圏外編集者

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著者 : 都築響一
  • 朝日出版社 (2015年12月5日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255008943

圏外編集者の感想・レビュー・書評

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  • 独特の写真集や本を出していて、目にするたび「おおすげえ」と思っていただけに、今回の本には強く好奇心を刺激され、舞台裏が読めるとなるとページを繰る手ももどかしく、一気呵成に読んだ。とても面白かった。本好きの方には誰にでもおすすめしたい内容。

    とはいえ。

    著者は自分のことを「編集者」として位置付けているようだが、正確には「ライター」ではないか。もちろん、その時の仕事によって役割は変化すると思うので、この仕事区分にそれほど意味があると思わないが、しかし立場が変わることで、仕事に臨む態度も変わるのはたしか。
    例えば。
    著者は、営業の意見を聞いて、企画に責任をもとうとしないのなら、本末転倒、意味がないという。
    しかし、腕の立つ編集者であれば、営業の意見を聞いてますよ、とアピールすることで、営業を本気で動かすよう誘導しているのだと思う。
    編集はいい企画を立てて、売るためなら持てる力の全てを投入するものだと思う。
    ゆえに、会議の無駄を減らすのは当然だが、無駄な会議をしないように工夫し、売り上げにつなげることができるのも、編集者の大事な能力なのだ。

    無論、著者はそんなことわかっていると思うが。

  • 大学で就職活動が迫ってきたころ、「なんだかこの先の人生、タイヘンで、めんどくさくて、つまらなそうだなぁ…」と鬱々としていた時に、「TOKYO STYLE」と出会った。「あ、こんなふうにテキトーに生きてもいいんだ?」「こんな人が現実にたくさん存在してるんだ!」と救われる思いがした。自分も「多数決で負ける子」の方の人間だったから。

    出版とはまったく無関係の仕事をしているけれど、この本に書かれている著者の仕事に対するプライドや愛情は、とても素敵で、その姿勢を見習いたいと思った。自分の仕事を全うするためなら、60歳になっても人に頭を下げられる、「毎月の振込よりも、毎日のドキドキの方が大切」とか言い切れるのって、すごくカッコいいなと。二十数年たって、また一つ救われた思いです。

  • 頭の中が、どんな風になっているか判るかな?

    朝日出版社
    http://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255008943/

  • 【引用】

    ・僕が取材してきたのは「スキマ」じゃなくて「大多数」だから。

    ・ただもう「伝えたい!」という気持ちで撮ったのが、結果的に美しい写真作品になることはあるけれど、それは幸福な偶然や奇跡や、写真の神様の恩寵にすぎないのであって、最初からそれを狙うのは危険だと思っている。

    ・上下関係ではなくて、すべては「好き嫌い」にすぎない。

    ・一流の評論家より二流の実作者のほうが偉い。

    ・評論家が司令部で戦況を読み解く人間だとしたら、ジャーナリストは泥まみれになりながら、そんな「わけがわからないけど気になってしょうがないもの」に突っ込んでいく一兵卒なのだろう。

    ・ほんとうに新しいなにかに出会ったとき、人はすぐさまそれを美しいとか、優れているとか評価できはしない。最高なのか最低なのか判断できないけれど、こころの内側を逆撫でされたような、いても立ってもいられない気持ちにさせられる。

    ・アートの最前線は美術館や美術大学ではなく、天才とクズと、真実とハッタリがからみあうストリートにある。

    ・ラッパーや小説家になりたかったら、ノート買ってリリックや文章書くだけだろう、ひたすら。

    ・知的探求としてのアートはもちろんあるし、あってしかるべきだけれど、そのずっと前に、人間ひとりの命を救えるアートというのがある。

    ・美術雑誌がやらなくたって、NHKの美術番組に取り上げられなくたって、見る人はちゃんと見てるってこと。

    ・僕はいつも部外者だった。インテリアでっ座員だって、アートだって、音楽だって文学だって。それでも取材ができて、本が作れたというのはどういうことかというと、ようするに「専門家の怠慢」。これに尽きる。

    ・「おもしろい場所を見つけるコツってなんですか?」ってよく聞かれるけど、走り続けるだけだ。

    ・当時は東京と地方にはまだ情報伝達の時間差が確実にあった。そうして、メディアが取り上げる例外的な「東京」が、いかに美化されたウソなのか、それが地方の子たちに、いかに無用な劣等感を植えつけているのかが痛感できた。

    ・作品の本質にかかわるようなところまで口出しするのは、本来の編集者の仕事じゃないから。

    ・自分が思ってもいない、信じてもいない誌面を作らされてるうちに、いつのまにか自分が「思っても信じてもなかったこと」そのものになっている。

    ・いまだに「石の上にも三年」とか言う上司や先輩がいる。それは「石の上に三年いちゃった」やつが言うセリフだ。

    ・編集塾と同じくらい無意味なのが、同業者との交流(笑)。異業種交流会は、さらに意味ないと思うけど。

    ・「たくさん読むから偉いんじゃない 速く読むから賢いんじゃない」

    ・編集を学ぶヒントがどこかにあるとしたら、それは好きな本を見つけてじっくり読み込むことしかないと思う。

    ・ちまたには「現役編集者が教える編集塾」なんていう謎のセミナーがあったりして、けっこう生徒が集まってるんでしょう? あれほどカネと時間のムダってない。何十万も払って塾に通ってるあいだに、自主制作本やZINEが何十冊作れるか

    ・いまはたいてい、社員編集者は社内にいて、フリーのライターとかを走り回らせている。そのあいだに、ずっとネットでネタ探したり。そんなの、最低だ。

    ・いちばん身についたのは、「読者層を想定するな、マーケットリサーチは絶対にするな」だった。

    ・いきなりネットで検索とかしないで、自分のアタマとフトコロでジャッジする癖をつける。それが自分の嗅覚を育てる上でいちばん手っ取り早い方法かもしれない。

    ・地方でよく見かけるでしょう、ひらがなタイトルのほっこり雑誌。ああいうのって、がんばってるなとは思うけど、意外におもしろいのが少ない。

    ・ほんとうにすごい本を作ってるのは地味で無口で、ひとりでコツコツ作業するのが好き、というひとばかりだった。口で説明するんじゃなくて、なにかを作ってみんなに見せるのが、彼らのコミュニケーションなのだ

    ・検索でたくさんヒットするというのは、僕にとってはすでに「負け」だから。

    ・編集者でいることの数少ない幸せは、出身校も経歴も年齢も収入もまったく関係ない、好奇心と体力と人間性だけが結果に結びつく、めったにない仕事ということにある

    ・編集者になりたてだった40年前とまったく変わってないどころか、苦労は確実に増えている。体力と収入は低下するいっぽうなのに。

    ・出版を殺しているのはその作り手である僕ら編集者だ。

    ・世の中にはよく「エディター講座」みたいなのがあって、そこでカネを稼いでいるひとや、カネを浪費してるひとがいるけれど、あんなのはぜんぶ無駄だ。

  • だれもやろうとしないからやる、現場の最前線を取材してそのまま伝える、相手に敬意を持つ、そんな風に私も生きていきたいな〜

    「どっちがいいか」ではなくて「どっちもいい」、すべては「好き嫌い」にすぎない。
    物事に白黒つけるのが良いみたいな風潮が最近ある気がしていて、それがあんまり好きじゃなかったからすっごく良いフレーズだと思った。

  • 長らく積ん読していた『圏外編集者』を読んだ。あえて出版社に属さず、還暦までフリーランスの編集者として活動してきた都築さん。『BRUTUS』の黎明期に携わり、そこからはロードサイドやスナックなど独自の編集道を突き進んでいる。

  • すごい衝撃をうけた。どうしていままで触れられなかったんだろう?こんなかっこいいことしてる大人、いるんだ。なんかいもなんかいも読みたいから、この本は買う。

  • 編集者の方が、よくぞ粘って、聞き書きの本にしてくれました!という1冊。
    何かを発信する、ものを作る、ってどういうことか、
    気付きと刺激に満ちた本。
    「好き」のエネルギーが、何をおいても一番の原動力なのだと分かる。
    都築さんはいつも人が素通りするような面白いものを
    取り上げている、と思っていたが、
    実は「誰にでも関係するもの」「行こうと思えば行ける場所」を
    取材しているのだと気付く。
    たしかに、ゴージャスでオシャレで高価なものは、
    ほとんどの人には現実味がなく無関係なもので、
    それが記事の中心になっている雑誌ばかりであるほうがおかしい。
    音楽でも美術でも文学でも観光地でもライフスタイルでも
    専門部署の人間ならば、
    もっと早く、効率よく、アクセスできるはずなのに、
    やらないから、自分が一からやらざるを得ない。
    手間と時間とお金がかかっても伝えたいものがあるからやる。
    写真をてがけるのも、人に任せる時間とお金を惜しんだからで、
    その結果、他の人とは重心の違う写真が撮れる。
    「作品」ではなく「報道」だから、
    紙面のデザイン性よりも、一つでも多くの情報を伝えたい、というのも
    当たり前のことなのに、気付かずにいたこと。
    都築さんが仕事を始めたころよりも、環境はまったく変わって、
    プロとアマを分けていた差がどんどんとなくなっている。
    技術を底上げする機材も安価で高性能になったし、
    発表の場所もいくらでもあるし、どこにいてもできる。
    ネットでデータにすれば、物理的なスペースも不要。
    雑誌が死んでいくのも仕方がない。
    この本の最初は、
    自分の好きなこと、興味のあることをいかに実現するかな内容で
    後半は、周りの目を気にせずに自分の好きなことを突き詰めている人を探して
    取材していくことの醍醐味について語られる。
    いずれにしても「好き」の力がなければ、面白いものは生まれない。
    検索して見つかるようなものに、新しさはない。
    都築さんのメルマガ、ものすごく面白そうだけど、
    週1回の配信で、いくらスクロールしても終わりが見えないようなボリューム感、
    しかも内容的にも濃ゆいに違いないものを、
    定期購読できる自信がないわー。

  • 正直な本

  • ものづくりの原点は「好きなこと」をとことん追求するしかないんだということを再認識できた。分かっちゃいるが、やりきれていない。

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圏外編集者の作品紹介

編集に「術」なんてない。

珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。
ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を
追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。
人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。

多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、
周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。

編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

圏外編集者のKindle版

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