスを10倍に薄めたような希薄な内容の本です。著者は以前編集者だったようで、作家ではなく編集者が書いた本という感じがします。難しい言葉をたくさん知ってるし、文法も完璧だと思うんですけど、圧倒的に文章がヘタ。(センスがない)思想もない。結果的に言いたいことが伝わらない。タイトルは良いですね、つられて買っちゃいました。

  • 「乙武君」「全米が泣いた」「なるほど。わかりやすいです。」「会うといい人だよ」「誤解を恐れずに言えば」など、目の付けどころ、章題が面白そうだったので購入。

    自分を若手で少数派という立場に置いて、無意識に権力を行使してくる多数派(わかりやすくいうと「老害」や「マスゴミ」と呼ばれるあたり、その他まわりを囲んでいる常識派とかそういう空気)を切り捨てていくという文章。私もそういうのを読んでスカッとしたかったんだな、と思われてきてやや醒めてくる。章題で示す語句に辿り着くまでの例として出してくるエピソードがちょっとクドい。クドいと、書き手のユーモアを示すための文章なのに笑えなくなって、ただただ書き手と読み手である私の性格の悪さばかりが思われてくる(性格の悪さは、書き手には必要だと思っているけれど)ので勝手につらくなる。

    11章「会うといい人だよ」において、既存媒体vsインターネット世論の構図について、
    「ネットはいつまで既存を既存としておくのだろうか。まさか、新鋭っぷりが衰える、ないしは一通り馴染んでこれ以上の成長ができないという疑いが生じても、既存を既存のままにおいておけば、新鋭のままいられるという算段を持ってしまっているのだろうか。」という一文が出てくるのだが、これはそのままインターネット世代の書き手代表とされているであろう著者にブーメランとして刺さってくる言葉だと思われるので、色々凄いなと思った。

  • 「みんなで」「夢に向かって」というような物言いが嫌いな人は一定数いて、私もそうだから部分的に納得できる箇所もあった。しかし、筆者の切り口は、個人を神聖化する戦後民主主義の枠から一歩も出ておらず、この若さでそこまで紋切り型の思考しかできないのがかえって新鮮だ。大学時代に大手出版社に内定したことを就職部に報告するやりとりを武勇伝として書いているのを見ると、人間は一人でできることなどないと説諭する気も失せる。しかし、このような考え方は、団塊世代のマスコミに受けがいいと思うので、筆者はそのヒキで今後も活躍できるだろう。

  • 最初から最後まで皮肉たっぷりに現代にはびこる紋切型の言葉について大いに語ってくれる著書。
    面白すぎるし、そうそうと思いながらも、紋切型言葉にたびたび逃げている自分に気づきドキッとさせられたり。複雑すぎる現代社会は、複雑すぎるゆえか大雑把に捉えるべきという風潮がある。善悪二元論のようにパキッとどちらかに分けなくていけなかったり、少しでも外れた言動はすぐディスの対象になり炎上する。昔の家電についていたファジーのボタン。複雑な社会なのだからこそ、ゆるさや曖昧さがもう少し許容されてもいいのではないかと思う。

  • 「ニッポンにには夢の力がひつようだ」
    「逆にこちらが励まされました」
    このような言い回しは、どうも「何か」が引っかかっていたのだが、その「何か」をスパッと言葉で一刀両断するごとき文章は読んでいて爽快である。

    「ほぼ日」がなんとなく好きではなかったのだが、その理由が自分でもよく分かっていなかった。しかし本書を読んで目からうろこ、そういうことだったのかと妙に納得。

    と、読んでいて気持ちのいいところばかりでもなく、なんかどうでもいいことに力を入れすぎじゃないか、とげんなりする部分も多々見受けられる。

    ということで、物事は多面的に捉えるということの例題としてはかなりの良書ではないだろうか。

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紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐすの作品紹介

新しい書き手。自由な批評。


「柔軟剤なしのタオルと同じ。読むとヒリヒリ痛くて、クセになる。」

……重松清さん

「世に溢れる陳腐な言葉と格闘することはこの世界と格闘することだ。」

……白井聡さん

「育ててくれてありがとう」「全米が泣いた」「国益を損なうことになる」

「会うといい人だよ」「ニッポンには夢の力が必要だ」「うちの会社としては」……
日本人が連発する決まりきったフレーズ=定型文を入り口に、
その奥で硬直する現代社会の症状を軽やかに解きほぐす。
言葉が本来持っている跳躍力を取り戻すために。
初の著作、全編書き下ろし。

紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐすはこんな本です

紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐすのKindle版

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