機動戦士ガンダム 2: SF (ソノラマ文庫 82-B)

著者 :
  • 朝日ソノラマ
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784257761648

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  • ■Ⅱ
    ペガサス・ジュニアとか、連邦のニュータイプ部隊=第127独立戦隊とか、シャアの側においては、新キャラのクスコ・アルとか、アニメではチョイ役だった木星帰りのシャリア・ブルとか、アニメと重なり合いながらもはみ出す新要素が面白い。
    が、それよりも特記しておきたいのは、性についてだ。
    アムロがセイラとセックス……というのは、ネット上の都市伝説的に知っていた。
    実際そうだった。
    が、母へのアンビバレンス、新キャラであるクスコ・アル(酷い命名!)、ちょろっと出てきたマチルダ、幼馴染であるフラウ・ボウ(の匂い)、との間で、ここまでグヮラグヮラと揺れながら行われた性行為であるとは、思わなかった。
    思春期に犯しがちな間違いとして、セックスという経験が至高のゴールである、とつい思いがち。
    だがアムロは早速セイラとの事後にもやもやしている……この実感、強烈に、判る。
    朝井リョウ原作、吉田大八監督の映画「桐島、部活やめるってよ」において、東出くんが演じる菊地が、彼女と付き合い始めて(セックスして)も、あーこんなもんかなんだかつまらないな、という虚無感に囚われていた。たぶん。
    戦時下と太平の世という違いはあれど、人の生理に根差す事柄なので、通じるものがあるのだろう。
    というか御大、戦争と蘊蓄とにとどめれば、戦記物として冷静で手堅い小説が書けるかもしれないのに、いたるところにセックスと生理とニュータイプ云々をまぶしているので、もう半ば官能小説家よ。
    Ⅰ巻で「スパンキング愛好会」云々とあったが、御大にとっては生きること、創ること、エロとセクハラが、限りなく近似値だったんだろうな。
    Ⅰ巻では稚拙な文体だと思ったが、ここまで性的な記述が執拗に繰り返されると、作者にとっての切実さが迫ってくる、病みつきの文体、と思う。
    令和の世には微妙かもしれないが、ファーストガンダムを立体的に捉えるためには、極上に面白い小説だ。
    各作家の性事情を腑分けする必要はないが、たとえば川端康成の性事情とか、トキワ荘の各人の事情とか、につながる、富野御大の性事情を、知りたいような、知りたくないような。
    自分ながら気持ち悪い記述だな。
    また悶々とした青春を経て中年になったら囚われることの多い(であろう)「生殖の神秘」に、御大も惹かれていそうだ。しかも強烈に。
    危うい。ひとまず静視しよう。



    006p 「ち、中尉……メンコ、動いています。コア・ファイターって良くできていますよ……」
    007p 「ララァ……。お、お前は何だったのだ?(以下略)」ニュータイプだからかい? ニュータイプ? 人類の再生(ルネッサンス)!? 冗談じゃあない。笑っちゃうよな。
    012p レビル大尉の「トラ、トラ、トラ」を批判し「矢を放て」にすべきだ(と主張する、作者の意見! 出しゃばり!)
    016p ぼくについてきてくれなかったかあさん! あなたは、あの時、とうさん以外の男性を愛していたのですか? 愛していた、の、でしょう……?(アニメでも確かに母の背後に男の気配)
    019p 赤十字の腕章をした母が、見知らぬ男とベッドを共にしていた。(という夢。殺伐とした厭な淫夢)
    022p 「母が、男と寝ていたんです」(と初体面のクスコ・アルに夢を話すアムロ)
    031p が、彼女の男の生理に滑りこむような話術というのはなんだろう? 自分の女の部分に自信を持っているからか?
    045p アムロはまるでネンネ
    049p 「あ! スカートを……」アムロは妙な感動をした。カセッタⅢではスラックスの彼女(クスコ)しか知らなかった。それが、スカート! 膝を隠すスカートが軽く揺れた。
    051p この女の肌が、男に間違いをさせる!
    052p 寝られるのなら、もっといいとも思っている。(この辺、御大の経験談?)
    058p なかまたち! この同族意識はなんという安堵感だろうか。テキサス・コロニーで別れて半月たっていないというのに、全身の皮膚が弛緩するような無防備感にとりこまれていく。が、これがいい。
    072p シャア。女はもういい。
    088p 「ああ!」アムロは声を出しそうになっていた。あの金髪の背筋ののいたシャキッとした姿! ”あれだったのか……欲しかったのは!”これは言葉ではなかった。一瞬の感情のほとばしりをあえて文字にするとこうなるということなのだ。アムロはよろめいていた。(略)”今夜、誘おう”アムロ・レイの率直な欲望であった。(セイラへの欲望。御大の経験談?)
    097p ”ただの疲れではない?” なぜだ? ”寂しい!?” そうとしかいいようのない索漠感がセイラ伍長の中にあった。しかし、アムロがその寂寞感を感知したからといって、何をしてやれようか。ただ、本能的に”なぜだ”とは思ってみた。(この自問自答感が、実に御大っぽい)
    101p (さっきまでセイラに惹かれていたのに、ウッディ大尉とマチルダを見て)”惚れっぽいんだよな”アムロは自虐的に心の中で言ってみる。
    109p セイラと話していて、クスコ・アルに似ていると思い、フラウ・ボウの匂いをふっと思い出す。
    116p ”乳首って小さいのだな……”(金髪さんとついにSEX! でも幸せに浸れない)
    119p 「シャアを……殺してくれて?」
    124p この男と女のあいまいさが、いけないのだと……。
    156p ブライトとミライ。
    173p (シャア、新しく秘書になったマルガレーテ・リング・ブレアと寝て)愛を成すということは高いことなのだ。愛は潔癖に愛でありたいと願う(云々。なんか言ってらあ)
    175p 子を産んで欲しい。何の脈絡もなくシャアはそう思った。ララァに対して毫も感じたことのない欲求であった。(キモ!)
    179p セックス、というだけのことではないのだ。男と女、女と男、が存在する人の世の事そのものにかかわりあう世界がみえるようなのだ。
    212p 「ええ。……金髪さん。もう一度、キスさせて下さい」
    218p フラウ・ボウ ”コンパクトの鏡の中の私が泣いている!”
    222p ”金髪さんの手ほどきも受けているのに、さ……”
    234p これは強姦ではないのか!?
    243p ”あの時、あなたと寝ようとは思っていなかった!” ”寝たかった癖に! 私を欲しいなら、そうおっしゃい。寝てあげたのに、坊や!”(アムロVSクスコ)
    244p~ クスコの走馬燈を見るアムロ。ロンドン橋の歌。マイフェアレディ。(……なんだか「2001年宇宙の旅」っぽい?? 映画が1978年。ガンダムアニメが1979年、漫画が1979年~、なので、この推測、アリかもしれない。あるいは御大、「2001年」に歯噛みしたクチなのかしらん。調べてみること。)

  • 1980年刊行。全3巻中の2巻。

     「なんて情けない子だろう!あたしは、あんたを、そんなふうに育てた憶えはないよ」
     「何を言うんだ!あなたは僕を育てはしなかったよ!僕は一人で大きくなった。父さんだって仕事一辺倒で僕の面倒をみてくれなかった。僕は一人で大きくなったんだよ!」/

     「夢だったのです。怖い、不潔な…」アムロはどもってみせた。
     「不潔?」クスコ・アルの…瞳がアムロをのぞきこんだ。”成功だ!”不潔という生理的な言葉が、クスコ・アルの感性の足元をすくったのだ。
     「母が男と寝ていたんです」アムロは言った。/

     ”この女の肌が、男に間違いをさせる!”アムロはそう思いつつ言った。
     「降りて下さい」「少尉…」クスコ・アルは言葉をのんだ。「どうせ僕は青二才です。あなたのお相手はつとまりませんから…降りて下さい」

     アムロは逆流する光の流れをみたのだった。
     ”やめて下さい!や、め、て!”クスコ・アルが見たものがアムロに見える。
     クスコ・アルの美しい母の腹部に銃剣がつきたてられた。連邦軍の兵士のようだった。…”豚ァッ!!”最後にアムロが見たものは兵士の…だった。

     これはもはや少年の物語ではない。アムロ、大人である。

  • 既読本

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