圏外編集者

著者 :
  • 朝日出版社
4.08
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本棚登録 : 799
感想 : 72
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255008943

作品紹介・あらすじ

編集に「術」なんてない。

珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。
ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を
追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。
人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。

多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、
周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。

編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 考え方が新しいようででも言われてみれば確かにそうだなと思えることが多々あった。羨望や欲求不満を煽っていくメディアに踊らされないようにしたい。

  • 大学で就職活動が迫ってきたころ、「なんだかこの先の人生、タイヘンで、めんどくさくて、つまらなそうだなぁ…」と鬱々としていた時に、「TOKYO STYLE」と出会った。「あ、こんなふうにテキトーに生きてもいいんだ?」「こんな人が現実にたくさん存在してるんだ!」と救われる思いがした。自分も「多数決で負ける子」の方の人間だったから。

    出版とはまったく無関係の仕事をしているけれど、この本に書かれている著者の仕事に対するプライドや愛情は、とても素敵で、その姿勢を見習いたいと思った。自分の仕事を全うするためなら、60歳になっても人に頭を下げられる、「毎月の振込よりも、毎日のドキドキの方が大切」とか言い切れるのって、すごくカッコいいなと。二十数年たって、また一つ救われた思いです。

  • 独特の写真集や本を出していて、目にするたび「おおすげえ」と思っていただけに、今回の本には強く好奇心を刺激され、舞台裏が読めるとなるとページを繰る手ももどかしく、一気呵成に読んだ。とても面白かった。本好きの方には誰にでもおすすめしたい内容。

    とはいえ。

    著者は自分のことを「編集者」として位置付けているようだが、正確には「ライター」ではないか。もちろん、その時の仕事によって役割は変化すると思うので、この仕事区分にそれほど意味があると思わないが、しかし立場が変わることで、仕事に臨む態度も変わるのはたしか。
    例えば。
    著者は、営業の意見を聞いて、企画に責任をもとうとしないのなら、本末転倒、意味がないという。
    しかし、腕の立つ編集者であれば、営業の意見を聞いてますよ、とアピールすることで、営業を本気で動かすよう誘導しているのだと思う。
    編集はいい企画を立てて、売るためなら持てる力の全てを投入するものだと思う。
    ゆえに、会議の無駄を減らすのは当然だが、無駄な会議をしないように工夫し、売り上げにつなげることができるのも、編集者の大事な能力なのだ。

    無論、著者はそんなことわかっていると思うが。

  • 熱かった。でも賛成できるところ多数。ここまで自分は批判的になれないが、おもしろくよめた。
    聞き書きって久々に読んだ。

  • とても面白い編集者、物書きとしての語り。
    聞き書きの形なので、内容的には、さっきと言ってること違うじゃん!みたいなとこもあるけど、概ね一本筋のとおったロックな生き方をしてるなぁと思う。

    こんなふうに生きていける、食べていける仕事人は少ないし、とても魅力的に映る面もあるけれど、組織に属している多くの人がそれぞれの枠のなかでしっかりと堅実に作っていくものもまた、世の中に必要とされ、消費されることで、バランスが保たれている気がする。

    どちらのスタイルが良い悪いとか、多くの編集者、出版社がダメなわけでもなく、それぞれの領分のなかでできる仕事があるんだろう、と思う。

  • 都築響一さんが雑誌作り・本作りについて語った本。都築さんの本はいつも私を自由にしてくれる。「TOKYO STYLE」も、「夜露死苦現代詩」も、「独居老人スタイル」も。都築さんは読者を信じてるんだなというのが伝わってくる。メルマガ読んでみたくなった。

  • 頭の中が、どんな風になっているか判るかな?

    朝日出版社
    http://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255008943/

  • 編集者・都築響一さんのお仕事論&ポートフォリオ的な一冊。
    「ちょっとめんどくさいけど、とてもアツくて親身になってくれる先輩」から、仕事の話を聞いているような気持ちになる。
    都築さんの著書だと『夜露死苦現代詩』しか読めていないが、この本の帯に書かれている「多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。」という言葉に表れている人間臭さが、どの著書にも通底しているんだろうなということがわかった。
    終盤、ウェブ編集に移行することで紙の制約を受けることなく届けたいコンテンツを編集できるようになったという話を読んで、「編集」ってなんだろうと改めて考えてしまった。
    都築さんご自身も書かれていたが、編集者が伝えたいものをウェブ編集によっててんこ盛りできるようになったことで、読者に「長すぎる、多すぎる」と思われる可能性もある。
    編集という作業には編集者の意図が多かれ少なかれ反映されるもので、あまりにもそれが前面に出過ぎても嫌だけど、逆にあまりにも「素材そのもの」だけを提供されるっていうのも、編集者の存在意義がおぼろげになってしまう気がする。バランスが難しい仕事だし、もうそこらへんは好みの問題なのかなあとも思った。

  • 1452

    POPEYEとかBRUTUSの編集とか写真家やってる都築響一さんは『TOKYO STYLE』で知ってファンになって今回文章の本初めて読んだけど、面白かった。同業者と飲むぐらいなら全く関係ない職業の人と話をする方がよっぽど意味があるって言っててこれはほんとわかる。本とかもそういう意味で同業者の本は全く読まない。職場の同じチームの人とはコミュニケーションを円滑にする為に飲み会には参加するけどね。

    けつきょく、編集を学ぶヒントがどこかにあるとしたら、それは好きな本を見つけてじっくり読み込むことしかないと思う。ミュージシャンが好きなミュージシャンをコピーすることから始まるように、画家が尊敬する画家の模写から始めるように、編集者だって好きな本や雑誌と出会って、それを真似して作ってみることから始めたらいい。著者が好きな本でもいいし、編集やデザインや、造本が好きというのだっていい。あとは、1冊でも多く自分で本を作ることのほうが大事だ。

    それより大切なのは、100回読み返せる本を、何冊か持つこと。映画監督になるのだって、たぶんそう。寝る間も惜しんで何千本観た、とかいうのは評論家にとっては大切だろうけど、作り手はそうじゃない。100回見ても感動する、そういう映画と出会って、繰り返し観続けて、 自分のものにするほうがはるかに大切なはずだ。

    編集塾と同じくらい無意味なのが、同業者との交流(笑)。異業種交流会は、さらに意味 ないと思うけど。 編集者の飲み会、みたいなのに誘われていたころもあったけど、ほとんど参加しないでい るうちに、もう誘われすらしない。編集者の知り合いはたくさんいるけれど、仕事を離れて も毎晩一緒に飲みたい、なんてひとはひとりもいないから。僕は写真も仕事だけど、写真家 もまったく同じ。同業者と酒飲んで「編集論」とか「写真論」を戦わすとかって、いちども やったことないかもしれない。 同業者は仲間じゃない。同じ仕事をしている以上は、ライバルだ。だから同業の友達は、 なるべく少ないほうがいい。編集者同士で酒を飲むヒマがあるのだったら、そこらへんの居 酒屋やスナックで、まるで関係ない仕事をしているひとと知り合うほうが、よっぽど有意義 な時間の過ごし方だろう。

    音楽でたとえると、ミュージシャンにあたるのが著者で、DJの役割を果たすのが編集者しれない。DJの仕事が曲と曲をつないで、ひとつの音楽のかたまりを作るように、いろんな記事を組み合わせて、1冊の本に組み上げていく。素材を作るのはあくまでミュージシャンで、編集者は一緒に曲を作るわけではない。

    美大の卒業資格には社会的な価値なんてないんだから、無駄だと思った瞬間に退学したほうがいい、ほんとに。 もし自分がロックバンドをやりたかったら、ギター買って練習するだけだ。音楽大学を目 指して、予備校行ったりしないだろう。ラッパーや小説家になりたかったら、ノート買って リリックや文章書くだけだろう、ひたすら。文学部国文科とか目指さない。でも、アートだけはちがう。それって、おかしくないか?

    なにかが気になったとして、検索で簡単に見つかるものは、ようするにだれかがやってるってことだ。

    コミケに行ったことのないひとは「オタクの祭りでしょ」くらいにしか思ってないかもし れないが、ぜんぶのブースが漫画やアニメなわけじゃない。文芸コーナーもあるし、詩集や 写真集や紀行文とか、いろんなジャンルがある。僕もずっと前から、手作り本でいちどは参 加したいとひそかに思っていて。外国からの出展者やお客さんも年々増加の一途で、「東京国際ブックフェア」よりはるかに国際的でもある。

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著者プロフィール

1956年東京生まれ。1976年から1986年まで「POPEYE」「BRUTUS」誌で現代美術・デザイン・都市生活などの記事を担当する。1989年から1992年にかけて、1980年代の世界現代美術の動向を包括的に網羅した全102巻の現代美術全集『アートランダム』を刊行。以来、現代美術・建築・写真・デザインなどの分野で執筆活動、書籍編集を続けている。
1993年、東京人のリアルな暮らしを捉えた『TOKYO STYLE』を刊行。1997年、『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』で第23回木村伊兵衛写真賞を受賞。現在も日本および世界のロードサイドを巡る取材を続けている。2012年より有料週刊メールマガジン『ROADSIDERS’weekly』(http://www.roadsiders.com/)を配信中。近著に『捨てられないTシャツ』(筑摩書房、2017年)、『Neverland Diner 二度と行けないあの店で』(ケンエレブックス、2021年)、『IDOL STYLE』(双葉社、2021年)など。

「2022年 『Museum of Mom’s Art』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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